「あにゃ?剣兄ぃお早う!今日は早起きだねぇ」
『イイ匂いに釣られて起きた』
「アハハ、剣兄ぃらしいね」
弱火で炊かれる鍋がコトコトと音を奏でている。
『味見してイイか?』
「ン~、ちょっと早いかもだけど…ハイ」
『サンキュー!ハフハフ…』
根菜の煮物(関西なら炊いたん)は桜の言う通りまだ味は少し染みて無かったが、ほっこりとして優しい味わいだった。
「どう?」
『うん、出来上がりが愉しみだ』
「良かったぁ」
桜の笑顔はその名の通りに明るく頬を染めた愛くるしい物だ。だからこそ散らしてしまわぬ様にしなくては…。
しかし、巫女装束にフリル付きエプロンっていうのも面白い組み合わせだなぁ。しかも桜は椿姫さんにも負けず劣らず胸が大きいからエプロンの裾位置が上がってしまっている。
『んじゃ、コッチも味見しようかな?』
「エッ?…ン…ンン!?」
カツン…
後ろから抱きしめる様に唇を奪うと驚いた桜は持っていたお玉を落としてしまった。
「あ…ダメ、剣兄ぃ…まだ朝ご飯が…」
言葉では拒否しているものの、体をくねらせるだけで逃げようとはしない。
「ふにゃ…そんな事し…だむぇ…」
エプロンで隠れて見えないが着物からこぼれた豊かな乳房を
ブランデーグラスの様に転がし、指先で自己主張しだした突起を弄ぶ。勿論袴の腰からもう一方の手を差し込ませて直接秘唇を撫で上げている。
「クチュ…やん…ムム…お尻に当たっ…ンン…」
袴があるとはいえ、ショーツは太股までずり下げているので俺の硬直がお尻の谷間に入ろうとしているのを感じているのだろう。
「や…剣兄ぃ、駄目だってばぁ~」
「何が駄目なの?」
『うわっ!?か…楓ッ!?』
相変わらず空気読めないっていうか、絶妙なタイミングで現れやがる。着物にエプロンじゃなきゃ完全にアウトだった。
「楓ちゃん、剣兄ぃってばつまみ食いしようと邪魔するんだよ~」
桜、ナイスフォロー!嘘は吐いてないし、不自然さは無いぞ。
「フ~ン、じゃあ剣人にはお腹一杯になるまで私の拳を喰らわせてあげるとして、二人共椿姫さん何処に居るか知らない?」
『いや、見てないけど…また野草とか採りに行ってるんじゃ?』
「今日の担当は私だからそれは無いわ」
珍しいな椿姫さんが行き先も告げずに出掛けるなんて。そういう事にはキッチリした女性だと思ったけど…。
「私は朝ご飯食べたらもう一度捜してみるわ」
『ああ、俺も捜してみるよ。んじゃ、そういう事で…』
「お待ち…」
脱出失敗…楓に襟首を掴まれてしまった。
「アンタの朝ご飯はコッチでしょ?」
これ以上無い位のイイ笑顔で拳を握っている。やっぱりバレてたらしい…。
『アハハ…ハ…』
『ぅう…酷い目にあった。楓のヤツ容赦無いな…』
身体が宙に浮く程しこたまボディブローを喰らい、俺は山の向こう側の川岸にまで吹っ飛ばされた。村長の家は実は一子相伝の拳法家か何かなのかもしれない。
『ただいま~、これお土産の川魚』
「お帰りなさい剣君、大漁ね」
アレ?椿姫さんがいる。どうやら入れ違いになったようだ。
「ごめんなさい、ちょっと小用があったの…」
『…?』
何か引っ掛かるが、まぁ女性だし色々あるんだろう。
部屋に戻ると座卓にオニギリとメモが置かれていた。
《楓ちゃんの事、怒らないでね。お部屋で待ってます―桜―》
流石は桜、きっといいお嫁さんになれるよ。
・・・誰にもやらんがね!
楓は野菜を村の農家にわけて貰いに行き、椿姫さんは祭の最終打ち合わせがあるとかでまた出て行ってしまった。つまり今は桜と二人きり、このチャンスは逃せない。
・・・何?勿論、桜を村人からの輪姦強姦にあわせない為さ。
・・・ホントだぞ!
「あ…剣兄ぃ…エヘヘ」
互いに顔を合わせた瞬間、気恥ずかしさで真っ赤になってしまった。
「不束者ですが宜しくお願いします」
桜は蒲団の上で正座し、三つ指をついて頭を下げた。
『こ…こちらこそ…』
吊られて俺も頭を下げる。頭を上げると相手は下げているのでまた下げる、この繰り返しが続いた。コメツキバッタかいっ!?
「プッ…アハハハ」
『じゃあ、貰うよ…』
「ウン、剣兄ぃ。桜の[初めて]を貰って…」
桜の愛らしい唇にそっと触れ、ゆっくりと身体を重ねた…。
カチャカチャカチャ
これで祭の第一段階が終わった事になる。伝承通りなら楓達は祭前日にはお腹が膨らみ、祭壇奥の部屋で産まれるであろう[神]を俺が倒さねばならない。御神刀は神社から賜わってきた。しかしこんな刃立てもしていない刀で倒せるモノなのか?
何か間違えていれば俺はただ楓達とエッチしただけになる。それで済めば俺得で済むが、[神]が甦ったら楓達はただでは済まないだろう。
「フゥ…男の人ってあんな風になるんだ、ビックリしちゃった…。しかし剣兄ぃ上手だったなぁ…ハッ!?まさか向こうでそんな事ばかりしてたんじゃ…」
ガタ…
「あれ?お帰りなさい。村に行ってたんじゃ…エッ?どうしたの…何か変だよ…」
…しかし桜も可愛かったなぁ…。背面座位であの大きなオッパイと脚の間の敏感な突起を弄びながら破瓜の時と絶頂を迎えた時のあの表情は…。しかも余程気持ち良かったのかシッカリ[おかわり]まで要求してくるし…。桜、末恐ろしい娘…。
チェッ、3人とも隠し録りしとけば良かった…。そうしたら向こうに帰っても淋しく無かったろうに…。
そんな不謹慎な事を考えながら最後の情報集めを続行させていた。
ドタドタドタ…
「椿姫さん、居るッ!?」
いきなり楓が飛び込んできた。
『い…居ないけど?』
「そっか…てっきり剣人が無理矢理押し倒してるんじゃないかと…」
コイツは俺を何だと思ってるんだ?一度キッチリ話をつけた方が良さそうだ。
・・・ベッドの上でな!
『ってか椿姫さんがどうしたんだ?村に居たんなら帰りに会わなかったのか?』
椿姫さんは神社で打合せと言ってたから帰りは一本道な筈だが…。
「それが神社にも寄って無いらしいのよ!気の所為なら良いけど…」
何だ?この嫌な予感は…。予想外の何かが起こっているのか?
「キャーーッ!!」
『桜の部屋からだ!』
叫び声のした場所に行くと、そこにはヌイグルミや本が散乱していた。桜の姿は無い…。
「何…何が起こってるの?」
こんな島にわざわざ部外者はやって来ない。だとしたら…まさか痺れを切らした村の奴等が…!?
「と…とにかく私も捜してみる!後でここで会いましょう!!」
『ま…待てッ!勝手に動くなッ!』
・・・・
それっきり椿姫さんや桜、そして楓までもが夜になっても帰って来なかった。村長や宮司、村の奴等にも問い詰めてみたが誰も行方を知らず、その態度にも嘘を吐いている様には感じられなかった。
船が出た形跡は無い、という事は島の中にいる筈だ…。村人総出で捜索したが、山狩りも結果を出せなかった。
・・・・
チチチ…チチチチ…
『ぅ…う、もう朝か…』
闇雲に暗い島を捜しても効果は薄いと判断した村長は夜が明けてから捜索隊を組織し、班ごとに地域を分けて捜す事にした。
本部は電話の有る村役場、互いの連絡は年代物の軍事用トランシーバーで取り合う事となった。
生まれ故郷とはいえ、幼い子供だった俺は土地勘が薄く、村の地図と衛星端末のGPS機能を頼りに捜索を始めた。
『楓ーッ!椿姫さーんッ!桜ーッ!居たら返事しろーッ!!』
捜索した範囲の色が変わる様にプログラムした地図はかなり変化を示している。
<剣人君、そちらはどうだ?>
トランシーバーのスピーカーから宮司…つまり椿姫さんの父親の声が聴こえる。
『駄目です!離れ家から山頂方面には手懸かりありません』
俺は今、山頂近くの見晴らしの良い視界が拓けた場所に居た。中腹付近に数名のチームが捜索しているのが見える。
俺が…俺が抱いたから3人とも居なくなったのか…?せめて警察犬でもいれば彼女達の匂いを頼りに…っても離れ家にはパンツ位しか…いや犬っころに嗅がす位なら俺が嗅ぐ…って違うだろ!
気ばかりが焦って考えが纏まらない。今日はもう祭の前日、そろそろ母胎となる楓達のお腹が大きく…待てよ?本当に祭の基となった伝承が原因だとしたら?
『宮司さん!神社以外に言い伝えに関係する場所は在りませんか?例えば海の近くで…』
もし俺の予想通りなら見当違いの場所を捜している。きっと彼女達は山には居ない。
<海…?ちょっと待ってくれ…今の伊城神社は何代か前に移築された物だと先代に聞いた覚えがある。元々は流れ着いたとされる海岸の岩壁に祠が有って、小さな祭壇が奉られていたとか…>
ビンゴ!間違いない、楓達は其処だ!海にまつわる伝承なのに山の中腹に神社が在るのはおかしいと思ったんだ。
『判りました!俺が其処に向かいます。皆さんは引き続きお願いします!』
<ちょ…剣人君!剣人く…>
船着き場とは丁度反対側に位置する岬。昔の依り代となった女性が[神]を抱えて墜ちた呪われた場所に楓達は居るに違いない!
俺は電子機器を詰めたリュックにトランシーバーを捻り込み、岬へと全力で駆け出した。
・・・・
『何処だ…?祠は何処にある?』
確信めいた感覚。息が苦しい…走り続けただけじゃ無い、空気そのものが違う気がする。
鉛色の波は荒く、ドンヨリと薄暗い雲に覆われた空。如何にもな雰囲気が調い始めている。
「剣人君!見付かったか?」
宮司さん…村長に駐在まで到着したようだ。
『まだです!ですが此処に居る気がするんです』
「有ったぞー!ココだ!」
丁度今は干潮、普段は海水に隠れて見えないらしい。
シャラン…
念の為に持って来た御神刀を抜くと綺麗に研かれた刀身に俺の顔が映る。
「ワシ等も…」
『いえ、俺だけで行きます。皆さんは万が一を考えて直ぐにでも診療所もしくは本土の病院に運べるように手配をお願いします』
最悪、出来れば3人の無惨な姿を見せたくは無い。俺は懐中電灯を借りて祠の中へと入って行った。
思ったよりも奥深く、狭くて暗い。普段は海中の為か壁も苔みたいな物でヌルヌルしている。
『まるで膣だな…』
変な例えだが素直な感想だった。ある意味[蛭子神]には相応しいのかもしれない。そして最奥の子宮にあたる場所、その神殿に楓達が居る。
キラッ…
懐中電灯の光が何かに反射した。
『コレは…!?』
クローバーを摸したヘアピン。間違いない此処だッ!
『楓ーッ!椿姫さーんッ!桜ーッ!無事かーッ!?』
祠内に反響する俺の声、返事は返って来ない。まさか…?
一刻も早く傍に駆け付けたい、だがヌルヌルとした足場がそれを阻む。
『…エッ?そんな馬鹿な…』
懐中電灯の光が照らし出したのは行き止まりの壁。これ以上は進めそうも無い。
『おかしい…だったら何で楓のヘアピンが中間に落ちてたんだ…?』
信じろ!彼女達は必ず此処に居る。そして考えろ!ここはただの洞窟じゃない。
『…そうか!』
ヒントはもう自分で言ってたじゃないか…今までの洞窟が膣なら行く手を遮るコレは当然…。
ドン!ドドン!
響く音は向こうに空洞がある事を示している。
『セイヤァーッ!!』
ドーン!ガラ…ガラガラ…
何度か体当たりを続けるとピキピキと亀裂が入り音を発てて砕けた。
『ゲホ…ゲホ…ヤッパリ突き破るのが男だよね』
壁の向こうにはそれまでとは一転して拡がる空間。本当に子宮みたいだな…。
『ぅう…背中打った…』
壁の有った向こうから改めてリュックと懐中電灯、そして御神刀を持って入った。
下から上へ左右に移動させながら照らしていくと一瞬白い何かが見えた。
『…ッ!!』
「ぅ…だ…誰?誰か居るの?」
この生意気そうな声は…間違いない楓だ!という事は…、椿姫さんと桜もそれぞれ横に並んでいた。
ボッ…ボボボッ…
俺が入ったのと呼応する様に壁に並んだ燭台らしき物に青白い灯火が燈る。
『良かった…心配したん…だ……ぞ』
思わず身体も視線も固まってしまった、そしてある一部分も…。
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