十六話
_表の太鼓の音が遠ざかるころ、二人の荒い息づかいだけが部屋の中にあった。
_つながった性器をはずしてみると、膣奥からは白く濁った粘液がこぼれ出し、春子の太ももをつたい、尻を這って流れた。
「お父さんと私……愛し合ったんだよね?」
「うん。痛くなかったか?」
「ううん……、気持ち良かった……」
「なあ、春子」
「うん」
「いつだか、庭の花壇のところに糸瓜(へちま)の実が落ちていたんだが、あれは春子が使ったのか?」
_春子は心臓をどきりとさせて、乳首と股間を手で隠した。
「どこでそんなことを覚えてきたんだ?」
「だって……、したい年頃なんだもの……」
_春子は紳一に嫌われると思った。
「ごめんなさい……、もうしないから……」
_娘が密かに自慰をしていたということに、紳一は興奮をおぼえていた。
_そして部屋をひと通り見渡すと、棚の上に飾られたこけし人形を手に取り、それを春子に差し出した。
「握ってごらん」
「……うん」
_春子の白い手がこけし人形を握った。
「それでいつもしてるみたいに、やってみて欲しい」
「え……、でも……、こんなことする娘でも、お父さんは愛してくれるの?」
「僕は、春子の成長した姿が見たいんだ」
_紳一がそう言ったあと、閉じていた脚をゆっくりひろげていく春子は、ふたたび股の割れ目を紳一の前にさらした。
_熱く濡れたその部分は視線を感じるたびにまた濡れて、春子はこけし人形の頭をそこに擦りつけた。
_ひっかかりがなく、なめらかに滑っている。
ちゃくちゃ……。
ちょくちゅ……。
「あん……うん……んふ……」
_お父さんが私を見てくれていると思うと、恥ずかしいのに、どんどん助平になってしまう。
_幼稚な手つきで陰唇をこねくりまわしているうちに、こけし人形の頭にねっとりした薄い膜がかかった。
_なんということだ。僕は春子の自慰を見つめているだけなのに、手も汚さずに射精しそうになっている。
_女ひとりの営みがこんなにも魅力的だったなんて、僕は今までなにを見て欲情の糧にしてきたのだろうか。
_目の前の春子はうっとりした表情でこけし人形を操り、二枚のひだを押しひろげながら膣の深くまで通していった。
「う……ううう……」
_春子は下腹に力を入れてうめき声を漏らした。
_腹の中を圧迫するほどの太さがある。
_そしてそのままこけしを内と外に向けて出し入れを繰り返した。
_ねちょねちょと音をたてながら春子を犯すこけし人形も、もはや春子をあやすための玩具になっていたのだった。
「春子は、そうするのが好きなんだな」
「おぼえたばかりだから、まだわからない……あっ……ああ……」
_こけしを膣におさめたまま体を横たえる春子。
_気持ちが飛んでしまいそう……。
_ざわつく子宮。
「あん……や……やだ……だめん……」
_意識の先が見えなくなっている。
「ああっ……あんあ……どうしよ……」
_この日、二度目の絶頂が春子に押し寄せてきた──その時、紳一は春子にかぶさり、こけしに絡まった春子の指をほどいて膣から引き抜き、自慰をやめさせてしまった。
_寸止めをくらった春子はとうぜん切ないものを膣に残したままだ。
「僕の嫁になるというのは、こういうことだ」
_そう言って春子を立たせると股をひらかせ、紳一は立ったまま春子を後ろから貫いた。
「んぐっ……ふん……ふん……」
_子宮が揺れて膣は泡立っている。
_玩具とは違う人肌の摩擦に膣がやぶれそうだ。
_このまま気絶しても、目覚めればそこにお父さんがいる。
_そんな思いで春子は体のすべてを紳一に許して、やがて果てた。
_春子の体がぐったりと折れるのを見届けたあと、紳一もまた春子の中でしぶきをあげて果てたのだった。
「それじゃあ、もう一度浴衣の着付けをしてもらってから、美智代と一緒にお祭に行ってくる」
「うん──。そういえば、ほら、変な男がまだこの町に居るのだから、くれぐれも気をつけてな」
「私なら大丈夫よ」その男の人はたぶん佐々木さんだから──、と春子は言いたかった。
_春子が佐々木繁に犯されそうになったあの日以来、繁は深海親子に近づこうとはしなかった。
_だからなのか、春子自身も身の危険を感じることなく今日まで過ごしてきたのだった。
「行ってきます」
_そう言って振り返り新しい笑顔を見せる春子に、一瞬、不安の影がつきまとっているように見えたのだが、紳一はただ見送ることしかできなかった。
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