十五話
_ようやく帯の締めつけから解かれた春子は、「はあ……」と息を吐いて紳一の胸に寄りかかった。
_浴衣から微かにナフタリンの匂いがする。
_大きくはだけた胸元から見える衣も、寝返りをうてば思いがけなくめくれてしまいそうで、それでも春子は着くずれを気にする様子はない。
「お父さん……私……」
「うん?」
「明日からはあんまり言わないようにするから……だから……」
「なんのことだ?」
_今にも泣き出しそうな春子の表情に、その言葉の意味を思いはかろうとする紳一。
「私が好きな人の名前……もういちど言うからね?……」
「……」
「言うよ?……」
_春子の唇がその名を言ってしまうまえに、紳一の唇がそれを塞いだ。
_二人の呼吸が止まる。
_春子は顎を突き出して目を閉じた。
_唇いっぱいにひろがる柔らかい感触は砂糖菓子のように甘く、それは父だとか娘だとかいうものを越えていた。
_重なっていた唇が離れると、春子は深い息をついたあと喉をごくんと鳴らして生唾を飲みこんだ。
_潤んだ黒眼が紳一を見つめている。
「お父さんの気持ちが変わっても……私はずっとお父さんが好き……。だからお願い……好きでいさせて……」
_春子のその言葉に、一瞬、森南つぐみを抱いた日の出来事が紳一の頭をよぎったが、それを忘れようとふたたび春子のまるい唇をむさぼった。
_紳一よりも小さな体をもっと小さく縮ませて、くるぶしを畳に擦らせて身をよじる春子。
_しだいにはだけていく浴衣の裏地に朝顔が透けて見えている。
_その下から浮かんでくる肌はなによりも白く、目に焼きつくほど眩しい。
_一度目に春子を抱いたあの時よりも強く体を掻きあさる。
_紳一の手は春子の体のどこにでもとどいた。
_浴衣の中に男手を割り込ませると、乳房の匂いがするブラジャーと、膣汁の匂いがする下着を下品に剥いた。
_父と娘の唇はまだ重なったままだ。
_ほどなく紳一も自らの着衣を脱ぎ捨て、裸に浴衣一枚の姿になった春子の成長を手指でたしかめていく。
_春子の背後から両腕をまわして、遊び慣れしていないその乳房をわしわしと搾る、左の手。
_猫眼のように鋭く縦長にひらきかけている恥部をいじくりまわす、右の手。
「んむん……ううん……」
_くちづけたまま春子は息を漏らした。
_鳥肌と武者震い、それが性を知った少女の正直な反応。
_春子の体はできあがっていた。
_乳房も、膣も、子宮も、卵巣も、男を悦ばせるために成熟していた。
_それは同時に女の悦びでもあるのだった。
_春子はおもむろに自分の股間に二本の指を突き立てて、切ない表情で膣の中身を掘り出した。
_そこから水をこねる音がする。
「あんぬう……」
_そして膣をさぐったその指を、紳一の鼻先一寸のところに差し出した。
「ほら見て……、お父さんのこと考えると私……こんなに不潔なものが出てくるの……。でも気持ちが良くなってきて……。どうしてかな……」
_紳一は躊躇なくその指を口にふくんで、糸が垂れる愛液をすすった。
_春子の生汁は良い塩梅で紳一の太い喉をズルリと下りていった。
_そのあいだも春子への愛撫はやまない。
_噴き上がる性欲は射精すれば少しはおさまるかもしれない。
_けれどもそれで終わるのは惜しい。
_こんなにも明るい陽光の中で春子の白肌を見られることなど、この先何度あるかわからない。
_そんな思いが紳一をあおっていた。
_初々しい乳の先から滲み出る汁。
_わし掴みにすると指を押し返す乳房。
_乳首と唇はおなじ色に染まっている。
_だとしたら春子の女々はどんな色をしているのだろうか。
_紳一は春子の片脚を抱き寄せて、すねから指先までを舐め上げた。
「うあん……」
_みじかい喘ぎが漏れる。
_紳一の左腕と春子の左脚が組み合って、春子の下半身が吊りあがった。
_そこは豊かに肌が盛り上がり、二重瞼(ふたえまぶた)のようにくっきりとシワをつくっていた。
_紳一の股間はばきばきと起って、春子を撃とうとしている。
「恥ず……しい……」
_小声で恥じらう春子。
_花化粧の浴衣と帯は敷き布団のようにひろがって、その上では春子が陰唇の花を咲かせている。
_受精するために甘い蜜を匂わせて、女の体からしか出ないものを出していた。
_おそらく僕は、春子に子どもを産ませるまで春子の膣穴をなぶりつづけてしまうだろう。
_しかしどうにも歯止めがきかないのだ。
_しばらくは色恋などというものから縁遠く暮らしていたと思っていたら、こんなにも近くに縁結びの相手がいた。
「春子──」
_愛しいその名を呼びながら、くの字に曲げた指を濡れた裂け目に挿していった。
_その指を締めつけるように膣がきゅっと縮まる。
_そこは熱くて、ねばねばして、肉が溶けているのではないかと思うほどやわらかい。
「はっ……あっ……」
_あいかわらず可愛らしい反応をみせる春子は、若さをはじけさせて快感を楽しんでいるようだ。
_紳一もまた男であることを楽しみ、女である春子の膣を酔わせてしまいたいのだった。
「お父さ……あん……」
_紳一の指は春子の深いところも入り口あたりも指圧している。
_指の根元に愛液の指輪ができている。
_二本目の指も飲んでみるか?と、紳一が二本そろえた指を見せると、春子は下唇を噛んでうなずいた。
_年相応のごつごつした関節の太い指が春子の中に飲まれていって、膣口は指二本分の大きさにふくらんだ。
_春子の口が「あ」と「う」のかたちを繰り返して、声もなく喘いでいる。
_ほじくる穴から潮水が溢れ出し、雨降らしの愛撫がつづいた。
_それから二人は姿勢を立て直して、春子は柱に耳をあてて寄りかかり、くびれの下の腰骨を後ろから紳一が抱え、そこに向かって自分の腰をしゃくり上げた。
_その時、父と娘のつなぎ目から、田んぼの泥をこねるような音が聞こえてきた。
ねちょくちゅ……。
くちゃくちゃ……。
「いい……ひいん……」
_体中から火花が散る。
_ばちん、ばちんと、体と体がぶつかり合う音。
_春子の膣が紳一の男具をしごく音。
_そしてそれらの音をかき消す太鼓の音が聞こえてきた。
ドドン!ドドン!ドン!
ドドン!ドドン!ドン!
_暑気払いの太鼓打ちの一行が、家の表のほうを通り過ぎていく。
_紳一と春子はつながったまま体を入れかえ、足を組みかえ、太鼓の音に気持ちを高めていくのだった。
_紳一が力いっぱいに春子を撃てば、障子戸ががたがたと鳴った。
_子宮が……下りてくる……。
_春子がそう思ったとき、耳の通りと鼻の通りが良くなって、今までに感じたことのない震えに襲われた。
_快感に顔を歪めたまま春子はくずれ落ち、排卵の気配のないその中へ、精液のかたまりを吐き出す紳一。
_太った竿は何度も痙攣して、最後の一滴までも春子の中に出しつくした。
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