何も変わらない穏やかな朝だった。
妻は、いつものように台所に立ち、家族のために朝食を作った。
心なしか、浮かれて見えたのは、夕べのことがあったからだろう。
降って湧いたように突然性欲が蘇り、うやむやのうちに肌を重ねられて、激しく突き上げられた。
厳しく叱責されることもなく、その後は、心地よい満足感を覚えながら、穏やかな眠りにつくことができた。
「素敵だったよ・・・。」
そう言って、嬉しそうに笑っていた。
妻の中に出しきったなど、何年ぶりのことだったか。
自分は、重ねたティッシュを股間に挟んだだけで、すぐに私のものを拭ってくれた。
丁寧に拭い、力なく萎れたものを手のひらに弄びながら、大事そうに何度もキスをした。
始末が終わると、ベッドの下に落ちていたパンツを拾い上げ、それを私に穿かせてくれた。
いつも、そうだった。
終わると、そうやって、いつも妻は、私にパンツを穿かせてくれるのだ。
何も変わらない。
以前と、まったく同じ優しさを持った妻がそこにいた。
「またしようね・・・。」
背中を向けることもなく、私と向き合ったまま、目を閉じた。
すぐに寝息が聞こえて、妻は、深い眠りの中に落ちていった。
おどけなさを匂わせる寝顔は、今も昔も変わらなかった。
まんじりともせず、しばらくの間、眺め続けた。
どんなに眺めていても飽きることはなく、そこには、いつもと変わらぬ可愛らしい寝顔があるだけだった。
ぐっすりと深い眠りに落ちていった妻とは、対照的に、私は、なかなか眠ることができなかった。
目を閉じても、すぐに、苦い思いに胸を掻きむしられ、幾度となく目が覚めた。
目を開くたびに、それまで頭の中で繰り広げられていた映像が、はっきりと思い出され、やりきれない気持ちに、泣きたいほどの敗北感を覚えてならなかった。
束の間の浅い眠りを幾度となく繰り返し、その間も、多くの夢を見た。
すべての夢に妻が現れ、どの夢の中でも、妻は笑っていた。
見知らぬ山の中で、顔のない男に犯されながら笑い、見覚えのない部屋で、屈強な男たちに尻を犯されては、また笑う。
大きな洗面台の上に乗せられ、見せつけるように膝を開きながら放尿している時でさえ、彼女は、嬉しそうに笑って
いるのだ。
どの笑顔にも憂いはなく、心の底から喜んでいるようだった。
そんな夢ばかりを見てしまったら、安眠などできるはずもない。
目が覚めるたびに、股間に激しい疼きを覚えた。
明け方近くには、どうしても我慢できなくなって、もう一度妻を襲った。
やるせない気持ちとは裏腹に、身体は妻を欲しがらせて仕方なかった。
上に乗っていっても、妻は、驚きもしないで、すぐに受け入れた。
大きく足を聞かせ、じっ、と中を覗き込んだ。
そこだけが無性に欲しくてならなかった。
夕べから気付いていたことだが、妻のデルタは、恥丘の上に綺麗な正三角形を描いているだけで、性器の
周囲は、まったくの無毛だった。
「剃られたのか?」
毛根の痕さえ見あたらない、滑らかな肌を不思議に思い、見つめながら訊ねた。
「それ?レーザーで永久脱毛したの。ブラジリアン脱毛って言うのよ。どうせだから、お尻までぜんぶしてもらっちゃった。」
事も無げに、答えていた。
「奴らに言われて、やったのか?」
おそらくそうだろうと思った。
性器を指で押し開いて、奥まで覗き込んだ。
まだ、何かをされているのではないかと、気が気ではなかった。
「うん。あの子たちがお金出してくれたの。その方が綺麗に見えるからって。どう?なかなか可愛いと思わない?」
おどけたように笑っていた。
罪の意識などまるでなかった。
性毛は綺麗に処理されていたが、なぜか脇毛は、ほとんど処理がされていなかった。
几帳面な妻にしてはめずらしく、それもまた、私に不信を抱かせた。
体毛の濃さは、それほどでもないが、はっきりとわかるほどに黒い茂みが脇の下に残っていて、柔らかい毛並みを指の先に確かめた。
「どうして脇の下は剃らないんだ?ここも奴らに言われて残してるのか?」
妻の答えは、しごく簡単なものだった。
「そうよ。この方がいやらしく見えて興奮するんですって。将来は映画を撮りたいって子がいてね、その子が教えてくれたの。」
そいつの言ったことは、間違っていない。
確かに、あどけなさの残る妻の顔に、脇毛は不釣り合いだが、顔が幼く見えるだけに、脇の下の黒い茂みが、何とも言えない淫らな印象を与えて、見事に情欲をそそられる。
妻を寝取った赤の他人から、新たな魅力を教えられたのだ。
自分ができなくなってからは、ほとんど妻の裸を見たことはなかった。
だらしなく下着姿のままでいたり、ノースリーブのシャツでも着ていれば、すぐにでも気付いたのだろう。
しかし、妻は、下着姿で家の中を歩き回ることはなかったし、いつも袖のあるシャツを着ていた。
私の目に触れないように隠していたのだ。
いや、隠さなくても、おそらく気付きはしなかった。
寝取られたと気付いて、慌てて執着し始めたのだ。
それまでは、妻の身体に興味を示そうともしなかった。
見ようともしていなかったのだ。
そんな男だから、奪われる。
まったく気付きもしないで、妻を弄ばれることになる。
やりきれない思いを胸に抱えたまま、妻に挑んでいった。
どんなに乱暴にしても、妻は、文句も言わなければ、嫌がることもなかった。
静かにまぶたを閉じて、されるがままになっていた。
「パパ、気持ちいいよ・・・。」
「もう・・あいつらのところへは行くな・・。」
心情を吐露するようにつぶやいた。
「うん・・・。」
甘えた声で頷いた。
それが、その場限りの嘘であることなど、わかりきっていた。
「お前は、俺のものだ。ずっと俺だけのものだからな。」
「うん・・・。」
「毎晩してやる。毎晩虐めて、思いっきり悲鳴を上げさせてやる。」
「うん・・。」
なし崩しに許すつもりもなかったが、あいつらから奪い返したい気持ちの方が、はるかに強かった。
もう一度、この手で妻を取り返し、できることなら、自分の精液で浄化したいとも思っていた。
自分の身体さえ元に戻ってくれれば、毎晩裸にして罰を与えてやることだってできる。
しかし、そんな私の気持ちを見逃かすように、身体は見事に裏切ってくれた。
途中から、まったく言うことを聞かなくなり、あっという間に、だめになったのだ。
妻が口でしてくれたが、二度と力を蘇らせることはなかった。
「大丈夫よ。また、すぐにできるようになるって。」
妻の慰めが、惨めに聞こえてならなかった。
虐めてやるどころか、役にも立たない。
途方もない惨めな気持ちを抱えたまま、睡眠不足の朝を迎えることになった。
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