「あ-あ、なんか眠くなっちゃった。遅いから続きは、明日にしよう。私、お風呂に入ってくるね。」
絶句して、言葉を失ってしまった私を眺めているのに飽きたのか、妻は、大きな欠伸をすると、そう言って、居間を出て行った。
すぐに浴室の扉が開く音がして、妻の気配が消えた。
しばらくは、ソファにうな垂れながら、ぼんやりと考えていたが、頭の中には何も思い浮かびはしなかった。
人間とは、極限状態に置かれると、考える作業をやめてしまうものらしい。
身体が宙に浮いているようで足に力が入らず、ようやく、ふらっ、と立ち上がると、よたよたと2階へ向う階段をのぼっていった。
寝室の扉を開け、綺麗に整えられたベッドの上に、倒れ込むように横になった。
柔らかい羽毛布団を、体に巻き付け、背中を丸めて壁を見つめた。
暗闇の中で、しばらく何もない壁だけを、ただ、じっと見つめ続けた。
目を閉じると、裸になって弄ばれる妻の姿が、まぶたの裏に浮かんでならなかった。
乳房を掴まれ、3人の男に抱かれながら、妻は嬉しそうに笑っていた。
苦い思いが込み上げてきて、ひたすら壁を見つめるしかできなかった。
やがて、とんとん、と階段を上がってくる足音が聞こえ、慌てて目を閉じた。
扉が開いたと思ったら、不意に淡い光が部屋の中に灯り、「寝ちゃった?」と、声を掛けてきた。
黙っていると、妻は、ドレッサーの前に座り、寝る前の支度に掛かったようだった。
神経が張りつめていたせいか、乳液を肌に馴染ませる音や、髪をとかす音が、はっきりと聞こえてくる。
聞くつもりもないのに、耳は研ぎ澄まされ、妻の一挙一動が手に取るようにわかってしまうのだ。
なぜ、平然としていられる?
なぜ、罪の意識を感じない?
なぜ、泣いて謝らないのだ?
心の中で念じてみても、妻は、何食わぬ顔だ。
やつれきった神経を逆なでするように、研ぎ澄まされた耳の奥には、妻の口ずさむ、途切れ途切れのかすれた声が聞こえていた。
なぜ鼻歌など歌えるんだ?
すぐそこにいる女が、まったく理解できず、まるで自分が異次元にでも落とされたかのような気分にさえなった。
おそらく、こいつは、恐ろしいバケモノだ。
俺が愛した女は、この禍々しいバケモノに喰われてしまった。
きっと、キャンプに行って、山の中で喰われてしまったのだ。
妻の体は、乗っ取られた。
乗っ取ったこいつは、何食わぬ顔で帰ってきた。
私が気付かないのを良いことに、やりたい放題だ
あのおとなしかった妻に、乱交などできるわけがない。
こいつは、俺の妻なんかじゃない!
埓もないことを考えたところで、どうにもなりはしない。
部屋の灯りが落とされ、妻が隣りに潜り込んできた。
何も言わずに、ベッドに身を横たえていく。
いつもと同じだ。
何も変わらない。
夜のパートに行くと、妻は、必ず深夜に帰ってきた。
先に寝ていた私を起こさぬように、そっと布団をめくって、隣りに潜り込んでいた。
私を気遣い、絹ずれの音ひとつ気にして、静かにベッドの中に入ってくるのだ。
まったく同じことをしている。
やっぱり、こいつは私の妻なのかもしれない。
咳払いをして、寝ていないことを教えた。
妻は気付いたようだが、何も言わなかった。
目を閉じても、眠れはしなかった。
どれだけ時間が経ったろうか。
時折、妻は寝返りを打っていた。
かすかな寝息が聞こえたかと恩ったら、すぐに小さなため息に変わる。
平静を装っても、眠れないのは、妻も同じらしい。
「なあ・・・。」
背中は向けたままだった。
妻の顔を見るつもりはなかった。
「え?」
妻は、こちらを振り返ったらしい。
「どうして、3人なんだ?」
一人なら、まだわかる。
抱いてもらいたいと願うほど、想いを寄せる人間は、普通なら一人だ。
だが、妻が相手をしているのは3人だ。
しかも、その3人を一度に相手にしている。
「どうして、って言われても・・。う-ん・・楽しいから?」
「楽しい?それだけか?楽しみたいから乱交なんかしているのか?」
無理矢理されているなら、まだ救われた。
「最初は、そうじゃなかったけど・・・。なんか、いつの間にか、そんな風になっちゃったのよね・・。」
「どうして?」
「ん?ああ・・。うんとね・・サトシ君って子がいるんだけどね・・。」
「サトシ?」
「うん。ほら、パパがキャンプに送ってくれた時に、背の高い子が一人だけいたでしょ?あの子。」
「ああ・・。」
そう言えば、一人だけ頭の飛び抜けてた奴がいたな。
「最初はね、あの子だけだったの。」
「そのサトシ君だけだったのか?」
「うん。最初は、彼だけだったんだけどぉ・・。あの子あまりお金がなくてね。バイトするくらいだからお金なんてあるわけないよね。それで、そのサトシ君がホテル代を浮かすために友達のマンションでしようって言い出したの。それがきっかけ。テッペイ君っていう男の子がいて、サトシ君の友達なんだけど、そのテッペイ君のお部屋でしてたら、我慢できないってテッペイ君まで混ざってきちゃって・・・、それで、サトシ君とテッペイ君には、もうひとりシュン君っていう友達がいんだけど、その子も、そこにいたから、ひとりだけ仲間はずれは可哀想だって、その子も入って来ちゃったの。それで3人でエッチすることになっちゃって・・・。理由って言えば、それが理由かなぁ・・。」
我慢できなかったからだと?・・。
仲間はずれは可哀想だったからだと?・・・。
最初から計画的だったのだ。
鼻から3人は、妻を輪姦するつもりだったのだ。
妻は、まんまとしてやられた。
しかし、拒まなかったのだ。
こいつも、よくそれを承知したものだ。
「他の奴が見てる前でセックスなんて、よくできたな。」
思いっきり嫌みを込めて言ってみた。
「そりゃ最初は、すごく嫌だったよ。でも、お金ないって言うし、サトシ君とも離れたくなかったしぃ・・・。」
「それで、言いなりになったわけか?」
「うん。まあ、そんなところ・・・。」
「言いなりになるほど、そのサトシって奴を愛してるわけだ。」
「うーん・・・愛してる・・とは、違うような・・。パパみたいに愛してるとかじゃなくて、なんて言うかぁ、一緒にいるとすごく楽しいって言うか。大事にもしてくれるしね。」
「大事にする奴が、自分の女を他の男に抱かせるか?」
「それは、仕方ないよぉ。だって、成り行きでそうなっちゃったんだもん・・。」
成り行きじゃねえよ・・。
「俺や子供たちのことは、考えなかったのか?」
一番の核心だ。
「考えてたよぉ!だから、ばれないようにうまくやってたんじゃない?私だって、パパに知られたら嫌だったよ。それをあの奥さんが、しゃべっちゃったから、ばれちゃったんでしょ?ほんと、余計なことしてくれるよね。まったく迷惑な話よ。」
人のせいじゃねえだろ・・・。
ん?そう言えば・・・。
「そう言えば、あの奥さん、今日行ったんだろ?お前、なんか変なこと言ってなかったか?いっぱい虐めたとか、なんとか?」
「うん。なんか、私に彼氏取られたと思ってたらしくて、旦那さんにしゃべっちゃった、なんて得意そうに言うから、サトシ君たちに言って、思いっきり虐めてもらっちゃった。」
「なにをしたんだ?」
「へへ・・、ゴム付けないで生でしてもらったの。みんな、中出しして、すごいことになってたよ。彼女、悲鳴上げて泣いてたもの。5人もいたから、最後は、身体中真っ白になってた。」
嬉しそうに笑っているのが、背中越しにもわかった。
「5人!?さんに・・いや、奥さんの彼氏がいたから4人か・・。4人じゃなくて、5人もいたのか?5人で中出しって・・・。大丈夫なのか?妊娠とか、やばくないのか?」
意外な数の多さに驚いた。
5人にもやられたら、たまったものじゃなかったろう。
ただの息抜きが、とんでもないことになったものだ。
「やばいんじゃない?知らないけど。」
知らないって・・・友達が無理矢理妊娠させられても関係なしかよ・・・。
なんて女だ・・・。
「そう言えば、お前は大丈夫なのか?」
「ん?なにが?」
こいつも、その5人にやられたはずだ。
ずっと気がかりだった。
「妊娠だよ。」
「ああ・・。大丈夫よ、ちゃんと避妊してるもん。」
「ピルでも飲んでるのか?」
今夜探すつもりだったが、もう、その必要もない・・。
「違うよ。避妊リング。ピルなんて毎日飲まないといけないから面倒くさいし、それに、太っちゃうでしょ?」
「避妊リング?いつの間にそんなの付けたんだ?」
「ずっと前だよ。サトシ君たちがお金出してくれたの。でも、ほとんどテッペイ君のお金だったみたいだけど。」
「あいつらが金を出して、お前は避妊リングを付けたのか?」
少なからず動揺していた。
そこまでしていたとは、思っていなかった。
「うん。どうしても生でしたかったみたい。でも、妊娠しちゃったら、ばれちゃうし、赤ちゃんできたら、しばらくは会えなくもなっちゃうでしょ?それで、どうせだったら、長く使える避妊リングがいいってことになったの。」
しばらく言葉が出なかった。
妻の中に、ずっと精液を撃ち込みたかったから、避妊をさせた。
しかも、長く関係を続けたかったから、避妊リングを選んだ。
幾らかは知らないが、避妊リングは、結構な値段がしたはずだ。
そんな金を出してまで、人妻を汚して弄びたがった。
そして、妻は・・・それを許した。
奴らの精液で真っ白にされたという奥さんの姿が目に浮かんだ。
それはすぐに妻の顔に変わっていった。
妻も同じだ。
一時の快楽を得るために、自分の身体に異物を埋め込み、妊娠しない身体になって、とことん男たちに与え続けている。
奴らの精液で真っ白に汚されることを選んだのだ。
「ねえ・・・こっち向いてよ・・・。」
そうまでして快楽を欲しがるこいつは、いったい何なのだ?
やり場のない怒りに身体中の血が沸騰してならなかった。
怒りに我を忘れて、この女を殺してしまいたい衝動に駆られて仕方なかった。
不思議なことに奴らの精液にまみれる妻を想像していたら、下半身に力が漲っていった。
喩えようもない疼きが下半身に広がり、それはどんどん加速していった。
「ねえってば・・・。」
不意に起き上がって、妻の身体に覆い被さった。
着ていたパジャマを胸元から引き裂き、たわわな乳房を露わにした。
ブラが嫌いな妻は、案の定していなかった。
手のひらに余るほどの豊かな乳房を、力の限り思いっきり握り締めた。
力を漲らせたペニスが、それを命じて、正気に戻ることを許さなかった。
かつてないほどにペニスは勃起して、嫌というほど気持ちは高ぶり、感情は攻撃的にもなっていた。
妻は、顔を歪めたものの、私の下半身に力が漲っているのを見て、口元に微笑さえ浮かべた。
握りしめた手のひらに伝わる柔らかさに、泣きたいほどの感動を覚えて、一瞬我を忘れた。
強引に下のパジャマも下着ごと脱がせてしまうと、足首を掴んで引き裂かんばかりに大きく拡げていった。
綺麗に手入れされたデルタが、射るように目に飛び込んできて、真っ白な肌との見事なコントラストが、ひどく胸を締めつけてならなかった。
目は釘付けになったように、妻の性器から離れなかった。
ここに奴らは撃ち込んでいた。
こんなに美しい性器を大勢で汚し抜いた。
奴らの精液に塗れているのが、ありありと目に浮かぶようだった。
ここは、私だけのものだったはずだ。
ずっと、私だけのものだったはずなのだ!
自分で握り締めて、愛撫もせずにあてがった。
妻の手が急くように伸びてきて、位置を合わせていく。
何とも言えない息苦しさに、顔を歪め、大きく息を吸い込んだ。
足首を掴んで拡げながら、眼下の妻を睨みつけると、私は、ゆっくりと味わうかのように、突き刺していった。
「ああ・・・。」
白いあごを仰け反らせ、妻がシーツを握り締めていく。
まったく濡らしてもいないのに、妻の膣は引きつりもしないで、飲み込んでいった。
ペニスに伝わる信じられない温かさ。
そして、信じられない気持ちよさ。
「パパ・・・すごいよ・・・。」
ゆっくりと動いた。
すぐに濡れてきて、さらに気持ちよさを訴えてくる。
石のように硬くなったペニスが、奥まで届いているのがわかった。
突き殺してしまいたかった。
徐々に速度を速めて、腰を叩きつけていった。
「ああっ!すごいっ・・・。」
耐えられないかのように、細い腕を背中に巻き付け、妻が胸を合わせてしがみついてくる。
頭を抱えて、長い髪を乱暴に掻きむしった。
激しくベッドが揺れ、ギシギシと軋む音が部屋中に響いても、気にもならなかった。
この温かさを奪う奴は許さない。
この気持ちよさを奪うことなど、誰にもできない。
ベッドが壊れるほどに軋み、壁に当たって、ゴツゴツと音を立てた。
向かいの部屋で寝ている子供たちの寝姿が、一瞬、脳裏をよぎった。
お前たちの母親を突き殺してやる。
こんな女は、殺してもかまわない。
こんな母親なら、いない方がいい。
狂ったように腰を叩きつけ、折れんばかりに細い身体を抱きしめた。
「すごい・・・すごいよパパ・・・・。」
妻は、譫言のように繰り返していた。
昔は、ずっとこんな声を、このベッドの上で聞かせてくれた。
今は、私の知らない奴らのために、聞かせている。
耐え難い屈辱感に、さらに激しく責めたてた。
射精感がつのり、それでもかまわず、思いの丈を知らしめるかのように動き続けた。
「ああっ!!」
馬鹿みたいに膨らみ、妻が悲鳴を上げる。
なにもわからなくなって、頭の中が真っ白になったと思ったら、一番深いところで果てていた。
ドクドクと呆れるほどに吐き出し、それに合わせるかのようにビクビクと身体を震わせ、荒い息を吐きながら、一生懸命しがみついてくる妻が、なぜかこの時だけ、無性に愛しくてならなかった・・・。
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