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秘密〜抗えない快楽〜

カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:SM・調教 官能小説   
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1: 秘密〜抗えない快楽〜
投稿者: とんがり帽子
第三章
​第一項
​ 薄汚れたカーテンの隙間から、容赦のない朝の光が四畳半の部屋に差し込む。
 晴人は、ひどく乾燥した喉の痛みと、全身を襲う気だるさに顔を歪めながら目を覚ました。昨夜遅くまでスマートフォンの画面を凝視し、歪んだ妄想のなかで自慰を繰り返していたせいで、脳の奥が重く鈍く痛む。 

​「……はぁ、また……こんな時間か……」
​布団の上で這いつくばるように起き上がり、晴人は乾いた唇を舐めた。スマホの画面を確認すると、アプリの通知は静まり返っており、昨夜自分が送りつけたメッセージには何の返信もなかった。
 
 現実の彼は、今日もまたあの息苦しいカラオケ店に行かなければならない。店長に睨まれ、ただ事務連絡をされ、客からは気味悪がられるだけの日常が待っている。
​(……行きたくない。でも、行かなきゃ……)

 ​底知れない無力感と、誰にも受け入れられない孤独感に胸を締め付けられながら、晴人は重い身体を引きずって身支度をするのだった……。


 ​同じ頃、アパートのベッドの上で、桜は天井を見つめたまま固まっていた。
昨夜、自らの手で何度も再現し、快感の淵に溺れたという事実は、朝の冷たい空気の中で、言いようのない自己嫌悪と絶望となって彼女の心を押し潰していた。

​(…どうしてあんなことを……。あの医者にされたことの記憶で、自分を……っ)
​自分の身体が、「淫らな快楽」に染まっていく。
 そこから逃れるように、桜は震える手で服の袖に腕を通した。

 ​肌の表面がヒリヒリと熱を持っている。誰も見ていないはずなのに、まるで自分のすべてが他人に丸裸にされているような、異常な過敏さと羞恥心が彼女を支配していた。


第三章
​第二項
 夜勤からそのまま日中へとシフトがスライドしたその日、店内には重苦しい静寂が漂っていた。
​ 
 カウンターの端に立つ桜は、今日はどこか様子がおかしかった。
 普段から口数が少なく、目線を合わせない彼女だったが、今朝は顔色が異様に青白く、時折、自分のスカートの裾を必死に引っ張っていた。彼女の佇まいは尋常ではない緊張感を孕んでいた。

 ​少し離れた場所でドリンクバーの補充を行っていた晴人は、そんな桜の姿を、いつものように盗み見ていた。

​(……今井さん、なんだか……いつもと違う……?)
 ​オドオドとしたところはいつも通りだが、今日の桜からは、周囲を寄せ付けないような、あるいは何か別の秘密に怯えているかのような、異様な湿り気を帯びた色気が漂っているように晴人には感じられた。
 もちろん、それが整骨院での出来事によるものなど、晴人が知るはずもない。しかし、日頃から女性の身体に対する飢えと歪んだ妄想を膨らませていた晴人のセンサーは、桜の放つ微かな「変化」を本能的に嗅ぎ取っていた。
​(……もしかして、あの人も……何か、隠してる……?そんな訳ないか………)

​ 晴人の胸のなかで、黒い好奇心と、言いようのない独占欲がうごめき始める。
同じ空間にいながら、互いに誰にも言えない秘密の快楽と、崩れかけた精神の均衡を抱えたまま、二人は言葉を交わすこともなく、静かにすれ違い続けていた。


第三章
​第三項
 ​整骨院の重い診察台から降りた桜は、フラフラとする足取りでシャワー室へと向かいシャワーでテカるオイルを流すと私服に着替えて外へと出た。

 あれほど強烈な羞恥と快感に蹂躙された肉体は、今もなお火照りを帯び、肌の表面や下半身の奥底で奇妙な疼きを残している。
 自己嫌悪で胸が引き裂かれそうになりながらも、その肉体は現実の冷たい風に触れるたびに、さきほどの生々しい記憶を呼び起こしてしまう。
 
 逃げるようにアパートの自室に戻り、ベッドに倒れ込んだ桜は、誰にも言えないこの歪んだ疼きをどう処理すべきか分からず、ただ震える手でスマートフォンを手に取った。


 現実の苦痛から目を背けるように彼女が開いたのは、あのアプリ『アブノーマルな関係』の画面だった。

 ​アプリを開いた桜の目に飛び込んできたのは、静かな個人チャットではなく、深夜のオープンチャットの賑わいだった。
 そこでは、アプリ特有の匿名性を盾にした男たちが、他者の羞恥を肴にして欲望をぶつけ合っていた。
​『ID:狂犬ゼロ:おい、今日のタスクは済ませたか? 画面の向こうで震えてるメスどもに、もっと恥をかかせてやれよ』
『ID:黒蜘蛛:いいですねぇ。プライベートチャットで、新人らしい女に「画面の前で自分の指を突っ込め」って指示してるとこっすよ。泣きながらやってる声がたまらん……』
『ID:meat_ball:おい、隅っこにいるやつ、最近ずっとROMってねえか? 』
​画面に流れる露悪的で卑俗な言葉の数々。
何百人といるアプリ使用者の掃き溜めのような場所で、その他大勢のモブの一つとして、いつの間にか男たちの標的に挙げられ始めていた。

 桜は心臓が凍りつくような羞恥を覚え、すぐにでもアプリを閉じようとした。
 しかし、整骨院の診察台で味わわされたばかりの圧倒的な陵辱と快感の記憶が、この恐怖のなかに奇妙な熱を呼び起こす。
男たちに品定めされ、服を剥ぎ取り、命令される――その悍ましい光景が、今日自分が受けてきた屈辱と不気味に重なり、桜の股間を濡らしていく。
(……っ……ダメ、こんなもの見てちゃ……!)
 頭ではアプリを消さなければと分かっているのに、指先は恐怖と、どこか底知れない背徳的な興奮に縛られたように、画面から離れられなかった。
オープンチャットの画面をスクロールする桜の瞳孔が、恐怖と微かな興奮で大きく見開かれていた。
スレッドの勢いは止まらない。自分をやり玉に挙げられたのを皮切りに、チャットルーム全体の狂気はさらに加速していく。
見知らぬ男たちが、匿名という安全な隠れ蓑をいいことに、画面の向こうにいるはずの女たちへ次々と下卑た命令を投げつけていた。

​『ID:狂犬ゼロ:ほら、震えてねえで今すぐ自分の指を突っ込んで実況しろよ! できなきゃアカウント凍結して晒すぞ!』

『ID:野獣先輩モドキ:いいぞもっとやれ! 女は泣きながらイッてればいいんだよ!』

『ID:シロウトハンター:おい、他の女どももROMってないで指入れろ! 今すぐその様子を文字で実況しろ!』

​その暴力的な命令の連鎖に呼応するように、別のスレッドでは、匿名で参加しているはずの女たちの中から

「……ぁ、あっ、いれてます……」
「やめて、そんなに見ないで……」
といった羞恥に満ちた自慰の実況書き込みが次々と流れ込み始めた。

 男たちはそれを肴にさらに興奮し、画面全体が、無数の人間の歪んだリビドーがぶつかり合うドロドロとした濁流と化していく。
 
 ​その凄まじい熱量は、郊外の暗いアパートの自室で画面を見つめていた桜の身体をも容赦なく貫いた。
(みんな……、あんなに簡単に、自分の体を……っ)

 整骨院の診察台で医師に味あわされた強制的な絶頂の記憶が、画面を流れる生々しい自慰の文字と混ざり合う。
拒絶しなければならないはずなのに、桜の皮膚は熱を帯び、下半身の奥底がじくじくと濡れ始めていた。
「……ぁ、っ……うそ……」
震える指が、無意識のうちに自分の太ももの間に滑り込む。桜の指先は、画面の向こうの群れに促されるように、自らの秘部をゆっくりと濡らしていくのだった。


​同じ頃。
街の反対側にある薄暗い四畳半の部屋で、晴人もまた、その地獄のようなオープンチャットの画面にかじりついていた。
​『ID:黒蜘蛛:おいリード、お前も見てねえで自分のチッポ握って実況しろよ! 童貞のくせにビビってんじゃねえぞ!』

 ​野次馬の一人にそう投げかけられ、晴人の心臓が激しく跳ね上がった。

 現実のカラオケ店では誰からも見向きもされず、皆から冷ややかな視線を向けられるだけの自分が、この混沌としたアプリの中では、数多の男たちと同じ「群れの一部」としてそこに存在している。

 画面を埋め尽くす女たちの喘ぎ声や、男たちの下卑た命令の文字が、晴人のなかに眠る歪んだ征服欲を激しく刺激した。

​(……ボクも……、男だ……!)
​現実の無力感を振り払うように、晴人はズボンに手を突っ込み、その十八センチの巨根を鷲掴みにした。

 チャットルームに飛び交う無数の「自慰の指示」と、画面のどこかにいるかもしれない「自分に合った相手」という存在を脳裏に焼き付けながら、晴人は荒い息を吐き出し、狂ったように自身の肉棒をしごき始める。

 部屋の隅の暗闇の中で、誰に見られることもなく、ただアプリの画面が放つ青白い光だけを頼りに、晴人は濁った熱を吐き出そうと必死に手淫を続ける。

 
 アプリの画面が放つ狂熱と、それぞれの部屋で自らの肉体に溺れた夜が明けても、現実の時間は容赦なく日常を運び去っていく。


第三章
第四項
 午後からのシフトに入った桜は、カウンターの端でうつむき加減にレジスターを拭いていた。昨夜の激しい疲労と、チャットの光景が脳裏から離れないせいで、彼女の顔色は異様に青白い。普段から口数が少なく影の薄い存在だったが、今日の桜には、周囲に触れられることを拒むような異様な緊張感と、どこか湿り気を帯びた空気がまとわりついていた。
​「……今井さん、レジ周りの補充、終わったら次トイレ掃除ね。のろのろしないでよ」
​冷ややかな声とともに背後を通り過ぎた先輩だった。
二つ年上の先輩は桜を一瞥すると、露骨に面倒くさそうなため息をつき、スタッフルームへと消えていく。その冷たい視線や、職場の無機質な空気すらも、今の桜の過敏になった皮膚にはまるで直接触れられているかのような羞恥となって跳ね返ってきた。

 制服の布地がわずかに肌に擦れるたび、昨日、整骨院の診察台で味わわされたオイルの感触や、アプリの中で群れが吐き出していた生々しい自慰の文字が蘇り、桜は胸元を小さく押さえて身を震わせる。
  
 ​少し離れたドリンクバーのカウンター付近では、晴人がその様子を怯えたような、しかしどこか執拗な視線で盗み見ていた。
​(……今井さん、今日も……なんだか変だ……)
​現実の職場では皆に冷遇され、誰からも気味悪がられるだけの晴人だったが、昨夜アプリのオープンチャットで味わった「狂騒の快楽」の余熱が、彼のなかに奇妙な歪んだ自信と飢えを残していた。
カウンターの向こうでオドオドと怯える桜の姿に、昨夜画面の向こうで群れに晒されていた無数の女たちの影を重ね合わせ、晴人は誰にも気づかれないようにゴクリと唾を飲み込む。
 
 ​同じ空間にいながら、互いに昨夜の深い闇を引きずったまま、二人は言葉を交わすこともなく、ただそれぞれの恐怖と歪んだ疼きを隠して、沈黙のなかに立ち尽くしていた。


第三章
第五項
 夜の帳が下り、それぞれの静かなアパートの部屋に戻った桜と晴人は、再びアプリ『アブノーマルな関係』の明かりの中に身を沈めていた。

 ​今夜のオープンチャットで立ち上がっていたのは、「これまでに経験した、誰にも言えないアブノーマルな体験」を語り合うスレッドだった。画面の向こうで、匿名を隠れ蓑にした男たちが次々と歪んだ告白を書き込んでいく。

​『ID:変態紳士:電車の痴漢なんて序の口だな。こないだ、知り合いの人妻を脅して、首輪をつけて散歩させてやったわ。あの屈辱に満ちた顔、最高だったぜ』
『ID:ナイトメア:俺は自分の部屋に隠しカメラを仕掛けて、泊まりに来た妹の寝顔どころか着替えまで全部録画してやった。バレたらどうなるか想像するだけで抜けるわ』
『ID:肉便器コレクター:そんなの甘いね。俺は病院の診察室に忍び込んで、麻酔で眠らされた患者の体に落書きして遊んだことあるぞ』

 ​倫理観の微塵もない、吐き気をもよおすような異常体験の数々が、チャットの画面を流れていく。

 桜は青ざめた顔でその画面を見つめていた。昼間の職場で年上の先輩に冷たくあしらわれ、自分を押し殺して働いた現実の苦痛。その逃げ場としてこのアプリを見ているはずなのに、画面の向こう側の男たちの悪意に、心臓が凍りつくような恐怖を覚える。
​そのとき、チャットの流れの一角で、妙に物腰の柔らかい、しかし底知れぬねっとりとしたトーンのメッセージが放たれた。

​『ID:ミッドナイト:皆さん、すごい体験をされてますね……。でも、そういう刺激的な話を聞いていると、なんだか純粋そうな人がどんな秘密を隠しているのか気になってしまいます。……例えば、いつも静かにROMっている「ララ」さん。あなたはどうですか? 何か、他人には言えないような『アブノーマルな体験』、この部屋の皆さんに教えてくれませんか?』
​突然名指しされ、桜は息を呑んだ。
(……っ! どうして、私?……)

 ​逃げ出したいのに、画面の前から指が動かない。他の男たちも「お、いいねぇ」「晒してぇ!」「新人ぶってんじゃねえぞ」と一斉に囃し立て始めた。その無数の悪意ある視線に囲まれたような恐怖のなかで、桜は震える指で、渋々と、しかし自分のなかに巣食うあの生々しい整骨院での記憶を、まるで自分のことではないかのように、あるいは断片的な夢のようにつぶやき始めた。


​『ID:ララ:……わたし……最近、腰の治療で……整骨院に通い始めたんですけど……』

 ​怯えるように紡がれるその告白に、チャットの空気の温度が一段と下がった。
​『ID:ララ:……最初はただの矯正だったのに、お医者さんに「オイルマッサージが必要だ」って言われて……。肌を露出させられて、……執拗に触られて……。拒絶しようとしたのに、治療だって言われて……声を殺して……何度も、身体を弄ばれて……』


 ​文字を入力しながら、再び体が熱くなり始める。それは誰にも言えなかった、あまりに屈辱的で、しかし自分の身体を狂わせた秘密の告白だった。

 ​そのチャットの隅で、同じ画面を凝視していた晴人は、心臓が激しく波打つのを感じていた。
​(……この人、本当に……そんな目に遭ってるのか……?)

 ​晴人にとって「ララ」は、あくまでアプリ内の数多いる匿名の一人に過ぎない。しかし、その告白から滲み出る「支配され、蹂躙される女」の生々しいリアリティは、晴人の歪んだ欲望を容赦なく刺激した。彼は画面の中の「ララ」が味わったであろう屈辱の光景を自分の脳内で勝手に膨らませ、ズボンの下に手を滑り込ませた。

 チャットルームに書き込まれた桜の赤裸々な告白を見た途端、画面の空気が一変した。

 男たちの貪るような視線が集中する中、先ほど優しい口調で話を振った「ミッドナイト」が、さらにねっとりとしたトーンで言葉を紡ぎ出す。

​『ID:ミッドナイト:ララさん……そんな怖い思いをされたんですね。すごく辛かったでしょう。でも、そんなふうに誰にも言えない秘密をここで打ち明けてくれたおかげで、なんだか僕たち、心が通じ合えた気がします……。
ねえ、ララさん。せっかく勇気を出してくれたんだから、もうあなたを見せてくれませんか?写真、ここで投稿して下さい。 大丈夫、僕たちが優しく癒やしてあげますから……』
​その言葉に、桜は画面の向こうで激しく首を振った。
​『ID:ララ:だめです……そんなの、見せれるほどのものじゃないし、だいいち恥ずかしい……写真なんて絶対に無理です……!』

 ​頑なに拒絶するラクスに対し、ミッドナイトは決して乱暴な言葉を使わず、まるですべてを受け止めるかのように、さらに優しく、執拗に説得を重ねていく。

​『ID:ミッドナイト:そんなに怖がらなくてもいいんですよ。責めたりなんしません。ただ、ほんの少しだけ僕たちに見せてほしいだけなんです。もちろん、顔は写さなくていいですし、個人だと特定できないようなアングルでいいから……ね? 誰にも言わないから、僕たちだけに教えてください。………だってここは少なくともそういうアプリでしょ?』

『ID:変態紳士:いいじゃん!それ!少しだけでいいんだから見せてよ!』

『ID:ナイトメア:隠れずに出してくれよ、ララちゃん!』

 ​他の男たちの野次も混ざる中、ミッドナイトのどこか毒を含んだ甘い言葉が、怯える桜の心をじわじわと侵和していく。何度も何度も「大丈夫だよ」「顔は写さなくていいから」と諭され、逃げ場を塞がれるうちに、桜はもはや断る気力を奪われていった。

 ​言葉を失い、ただ固まっている桜に対し、ミッドナイトは畳みかけるように指示を出す。

​『ID:ミッドナイト:おや、返事はないけど、分かってくれたんだね。すごく素直でいい子だ。じゃあ、まずは一番上に着ている服のボタンを、一つだけ外してみませんか? もちろん、お顔は絶対に入らないようにね』

 ​気圧されるように、桜は震える指先で自分のブラウスの第一ボタンに触れ、それをそっと外した。
この背徳感にバクバクと心臓が早鐘を打つ。「ここはそうゆうアプリでしょ…」
ミッドナイトの言葉が頭の中で鳴り響く。

 桜は​ゴクリ、とつばを飲み込む。そういうことに興味がないわけではない。いや、むしろ人よりも強いのではないだろうか……

『ID:ララ:……ひとつ、外しました……』

『ID:ミッドナイト:素晴らしい。じゃあ、その下のインナーも、ほんの少しだけずらして、鎖骨のあたりを見せてくれますか? 約束通り、特定できないアングルでね』

​ミッドナイトのリードに従うように、桜はインナーの肩ひもを少しだけ下ろし、白く滑らかな鎖骨から胸元のラインを写真に収めてアップロードした。顔が一切映らない絶妙なアングルだ。

​『ID:変態紳士:おおっ! すげえ色気だな!』
『ID:ナイトメア:顔は隠してても、肌の白さがたまらん……!』

 男たちの下卑た歓声がチャットに飛び交う。その反応に気圧されながらも、桜は奇妙な背徳感と、一種の承認欲求のような熱に当てられていた。

『ID:ミッドナイト:素晴らしいですね、ララさん。みんな、彼女を褒めてあげてください。……さあ、次はもう少し下です。スカートですか?スカートならほんの少しだけ、その柔らかそうな太もものあたりを見せてくれますか?』

 ​言葉巧みに、しかし強制ではなく「お願い」の形をとるミッドナイトの誘導に、桜は抗うことができなかった。
言われるがままに、桜は自分のスカートの裾を持ち上げる、極小の布地に包まれた太ももの付け根の写真を撮影してアップした。
 こんなことはしてはいけない。自分みたいな人間なんて、と自分で自分を貶める傾向が強い桜。そんな桜は初めて誰かに必要とされていることに高揚にも似た感覚に陥っていた。

​『ID:ミッドナイト:いいですね……。すごく綺麗だ。じゃあ、最後の仕上げをしましょうか、ララさん。今、その綺麗な身体はすごく熱を持っているはずです。その一番敏感なところに自分の指をあてて、僕たちに実況しながら……さっき整骨院でされたみたいに、自分で慰めてくれますか?』
 
​その悪魔的な提案に、桜の息が止まった。

チャットルームに打ち込まれた「自分で慰めてくれますか?」という悪魔的な提案に、桜はスマートフォンを握りしめたまま、全身を激しく震わせた。
​(……自分で……? そんなの、できるわけない……! 写真だけでもこんなにも恥ずかしいのに、これ以上なんて絶対に無理……!)
​これ以上は絶対にダメだ。頭では強く拒絶し、画面を閉じてしまおうと指を伸ばすが、指先が思うように動かない。ミッドナイトは逃げ道を塞ぐように、さらにねっとりとした甘い言葉を重ねてきた。

 『ID:ミッドナイト:そんなに怖がらなくてもいいんですよ。誰もあなたを責めたりしないから。ただ、さっきあなたが教えてくれたあの整骨院のことみたいに、自分の身体を自分で優しく癒やしてあげてほしいだけなんです。ねえ、ララさん……僕たちに見せてくれますか?』

『ID:変態紳士:いいじゃん、最後までやろうぜ!』
『ID:ナイトメア:逃げずに実況しろよ、ララちゃん!』
 
 ​他の男たちの下卑た野次と期待が、濁流のようにチャットを埋め尽くしていく。
桜はベッドの上で息を荒くし、「嫌です」「もうやめてください」と画面の向こうに必死に訴えようとした。どれほど言葉巧みに誘導されようとも、彼女にとってそれは簡単に受け入れられるものではなく、胸の奥底では激しい嫌悪感と恐怖が渦巻いていた。
​しかし、ミッドナイトは決して引かず、まるで逃がさないと言わばかりに優しげな脅迫を続ける。

 『ID:ミッドナイト:そんなに意地を張らなくてもいいのに。せっかくみんな優しくしてあげようとしているのに、それじゃあ嫌われてしまいますよ……? ほら、いい子だから、みんなに見せてあげて』

 ​その圧倒的な同調圧力と、逃げ場がないなかで、桜の精神は極限まで追い詰められていく。自分の意志に反して、身体が恐怖と屈辱の震えに包まれるのを感じながら、彼女はただ画面を見つめることしかできなかった。


​同じ頃。
街の反対側にある静まり返ったアパートの四畳半で、晴人もまた、そのやり取りを息を呑んで凝視していた。
​(……ララさんが……追い詰められてる……)
​現実のカラオケ店では誰からも見向きもされず、冷遇されるだけの自分。しかしこのアプリの中では、数多の男たちが一体となって一人の人間を追い詰め、支配しようとしている。その生々しい支配劇の一部始終を目の当たりにしながら、晴人は自分のズボンに手を突っ込み、その異様な熱を帯びた巨根を狂ったようにしごいていた。

 ​画面の中で誘導されていくララと、それを嘲笑うように群がる男たち。
二人の異なる場所で、逃れられない狂気と歪んだ熱が、さらに深く絡み合っていくのだった。

チャットルームに打ち込まれた「自分で慰めてくれますか?」という要求に対し、桜は激しく首を振り、震える手で画面に拒絶の文字を打ち込んだ。

​『ID:ラクス:……それだけは、絶対にできません……! 写真だって、もう無理です……!』

 ​頑なに拒むラクスに対し、ミッドナイトは一瞬トーンを緩めたように見せかけつつ、さらに巧妙に追い詰めていく。

​『ID:ミッドナイト:おや、自慰なんて急にハードルを上げすぎちゃいましたかね。ごめんなさい、怖がらせるつもりはなかったんです。……じゃあ、手で触れなくてもいいですよ。ただ、さっき見せてくれたブラウスの続きで、せめて下着姿になって、部屋の姿見に全身を写した写真を一枚だけ見せてくれますか? それくらいなら、ただ立つだけだから怖くないでしょう?』

『ID:変態紳士:いいじゃねえか、それならできるだろ!』
『ID:ナイトメア:早く見せろよ。』

​他の男たちの囃し立てる声と、ミッドナイトの「それくらいなら」という甘い言葉の巧みな誘導に、桜は息を詰まらせた。自慰行為を要求される恐怖に比べればマシかもしれないという思考の歪みが生じ、恐怖に震えながらも、桜は指示に従うように自分の服を脱ぎ捨てていった。


 ​自室の隅にある姿見の前で、下着姿になった自分の恥ずかしい姿をスマートフォンで撮影し、桜は震えながらアップロードした。

『ID:ミッドナイト:……素晴らしいですね。すごく綺麗だ。やっぱりララさんは素直ないい子だね。じゃあ、その姿見を使ったまま、次のポーズをお願いしてもいいですか? 今度は、姿見に向かって四つん這いになって、その姿を写した写真を一枚。ねえ、恥ずかしがらないで、僕たちに見せてください』

 その屈辱的な要求に、桜は「そんなの……できません……」と拒もうとしたが、ミッドナイトは一切引かない。

​『ID:ミッドナイト:せっかくここまで素直にしてくれたのに、今さら拒むんですか? みんな待ってますよ。ほら、早く』

 逃げ場を塞がれたプレッシャーに負け、桜は屈辱で顔を歪めながら姿見の前で四つん這いになり、言われた通りの姿を写真に収めて送信した。チャットには男たちの歓声が一斉に沸き起こる。

『ID:ミッドナイト:ありがとうございます、ララさん。どんどん綺麗になっていく……。じゃあ、もっとよく見せてほしいな。その下着のパンツを、もう少しお尻に食い込ませて、同じように姿見に写した写真をアップしてくれますか?』
 
 ​次々とエスカレートしていく下卑た命令に、桜の心は完全にすり減っていた。しかし、逆らえばさらに激しい攻撃に遭うという恐怖から、桜は半泣きになりながら自分のパンツを無理やり食い込みさせ、その悍ましい姿の写真を再びアップロードした。

​『ID:ミッドナイト:はぁ、たまらないですね……。じゃあ、最後にお願いです。その食い込ませた下着の上から、ご自身の指で、真ん中の割れ目をなぞってみてください。そして、その様子をまた写真に撮って……』

 ​その言葉を聞いた瞬間、桜のなかの何かがプツリと音を立てて弾けた。
(……もう、ダメ……! これ以上されたら、私、本当に……!)
​これ以上の要求に応じたら、取り返しのつかないところまで堕ちてしまうという本能的な恐怖が、麻痺していた理性を一気に引き戻した。

 ミッドナイトが「下着を脱ぐ」という次の指示を打ち込もうとしたその瞬間、桜は震える手でスマートフォンの画面を乱暴にタップし、アカウントのログアウトボタンを押した。

 ​画面からチャットルームが消え、暗くなったスマートフォンを放り出すと、桜はベッドにうずくまる。しかし心臓はバクバクと早鐘を打ち、体も熱く火照っていた。


​同じ頃。
その一連の流れを最初から最後まで凝視していた晴人は、四畳半の暗闇の中で息を荒くしていた。
​(ララさんか……写真見るとエロい体してるなぁ…どんどん追い詰められていく……。すごい、あんなに命令されて……)
 
​画面の向こうで次々と服を脱がされ、ポーズを強要され、最後には逃げ出していった「ララ」の顛末。その圧倒的な支配劇を目の当たりにした晴人は、ララがアップロードした画像を食い入るように見つめ、自分の股間の熱を抑えきれなくなり、狂ったように巨根をしごき上げながら、歪んだ興奮のなかで荒い息を吐き出し続けていた。
 
2026/08/23 15:34:15(8MZCA2Ly)
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