いつもと変わらない時間、変わらない通勤電車に揺られていた。
今日は偶然、目の前の座席が空いたので座ることが出来てラッキーだった。
季節は春から初夏を迎えようとする微妙な時期なので、春物の薄手のコートを着てきてしまっていた。
思っていたよりも暑くて脱いだコートを手にしていたので、膝の上に乗せなければならず邪魔だけど仕方がなかった。
そんなことよりも今度の週末が楽しみで待ち切れない。
友達と温泉に出掛けるのだ。バックから雑誌を取り出して数日後に訪れる温泉宿が掲載されページを眺めた。もう何度も目を通していても、見飽きることはなく見るたびに気持ちが踊った。
我ながら学生か、と自嘲してしまう。
もう３０歳になろうというのに。
そんなとき膝に違和感を覚えた。
偶然にしてはあからさまに触られたのだ。
今度ははっきり触ってきた。
雑誌に目を向けたままその手を払う。
それでもスカートの裾を捲りあげようとする手をつねり上げ、爪を立てて追い払った。
気分を台無しにされて穏やかでは居られなかった。
よく見ずに座ってしまったが、ふつのサラリーマンだったはずだけど､隣に座る男を見る勇気はない。
後で思ったが、どうして立ち上がって移動しなかったのだろう。気持ちのタイミングを僅かに逸して行動に移せなかったとはいえ、後の祭りでしかない。
また触ってきた。
相手の手を払っては向かってくるその手をまた払う。本当にしつこくて執拗だった。
執念とも思えるそのしつこさに、段々と恐怖を覚えてしまった。
相手はその怯んだその隙きを見逃さず一気に太股まで手を這い上がらせた。　
懸命に手を払い続けたが、衰えない勢いに押されて股に潜りけませようとしてくる手を抑えることは出来なかった。
目の前に立つ人達に気づかれたくはない。自尊心なのか羞恥心なのかわからない、或いは両方なのかもしれない。
固く閉じても指は侵入を果たした。
ウネウネと指の腹を当てて刺激を与えようと動く。
そんなもの気持ちよくもなんともない、気持ち悪いだけだと自分を奮い立たせ無視をすることを決めた。
目は雑誌に向けられていても、文字を読み内容を理解する余裕はない。
あいも変わらず動く指の刺激に、恐れていた認めたくない感覚を自覚し始めてしまった。
反応を示せば相手を喜ばせるだけだと、我慢していた。なのに、諦めることをしてくれない。
男には分かっていたのだ。指から伝わるコリコリとした硬い感触は､彼女が反応している以外の何物でもないからだ。
指を引き抜くと少し苦労をしてパンストを摘んで撚ると小さな穴が空いた。
指を差し込み左右に引っ張ると、簡単に穴が広がる。そこから手を入れるとパンティのウエスト部分から侵入できた。
モサモサとした陰毛を掻き分けると割れ目に辿り着く。
中指を差し入れると包皮越しにも分かる硬くなったモノを捉えた。
クイクイと上下に、回すように硬いモノを撫で回し続ける。
ギュ～っと太股に力が込められるが、止めはしない。
強引に指を下げると案の定、ヌルッとした愛液に触れた。
何度も愛液をすくい上げては硬いものに塗りつけて、包皮を持ち上げるように硬いモノを可愛がる。
とうとう顔を俯かせ始めた。
刺激から逃れようと腰が動き出した。
腰が浮くのを待って手首まで差し込む。
ビショビショになったアソコに到達すると、指を第２関節近くまでの挿入に成功した。
満足なピストンとはいえないが、気持ちのいいところには届いているようだ。
フゥ～フゥ～と女性の口で呼吸する音が聞こえる。
さすがに手首の疲れから膣のほうからは撤退をして、クリトリス一辺倒に徹する。
イカせないように注意しながらコリコリした心地いい感触を楽しんだ。
完全に脱力したこの女性をもっと弄びたかったが、下車する駅が近づいていた。
電車が停車するギリギリでそっと手を引き抜き、女性の側から離れた。

後ろ髪を引かれる思いで電車を後にした。
深追いはタブーだが、珍しくまた会いたいと思った。

余韻から覚めるまで放心していたが、やっと自分を取り戻した時には電車が走り出してしまっていた。

何なのだろう、嫌悪感よりも背徳感のほうが色濃く残っていた。
こんな公共の場所で性的に酔わされるなんて、思いもよらなかった。
それほど翻弄されたのだ。

認めたくはないが、指だけであんなにされるなんて…。恥ずかしいけど、良かったのだ。

また会えるなんて思えないが、怖くもあり、もう一度という願望を抱いている自分に気づいて嫌悪した。

でも、という気持ちは消えない。

安全なら、という前提があればだけど…。