久し振りの投稿です。
３日、金曜日
残業の為、帰ってくるのが１０時過ぎになってしまった、玄関先に着き疲れの溜息と共にドアを開けると、テレビの音と焼き魚の匂いが香ってくる、いつもならここで『お帰りなさい』の声も聞こえてくるだがその言葉が聞こえなかった。
部屋に入ると、テーブルの上に晩ご飯が置いてあるがミカの姿が無い、トイレやお風呂にも姿はなかった。『？？？』訳が分からず靴を確かめると靴も消えていた・・・
例えようのない不安と焦り『何があった？』『施設に帰った？』『黙って？』『トラブル？』・・・スーツ姿のままテーブルに座り込みタバコを吸った、ミカが来てから台所でしか吸わなかったが、自分を落ち着かせるので精一杯だった。
何かあった時の為１万は常に持たしていた、施設に帰る事も含めて・・・戻ることは仕方がない、だけど『なぜ急に？』『黙って？』『嫌われた？』悪い方にしか考えが行かず、自然と涙が溢れ唇を噛み締めた。
テレビの音が気になり、消すためにテーブルの下にあるリモコンを取ろうとすると、メモ用紙(電話用)が一枚落ちていた、良く見るとテーブルにはボールペンが無造作に置かれている、ドアを開けた時風で落ちたのだろう。
嫌な予感が脳裏を巡る、もし『さよなら』の言葉が書いてあったら・・・怖くてメモを取ることが出来ない。
涙が頬を伝い、年甲斐もなく嗚咽にもにた声で泣いてしまった。うなだれながら２本目のタバコに火をつけると『ガチャ』・・・
｢あっ！マサキさんかえってたんだぁ、お帰り｣
玄関先から聞きたかった『お帰り』の言葉、なぜか懐かしく感じてしまう、声の方に目をやると部屋のガラス戸にミカが立っている。
｢え？マサキさん・・・泣いてる？なんで？｣
｢・・・・・・｣
驚き、安堵、喜び・・・様々な感情が入り交じり何も答えられなかった。
｢どうしたの？何かあったの？｣
僕の所に駆け寄り腕を掴み体をゆする
｢えっ？いや・・・だってミカ・・・｣
｢私？・・・コンビニにアイスクリーム買いに行ってただけだよ｣
｢コンビニ？｣
｢うん、え？だってメモ置いといたよ｣
｢メモってこれ？｣
｢うん｣
メモを取り見ると『コンビニにいってきまぁすアイスクリーム買ってくるね』と書いてあった、今まで張り詰めた何かが一気に緩み、大きな溜息をつきながら後ろに倒れ込み目を閉じたまま天井を向いた。
｢そっか、コンビニかぁ｣
メモを早く見てれば良かったと少し後悔しながら、安心感からか笑いが込み上がった
｢マサキさん？｣
｢いや大丈夫、大丈夫｣
ゆっくりと起き上がり、ミカを見つめながら優しく微笑んだ、夕食を食べながら先程迄の経緯を話す、ミカはあごを両手に乗せ、肘をテーブルに着けてクスクス笑いながら僕の顔をじっと見つめて聞いている。
｢そっかぁ、それでマサキさん泣いてたんだ｣
｢う、うん｣
｢エヘヘ～｣
｢な、なに？｣
｢ううん、なんでもない｣
にこやかなミカの顔を見れず、恥ずかしさで一杯の僕はそれ以上何も言葉もなく、いそいそとお風呂に入る事にした、湯船に浸かり色々と考えてしまった。
『覚悟をしているとは言え、いざとなったらこんな情けない自分がいる』『ミカの存在が、自分にとってこんなに大きいものになっているとは』『ミカとの出会いは良かったのか悪かったのか』・・・答えの出ない、正解の無い問題を解いているような感じ、また涙が視界をぼやかせる『ガチャ』突然ドアが開き、タオル一枚を身にまとったミカが見えた