「じゃあ、行ってくる。今日ちょっと遅くなるかもしれないから、晩御飯はいいや」
　「うん、分かった。行ってらっしゃい」
　優子はいつものように夫を送り出した。
　そわそわしていた。前日、光雄から時間ができたので会いたいとのメールが届いた。もう一週間以上も会っていない。優子は外出の準備を始めた。
　
　あの日以来、優子と光雄は密会を重ねた。光雄の都合がつくたびにメールが届き、優子は都心に出て、例のマンションに向かった。
　会っている間、余計な事はなしだった。セックスだけ。部屋に入ると、シャワーも浴びずに、二人は激しく求め合った。
　優子は光雄から与えられる快楽に夢中になっていた。外を歩いている時、光雄とのセックスを突然思い出して、その場でしゃがみこみたい衝動にかられる事もしばしばだった。光雄と会う日は、朝から体が異常に敏感になるのを感じた。
　
　携帯が鳴った。光雄だ。
　「もしもし、今日大丈夫？」
　「うん、大丈夫。もうすぐ出るとこ」
　「ねえ、今日一つお願いがあるんだけど」
　「え？　なに？」
　「下着はつけないで来てほしい」
　「ええっ？」
　「駄目かな？」
　「わ、わかったわ」
　―　ノーパンノーブラで来させるのね・・・きっと会ったらすぐスカートをめくられるんだわ・・・めくられて・・・やだ・・・　―
　携帯を切った後、スカートをたくし上げてストッキングとショーツを脱ぎ、着ていたシャツをいったん脱いでブラジャーをはずした。
　
　家を出た。シャツの上にカーディガンをはおり、丈が膝より少し上のスカートをはいている。ストッキングは履いていない。外に出ると、下着に守られていない性器に直接外の空気が触れた。乳首にシャツの生地が直接こすれる。初めての感覚だった。優子は興奮していた。自意識が過剰になり、周りの目がむやみに気になった。
　―　大丈夫よ・・・誰にも分かるわけないんだから・・・　―
　都心に向かう列車に乗り込んだ。すでにラッシュアワーは終わり、車内は比較的空いている。シートの端が空いているのを見つけ、そこに座った。向かいの席にはスーツ姿の男が経済新聞を広げている。
　つり革につかまり、目を閉じてヘッドフォンで何かを聴いている若い男。文庫本を一心不乱に読みふけっている中年の女。スーツケースの上で何やら資料に書き込んでいるビジネスマン。時々、若い女同士のひそひそ話と笑い声が、さざなみのように車内に広がった。
　日常的な光景の中で、優子は一人自分だけが異なる世界にいるような気分に襲われた
　―　私だけだわ。こんな昼間から下着つけないで男に会いに行ってる人妻なんて　―
　自分を哀れむような、それでいて甘美な感情がわき上がった。足を固く閉じた。股間が熱くなった。
　―　だめよ・・・こんな所で・・・だめだめ・・・　―
　意思に反して体が反応する。目を閉じて気を落ち着かせようとするが、興奮はさらに高まった。いつしか優子は空想にふけり始めた。
　
　優子は全裸だった。そして直立不動で立っていた。
　乗客達の反応は様々だ。見て見ぬふりをする者。遠慮なく好奇の目を向ける者。激しい軽蔑の表情。にやにや笑い。若い女の集団が、くすくすと笑っていた。
　優子は体を震わせながらじっと乗客達の視線に耐えていた。
　そのうち、周りに人が集まってきた。
　「やらしいおっぱいしてんなあ」
　「このケツたまんねえ」
　「見て、このおまんこ。絶対やりまんよ、この女」
　「かわいい顔して腰ふりまくってんじゃないの？」
　男も女も口々に卑猥な言葉をなげかけながら、体を遠慮なく触ってくる。ある者は乳房をもみ、ある者は性器や肛門を押し広げ、またある者は口に指を挿入した。優子は皆のされるがままに、様々なポーズをとらされながら、無抵抗で耐えていた。
　―　私、これから男にやられに行くの！　太いの突っ込まれて、何度もいかされるの！　　ああ、みんなの好きにして！　―
　
　はっと我に返った。自分の想像に動揺した。
　―　わ、私って、変態？　―
　愛液が太ももを濡らしていた。優子は途中下車した。
　トイレに駆け込んで、性器を拭いた。
　
<To Be Continued>

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