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1:記念日の代償
投稿者:
ジャイロ
大学時代、僕はミユキと出会った。
明るすぎず、地味すぎず、どこか安心感を与えてくれる彼女に、僕はすぐに惹かれた。彼女も僕に対して特別な感情を抱いてくれていたのだろう。自然と付き合い始め、僕たちはお互いにとって最初で最後の恋人になった。 僕たちの恋愛は派手なものではなかった。キャンパスの片隅でコーヒーを飲みながら話したり、手をつないで帰る小さな日々が、僕には何よりも大切だった。その頃から、彼女の存在が僕の人生の中心になっていたんだ。 大学を卒業してからも僕たちは一緒にいて、付き合い始めて7年目に結婚した。僕は彼女にふさわしい男になれているのか分からなかったけれど、それでも彼女の「はい」という返事を聞いたとき、胸がいっぱいになったのを覚えている。 結婚してからの生活は順調だった。ミユキは家事が得意で、僕が仕事で疲れて帰ると、いつも温かいご飯と笑顔で迎えてくれる。特別派手なことをしなくても、彼女と一緒にいるだけで幸せだった。僕には、それで十分だった。 だけど、ひとつだけ心の片隅に引っかかるものがあった。 僕たちはお互いを愛しているけれど、夜の生活ではどこか噛み合わない部分があったんだ。僕のやり方が悪いのか、ミユキが積極的じゃないせいなのか、それは分からない。でも、それが二人の間に溝を作り始めるほどの大きな問題ではなかった。少なくとも、そのときの僕はそう信じていた。
2024/11/20 23:56:50(Sy6f7FYj)
投稿者:
ジャイロ
結婚して3年目の記念日が近づいていた。ミユキは特に大きなことを望むタイプではないけれど、僕は彼女を喜ばせたくていろいろと考えを巡らせていた。普段から家事を頑張ってくれているミユキに、少しでも「ありがとう」と伝えたい。そんな気持ちで、僕は温泉旅行を計画したんだ。
「ねえ、ミユキ。今年の記念日は温泉に行こうと思うんだ。いいでしょ?」 僕がそう言うと、彼女は少し驚いた顔をして、すぐににっこりと笑った。 「温泉?いいね。楽しみ!」 その笑顔を見て、僕の選択は間違っていなかったと確信した。 旅行の日が近づくにつれ、僕はさらに計画を練った。温泉だけじゃなくて、何か特別なプレゼントも用意したい。そう思いついたのが、旅館の「特別マッサージプラン」だった。普段はそんなことをしない僕だけど、彼女の疲れを少しでも癒してあげたいという気持ちが強かった。 当日、僕たちは車で温泉地へ向かった。山道を進むにつれ、窓から見える景色が都会の喧騒から一変し、静けさに包まれていく。ミユキは窓の外を眺めながら「こういうところ、久しぶりだね」と呟いた。その横顔がなんとも穏やかで、僕は改めて彼女が大切だと感じた。 旅館に着くと、スタッフが丁寧に出迎えてくれた。落ち着いた和風の雰囲気で、部屋からは川が見える。僕たちは到着してすぐに温泉に入り、のんびりと時間を過ごした。 夕食前、僕はミユキにサプライズのマッサージプランを伝えた。 「実は、ミユキのために特別なプランを予約しておいたんだ。マッサージ、どう?」 彼女は目を丸くして「マッサージ?私に?」と聞き返した後、少し照れたように微笑んだ。 「ありがとう。でも、なんだか贅沢すぎる気がするね。」 「たまにはいいじゃないか。せっかくだし、リラックスしてきてよ。」 そう言って彼女を促すと、少し照れた様子でマッサージルームへ向かっていった。 そのときは、これが僕たちの運命を少しずつ狂わせる始まりになるとは、思いもしなかった。
24/11/20 23:57
(Sy6f7FYj)
投稿者:
ジャイロ
ミユキがマッサージルームに向かってから、僕は一人で部屋に戻り、少し休むことにした。旅館の部屋は心地よい静けさに包まれていて、窓の外を流れる川の音が穏やかな時間を演出していた。彼女がリラックスしてくれれば、それでいい。そんなことを考えながら、僕は部屋のソファに腰を下ろした。
一方で、ミユキは少し緊張した面持ちでマッサージルームに向かっていた。受付で案内されたのは、薄暗いけれど心地よい香りの漂う和風の部屋だった。部屋の中央にはふかふかのベッドが置かれ、その横には小さなアロマランプが控えめに光を放っている。ミユキはその空間に足を踏み入れると、ほんの少し肩の力を抜いた。 そこに現れたのは、ミユキの担当となるマッサージ師だった。 40代半ばくらいだろうか。身長は高く、筋肉質な体型で、清潔感のある白いシャツと黒のズボンを身に着けている。その落ち着いた雰囲気と柔らかな笑顔に、ミユキは自然と緊張を解かれていったという。 「はじめまして。担当させていただく小林です。よろしくお願いします。」 「よろしくお願いします。」ミユキは少し小さな声で答えた。 小林は丁寧に施術の流れを説明しながら、ミユキに確認を取っていく。 「お疲れの箇所や気になる部分はありますか?」 「肩と腰が少し…。」 ミユキが答えると、小林は優しく頷き、「では、その辺りを重点的にほぐしていきますね」と言って、施術を始めた。 最初は肩から始まるシンプルなマッサージだった。彼の手は驚くほど温かく、適度な力加減で凝りを丁寧にほぐしていく。 「力加減は大丈夫ですか?」 「はい、気持ちいいです。」 その言葉に、小林は微笑みを返しながら、さらに施術を続けた。ミユキは次第に体が軽くなっていく感覚に身を委ねるようになり、気づけば目を閉じてリラックスしていた。 だが、肩や腰をほぐす施術が終わり、小林が「特別なコースに入りますね」と告げたあたりから、空気が少しだけ変わった。 ミユキはそのとき特に気に留めなかったと言うが、小林の手がゆっくりと彼女の背中をなぞり、肩甲骨周辺に触れるたびに、微妙な感覚が心のどこかに引っかかったという。 ミユキは目を閉じたまま、肩や腰がじんわりとほぐされていく心地よさに身を委ねていた。小林の手は確かで、言葉通りに彼女の疲れを解きほぐしていく。だが、次第に彼の手が背中から下へ、そして脇腹へとゆっくりと広がり始めたとき、ミユキの中にかすかな違和感が生まれた。 「少しリラックスされましたか?」 小林の低い声が耳に届き、その声色には妙な安心感があった。 「はい……とても気持ちいいです。」 ミユキはそう答えながら、自分の中の疑念を否定するように微笑んだ。彼はプロフェッショナルだ。きっと施術の一環に違いない。そう自分に言い聞かせた。 しかし、小林の手がさらに大胆になり始めたとき、ミユキは無意識のうちに体を硬くした。 彼の指先が背中をすべり降り、ウエストのラインをなぞりながら、腰骨のあたりで少し長く留まったのだ。 「少し緊張されていますね。」 小林が柔らかくそう言うと、ミユキは慌てて体の力を抜いた。 「すみません……慣れていなくて……。」 「大丈夫ですよ。初めての方は少し驚かれることもあります。ですが、もっと楽になっていただけるようにしますね。」 彼の言葉と同時に、ミユキの体を包むような手の感触がさらに強くなった。彼は手のひら全体で彼女の腰を支えながら、ゆっくりとした動きで筋肉を押し流すように施術を続けた。ミユキの息遣いが少しずつ浅くなり、彼女自身もその変化に気づいていなかった。 ミユキの頭の中では、さまざまな思いが交錯していた。 「これは普通のマッサージ……問題ないはず。」 そう思う一方で、彼女の体が次第に小林の手に反応していくのを感じていた。肩や腰の施術が終わり、彼が「特別なコースです」と言いながら手を下ろし、脚へ移ったとき、ミユキは一瞬息を飲んだ。 施術台の上で、ミユキの脚はタオルで覆われている。だが、その上から彼の手が滑らかに移動し、膝から太ももに向かって力強く押し流していく。 「脚の疲れも溜まっているようですね。ここはどうですか?」 小林の手が太ももの内側に触れた瞬間、ミユキは思わず体をびくりと反応させた。 「すみません、くすぐったくて……。」 ミユキは照れ隠しのように笑みを浮かべたが、心の中では鼓動が速くなっていることに気づいていた。 「無理はしなくていいですよ。体が敏感な部分は、特に丁寧にほぐしていきます。」 小林の声は優しいが、その指先の動きは明らかに意図的だった。脚の内側を何度も往復するその手は、タオル越しにミユキの肌を感じ取るように動いている。 「この人……。」 ミユキは言葉にならない思いを抱きながらも、なぜかそれを止めることができなかった。 小林の手は、いつの間にかミユキの太ももの上で止まっていた。 「このあたり、特にお疲れのようですね。」 そう言いながら、彼は微妙な力加減でミユキの筋肉をほぐすように指を動かしている。体中がほぐれていく心地よさと、どこか落ち着かない感覚が入り混じり、ミユキは自分でも気づかぬうちに呼吸が浅くなっていた。 「リラックスされていますね。とてもいいことです。」 小林の低い声が再び耳に届き、ミユキは小さく頷いた。彼の言葉が不思議と安心感を与えるのだ。しかし、その安心感が次第に別の何かに変わっていくような気がして、ミユキは無意識のうちに拳を軽く握った。 小林の指が再び動き出す。今度は太ももの内側に向かってゆっくりと進んでいく。タオル越しの感触が一層敏感に感じられる場所だった。ミユキの体がわずかに反応するたびに、小林はそれを見逃さないように観察しているようだった。 「ここまでは基本的な施術です。」 そう言って彼は手を止め、穏やかな表情でミユキの目を見つめた。
24/11/20 23:57
(Sy6f7FYj)
投稿者:
ジャイロ
「ここから先は、特別コースの本番になります。」
小林がそう言うと、ミユキは一瞬だけ目を見開いた。 「本番?」 「はい。お身体全体のバランスを整えるために、少しデリケートな部分も含めてアプローチします。」 その言葉に、ミユキの心の中で警報が鳴り響いた。だが、彼女はそれを表に出すことができなかった。 「それでは、失礼しますね。」 小林の手がタオルを少しだけ持ち上げ、ミユキの素肌に触れた瞬間、彼女の心はさらなる混乱に包まれた。 小林はミユキの反応を確認すると、再び彼女の身体に手を触れた。 それまでタオル越しだった動きが、今度は直接肌に触れるものへと変わる。ミユキの背中に滑らかに手を這わせるその感触は、驚くほど滑らかで温かかった。オイルの香りがほんのりと漂い、緊張していた彼女の呼吸は次第に落ち着きを取り戻していく。 「お体がだいぶほぐれてきましたね。これから、さらに深い部分を整えていきます。」 小林の声は低く、耳元で響くように静かだった。その言葉がなぜか不思議な説得力を持ち、ミユキは抵抗することなく身を任せてしまう。 背中から腰、そしてヒップラインへと、小林の手はゆっくりと移動していった。その指先が一瞬だけ腰骨のあたりに留まったとき、ミユキの体は微かに反応していた。無意識のうちに肩をすくめ、心の中で「大丈夫」と繰り返す。プロとしての施術なのだと信じ込もうとするたび、心の奥底では何かがざわついているのを感じた。 ミユキの背中を滑る小林の手の動きが、次第に大胆になっているのを彼女は感じていた。腰のラインを撫でるその手は、必要以上に長くそこに留まり、時折親指が肌を押し上げるように動いていた。それが偶然なのか、意図的なのかを考える余裕もなく、ミユキはただ目を閉じてその感触に集中していた。 心の中では、いくつもの言葉が渦巻いている。 「これは施術の一部……」 「ただのマッサージ……」 「でも、どうしてこんなにも心臓が早くなるの?」 ミユキは何度も自分にそう言い聞かせた。だが、理性とは裏腹に、体がその指先の動きに反応しているのが分かった。太ももに近づく手のひらが触れるたびに、わずかな電流のような感覚が全身を駆け巡った。
24/11/20 23:58
(Sy6f7FYj)
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