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1:双子 Final Episode
投稿者:
Blue Roses
正午をまわった時間、自宅の居間で麗子がソファーに座っている。時折髪をかき上げながら、じっと考え込んでいた。
久雄達にもてあそばれたあの日からもう1ヶ月が過ぎた。もちろんレッスンは終了だ。彼等からも連絡はない。夫も何も知らないようだ。 だが麗子には分かっていた。彼らが、あの屋敷で自分が来るのをじっと待っていることを。しかるべき時に誘いをかけ、再び自分の肉体を使って欲望を満たそうとしていることを。 あせることはない。いずれ、体が求め始める。その時になったら・・・ ― ありえないわ・・・馬鹿馬鹿しい・・・あいつら、狂ってるわ・・・ ― 『街中の美人が、あの人達のものになってるんじゃないかって・・・』 真理子の言葉。 ― 私だけじゃないわ・・・佐藤さんも・・・いえ、目をつけた女は皆・・・ ― 自分を、いや、自分の体を本当に求めたのは、双子ではないことに麗子はすでに気づいていた。双子は久雄にとって、二つの触覚であり、触手なのだ。その触覚で女を探知し、触手で捕らえる。そして最後に獲物を食らうのは久雄なのだ。 ― くやしいわ・・・ ― 麗子は目を閉じた。記憶がフラッシュバックしてよみがえる。あの日、三人にされた事が何度も脳裏に浮かんだ やがて子宮の入り口を激しく突く久雄のペニスの動きを思い出した。 突然性器が熱くなり、尿意を催すような感覚が襲った。 「うっ!」 突然、麗子はスカートの上から股間を押さえた。 ― い、いやよ・・・そんな・・・ ― 性器が脈打っていた。 ― じ、自分でするだけなら・・・自分でするだけ・・・ ― 麗子はカーペットの上に横たわった。スカートを履いたまま下着の中に手を入れた。左手でブラウスの上から乳房を鷲づかみにし、右手で熱くなったクリトリスをなぐさめ始めた。性器は切ないほどに濡れていた。 ― 自分で楽しむだけよ・・・あ、あいつらには関係ないわ・・・ ― 麗子は腰を浮かし、指を挿入した。一本・・・二本・・・三本。 指を出し入れした。性器が大きくいやらしい音をたてた。 「いや! いや! うう!」 もの足りなかった。 麗子は下着を脱いだ。うつ伏せになってヒップを上げ、スカートをめくってもう片方の手を後ろに回した。アナルに挿入されたペニスの感触。しばらくためらったが、やがて指を沈めていった。 「うぐ! うう・・・」 麗子は前と後ろから手を回し、自分で二つの穴を責めていた。 ― み、みじめだわ・・・く、くやしい! ― 目に涙が浮かんだ。 全てはあの視線から始まった。あの日、テニスコートで体を這い回った双子の視線。 視線? 麗子は視線を感じた。 弾けるように後ろを振り返った。夫が立っていた。目を見開き、呆然としている。 「あ、あなた・・・どうして・・・か、帰ってたの?」 あわててスカートを下ろした。顔が真っ赤だ。 「麗子・・・お前・・・」 邦夫が近づいてくる。 「あ、あなた・・・私・・・きゃあ!」 邦夫が麗子に襲いかかった。 「ま、まって、あなた! あなた、落ち着いて!」 「一人でこんな事してたのか! 僕じゃそんなに満足できないのか!」 夫は我を忘れていた。 「違うわ! 違うのよ!」 興奮しきった邦夫は、麗子のブラウスを左右に引きちぎった。ボタンが弾け、純白のブラジャーがあらわになった。邦夫は止まらない。ブラジャーも強引に剥ぎ取り、次いで、スカートを思い切り引っ張って、麗子の体から抜き取った。麗子は肩にかかったブラウスとソックスだけの姿となった。 邦夫が麗子にとびかかる。乱暴な愛撫。二つの乳房をひねり上げると、尖った乳首にむしゃぶりついた。温厚な夫が初めて見せる姿だった。 「ああ、あなた!」 腕をつかまれて、乱暴にうつ伏せにされた。腰を抱えられ、ヒップを強引に上げさせられた。 「れ、麗子、さっきお尻まで・・・誰にされたんだ!」 「馬鹿なこと言わないで! じ、自分で楽しんでただけなのよ! 許して!」 「す、すけべ女!」 夫は妻の尻を何度も平手で叩いた。乾いた音が部屋に響く。 「ごめんなさい! ごめんなさい!」 麗子は必死に謝った。それは決して見られた行為のためだけではない。叩かれた麗子の尻がほんのりと赤く染まっていた。 邦夫は、苛立たしげに服を脱いだ。妻が自分から差し出す美しいヒップに指を食い込ませ、バックから思い切りペニスを性器に挿入した。麗子がカーペットに爪をたてる。 「あ、あうう! す、すごいわ! あなたすごい!」 「麗子! 麗子!」 邦夫が歯を食いしばり、狂ったように麗子を突きたてた。結婚以来、これほど激しく麗子を責めたことはない。 「あなたの好きにして! 好きにしていいのよ! ああ、もっと!」 ペニスがいったん抜かれた。物でも扱うようにひっくり返され、仰向けにされた。邦夫が麗子の上にのしかかった。麗子は夫の背中に爪を立て、長い足を胴体に巻きつけた。 「れ、麗子は誰の女!?」 「も、もちろんあなたの女よ! 愛してるわ!」 夫婦は汗まみれになりながら、いつまでも二人で激しく腰を振り続けた。 嵐のようなセックスは終わった。 二人はしっかりと抱き合いながら、互いの唇を吸いあっていた。邦夫はいつもの温厚な夫に戻っていた。 「麗子ごめん・・・あんなに乱暴にして。痛かった?」 「ううん。私の方こそあなたに隠れてあんな事して・・・私ってすごくいやらしい女でしょう?・・・恥ずかしいわ・・・」 「あんな麗子初めて見たから、どうしようもなく興奮してしまって・・・」 「あんなに感じたの初めて。すごく素敵だった」 再びキスをした。 長いキスが終わると、突然、邦夫がクスクスと笑い始めた。 「どうしたの?」 「いや、今日はこんな事するために早く帰ったんじゃないんだと思って」 「そ、そうよね。どうしたの?」 「うん。実は今日、辞令があってね。転勤が決まったんだよ」 「転勤? どこ?」 「それがさ、ロンドンなんだ」 「まあ、ずいぶん遠いわ。いつ?」 「それが一週間後には現地に行かなければいけないんだ」 「そんなに早く?」 「うん。色々あってどうしてもね。それでこれから大変だろう? だから早く相談しようと思って、早退させてもらったんだよ」 「すぐ準備しないと・・・」 「うん。そこでさ、あの子も学校に通い始めたばかりだし、この家の事もあるだろう? だから落ち着くまで僕一人で先に行こうと思うんだけど、どうかな?」 「あなた一人で?」 娘と二人でこの街に取り残される。久雄が息を潜めて屋敷で待ち構えているこの街で・・・。麗子はおののいた。 「だ、駄目よ。何故そんな事言うの?」 「え?」 「どうして私達を置いて行くなんて言うの? みんなで一緒に行きましょうよ!」 「お、置いてくって、そんな大げさな。しばらくの間だけ・・・」 「だめよ! 一緒に行きましょうよ! ねえ、みんなで一緒に行きましょう! どうしてもできないの!? ねえ!」 「い、いや、できないという事は・・・」 「じゃあそうしましょうよ! ねえ! ねえ! 置いてかないで!」 「わ、わかった、わかった。なんとかするよ、なんとかする。む、むぐ・・・」 麗子が抱きつきキスをした。二人は再び激しく絡み合った。 出発の日。 「体に気を付けてね」 「お義母さまこそお気を付けて」 「じゃあ、行こうか」 親子三人は、夫の両親に見送られながらタクシーに乗り込んだ。この一週間は、転勤の準備で大忙しだった。家は借り手が見つかるまで邦夫の両親が管理してくれることになった。彼の地での娘の学校の手配も済んだ。邦夫が助手席に座り、麗子と娘が後部座席に座った。 タクシーが走り出した。 車は街の中を抜け、隣町との境界線である坂を登って行った。坂を越えればそこから高速道路で空港まで一直線だ。 これで久雄の勢力圏内から脱出できる。車が坂を登りきり、麗子がほっと胸をなでおろしたその時・・・ 「運転手さん止めて」 邦夫がタクシーを止めた。 ― えっ? ― 邦夫がドアの窓を開け、首を出した。誰かに声をかけている。麗子も外を見た。 「あ!」 双子だった。 麗子は身を隠すようにしてうつむき、娘の肩をぎゅっと抱いた。夫がなにやら喋っている。 「麗子。生徒さん達だよ」 邦夫が屈託のない声で麗子に声をかけた。 「麗子さん」 「麗子さん」 双子が車の中をのぞきこんだ。麗子は顔を上げられなかった。 「先生」 若い女の声。麗子は思わず声の主を見た。 真理子だった。 「マ、マリちゃん・・・」 「先生、先生がいなくなって寂しいな。向こうに着いたらメールくださいね」 「え、ええ」 「これからちょっと塚本さんの家に遊びに行くんです。先生も行ってたんですよね」 「えっ?・・・マリちゃん・・・気を付けて・・・」 「フフ、それは私のセリフですよ」 真理子は明るく笑った。楽しそうだ。 「もういいかな?」 邦夫が言った。 車が再び走り始めた。双子と真理子が手を振っている。麗子は、真理子に手を振り返した。一瞬、双子の一人が真理子の肩に手をかけたのが見えた。 ― マリちゃん・・・ ― 車は坂を下っていく。 車が坂を下っている間、後ろから双子の視線が後頭部に当たるのを感じていた。 坂を下りきった時、思い切って振り返った。 坂の上にはもう誰もいなかった。 < THE END >
2004/03/26 13:52:05(dbvp7eH4)
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