「あら、山川さんなら、この方が奥さんですよ」母親の一人が源三に告げた。
　「あ、あの、なにかご用でしょうか」山川の妻、美佐江が少し戸惑いながら答
えた。一人でいるところでいきなり声をかけるよりも、集団でいるときの方がは
るかに接触しやすいことを源三は知っていた。
　「ご主人からのご依頼で、ご自宅の鍵の件でうかがったのですが」
　「鍵ですか？？」美佐江は怪訝な顔をした。
　「はい。お仕事柄、より厳重にされる方が多いんですよ。とりあえず、今の鍵
を見せていただくだけで結構なんですが」
　「そうよね、最近物騒だから。さすがは山川さんのご主人だわ」そう言う母親
がいたのは好都合だった。夫を誉められて、美佐江は悪い気はしなかった。
　「じゃあ、今日は見ていただくだけなら」そう言うと、源三をマンションに連
れていった。
　「オートロックにもなってるし、安心だと思ってたんですけどね」ベビーカー
を押しながら、美佐江は言った。
　「マンションの入り口のですね。誰かが入るときに一緒に入れば良いわけです
し」そう源三が言うと「なるほどね」と美佐江は感心してみせた。

　玄関に入ると、美佐江は子供を抱いてそそくさと奥の部屋へ入っていった。
侵入に成功した源三は、内鍵とチェーンロックをかけると美佐江のいる部屋のド
アを静かに開けた。部屋の中で美佐江は子供に乳を含ませながら、背を向けて座
っている。源三が１、２歩足を忍ばせて近付いたとき、美佐江はテレビの画面に
映りこんだ男の影に気付いて振り向いた。
　「ひっ！ちょっと、勝手に上がりこんでなんなんですか！！」
　源三の手には買ったばかりの出刃包丁が冷たく光っている。
　「や、やめて、何をするの」美佐江は子供を抱きかかえるようにしながら、気
丈に声を上げた。
　「逃げ場はないぜ、あんた、子供が可愛かったら、大人しく言うことを聞きな」
　源三の狂気に満ちた目に、美佐江は怯えた。
　「わかったわ。でも、子供には手をかけないって約束して」男を刺激しないよ
う、冷静を装って精一杯の言葉を投げかけた。
　満腹になって母親の手の中で寝息を立てはじめたわが子を抱いて、ベビーベッ
ドに寝かせ、美佐江は一応の安堵を覚えた。
　「さぁ、脱ぐんだ！！」源三は刃物を向けてすぐさま脅しをかけた。
　美佐江は覚悟を決めて、薄手のブラウスに手をかけボタンを外していった。
白くて細い指が恐怖で震えているのがわかる。
　抜けるような白い肌、大きく張りのある乳房には血管が透けて見える程だった。
ブラウスとスカートを脱ぎ、下着姿になった。源三は生唾を飲み込んだ。
　美佐江が前開きのブラジャーをはずすと、母乳パッドに沁み込んだ乳の匂いが
源三の鼻孔に届いた。　　　　To be continue...

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