Ⅱ-　嵐のまえぶれ（Ｋからのコンタクト）

妻・由美子の高校時代の親友・瑠美の提案で、お互いの家族の交流をしようという
アイデアに乗った私達は、あのキャンプで人生の歯車が狂ってしまった。
忌まわしい夏の思い出。目の前で犯されていく妻の肢体に、不覚にも興奮を禁じ得
なかったことへの自責の念。
平凡な家庭の主婦であるはずの妻が、異常な状況とはいえ、まるで獣の雌のように
喘ぎ、交歓の時を楽しむかのような表情を見せたのだ。自らの無力を羞じてなお、
言いようもない怒りを押さえきれず、些細なことで妻を罵倒してしまった日々。

そんなある日、音信不通だった瑠美の夫・Ｋさんからメールが届いた。
「その後、どんな暮らしをしていますか」と短いコメントに添付されたファイルを
開けると、忘れたくても忘れられないあの夜の光景が再びディスプレイに現れた。

いつの間に撮影されたのだろう。ビデオ録画されたものをキャプチャーされている
らしいことだけが明らかだった。

廃校の教室の小さな椅子に縛られ、おびえている妻の顔とは対照的に、剥き出しに
され、堂々と張りのある大きな白い乳房。

男の唾液に濡れて、痛いほどにつんと立っている褐色の乳首のアップ。

口を半開きにしてだらしなく涎を垂らしている妻の恍惚の表情。

反り返る男根をバックで迎え入れ、赤く無惨にめくれあがっている淫靡なひだ。

Ｍ字に開かされた脚の中心から溢れ出ている、男達の入り混じった精液。

どれもがあまりに鮮明で、何かの目的があって計画的に撮影されたものに違いなか
った。Ｋさんも瑠美さんも同じ被害に遭ったものと思い込み、心配していた矢先に
届いたメールと写真。
封印していたあの忌まわしい記憶を再び整理しなければならなくなった。
一体、Ｋと瑠美の本当の目的は何なのだろう。謎は深まるばかりだった。

Ｋからのメールと添付されていた写真の謎は、意外な展開をみせた。

夜中に突然、電話のベルが鳴り、妻がとった。
「もし、もし、え？　あ、瑠美？どうしてたの？・・え、、ええ」
一緒にキャンプに行き、暴漢に襲われた後、消息を絶ってしまった妻の親友・瑠美
からのようだ。

メールと写真のことは、妻には伏せていた。あれだけの仕打ちを受け、心の傷も癒
えていないのに、あの写真をみせることはできなかった。

しばらくして、妻がゆっくり受話器を置いた。茫然としている。
「瑠美さんからだったんだろ。何だって？」と問いかけた。
大きなため息をついて妻は言った「ビデオを買いとってくれって。。」
「どうしてこんなことに、、」そう言うと堰を切ったように妻は泣き崩れた。

ようやく妻から聞き出した時には、夜が明けてあたりが白み始めていた。
Ｋには借金があった。負債の総額からして、まっとうな金融機関からの借金ではな
さそうだ。その借金がもとでＫの妻・瑠美は関連する組織の餌食となった。
そして、瑠美から親友であった私の妻の話を聞き出して、妻までもその毒牙にかけ
て利用しようというのだ。

憤りはあったが、奴等の緻密さと実行力を考えると身震いするほどの恐怖感が襲っ
てきた。

ふたたび、Ｋからのメールが入った。「写真のビデオは○○商会にある。とにかく
会って話をしたい」今度の件はＫも弱みを握られているはず、会えば背後の組織の
ことが探れるはずだ。しかし、Ｋから予想もしない言葉を聞くことになった。

待ち合わせた場所にＫが現れた。不精髭を生やし、ずいぶんやつれいる。
Ｋはこう切り出した「奥さんには、すまないことをした。しかし、もうどうにも
ならないところまで来てしまった。やつらはプロだ。目的は金ではないのだ」
「妻には金で解決しようともちかけながら、目的が金ではない等と理不尽なことを
言うな」とＫを叱責した。しかしＫは続けた「警察もだめだ。奴等は法律の抜け道
をちゃんとわきまえている。第一、和姦とやらで罪に問われない状況は、すでに作
り上げられているんだ。その筋の有力者の協力もあるらしい」
がく然とした。さらに「奴等は、平凡な人妻を性の虜にしてしまう。奴等にかかれ
ばどんな女だって、最後は従順な性奴さ。奴等は奥さんを気に入ったようだ。金な
どいくら積んだって、だめだろう。金で解決できたほうがまだ良かったのに」
そう言い残して、Ｋは消えた。

すでにゲームは始まっていた。いや、始まったばかりだったのだ。

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