# 『白いワンピースは雪に濡れて』〜辿り着いた永遠の雫〜 著者：櫻井 雫

## 結婚十年。穏やかな愛と、満たされない渇き。

夫・和樹との平和な日常に満足しながらも、妻・綾乃の心には、かつて一度だけ味わった荒々しい情事の刺激が刻まれていた。その衝動に突き動かされ、彼女は一つのタブーを破る。それは、「夫の目の前で、見知らぬ男に陵辱される」という究極の背徳への願望。

白いロングワンピースを纏い、海辺へ向かう綾乃。屈辱と痛みの中で彼女が流す一筋の雫は、絶望か、それとも狂おしい悦びか。

妻の背徳を見つめ、自身の無力さに打ちひしがれた夫は、やがて**「情けない自分」を殺し、「支配者（マスター）」へと覚醒**していく。

禁断のプレイが、平和な夫婦の愛を破壊し、真の欲望のもとに再構築する――。櫻井雫が描く、美しくも残酷なMとSの終着点。


（官能小説を書いてみました。33000字です。ご意見ご感想、お待ちいたしております。）









## 序章 白いワンピースと海の誘惑

綾乃は、夜の帳が降りたリビングで、ノートパソコンのキーボードを静かに叩いた。隣の寝室では、夫の健太と、小学生になった二人の子供が眠っている。

彼女が今開いているのは、特定の趣味を持つ者だけが集う、深層の掲示板。彼女は、満たされているようで、どこか渇いている心の内を、画面に向かって打ち込んでいく。

【綾乃の投稿】
タイトル：夫公認・寝取られ希望。あの刺激をもう一度。

結婚して十年。二人の子供にも恵まれ、夫婦仲は良好です♡。ただ、夜の営みが少し穏やかになりすぎたのかもしれません。 昔、彼と付き合っていた頃、急に襲われて海辺で求められたことがあって、それが忘れられない刺激でした。夫もその話を真剣に聞いてくれて、「お前が襲われるところを、見てみたい」と。今回の募集は、二人で決めた、新しい試みです。

夫公認、ピルを飲んでいるので中出しOKです。

7月27日が私の誕生日。その日に二人で小旅行します。

千葉か神奈川の海辺で、時刻と場所はあなたが決めてください。

当日は白いロングワンピースで向かいます。本当に抵抗してしまうかもしれませんが、その時は、あなたが力でねじ伏せてください。上下の口を犯して欲しいです。（お尻はごめんなさい）。

夫が助けに来ますが、何もできません。夫の目の前で挿入され、中出しされ、ぼろぼろのワンピースで砂の上に横たわる。そんな結末を、私は待っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

投稿ボタンを押して、綾乃は深く息を吐いた。

画面に表示された文字を、彼女は再度指でなぞる。「昔、彼と付き合っていた頃、急に襲われて海辺で求められたことがあって、それが忘れられない刺激でした」

あれは、ちょうど付き合って一年半が過ぎた、夏の終わりのことだった。初めて大喧嘩をして、仲直りのドライブデートの帰り。助手席の窓から夜の海を眺める綾乃の横顔に、和樹は突然、怒りのような焦燥を滲ませた。

「お前、俺のこと、頼りないって思ってるだろ」

答えさせもせず、彼は強引に車を路肩に寄せ、エンジンを切った。そして、普段の穏やかさからは想像もできない力で綾乃を車外へ引きずり出した。砂浜に押し倒され、夜の冷たい海風が肌を打つ。

押し潰されそうなほどの彼の体重、荒い息遣い、そして彼の瞳に宿った、「自分を失いたくない」という切実な焦りの炎。それはレイプ未遂にも近い衝動だったが、普段のおとなしい和樹との極端なギャップが、綾乃の身体の奥底に、禁断の悦びを刻みつけた。

あの時、和樹が自分に向けてくれた、制御不能なほどの激しい欲望。

それこそが、今、穏やかな日常に埋もれてしまった**「真実の和樹」なのではないか。そして、その激しさを「夫公認の裏切り」**という形で呼び覚ましたい。

綾乃は、唇を噛みしめ、自分の投稿に間違いがないことを確認した。

数時間後。画面に「新着メッセージあり」の小さなアイコンが表示される。

「投稿、拝見いたしました。日付と場所は、こちらで指定させていただきます。」

## 第1章：静かなる夫の葛藤

### 朝食のテーブルでの報告

翌日の夜。子供たちが寝室に入り、リビングの照明を間接照明だけにする。静寂が戻った部屋で、和樹と綾乃は、まるで秘密の作戦会議でも開くかのように、ソファに座っていた。

昼間は平静を装っていた綾乃だったが、彼女はそっと自分のスマートフォンを和樹に差し出す。画面には、あの掲示板のサイトが表示されていた。

綾乃： 「ね、和樹。例の件だけど、連絡が来たの。今朝、子供たちがいる前では話せなくて……」

和樹： （心臓が一度、不規則に跳ねる）「ああ、そうか……」

彼は知っていた。妻が本当に投稿したこと、そしてその過激な内容を。昨夜、眠る前に彼女の肩を抱いたとき、指先に触れた背中の緊張が、普通の夫婦のそれではないと悟っていた。

### メッセージの内容と和樹の恐怖

和樹は、綾乃から渡されたスマートフォンを見る。メッセージは簡潔で、7月27日、午後10時。場所は**「千葉県・某海岸の、南側の突堤付近」**と、詳細に指定されていた。

和樹： （脳内で響く声）「某か。あそこは、夜はほとんど誰もいない。――本当に、やるのか……」

彼は、メッセージの**「指定」という言葉に、すでに支配者の気配を感じていた。そして、投稿にあった「力でねじ伏せて」「ぼろぼろに引きちぎられる」**という綾乃の願いが、単なるエロティックな妄想ではなく、現実になるという冷たい恐怖が、胃の奥に広がる。

### 綾乃の期待と和樹の無力感

和樹の顔に浮かぶ戸惑いを、綾乃はすぐに見抜く。

綾乃： 「ねぇ、顔色が悪いよ、和樹。やっぱり怖い？ でもね、私もちょっとだけ怖いの。あの時の、海の寒さと彼の荒々しさが、本当にリアルになるんじゃないかって……」

綾乃は不安げに言うが、その瞳の奥には、恐怖を凌駕する火花のような期待が光っていた。

綾乃： 「でも、和樹が見ていてくれるんでしょ？ もし本当に危険になったら、助けに来てくれるんでしょ？ だから、私は安心して待っていられるの。」

その言葉は、和樹の胸に鋭利な刃物のように突き刺さる。彼は知っている。昨日の投稿で、綾乃はこう書き記したのだ。**「夫が助けに来ますが、何もできません」**と。

妻は、**「助けてくれる夫」を求めているのではなく、「何もできない情けない夫」**を見つめることで、より深い悦びを得たいのだ。

### 虚勢と恐怖

和樹の口からは、弱々しい「わかった」という言葉しか出ない。その情けない響きに、彼は心底うんざりした。

和樹： （モノローグ）「そうだ。俺は、何もできない。妻が望む荒々しさも、支配も、刺激も、俺は与えてやれない。だから、他人の力を借りるしかない。妻の欲望を、俺は一人では満たせない情けない夫だ……」

しかし、妻の期待に満ちた瞳を見ていると、和樹は夫としての最後の虚勢を張らずにはいられなかった。

和樹： （少し声を張り、努めて冷静に）「……わかった、綾乃。俺が決めたことだ。俺が、お前の最高の誕生日になるように、最後までしっかり見届けてやるから、安心しろ」

その言葉は、綾乃に向けた精一杯の格好つけだった。しかし彼の心の中では、7月27日という日付と**「某海岸」という地名が、自分を打ち砕く得体の知れない恐怖として、冷たく重くのしかかっているのを感じていた。彼はまだ、その恐怖が、後に自分自身を変える破壊の起爆剤**になるとは、知る由もなかった。

第2章 7月27日、約束の海辺 疑似レイプ（第三者との行為）。綾乃の苦痛と快楽の交錯。和樹の無力な目撃と屈辱。 1日

## 第2章：7月27日、約束の海辺

千葉県・某海岸。

日付が変わる直前、深夜の海辺は、月の光と寄せる波音だけが支配する、世界から隔絶された空間と化していた。

和樹は、海岸から少し離れた薄暗い突堤の陰に、身を隠していた。防寒用のジャケットの中に隠した彼の心臓は、まるで荒れる波のように不規則に脈打っている。

数分前、白いロングワンピースを纏った綾乃が、約束の場所へ向かう姿を車の中から見送った。普段の彼女よりも背筋が伸び、どこか神聖な緊張感を漂わせている。それは、夫である自分には決して見せることのない、**「欲望に忠実な女」**の顔だった。

「綾乃……」

和樹は、唇から漏れる妻の名を波音にかき消した。彼は、妻の望みを叶えるためにここにいる。しかし、これから起こる屈辱の光景を自分の目で見るという行為は、彼にとって耐えがたい拷問であった。

その時、闇の中から、ひとつの影が綾乃の前に現れた。長身の男。彼は、綾乃の投稿に応えた**「支配者（マスター）」**の代理人だった。

綾乃： （微かに弾んだ声）「……来てくださったんですね」

男： 「ええ。時間通りに」

簡潔な挨拶。その間にも、和樹の胸には、**「妻が他の男と、自分の誕生日に、かつて愛し合った場所で親しげに話している」**という屈辱が、冷たい水のように広がっていく。

しかし、男はそれ以上の会話を交わさなかった。

男： 「では、始めましょうか」

その言葉とともに、男は表情を一瞬で消し、狩人のそれとなった。躊躇なく綾乃の腕を掴んだその力は、和樹がかつて見せた**「頼りない衝動」とは別次元の、冷徹な暴力**だった。

「ひっ……！」

綾乃の小さな悲鳴が、波音にかき消される。そして、櫻の花のように美しいはずの白いワンピースの胸元に、粗暴な男の指先が食い込んだ。

この瞬間、綾乃と和樹の甘い想定は、夜の海の冷酷な現実によって、打ち砕かれたのだった。

### 陵辱と覚醒

男の冷徹な力が、白いワンピースを夜の海辺に引き裂く音は、和樹の鼓膜を、そして綾乃の心を守る最後の防壁を、同時に破った。

綾乃は、「本当に」抵抗した。これは演技ではない。想定を遥かに超える、夜の海風よりも冷たい暴力と屈辱だった。しかし、男の力は圧倒的で、彼女の抵抗は、ただ無力な**「誘いの舞」**にしかならなかった。

突堤の陰に潜む和樹の視界は、屈辱で揺らいだ。妻が、見知らぬ男の重みの下に、砂の上に押し倒される。

頬に伝う、苦痛と悦びの雫

「抵抗するな」

男の低く荒い声と共に、乾いた衝撃音が響いた。男の手のひらが、綾乃の頬を張り飛ばす。

熱と痛みが一気に広がる中、綾乃の瞳から一筋の雫がこぼれ落ち、張られた頬を伝った。それは、「痛い」「怖い」という本能的な苦痛の涙だった。だが、その痛みの奥から、「自分は今、完全に支配されている」という、背徳的な安堵が湧き上がってくるのを、綾乃は自覚していた。

なぜ――この屈辱の中で、身体が熱を帯びる？

支配される乳房と、和樹の敗北

男は、引き裂かれたワンピースの隙間から、綾乃の雪のような肌を露出させる。粗暴な指が、露わになった乳房を容赦なく掴み揉みしだいた。

綾乃の口から、苦痛と混じり合った、聞いたことのない甘い呻きが漏れる。それは、和樹との愛撫の中で綾乃が出したことのない、本能的な悦びの響きだった。

その音は、和樹の胸をナイフでえぐった。彼は知る。**妻は、自分の手では決して引き出せない「快楽の音」**を、今、他人の力によって奏でている。

和樹のモノローグ： ああ、なんて情けない。俺の愛では、彼女を満たせなかった。俺は、妻の欲望の深さを、この男の暴力によって初めて知らされたのだ。彼女の悦びは、俺の敗北の証だ。

### 海辺の侵入

綾乃は、両足を荒々しく開かされる。男の身体が彼女を覆い、夜の海風が当たっていた股間に、熱を持った肉塊が押し当てられる。その瞬間。

和樹： 「やめろ！」

突堤の陰から、和樹は叫びながら飛び出した。その声は、恐怖と怒りが混ざり、震えていた。彼は、頭で考えるよりも早く、夫としての本能が、これ以上の屈辱を許さなかった。

だが、男は、無言だった。彼は、助けに来る和樹の存在すら予期していたかのように、一瞥しただけで、綾樹から身体を離しはしなかった。

和樹は、体中から絞り出した勇気で男に掴みかかる。しかし、日々の筋トレとは無縁の彼の力は、襲撃者にとっては赤子の抵抗に等しかった。男は、体幹を揺るがすこともなく、片手で和樹の胸を突き飛ばす。

「ドサッ」という鈍い音と共に、和樹の身体は砂の上に投げ出された。すぐに立ち上がろうとするが、男は容赦なく、その鍛えられたブーツの爪先で、和樹の腹を強く蹴りつける。

「ぐっ……！」

痛みと息苦しさに、和樹は咳き込み、砂の上に座り込むしかなかった。彼は、泥にまみれ、助けを求める妻の涙と絶望をただ見つめている、無力な敗者となった。

そして男は、屈辱に打ちひしがれる和樹を一瞥し、まるで**「見せてやる」**とばかりに、綾乃の身体に再度乗り上げた。

和樹の目の前で、男は綾乃のすべてを貪った。綾乃の頬には、苦痛と快感が混ざり合った**「雫」**が伝い、その腰は男の激しいリズムに翻弄される。

そして、終焉。男は、和樹の敗北をあざ笑うように、綾乃の体内へ、容赦なく熱い精液をすべて注ぎ込む。

綾乃の瞳は、月の光を浴びながら、痛みと快感の混濁した**「諦め」の光を宿す。身体の奥を突き上げられるたび、彼女は背徳の淵**へ沈んでいく。快感は、紛れもない屈辱の報酬として、彼女の全身を駆け巡った。

綾乃のモノローグ： 私は今、穢されている。でも、この激しさが、ずっと私を渇かせていた。和樹、見ていて……これが、あなたの知らない、私の中の「雫」なのよ。「あぁっ……」という、完全に屈服し、満たされた声を上げた。その声は、和樹の胸を突き破り、**「僕の愛では、ここまで綾乃を満たせない」**という、決定的な敗北を刻みつける。

男は、綾乃のぼろぼろに引き裂かれたワンピースを横目に、用済みとばかりに立ち去る。

波音と妻の微かな呻きを聞きながら、和樹はこの砂の感触を、手のひらに深く刻みつけていた。一歩も動けない無力な自分。この屈辱と敗北の熱さを、彼は永遠に忘れられないだろう。

### 沈黙の終わりと誓い

やがて、波が、すべてを洗い流すかのように、音もなく、和樹の足元まで迫ってきた。

和樹は、ゆっくりと、しかし確かな力で立ち上がった。泥にまみれたその姿は、まるで死から蘇った男のようだった。

彼は、綾乃を抱き上げ、誰も見ていない、月の下の海へと、静かに、一歩一歩、踏み出していった。

彼は、海水を桶ですくうと、妻の肌を濡らした。砂と穢れを、無言で拭い取った。しかし、流しても流しても、屈辱の熱さだけは消えない。

和樹： （モノローグ）ここで洗い流せるのは、砂と潮だけだ。この汚辱は、もっと深く、俺自身の手で、洗い清めなければならない。

和樹は、綾乃を抱きかかえて車に戻ると、波音よりも重い静寂の中、シティーホテルへと車を走らせた。彼の心は、あの屈辱的な光景と、綾乃の口から漏れたあの満たされた呻きで満たされていた。


## 第3章「献身の夫（おとこ）」の夜明け

### 帰還と沈黙

シティーホテルへ戻る車の座席で、二人の間には、波音よりも重い静寂が横たわっていた。

和樹は、助手席でぼろぼろになった白いワンピースを抱きしめ、毛布にくるまっている綾乃の横顔を、一度も見ることができなかった。彼の心は、あの屈辱的な光景と、綾乃の口から漏れたあの満たされた呻きで満たされている。

ホテルに着き、綾乃はまるで、砂に埋もれた彫像のように静かにバスタブへ向かう。和樹は、その砂と精液にまみれた妻の姿を見て、初めて言葉を絞り出した。

和樹： 「……ごめん。」

彼の声は、ひどく掠れていた。それは、妻を危険な目に遭わせたことへの謝罪であり、彼女の欲望を自分で満たしてやれなかった**「情けない夫」の敗北宣言**だった。

綾乃： 「……いいの。大丈夫よ、和樹。」

綾乃は、その時初めて彼を見た。その瞳は、涙で腫れていたが、どこか深く満たされた、静かな光を宿していた。

### 罪悪感と奉仕

和樹は、静かにバスタブの横に跪いた。そして、「謝罪」の言葉ではなく、「奉仕」という名の贖罪の儀式を選んだ。

彼は、震える指先でスポンジを泡立て、丁寧に綾乃の肌を洗い始めた。

和樹： （モノローグ）この肌に残された砂の痕跡を。この指先に触れる他人の匂いを。俺の手で、全てを洗い流さなければならない。これは、屈辱ではない。彼女をこの世で唯一、愛する男が負うべき、神聖な罰だ。

背中、腕、そして最も深く犯された股間へ。和樹は、目を逸らさずに、他人の精液が残した白濁の痕を洗い流していく。彼の指がその場所へ触れるたび、綾乃の身体はかすかに戦慄した。それは、痛みの記憶か、それとも、夫に穢れを見られているという背徳的な悦びか。

### 妻の許しと、愛の再定義

綾乃は、瞳を閉じて、和樹の手の温もりをただ感じていた。

綾乃： （モノローグ）あれは、たしかに暴力で、痛みだった。でも、私は、自分の奥底にあった欲望をすべて引き出してもらった。そして、和樹……あなたは、逃げなかった。あの屈辱的な光景を、最後まで見届けてくれた。

彼女は知っている。この**「逃げずに、私の穢れを洗い流してくれる」という行為こそが、彼女が本当に求めていた「夫の変わらない愛」**の証明なのだ。

綾乃は、濡れた手で和樹の頬をそっと包んだ。

綾乃： 「和樹、ありがとう。あなたは、私のために、あの恐ろしい場所で、最後まで夫でいてくれた。私は、あなたのことが、前よりもっと、愛しいわ。」

その一言は、和樹にとって**「赦し」であると同時に、彼の胸に新たな誓いを刻みつける言葉となった。彼は、妻の望みを他人に叶えさせた屈辱と、それでもなお愛されているという矛盾の中で、静かなる再構築の誓いを立てるのだった。

この身は、妻の欲望に応えるための道具だ。愛する妻が、屈辱の中で見つけた快楽を、すべて俺に委ね、満たし尽くしてくれるのなら――俺は、その献身に応えるために、どこまでも激しく、どこまでも逞しくなる。

その誓いは、愛する妻のために、己の弱さを打ち破り、その奥底の欲望をすべて背負う「献身の夫（おとこ）」になること以外、ありえなかった。

### 屈辱を噛みしめる早朝の献身

某の夜の海辺から戻って以来、和樹の生活は、まるで誓いに導かれるように、一変した。

彼は、子供たちが起き出す遥か前、夜明け前の静寂の中で、リビングの窓を開けた。窓の外は、屈辱を味わった海辺へ続く、冷たい道だ。

和樹は、トレーニングウェアに着替えると、鏡に映る優男の自分を直視した。その男は、妻の荒々しい欲望に応えられず、逃げることしかできなかった敗者だ。

和樹： （モノローグ）もう、あの夜の無力な俺は殺す。

彼は、アスファルトの上へ飛び出し、海へと続く道を走り始めた。その足取りは、始めは重く、疲労と屈辱で何度も砂の上に倒れそうになったが、内なる炎が、彼の心臓を激しく打ち続けた。

そして、早朝のランニングから戻ると、冷たい床で静かに自重トレーニングを重ねた。肘と膝に汗が滲む。一回一回の腕立て伏せは、無力だった自分への罰であり、**「優しさ」だけではない「力」**を求めるストイックな行為そのものだった。

### 日常の変容と、子供たちの目

数週間が経つうちに、和樹の身体は目に見えて変わった。以前の柔和な印象は薄れ、腕や肩には、硬く締まった筋肉がつき始めた。

ある朝、長男が彼の二の腕を触りながら、目を丸くした。

息子： 「お父さん、なんだか腕がガチガチだよ！ すごい、たくましくなったね！」

娘： 「かっこいい！」

子供たちの無邪気な言葉は、和樹の心に微かな**「父としての誇り」**を与えた。だが、彼の視線は常に綾乃を探した。

綾乃は、夫の変貌を、戸惑いと、隠しきれない期待の入り混じった瞳で見つめていた。まるで、**「あなたはどこまで強くなれるの？」**と試しているかのようだった。

### 深夜のタブレットと、献身の研究

肉体的な努力と並行して、和樹は精神的な克己も怠らなかった。

子供たちが寝静まった後、彼は自室のデスクで、タブレットを開く。そこに表示されていたのは、**SMの心理学、緊縛の基本、そして「被虐性の愛し方」**に関する専門的な資料だった。

和樹： （モノローグ）これは、趣味ではない。愛する妻が、その奥底の欲望を満たしてくれるために、俺が習得すべき、神聖な技術だ。

彼は、優男の顔のまま、献身的な研究者として、妻の快楽の形を深く掘り下げていった。

### 夫婦の夜の試行錯誤

肉体と知識の変化は、夫婦の寝室にも、静かなる変化をもたらした。

いつもの優しい抱擁とソフトな愛撫の中で、綾乃は和樹の硬い筋肉に触れた。その筋肉は、優しさの中に、あの夜の暴力的な力を秘めていることを示していた。

和樹は、習得した知識を基に、ノーマルな体位を避け、少しずつアクロバティックな行為を試み始めた。

例えば、綾乃の手首を掴み、力で上から押し付けるような体勢。

例えば、綾乃の腰を屈強な力で持ち上げ、視界を反転させるような体位。

その行為中、和樹の表情は、まだ**「戸惑い」を隠せずにいた。しかし、綾乃の瞳は、「これよ、和樹。この力よ！」**と言わんばかりに輝き、悦びの雫を流すのだった。

和樹は理解した。妻の悦びこそが、献身の最終的な報酬であると。

彼の中に眠っていた**「S」としての役割は、「愛する妻の被虐性を満たし、独占する」という「献身」によって、ついにその真の姿**を現し始めた。




## 我が掌中の雫

### 隔離された山荘と優しき前夜

季節は冬。子供たちのいない静寂の中、和樹と綾乃は深い雪に閉ざされた山小屋にいた。窓の外、針葉樹の幹には雪が深く積もっている。

到着した日の夜は、海辺の屈辱から半年間の克己奮励を終えた、夫婦の静かな祝いの夜だった。露天風呂では、逞しさを増した和樹の腕が、綾乃を優しく抱きしめる。彼の肌は硬く引き締まっていたが、その温もりは紛れもない夫の愛だった。

綾乃： （モノローグ）この半年間、あなたは私のために、どれほどの努力を重ねたのだろう。この身体のすべてが、その献身の証。

優しく抱きしめられた後、和樹は綾乃を静かに見つめ、宣言した。

和樹： 「明日は、俺がお前を支配する。誰も踏み込めない、お前だけの世界を満たしてやる。」

綾乃： 「……はい。」

綾乃は、瞳に涙を湛えながらも、静かに頷いた。その瞳には、恐怖ではなく、純粋な期待と、夫への究極の感謝が宿っていた。二人は優しく口づけを交わし、満天の星が輝く夜の下、夫婦の絆を再確認した。

### S覚醒：雪中の責め

翌夜。月明かりが雪を照らし、風が舞い始めた。山荘の奥深く、古い欅の木の下に、和樹と綾乃は立っていた。

優男の姿は、そこにはもうなかった。分厚い胸板と、力強い腕を持つ、巌（いわお）のように厳しく、そびえ立つ男の姿がそこにはあった。

和樹： 「立て、綾乃。」

その声は、海辺で聞いた情けない夫の震えではなく、妻のすべてを支配する力に満ちていた。

和樹は、綾乃を立たせ、そして初めて、妻の顔を打った。平手で、一発、二発、三発と。

「パァン！」という高く乾いた音が、静かな雪夜に響き渡る。その衝撃とともに、綾乃の頬には熱い線が走った。流れる涙は、痛みゆえか、それともこの夫の力の証明へ向かう歓喜か、それは綾乃のみが知ることだった。

和樹は、流れる涙を無視し、綾乃の細い身体を軽々と抱き上げ、雪の上に乱暴に落とした。その冷たさに、綾乃の肌が一瞬、震える。

優男の姿は、そこにはもうなかった。巌（いわお）のように厳しく、そびえ立つ男の姿がそこにはあった。

和樹は、屈強な力で綾乃の上体を雪の上に押さえつけ、己の腹筋を震わせた拳を、綾乃の腹部に静かに振り下ろした。

ズン、と鈍い音が響き、綾乃の身体が大きく弓なりに反り、雪の上に白い息と涙が散った。

綾乃： 「く……ッ！」

苦痛に呻く声が、雪の静寂を破った。それは、痛みであると同時に、夫の力に完全に支配されたことへの、歓喜の裏返しだった。

和樹は雪の上に倒れた綾乃の腹に、静かに拳を沈めた。

ズン、と鈍い音が響き、綾乃の身体が大きく弓なりに反り、雪の上に白い息と涙が散った。

綾乃： 「く……ッ！」

半年間の献身を全て受け止めた、感謝の絶頂だった。

和樹： 「立て。お前は俺の力から、逃れられない。」

**この圧倒的な物理的な支配こそが、綾乃が海辺で求めても得られなかった「力」だった。**彼女は、夫の逞しい胸板に、屈服と悦びが混ざった吐息を漏らした。

和樹： 「脱げ。」

綾乃は、言われるままに服を脱ぎ、薄い肌襦袢一枚の姿となった。その白い肌が、月光と雪の淡い光を浴びて、冷たく輝く。

和樹は、ふんどし一本の姿となり、妻の目の前で己の全てを露わにした。その姿は、優しさではなく、支配と献身を体現する、雄々しい神のようだった。

綾乃の腕は、太い木の幹に細い縄で縛られ、木に優しく寄り添う。そして、和樹は木々の枝を手に取り、綾乃の白い肌を打擲し始めた。

ビュッ！と風を切る音と共に、白い肌に赤い筋がついていく。綾乃の口から漏れるのは、苦痛と歓喜が混ざった、切ない呻きだった。流している**涙（雫）**は、もはや痛みでも屈辱でもない、愛する夫に最高の形で支配されているという、献身への感謝の証だった。

### 我が掌中の雫

やがて、力尽きた綾乃は、雪の上に静かに倒れ込む。和樹は、彼女の身体を抱き上げ、肌襦袢も脱ぎ捨てた。

雪の上で、和樹は怒張した男の一物を、激しく綾乃の胎内へと侵入させた。

「あの日の屈辱を上書きするように」。和樹の肉体は、半年の克己の成果を遺憾なく発揮する。彼の激しい突き上げは、綾乃の身体の最も奥深く、被虐性が渇望していた快楽の泉を直撃した。

**「ああッ……」**と、綾乃の口から、満たされた、甘い声が雪夜に溶けていく。彼女の身体は、痛みと愛の力によって最高の頂へと導かれた。

そして、妻との誓いを果たすため、和樹は綾乃の胎内に熱い愛の証をすべて注ぎ込んだ。

満たされ、ともに逝く。二人は、冷たい雪の上で、支配と献身の愛が最高潮に達した幸福の中で、静かに息を整えた。
いつしか吹雪もやみ、空には満天の星と、清らかな月が輝いていた。

雪はまるで天から降る白い花弁のように静かに静かに降り積もる
深い森の奥針葉樹の黒い幹が立ち並ぶ中 一本の古い欅の木に 長い黒髪の女性がまるで寄り添うようにもたれかかっていた
薄い白のワンピースは肩から腰まで裂け 雪と風に晒された白い肌が 月光と雪の淡い光に 陶器のように冷たく輝いている
長い髪は雪を受けて濡れ 黒い滝のように背中を流れ 地面にまで届き 白い雪の上に 漆黒の墨を垂らしたように広がっていた
彼女の腕は 木の幹に優しく抱かれるように 細い縄でゆるやかに結ばれ まるで木と一体になることを望んでいるかのよう
頬には 雪の結晶が溶け 涙のように光る
瞳は閉じられ 長い睫毛に雪が積もり 唇は微かに開き 白い息が 静かに 夜の闇に溶けていく
雪は 彼女の肩に 鎖骨の窪みに 胸のふくらみの谷間に 腰の曲線に 優しく 冷たく 降り積もり 彼女を 白い世界の一部に変えていく
風が吹くたび 長い髪が雪を払い 黒と白のコントラストが まるで古い水墨画のように 儚く 美しく 揺れる
彼女は 雪の中で 木に寄り添い ただ 静かに この冷たさと この孤独を 愛していた



## エピローグ
数ヶ月後。自宅のリビングで、綾乃が和樹の淹れたコーヒーを飲んでいる。和樹は以前と同じように優しく微笑んでいるが、その背中には厚みが加わり、瞳の奥には以前にはなかった**「静かなる光」**が宿っている。

綾乃がコーヒーカップを置いたとき、和樹はそっと立ち上がり、妻の顎を力強く掴んで引き寄せた。

和樹： 「さて、雫。今夜の献立は、何だ。」

綾乃は、その力強い指の感覚に最高の安堵を覚えた。

綾乃： 「…… ええ、喜んで。お望みのままに。」

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