part.2です。
前回はプロフィールかTwitter（@ntr_experience）からどうぞ。

当時大学に入ったばかりの僕は同じ年に入学した年齢1個上の子と付き合うことになりました。
これはそんな年上の彼女との間に起きた信じられないような体験を綴った約1年間の記録です。

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201X年5月下旬、僕たちは付き合い始めた当日にラブホにお泊まり。しかし初めての僕は勃たず…次こそは！と意気込んでいた。

付き合ってみると彼女は尽くすタイプだった。積極的にデート場所や食事も提案するし、言うことも聞いてくれる。
誰にでも好意的に仲良くする子だが、彼氏に対する態度は違った感じで、僕は嬉しかった。
ただ、時折行き過ぎのようにも思える発言もあった。「必要なら男の連絡先スマホから全部消す」「来いと言われれば夜中でも行く」あなたのためなら自分はどうなってもいいというような少しだけ異常ともとれる発言があった。

そんな時、彼女から夜に電話があり妙に深刻そうな声色で「大事な話がある」と言ってきた。
話の内容は、元カレについて。
年齢は34歳。だいぶ年上だ。
その人とは2年ほど前に別れたのだが、それまで一年弱付き合っていてDVをする人だったとのこと。
いろいろあって別れたあと刑務所に服役し、ちょうどそろそろ出所する頃とのことだった。
どうやって別れたのか、服役理由はなんなのか、このとき彼女は話さなかったが、後に違った形で僕は知ることになる。

その元カレが会いにくるかもしれないと言うのだ。なんで？会わなければいいじゃないか、と思ったが話は続く。
その元カレは自分にとって非常に恐怖な存在だという。会ったら身体が震えて動けなくなってしまうのだと。
最初聞いた時は、まさかそんな…と思ったが、声のトーンからして本当のようだった。
美和と元カレの関係は後になってハッキリ知ることになるし、それについても後程書くつもりだが、つまり彼女は洗脳されていたのだ。それも強烈に。
とにかくその元カレが会いにきたらどうしよう…という相談の電話だった。
「わかった。なるべく一緒にいよう。大学も毎日一緒に行って帰ろう。」
なんだか正直よくわからない、だけどなるたけ彼女の支えになろう。そう思った。

5月ももうすぐ終わる頃、彼女といつものように電車に乗っている時、ふいにこんなことを言い出した。

「昨日、車を見たかもしれない」

ドキッとした。
それでもそのあとに、いやまさかと思った。
気がつけば口にしていたのは後者だった。
「…そうだよね（笑）」
彼女の笑みはどことなく曇りながらも前向きだった。

僕と彼女の自宅はかなり離れている。そもそも電車の線が違う。それでもその日は彼女を最寄駅まで送ることにした。お互いの心配を少しでも和らげたかった。

後日。
お互いがそれぞれ忙しくて一緒に帰ることができなかった。水曜日はどうしてもそういう日だったのだ。
だからなるべくラインでお互い常にやり取りしていた。
彼女は混雑した電車が苦手で過呼吸気味になってしまうため、一人のこの日はグリーン車で帰ることにした。

思えば、精神面に何か抱えているのは前から気になってはいた。満員電車ではよく呼吸が苦しそうになったり、一人になると明らかに不安になったり。その度に自分は彼女の手を握ったり抱き寄せたりして勇気づけていた。
普段は天真爛漫で愛嬌抜群な彼女のそういう一面を見るのが、どこか意外でほんの少し得意げだった。
ただ…やはり、なんというか……闇、というものを自分はなんとなく感じていた。

一人グリーン車で帰る途中、急に息が苦しくなってきたと彼女が連絡してきた。自分は吸うのではなく吐くことを意識するよう、ゆっくり呼吸するよう、そんなことを何度も言った。
彼女と付き合い出してからネットでそういう情報を暇があれば調べていた。過呼吸が酷くなると意識を失ってしまうほどだったのでとにかく真剣だった。
どうにかして最寄り駅に着いた彼女は、しばらく駅のホームのベンチで休むことに。時刻はだいたい21時ごろのこと。
ホッと一息した僕は、安心して明日の準備をすることにした。

彼女の連絡は、そこからパタリと消えた。
水曜日の夜のことだった。


つづく