私は28歳で保険のセールスレディの仕事をしています。既婚ですがまだ子供はいません。
…そして……先日つい義父と身体の関係を持ってしまいました…


「お義父さーん…？こんにちはぁ！」
週に何度か、１人暮しの義父の家に仕事の合間に訪ねます。顔を見に寄ったり、食事のお世話だったり、近所からの頂きものをお裾分けしたりされたり…そんな他愛のない事なのですが、高校生のときに父を亡くした私にとって義父はその父代わりの優しく頼もしい男性です。
主人と結婚して3年。今では義父ともすっかり打ち解け、お互い世間話に花を咲かせたり冗談を言い合ったり……不景気で仕事のノルマもだいぶキツくなってきた昨今では義父の家に立ち寄ることが私の最もホッとできるひとときなのです。

「ああ、舞ちゃんか。上がんなさい…」
「はいっ、お邪魔しまぁす♪…さっき近くの御菓子屋さんで芋羊羹買ったんです。お義父さん、好きでしょ？」
合鍵はすでに作って持っています。それでドアを開け、少し耳の遠くなった義父に大声で声を掛けると、奥からゆっくりと義父が出てきて笑顔で向かえてくれます。私も何の遠慮もなく靴を脱ぎ、その靴をきちんと揃え並べてから義父の家に上がりこむと御菓子の包み紙を持ち上げて義父を見、茶目っ気のある笑顔を向けます。
「それはいいなぁ！…いつも有り難う…」
嬉しそうな義父の顔を見ると、若かったせいで何も親孝行してあげることの出来なかった父を思い出して少し涙が滲んでしまうのですが、それを隠してパタパタとスリッパの音を響かせ私は台所に向かいます。
「今お茶煎れるね！それまでテレビでも見ててください。」
後から台所に入ってくる義父を居間に追いやり、ヤカンでお湯を沸かす間にその辺をちょこちょこっと片付けます。義父は寡男生活が長いせいかある程度の家事はできるようで、流しに食器や鍋が汚れたまま置きっぱなし…なんてことはありませんし、掃除も洗濯もそれなりにこなしている様子はこざっぱりとした家の中を見ればわかります。
ですがやはり男の人なので細かい所まではチェックし忘れるようで、私はガスの火に気を配りながら冷蔵庫の中を掃除したりふきんを洗ったりしてお湯の沸くのを待ちます。

「お待たせしました。…はい、羊羹と……お茶は熱いから気をつけてね！」
お盆と片手にポットを下げ居間に入り、手早くお茶を煎れて義父の前に差し出しながら見ているテレビにチラを視線を移します。色黒の司会者とわりと著名なタレントさんが数名、視聴者からの電話相談に答えているところです。
「この司会の人…お義父さんに似てますよねぇ～」
「…そうか？…それは誉められてるのかな…」
「誉めてますよぉ…タレントさんに似てるって言ってるでしょ？」
「舞ちゃんだって……ほらあの…名前は忘れたがよくテレビのコマーシャルで見かける女優さんに似てるよ」
「へぇ～……ね、誰？誰？」
「…うーん……それが…何のコマーシャルかも忘れてしまったが…。ま、とにかく美人さんってことだ」
「…おだてても羊羹のほかには何もでませんよっ？」
雑談しては２人でお茶を飲み、御菓子を食べながらテレビを見ているとふと義父が私のほうへ身を乗り出し、
「…舞ちゃん、そろそろワシに孫の顔を見せてくれないかね？」
気遣うような明るい笑顔で言います。
「……そうですね…考えてはいるんですけど。でもまだ仕事もしたいし…それに私にちゃんと育児が出来るか、不安なんですよね…」
「舞ちゃんなら立派なお母さんになれるさ。ワシは男だがこれでも卓をなんとか大きく育てた…頼りないかもしれんが子育て中の愚痴の聞き役くらいは出来るだろうさ」

胸のあたりがジンと熱くなります。
最近主人の卓は会社の人員削減のあおりを受け仕事で忙しく、それとなく子作りの話を持ち出しても今はその気は無いらしいのです。私としては30歳になる前には１人くらい産んでおきたいのですが…そんな相談も毎日疲れた顔をして帰宅する主人には言い出せず、なんとなく心の中で鬱積したものが渦巻いていたのです。
義父の優しい言葉に、もちろんそんなことは言えません。
それにしても…同い年の主人に比べ、義父のこの温かな包容力はとても心地良く、私は義父に実の父の姿を重ねると同時に年上の男性として密かな憧れを抱いてしまうのです。

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