渋谷駅前スクランブル交差点の片隅。

歩行者信号が青に変わる度に堰を切った怒濤の様に群衆が思い思いの方向に流れ出し、一定時間が過ぎると怒濤はぴたりと止み、次の開放を待ちわびる。

僕はそんなスクランブル交差点の片隅に立ち、日がな一日群衆を観察して過ごす。雨の日も風の日も、夏の炎天でも…それが僕の日常なのだ。

ある日の事。いつもの様にスクランブル交差点の片隅に立っていると、赤信号の向こう側からこちらを見ている女性が居る事に気付いた。

群衆はまるで僕など見えておらず、居ても居なくても変わらない。寧ろ存在しないも同然だ。

僕自身もそれを理解して受け入れているだけに、女性が僕に視線を向けているのはとても奇異な事だ。

女性は10代か20代か…若く見えるがそれ以上の様にも見える。ただ一つはっきりしているのは『子供』ではない事だろうか。

訝しげに観察する僕と視線が合うと女性はにっこりと微笑み、僕に向けて会釈をする。

僕ははっとして慌てて会釈を返すほぼ同時に信号は青に変わり、開放を待ちわびた群衆がスクランブル交差点に雪崩れ込み各々が思い思いの方角へ散り、再び信号が赤になる頃、対岸の女性は僕のすぐ隣に居た。


「はじめまして…かな」
女性は照れ臭そうに俯き横目で僕を見遣る。

「はじめまして」
「そうだよね…でも私はキミの事よく知ってるよ」

「………」
その後女性は言い掛けた言葉を途中で呑み込み、悲しげに表情を曇らせ、「ごめんね」そう言うと女性は感極まった様子で僕に抱き付いて唇を重ねた。


僕たちの唇が唾液で滑り優しく絡み合う。
僕の舌が女性の唇に割って入ると女性はそれを受け入れて自らの舌を絡ませる。


「はあ…はあ…」
頭の中が真っ白になりかけた刹那、外国人観光客のカメラが僕たちに向いている事に気付き、僕は女性を画角の外に押し退ける。


「大丈夫よ。見えていないから」
そういうと女性は僕の服を脱がせはじめ、僕が裸になると自らも服を脱いで美しい肢体を露にした。


「はあ…はあ…たまらない…たまらないよ…」

僕は腹が減った赤ん坊の様に、女性の白くふくよかな乳房を鷲掴みに、小豆色の乳首をチュウチュウと音を立てて吸う。

「ああっ！ああんっ！」

女性は歓喜の声を上げながら「もっと」と言わんばかりに僕の頭を乳房に押し付ける。

僕はすっかり興奮していよいよ理性を失う。それは女性も同じで糸を引いて雫が落ちる程に愛液が溢れ出ている。


「はあっはあっ！来て！！」

信号待ちをするカップルのすぐ隣で、僕は背後から女性の膣にペニスを突き立てる。
女性の膣は熱く潤い僕のペニスを招き入れると同時に「もう離さない」とばかりに強く締め付ける。

腰を動かす度にぬるぬると女性の肉ひだが滑り、下がってきた子宮口が僕のペニスに蓋をする。

女性は何度か小便を漏らしながら身体を硬直させ周囲の雑踏などまるで意に介さずに獣の様な悲鳴を挙げて何度も絶頂を迎える。

「う…ぐああっ…ふっ…ふっ…」
それは僕も同様で、鬱血して熱い女性の子宮の中に何度も精液を流し込む。それはまるで女性の中に放出した自らの命が溶けて混ざり合う感覚で、どこか懐かしさを感じる。


僕たちは体位を変えながら雑踏の脇で狂った様にセックスをし、ふやける程に唇を重ね、硬く手を握りあう。



「愛してるよ…香苗…」
それは不意に僕の口から出た言葉だった。
僕の目から大量の涙が溢れる。



「ただいま佑樹。待たせてごめんね」
僕の脳内にこれまでの記憶が流れ込んでくる。

香苗はここ渋谷のスクランブル交差点で飲酒運転の車に跳ねられて亡くなった僕の恋人だ。

香苗とは高校からの同級生で結婚の約束もしていた。亡くなったのは28歳の時だった。

僕は香苗が忘れられず毎日ここに訪れ、群衆の中に香苗の面影を探していた…。



そうか…僕は死んだんだ…。



「ねえ香苗。ずっと一緒にいよう？」
「うん。これからは一緒だよ」

「愛してる」
「うん知ってるよ」

「じゃあもう一回…」




二人が死後に再開を果たしたのか…
佑樹が忌の際にみた幸せな夢なのか…



※添削していないので誤字脱字/冗長な表現等はご容赦ください。駄文をお読み頂いた方はありがとうございました。