「やだぁ…こんな真っ昼間からぁ…」
「お隣の客室でしょう?」
「ねぇ…叩かれてるんじゃない?」
「そ、そうね…」
隣の客室から漏れくる音は、水面を平手打ちするような瑞々しい殴打の音に合わせて、震えた湿った女の声。
ミナミとアヤの二人は、パートの仲間で、お互いに旦那にやや愛想を尽かして温泉に一泊2日で来ていた。
アヤの方は、どちらかと言うと中々、思ったことを口に出せないタイプ。
ミナミは真逆で、好奇心旺盛でイケイケなタイプ。
ミナミは隣の客室の情事に興味津々で、アヤに「ベランダから回ればみれそうだよ?」
嬉々と目を輝かせた。
「ミナミさん…やめなよぉ…」
「平気だって!ワァ…ほら!アヤさん こっちこっち!」
アヤは、ミナミの好奇心には、こうしてたまにハラハラさせられている。
「ねえ。ちょっとぉ。ミナミさん。やめなよぉ…覗くもんじゃないわ」
嗜められ、ミナミはやっと覗くのを止めて部屋に戻った。
「アヤさんって、ほんと真面目なんだからぁー」
…「ダメよ。覗きなんて悪趣味だわ」