「うふふっ、若いって良いわね。俊光さん、もうそろそろ良いかしら？」
弘美の告白に気を取られ、薫は天羽（アモウ）への意識が散漫になっていた。その天羽が突如として会話に割り込み、弘美の父親に承諾を求めたのだ。

「ああ、禰々（ねね）さんご苦労様。慣れない服だと肩も凝るだろ？」
「そうね、俊光さん。ふふふ、早く解放されたいわ」 。

シュ パキッ ッコッ

弘美の父親との軽い会話の後、天羽はメガネを外すと床に叩き付けた。そしてジャケットとブラウスを脱ぎ、エナメル生地のコルセットとストラップレスブラジャーの姿となった。衣服に覆い隠されていた豊満な胸が晒されたのだった。

先程までの知的なスタッフの面影は微塵も無かった。天羽は衣服に替わり、その姿だけで射精してしまいそうな艶美で妖美な色気を纏っていた。

「…あっ、貴女はウェディングプランナーじゃ？」
「薫、だったっけ？さっき私のおっぱい見てたわよね。どうしたいと思ったの？素直に話したら、ご褒美を上げても良いわ」
「な、何を、何をするんだっ」。

天羽は薫の耳元で囁くと、慣れた手つきで薫の乳首を弄びだした。

ピシッ！

「痛っ！ううっ…」
「あまり騒ぐと、もっと痛くするわよ。もっとも騒いでも、この部屋は完全防音よ。どう、ご褒美にする？それとも、もっと罰が欲しいの？」。

薫は天羽の手に短い一本鞭を確認した。

「うふふっ、男のクセに乳首おっ勃たたせてぇ。ほらっ、どうしたいのよ」

ピシッ！

「うっ、うう…」
「言わないのね。『乳首が感じます。もっと乳首を気持ち良くして下さい』って言いなさいっ」
「…言う訳ない、だろっ」
「まあいいわ、今はね。あらら、でも薫は罰がお好きなようね。きっと痛いのがお好きなのね」
「な、何をっ」
「おほほっ、叩かれてさっきよりも愛液が滴ってるわよ」

天羽は薫の陰茎の先端から溢れるカウパー腺液を指先で拭ってから続けた。

「弘美、続けなさい。全て正直にね」
「はい、天羽様」。

父親の俊光に寄り添いながら、弘美は天羽に従い告白を再開した。

「薫さん。わたし、あなたのこと本当は好きでもなんでもないの。それどころか、今ではあなたを軽蔑しているわ」
「軽蔑？」
「そう、軽蔑よ。確かあなたと再会したのは1年前の駅前よね。でもね、ふふっ、あれは偶然じゃないのよ」
「ぐ、偶然じゃないって？」
「駅前の出来事よりも前から、あなたの事を天羽様が調べて下さっていたのよ。戸籍に載っている事は当然だけど、会社でのあなたの立場、勤務状況、恋人の有無、恋愛経験、それに趣味や思想、性癖などプライベートな事までね」。

想像すら出来ない言葉が弘美から淡々と告げられた。まるで他人事の様に、冷静で冷酷な話し方だった。

「そのお陰で、薫さん好みの髪形や洋服、言葉遣い、仕草まで前もって知る事が出来たわ」
「…なっ」
「だから、あの日、駅で再会する時には薫さん好みの女性を完璧に演じる事が出来たのよ。もっとも、ふふっ、あなたのお好みは、昔も今も、殆ど変わってなかったみたいね。だって、あなたのお好みは、私の容姿と格好だもの。だから演じるのにあまり苦労はなかったわ」
「…ほ、ほん、と、なのか？」
「薫さん、わたしと再会した時、一目惚れしたんじゃない？」。

弘美は小悪魔のようにクスッと笑い、一拍を置いた。

「じゃあ、あの出会いは嘘なのか？」
「そうね。薫さんに一目惚れしてもらう事が目的だったから、嘘というより偽りね。でも、もうどうでもいいわ」
「どうでもいい？」
「どうでもいいことなのよ。だって重要なのは、入籍よ」
「…」
「さっき、天羽様があなたを調べたって言ったでしょう。その中には薫さんの部屋の隠しカメラも含まれるのよ」
「隠し、カメラ？」
「そうよ。隠しカメラ、それも1つ2つじゃないわ。クスッ 盗聴器やパソコンウェブカメラ用の盗視聴ソフトもあったわ」
「いっ、いつの間に、そんな事を…」。

何ら対応出来ない苛立ちよりも、弘美の最後の開示に薫は青ざめた。