本作は薫さんの妄想を文書に置き換えました。また加筆修正においても薫さんにご協力頂きました。感謝を込めて本短編を薫さんに捧げます。著者
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日本では梅雨入り前のほんの僅かな期間だけが正しいジューンブライドなんだろうな、今にも泣き出しそうな曇天の夕空を見上げ、薫は思った。
明日は晴れて欲しかった。
ブブッ…ブブッ…ブブッ…
薫は胸ポケットの上に手を当て、バイブの振動を確認してからスマホを取り出した。画面には清水弘美さんの表示。それは明日、新郎神埼薫の新婦となる婚約者からのメールだった。
"薫さん
今から少し打ち合わせをしたいの。
式場でお待ちします。
母親の形見もお見せ致します。
弘美"
明日の天気の心配か何かだろうと気軽に開けたメールは、どこか切羽詰まった短い文面だった。
薫は最近の行動を省みたが、もちろん潔白だった。浮気などしていないし、疑われるような事もなかった。
"弘美さん
分かりました。
式場にこれから向かいます。
薫"
簡潔な返信の後、薫は式場に足を向けた。