貴女である事は、交差点に立った時から気づいていたが、わざと視線を逸らす
信号が変わると、他の人と同じように歩き、他の人と同じように貴女とすれ違う
声はかけず、視線も逸らしたまま
たとえそれが、一見安全なものだとしても、予定にないならば私達は他人として行動する
それだけが、最低限の、絶対的なルール
隙間は念入りに計画して作る
一定以上の時間が欲しいし、それを長く続けるために、可能な限りのリスクを減らさなければいけない
ゆっくり曜日を、時間を、場所を決めていく
すれ違った貴女は、今頃何を考えているか想像する
来週、自分が受ける扱いか、先週の行為か
全裸で床に寝たまま、顔を踏みつけてくる足の裏に舌を這わした時の感情を思い出したか
それとも男の腹の下で、妊娠をねだる言葉を言わされ続けたときの事か