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1:なつきちゃんの秘密2
投稿者:
はやま
◆1KAwi07cG.
母 「ここが卓球場ねー」
扉越しからカッカッと球を打つ音がする。扉を開けるとずらっと並んだ卓球台とそれを囲んだ大勢の男子部員、アミを持って必死に球を拾う下級生らしき部員の姿が見えた。 森川 「ああ!なつきちゃんにお母様!来てくださったのですね!」 ユニフォーム姿の森川が出迎えてくれた。 森川 「女子の練習場はこの隣にあるんですよ。顧問には話を通してあるのでご案内しますね。よし、お前たち!10分休憩だ!」 部員達は一斉に「はいっ!!」と返事をし各々に壁際に座り込んだ。名門と名高い○○小学校の生徒だけあって小学生ながら統率が取れている。 なつき 「何人か知ってる子がいる…」 母 「強い学校だからね~。全国大会とかで戦ったこともあるんじゃない?」 なつきと母はひそひそと小声で会話をする。部員の方もこちらを物珍しそうに注目したりひそひそと何かを話して盛り上がっている。 なつき 「もしかして男だってバレてるのかな…」 母 「ないない。あんた全然男の時の面影ないし、逆に可愛いって噂されてんじゃない?」 なつき 「そ、そんなわけないよ!」 顔を赤くしながらなつきは否定した。 森川 「ここが女子の練習場です。」 女子の練習場は男子に比べると広さも台の数も小規模なものだった。練習している部員もいるが男子の練習を見た後だと何処か覇気がない。 尾崎 「はじめまして。私が女子卓球部顧問の尾崎です。森川先生から話は伺っております。」 顧問を名乗る若い女性が現れた。 母 「はじめまして。如月です。これから娘がお世話になります。ほら、なつき、挨拶しなさい。」 なつき 「如月なつきです…これからよろし…」 尾崎 「あなたがなつきちゃん暖暖あら~本当に可愛いわね!」 そう言いながら尾崎はなつきに抱きついた。 なつき 「え?ええ?」 森川 「えーと、尾崎先生。親御さんの前ですから。」 尾崎 「ああっ!失礼しました。娘さんがあんまり可愛いので。なつきちゃんもごめんね。」 母は苦笑いを浮かべ、なつきは唖然としている。 尾崎 「はい!全員集合!ちょっと早いけど新入部員を紹介するわ。」 部員が「はーい!」と高い声をあげてゾロゾロと集合する。 尾崎 「この子が如月なつきちゃん。理事長自らがスカウトして来た程の実力者よ。」 なつき 「よろしくお願いします…」 パチパチパチと小さな拍手が起こる。 尾崎 「じゃあ練習再開!なつきちゃんは今日打ってく?」 なつき 「いえ、今日はいいです…」 母 「あら、せっかくだから打たせてもらえばいいのに!体操服も手に入ったし。」 なつきは余計なことを…と内心怒りを感じた。それに今体操服は養護教諭の沖田のせいでとても着られる状態ではない。 なつき 「いや、ラケットもシューズもないですし…」 森川「ラケットならお貸ししますよ。僕もなつきちゃんが打つのを見て見たいし。 なつき 「え、あ、でもシューズが…」 母 「シューズならさっき体育館シューズがあるじゃない。」 なつき 「う、うーん。体育館シューズか…」 ここまで逃げ道を塞がれてはやるとしか言えない。 なつき 「じゃあお願いします…あの!体操服になるのは手間がかかるので制服でやらせてもらえませんか?」 尾崎 「?まあいいけど…じゃあ観月!ちょっと打ってくれない?」 観月 「はい。わかりました。」 落ち着いた感じの大人びた女子生徒が反応した。 尾崎 「ごめんね、中村。なつきちゃんを観月と打たせて見たいから代わってもらえる?」 中村 「わかりました…」 観月とさっきまで打っていた中村は少し不服そうに場所をあけた。 なつきは罪悪感を感じながら森川からラケットを受け取り台につく。ブレザーにミニスカートに体育館シューズといったアンバランスさに今更ながら気が滅入る。 尾崎 「この子はキャプテンの観月あかね。この部のキャプテンでもあり、全国大会に個人で何度も出場しているエースよ。」 観月 「よろしく、如月さん。わからないことがあったらなんでも聞いてね。」 頼りになりそうな人だなーと思っていると、 中村 「この子、こんな格好で観月先輩と打つんですか。」 と唐突に先ほどまでこの台で打っていた子が口を開いた。 観月 「こら、まり!失礼なことを言わない!」 中村 「だって…」 尾崎 「この子はまだユニフォーム持ってないんだし、しょうがないでしょ。」 中村は渋々去っていった。 観月 「如月さん、ごめんね。あの子も悪気はないんだけど…」 なつき 「いえ、大丈夫です…」 尾崎 「じゃあ軽く基礎打ちでもしてみようか。」 なつきは久々の卓球を楽しむことにした。慣れないラケットと半月のブランクで体が思うように動かないながらも少しずつ感覚を取り戻していった。 なつき 「(この観月って子基礎打ちの段階で相当上手いってわかるな…動きに無駄がないし、なんか凄く綺麗だ。)」 そんなことを考えながらラリーをしていると、 観月 「如月さん、もっと強いボール打ってもいい?」 なつき 「え?は、はい!」 突然の申し出に承諾した途端ものすごいドライブ回転したボールが飛んできた。それを必死に返すなつき。 尾崎 「観月の攻撃をラリーできるなんて、やっぱりなつきちゃん只者じゃないわね。」 いつの間にか部員もなつき達のラリーに注目していた。なつきもここまできたら負けられないと応戦した。 なつき 「(ここで決める!)」と決め球を打とうとしたその瞬間、ブワッとスカートがめくれ上がった。 なつき 「きゃっ暖暖」と悲鳴をあげ、スカートを抑えてしまったため球はそのまま床に落ちた。 なつき 「あっ…」 その様子を見た部員は練習を再開した。中にはクスクス笑っている子もいる。 観月 「いいラリーだったよ。それにあのまま打たれてたら多分私が負けてた。」 尾崎 「凄かったわよ!これなら団体で全国大会も夢じゃないわね。」 森川 「いやー凄いラリーだった!理事長がスカウトしてくるわけだ!」 周りの絶賛の声よりもなつきは大勢に下着を見られたことの方が気がかりだった。 なつき 「あの、今日はこれで失礼します。」 観月 「もう帰るの?もっと一緒にうちたかったんだけどな。」 なつき 「すみません。明日の準備もありますし…」 観月 「そっか、転校生だもんね。また、楽しみにしてる!」 尾崎 「明日も練習あるからなつきちゃんも参加してね。ユニフォーム用意しとくから。」 なつきは「わかりました。」と返事をし、ラケットを森川に返して母と共に卓球場を後にした。
レスを見る(2)
2014/09/01 06:14:47(nRh6sxOM)
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