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1:らぶらぶ
投稿者:
ま
交際を始めてから一年を過ぎた二人は、そろそろ当初の高揚感を忘れ、一
緒にいるのが当たり前のようになってきた。二人で部屋にいるときにお互い 黙っていても、息苦しいようなことがなくなった。二人とも、愛し合ってい ることをわかっているので、安心して、黙りたいだけ黙って、漫画を読んだ りゲームをしたりして過ごす。それでも、時々はそういう空気に退屈を感じ ることがある。たいてい、恵美のほうが先に感じる。ふと、付き合い始めた 頃の「ドキドキ」が欲しくなる。 直樹のベッドに寝そべって漫画を読んでいた恵美は、それも読み飽きてし まって、退屈を感じた。直樹に目をやると、ベッドの縁を背もたれにしてあ ぐらをかきながら、余念なさげにゲームをやっている。普段はもう感じなく なった、そばにいるのに放って置かれている寂しさを思い出して、かまって ほしくなり、ベッドの上から顔を近付けた。テレビ画面を見ると、やってい るゲームは、競馬シミュレーションゲーム、いわゆる馬ゲーである。 「なにやってるの?」 恵美はゲームをやらないので、どういうゲームかはわかっても、ゲーム中 になにをやっているかはわからない。 「ん?種牡馬を選んでるの」 直樹は答えたが、それでも恵美にはわからない。 「しゅぼばって?」 「うーん、お父さんになる馬。これから、繁殖牝馬…まあ、メス馬に、その 馬を交尾させて、子供を作るの」 「ふーん。なにこれ。そのしゅぼばって、交尾するの一頭だけじゃない の?」 「うん。つけようと思えば全部につけられるよ」 「一夫多妻制ってこと?」 直樹は恵美のその質問をおかしく思った。優秀な馬なら年間百頭以上も種 付けをするのが当たり前で、しかも精子を与えるだけで妻を持つわけでない ので、知っている人なら、それを一夫多妻だなどと思いはしない。しかし、 知らない人からしたら、それも日本人の感覚からしたら、そう思うのも無理 はないのかもしれない。むしろ素直な考え方なのかもしれない。 「まあ、そんなものだね」 本当は違うとは思ったが、全く的外れというわけでもないので、その違い を説明するのも大儀で、そう返事をした。 「いやあね」 恵美は、直樹が競馬好きなので、馬の真似をして一夫多妻、つまり浮気を しやしないかと微かに不安になった。しかしすぐに、それはあまりに飛躍し すぎた考えだと思って、そんな突拍子もない発想をした自分を馬鹿馬鹿しく 思った。直樹は、何がいやあねなのかわからなかったが、独り言のように聞 こえたので、わざわざ追求するほどのこともないだろうと思って、黙ってい た。恵美も、返事が欲しくて発した言葉でなかったので、直樹がなにも言わ ないのを気にはしなかった。 しばらくゲーム画面を見ていたが、それもすぐに飽きた。ゲームに夢中に なっている直樹を見て、先まで自分だって漫画に夢中になっていたくせに、 私がそばにいるのに何故放っておくのか、と苛立つような気持ちになった。 そこで恵美は、ベッドを滑り降りて、直樹の横に座って、ぴったり寄り添っ た。 直樹は、不意に、腰の辺りに柔らかい弾力のある抵抗を感じたので、胸を 鳴らした。首を捻じ曲げると、恵美が、頬を赤らめて、唇を尖らせて、潤ん だ瞳でじっと見つめている。女の香りがする。そうして、不思議と恵美の気 持ちは直樹に伝わった。 「ああ。ごめんね。退屈しているね」 恵美はしんから嬉しくなった。気がついてくれる直樹のことを本当にあり がたく思った。これだから私は、この人が好きなのだと。 直樹はすぐにゲームをやめて、再び恵美を見た。もう唇を尖らしていな い。その代わりに微笑をたたえている。見つめ合っていると、恵美はすっと 瞳を閉じた。直樹は恵美と唇を重ねた。 長い接吻が終わると、恵美は直樹に抱きついた。直樹は恵美の乳房の感触 を自らの胸で堪能し、股間を熱くした。恵美はそのまま直樹を押し倒して、 今度は自分から直樹の唇を奪った。舌も入れた。自分の股間が直樹の股間に 当たって、勃起しているのが知れた。恵美は押し付けるようにして、腰を動 かした。下着やズボン越しにでも、直樹の固くなったものが自分の敏感な部 分を刺激して、思わず息が荒くなった。直樹もまた、衣服越しに感じる恵美 の女性器の感触に心地良さを感じた。 すると恵美は、ふと立ち上がって、ベッドに飛び乗った。そうして、体を 起こした直樹に、目で、来てと言った。それを聞いた直樹は自分もベッドに 飛び乗り、恵美の服を脱がせていった。 柔らかな乳房を揉んだり、乳首を舌で転がしたりした。陰部に指や舌を這 わせた。恵美は溜息のような喘ぎ声を挙げながら、それら全ての行為に満足 を感じていた。恵美も負けじと、指を舐めたり、耳を舐めたり、それから、 性器を舐めたりした。直樹も、恵美と同様の気持ちになった。 前戯を終え、挿入した。二人して腰を振りまくった。恵美は、奥に奥に届 くように、直樹に合わせて腰を使った。そうしながら、ある程度落ち着い て、安らぎを与え合う関係も勿論いいけれど、たまにはこうして刺激と興奮 を感じたいものだと思った。しかし、直樹の性器が膣の内壁を擦ると、気持 ちよさだけに心が奪われて、そういう考えもあまりできなくなり、あとは、 「気持ちいい。気持ちいい」 と呟くだけになった。 直樹もまた、性器を締め付けてくる恵美の膣を突くたびに快感を増してい き、いよいよ射精が近付いた。 「種付けしちゃいやあよ」 と恵美は言った。直樹は、恵美のすべすべのお腹に精を放った。 二人とも満足しきって、添い寝をしながら息を整えた。 「いつかは恵美に種付けしたいな」 と直樹は恵美の髪の毛をなでながら言った。恵美は、自分も言ったが、人 間の場合に種付けという言葉は、なんて下卑ているのだろうと思った。言葉 だけ取ってみると、まるで愛などないらしく思われた。けれども先からの流 れで洒落のつもりで言っているのはわかっているので、それはそう思っただ けでしまった。 「いつかね」 恵美はついそう返事をした。本気でいつかは直樹の子供を産みたいと思っ ているわけではない。かといって、産みたくないと思っているわけでもな い。まだ高校生の二人にとって、そんな、いつになるか見当もつかないよう なことは、まるで実感が湧かないのである。そこで恵美は、心の内で呟い た。 「いつかそんな日が来るのかしら? でも、そうなったら素晴らしいだろう な。子供を産むということがじゃない。いや、それも勿論素晴らしいことだ けれど、それよりなにより、私たちがこのまま大人になって、子供を作ろう かと思えるに到るまで、愛し合い続けられること、そう人に巡り会えて、ず っとそばにいられること、それらのことは、どれだけ素晴らしいことかし ら!」 自分の髪を優しく撫でる直樹の大きな掌に安心を感じながら、この人を生 涯愛し続けたい、愛し続けられるような人でいて欲しいと願った。
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2006/07/23 19:24:55(C3xo9xL0)
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