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1:ナメ子
投稿者:
ま
正直は中学生になった。
ある日、クラスメイトの男子が数人集まって、 「今日、ナメ子のところに行こうぜ」 と話しているのを聞いたので、興味津々、 「ナメ子って?」 と話に加わろうと試みると、男子たちは怪訝そうな顔をして、お互いの顔 を見合わせた。正直は、いけなかったかな?と思って、気まずく、立ち去ろ うとすると、 「特別にお前にも教えてやるよ。放課後、ついてこいよ。でも、絶対に誰に も言うなよ」 とそのうちの一人が言ったので、正直はこくこく頷いた。 ナメ子ってなんだろう?正直はすぐに知りたく思ったが、ついて行けばわ かるだろうとも思い、あえて追求しなかった。自分で勝手に想像しながら、 放課後を待った。 アダルトビデオを見た経験も、オナニーをした経験も持たない正直の想像 力では、ナメ子、という女の人であるらしいものの正体を、正しく想像する ことはできなかった。 放課後。言われたとおりについていった。正直を含めて6人の男子が、ぞ ろぞろ歩いて、向かった先には、正直の知らない、一軒家。1人の男子が、 チャイムを鳴らした。 すぐに戸が開いた。女が現れた。正直は胸を打たれた。美しいのである。 「あら。また来たの」 女は無表情で言った。 「あがって」 表情を変えずにそう言って、女は6名の男子を招き入れた。5人は躊躇す ることなく、するすると家の中に入っていった。正直は、今はじめて見たば かりの人の家に入ることに、少なからず抵抗を感じたが、他の5人が慣れて いるらしいのが心強く、遅れまいとして、ひっついて中に入った。 家の中はきれいだった。居間から、テレビの音が聞こえた。 その居間に通された。 「誰からする?」 女が言った。 「俺から」 1人が言って、女とともに居間を出て行った。正直にはさっぱりわからな かった。 女と、その1人が出て行くと、残った4人は、それぞれ、我が家にいるか のようにくつろぎはじめた。どっかとソファに座り、テレビのチャンネルを いじくり、勝手に飲み物をいれている者さえいた。正直は驚いたが、こいつ らにとってここはそういう、友達の家みたいなものなんだ、と判断して、遠 慮は無用と思ったが、すぐに同じようにくつろぐ気にもなれず、ソファの隅 にちょこんと座った。 出て行った2人はなにをしているのか聞いてみた。 「フェラチオ」 にやにや笑いながらそう答えた。正直は、その言葉の意味を知らなかっ た。 やがて、出て行った男子が戻ってきた。満足そうな顔をしているように見 えた。入れ替わるように、別の男子が、1人、居間から出て行った。 「なにをしてたの?」 と正直が聞いても、 「すぐにわかるよ。お前は最後な」 と要領を得ない答えが返ってくるばかりであった。 また、1人が戻ってくると、また、別の1人が出て行った。次々とその入 れ替わりを繰り返し、いよいよ、正直の番になった。 部屋の場所を教えられ、居間を出た。緊張していた。しかし、みんな、嬉 しそうな、楽しそうな顔をしていたので、悪いことはないのだと思った。部 屋の前に立って、ノブに手をかけるとき、一瞬ためらったが、えい、とドア を開けた。 女は、ベッドに腰掛けて、微笑していた。どきんとした。 「君は、はじめてね」 女は言ったが、正直はどう応じていいか分からず、部屋の入り口で佇立し ていた。すると、女がおいでおいでしたので、正直は女から少し離れたとこ ろに立った。女は、正直の手を掴んだ。正直は、冷たい、と思った。 女は、掴んだ手をぐいと引き寄せ、自分の隣に正直を座らせた。正直は、 別段、女を苦手としているわけでもなかったが、年上の、いや、年齢など知 らないが多分年上の、女にそこまで接近した経験はなく、どぎまぎした。し かも、美人である。としは、見た目から、20前後であろうと推測した。 「なにをするんですか?」 緊張で声が震えていたので、恥ずかしくなった。女は笑いながら、 「フェラチオ」 と、先も聞いたことを言った。 「それって、なんですか?」 単純な疑問を口にすると、女は意外そうな顔をした。 「知らないんだ。いいのかな。まあ、いいわ。教えてあげる」 正直は、やっと謎が解ける、と思って、嬉しくなったが、女が突然、自分 のズボンに手をかけ、ベルトを外そうとしたので、慌ててその手を払った。 「いやなの?」 正直には、その女の言うことがわからなかった。幼い正直の頭では、今ま で知らなかった女に、ベルトを外されるシチュエーションなど、起こりえる ものとは考えられず、女が、何をいやと問うているのか、理解できなかっ た。 「何をするんですか?フェラチオって何ですか?」 少し怒りに似た感情を覚えつつ、先と同じ質問をした。女は、微笑したま ま、 「気持ちのいいことよ。とりあえず、私に任せてくれる?最初は恥ずかしい かもしれないけれども、我慢してくれる?」 と優しい口調で言った。美女が、優しくお願いしてきては、正直も無下に 断ることもできず、黙って従うことにした。 女は正直のベルトを外し、ズボンの前を開け、さらにパンツの前を開け、 中から正直の一物を取り出した。知らないといえども、正直の予想した通り の行動だった。正直は、実際にどういう行為をするのか、セックスというも のがどういうことをするものなのか、具体的には知らなかったが、そうい う、いわばエッチな世界が存在することは、知っていた。だから、女がベル トを外そうとした瞬間、なにかエッチなことをしようとしているのだ、とい うことは何となく予想できた。そうして、思わず手を跳ね除けたけれども、 知らない世界に足を踏み入れる、期待と好奇心があったことも事実だった。 女はフェラチオを始めた。正直は愕然とした。この女は気違いだと思っ た。女が、人間が、生き物が、男の性器を口でくわえるなど、どう考えても 思いつくことでなかった。 女には幻滅したが、一度任せると決めた以上、黙って成り行きに任せた。 すると、最初はくすぐったいような、むずがゆいような気がしていた、女の 口、舌の感触が、気持ちいいように感じられてきた。恥ずかしさと緊張で、 萎れていたそのものも、痛いくらいに膨張した。そこを舐められのが、また 気持ちよかった。そうして、自分のものをしゃぶっている女を、よくよく見 てみると、それがなんだか、異様に興奮を感じさせるように思われた。支配 感。征服感。自分の前にひざまづいて、一物をしゃぶっている女を見ている のは、気分が良かった。さらに、そうしている女と目が合うと、むらむら と、体の奥底から、それまで一度も味わったことのない感情がわきあがって きて、正直の心を支配した。経験不足の正直の思考では、それが性欲だ、と 断定せしむるに能なかったが、その感情は、正直の高揚感をいっそう高め た。 やがて、尿意に似た、しかし確かに違う、何かが出そうな感覚に襲われた ので、 「やばい、やばい、出る、出る」 と女に警告を与えたが、女は口を離そうとせず、さらに刺激を強めた。 生まれて初めての射精をした。しながら、ああ、それで、ナメ子。と朦朧 とした頭で考えていた。出し尽くすと、女は口を離し、自分の手に、その精 液を吐き出した。そうして、なんだか楽しそうな顔をして、言った。 「すっごい、濃い!射精したのも初めてなの?」 それから正直は覚醒した。性欲にである。猥談を頻繁にするようになっ た。アダルトビデオはまだ借りられず、お金もなかったので、エロ本を立ち 読みなどして、性に関する情報を得た。友達からは、エロ大王とか、スケベ 魔人とか、下劣極まる異名を与えられたが、止まらなかった。それだけ、あ の体験が、思春期に入ろうとしている少年に与えた影響は、強烈だった。 そうして、ナメ子のことをよく考えたが、その時は決まって、不思議と胸 が熱くなった。オナニーするときも、ナメ子を想った。ナメ子のことをもっ と知りたくなった。 1人でも、しょっちゅうナメ子のところに行った。ナメ子は、いつも笑顔 で迎えてくれた。そうして、いつも最高の快感を与えてくれた。 しかし、それに慣れて、ある程度落ち着いてくると、フェラチオばかりで なく、ゆっくり話をしてみたくなるときもあった。それから、セックスも。 けれども、ナメ子は、せかせかとフェラチオを始めて、それがたまらなく気 持ちいいので、すぐに射精させられてしまって、それで、お終い、というよ うな顔をするので、さらに求めるのが悪いことのような気がして、それだけ で終わってしまっていた。 だが、正直の、ナメ子に対する想いは、日に日に募るばかりで、ナメ子の 全てを自分のものにしたい、と思って、ある夜、布団の中で転転して、悶え て悶えて、がばっと起き上がって、こっそり自宅を抜け出し、ナメ子の家に 向かった。 ナメ子の家の前まで来て、正直は少し冷静になった。夜中は、親が帰って きているから、来てはならない、と忠告されていたのを思い出した。いや、 忘れていたわけではなかった。それとわかっていたが、どうにも抑えきれな くって、感情の赴くままここまできて、しかし、来てみたところでどうにも ならない、と改めて思い直したのである。 けれども、来たからには、何もせずにすごすごと帰るのはもったいない気 がして、迷った。家の、居間の明かりは点いていたので、まだ起きているの だろうとは思った。が、親がいるという。何度かチャイムに手を伸ばした が、押す直前で止まった。その、親とやらが出てきたら、なんとも説明の仕 様がない。まさか、娘さんにフェラチオさせてください、などと言えるはず もない。 迷った挙句、外からこっそり居間のほうに回り、ガラス戸から中をのぞい てみることにした。血迷った行動ではあったが、若い正直は、万一見つかっ てもすぐに逃げればいいや、と思って、敢行した。 しめた!ガラス戸にはカーテンがかけられている。あとは、隙間があれ ば。やった!ここから覗ける。 全く想像していなかった光景が、正直の眼前に展開された。 ナメ子は、交尾をしていた。セックスというよりは、そう言ったほうが適 切であるように、正直には思われた。助けなきゃ!一瞬はそう思ったが、誰 のものも平気でくわえるような女だ、セックスくらい、するだろう。これが 強姦だと、なぜ言える?そう思って、結局、その場で見守るに留まった。し かし、好きな女が、自分でない男と、セックスしている。しかも、激しい。 出たり、入ったり。ナメ子の、鳴き声が聞こえる。 「さとこ。さとこ」 男の声も聞こえた。 正直はぐらぐらめまいがして、吐き気を催して、嫉妬と、怒りを感じて、 居たたまらなくなって、駆け出した。一目散に家に帰って、布団を頭から被 って、忘れようと、他のことを必死に考えたが、どうしても駄目で、なかな か眠られず、それでもやがて落ち着いて、そうして布団を被っていると、自 分はずっとこうしてここにいた、きっと夢だったんだ、という気がしてき て、うとうとと眠気がやってきた頃に、夜が明けた。 夢でないことは明白だった。正直の脳が一番よくそれを知っていた。 後日、ナメ子のところに行った。今度は、フェラチオだけで終わらせるわ けにはいかない、と、決意を固めて、行った。 ナメ子はいつも通りに正直を迎えた。いつもながら、美しい、と思った。 いつものように済まされるわけにいかないので、機先を制して、言った。 「こないだの、夜、ここで、セックスをしていた、あの、男は」 どもりどもりそこまで言って、途絶えた。どうしても問いただしてみたい ことであったが、実際に面と向かって話し出してみると、自分に何の権利が あってそんなことを聞いていいのか、わからなくなった。しかしナメ子は、 ふと悲しい顔をして、 「見てたの、知ってたよ。あれね、私のお父さん」 と言った。見てたのがばれていたとは思わなかった。が、あの男がナメ子 の父親だとは、なんとなく予想していた。あの時間には親がいる。その時間 に男とセックスをしている。懸命な勉強で豊富な知識を得ていた正直にとっ て、近親相姦ということも、今は信じられないことではなかった。しかし、 ナメ子への想いが、それを許さなかった。 ナメ子は話を続けた。 「もともと、欲情の強い人だったみたいなんだけどね、お母さんとよくセッ クスしてるの、私は知ってたわ。それは全然いやじゃなかった。むしろ、仲 が良くていい、と思ったわ。セックス以外のときも、お父さんとお母さんは 仲が良くて、いつも笑ってた。本当に幸せでなければ、あんな自然に笑顔っ て作れないものだわ。その頃は、お父さん、ときどきふざけて、私のお尻な んか触ってきて、成長したな、なんて言ってくることがあって、それには 私、ちょっと困ったけれど、体まで求めてくることはなかったし、お父さん のことはもともと大好きだったから、すごくいやだと思わなかった。でも、 2年前に、お母さんが死んじゃってからは、変わったわ。発狂したのよ。突 然、襲ってきたわ。でも、私も、もともと好色だったからかしら、受け入れ ちゃって、毎日、毎日、お父さんと。それで、どこからどう話が漏れたのだ か知らないけれど、近所の悪ガキ、君のお友達ね、がうちに来て、いつもお 父さんとしてることを俺ともしろって、しないとどこまでも言い触らしてや るって、ばかばかしい、私はそう思ったけれど、本当にそうされちゃった ら、私も困るし、どうにかなだめようと思って、でも、同じことっていうの は、さすがにやだなあ、と思って、口でしたげるからって、したら、意外と 簡単に満足しちゃって、それ以上のことは求めてこなかったわ。でも、それ から、友達を呼んできて、ぎょっとしたわ。ぞろぞろぞろぞろ、何十人も連 れてきたらどうしよう、と思った。でも、仲間内に留めてくれているから、 安心してるわ」 話を聞いても、正直は、納得する気は起こらなかった。しかし、どうすべ きかもわからなかった。ただ、1つだけ、言いたいことははっきりしてい た。 「このままでいいんですか?」 ナメ子は、正直から目を逸らした。 「わからないわ」 沈黙。それを破ったのは、ナメ子だった。 「そんなことは、いいじゃない!さ、してあげる」 明るく言って、暗くなってしまった空気をどうにかしようという、ナメ子 の配慮であったが、反って、正直は誤魔化そうとしているナメ子の言動が気 に入らなかった。 「いやだ!」 それでナメ子は、はっとした。 「駄目よ。うかつだわ」 また、目を逸らした。正直はうつむき、わなわな震えていた。ナメ子は、 正直に向き直り、きっと睨みつけて、 「君の今のその気持ち、恋なんかじゃないわ。やっぱり、いけなかった。君 にはするべきじゃなかったんだわ。帰って!もう、私のことは、忘れなさ い。もう2度と、私と会ってはいけない」 と言った。正直は顔を上げて、ナメ子を見た。厳しい眼差しに、少し怯ん だが、負けじと睨み返し、拳に力を込めて、 「さ、さとこさん!僕と一緒に、逃げよう!」 と絶叫した。あの時、ナメ子の父が、ナメ子のことを、さとこ、と呼んで いたので、それが本名だと思って、そう言った。ナメ子は目を丸くして、ふ っと笑って、 「それはね、お母さんの名前よ。私の名前は、里美。お父さんね、本気で、 そう呼んでるらしいの」 この上ないくらい悲しい顔でそう言った。正直は、眉間が割られた思い で、里美の父に同情を覚えた。 2人、暗澹たる思いで、黙った。また、先に里美が口を開いた。 「逃げる、か。考えたことなかったな」 正直は里美を見た。笑っていた。正直も笑った。 「逃げようか」 と里美が言ったので、正直は喜んだ。 2人は家を飛び出して、走った。 正直は、どうして自分が逃げようなどといったのか、わかっていなかっ た。逃げて、それからどうするかなどは考えていなかった。ただ、どうにか したかった。このままにしておけない、と、幼い正義感から、一緒に逃げ る、それだけを考えた。社会の授業で習った、現実逃避だと思った。けれど も、とにかく、自分が愛するこの女を、守ってやりたいと思った。 「どこに逃げる?」 楽しそうに、里美が言った。里美のその表情が、正直に勇気を与えた。 「わからないけど、南に行こう。暖かいところに行こう」 それがどういうことかもよく考えずに、言った。里美は頷いた。 「そんなら、まずは横浜ね」 2人は走った。走って、疲れたら、休んだ。そうして、歩いた。 正直はときどき里美の顔を見た。本当に綺麗だと思った。視線に気づい て、里美が正直と目を合わせると、里美は笑った。正直も笑った。 2人、ずっと手をつないでいた。 どこまでも行けるはずはなかった。里美は最初からわかっていた。 夢を見たかったんだ。毎日、お父さんの相手をして、ガキどもの相手もし て、私は疲れていた。死にたくなるときもあった。いえ、いつも死にたかっ た。いやいや、死んでいた。死にながら生きる苦しみ。それから逃げたかっ たんだ。正直くんは、他の人とは違う目で私を見てくれて、そうして夢を与 えてくれた。ありがたい。でも、現実は、現実。この空腹も、疲労も、誤魔 化しきれるものでない。正直くんは、いい子だ。私のために、こんなことを させてはいけない。親だって心配しているだろう。将来だってあるんだ。あ あ、私はなんとういうことをしてしまったのだろう。この子に罪はないん だ。これ以上、私のことにまきこんでは、いけない!少しでも夢を見られた んだから、もう十分。楽しかった。幸せだった。ありがとう。 2人は公園のベンチに座っていた。正直は、眠っていた。里美は、すっく と立ち上がった。 正直が目覚めたとき、そばには、里美と、警察官がいた。 「帰ろう」 里美は力なく笑って、そう言った。正直は、そうか、と思った。 横浜にはついていなかった。 交番で、食事をさせてもらった。腹を満たし、元気を回復し、少し気持ち に余裕ができると、正直は焦った。じきに親が迎えに来る。この際、なんと 言われたって、それは構わない。けれども、里美さんは、自分を連れ出した という罪が残されるばかりか、父親とも、恐らく、そのまま。それでは、意 味がない。プチ家出をしただけのことじゃないか。意味がない。 里美を見ると、椅子に座ったまま、こっくりこっくりと、半分眠っている ようであった。正直はしばらく考え、やがて決意を固めた。 警察官の方を向いて、言った。 「里美さんは、父親から、性的虐待を受けています」 里美は、ぱちっと目を開いた。 事態は急変した。
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2005/11/29 18:16:50(oFWgQ4tv)
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