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1:鶴の
投稿者:
ま
意志薄弱な私を笑うがいい。
誠一が仕事の行き帰りに使う道の途中には、川沿いを通る場所があって、 長い直線でその上人も車も少ないので、車を運転しながらぼんやり川を眺め るのが習慣のようになっていた。いつも、そよそよと穏やかに水が流れてい るだけであるが、その日、いつもと少し違ったことは、川辺で鳥が縄に絡ま ってばたばたもがいていたことである。目を細めてよく見てみると、鶴らし い。 誠一は我が目を疑った。昔からこの辺りに住んでいるが、鶴など一度も見 たことがなかったし、居るという話を聞いたこともなかった。急に好奇心が 湧いて、誠一は鶴のいる方へ近寄った。 車を停めて、さらに近づいてみると、確かに鶴である。縄はかなりこんが らがって、いくらとりがもがいても解けそうにない。すでに周囲には無数の 羽根が散乱している。誠一は、もしかしたら死ぬかもしれないと思って、救 出を試みた。 鳥にとっては困難であっても、人の手にかかれば容易に縄は解けた。自由 になった鶴は、ぶるぶるっと身震いをして、ぱっと飛び去った。 「今に恩返しに来るに違いない」 家に帰ってから、先刻のことを思い出し、そんなことを考えたが、もちろ ん本気で考えたわけではない。 ところが、本当に来た。 「ごめんください」 という女の声とともに、玄関の戸が鳴ったので、出てみると、驚くほどの 美女が佇んでいるので、誠一は驚いた。 「もしかして、さっきの鶴?」 先のことがあったので、誠一は思わずそう言って、はっとした。そんなこ とがあるわけない。変な人と思われる。しかし、女の返事は意外であった。 「そう、ですけど、どうして、言っちゃうんですか!」 「は?」 「鶴の恩返しの話を、知らないの?」 「そりゃ、知ってるけど」 誠一は全く要領を得なかった。 「せっかく助けてくださったご恩報じに参りましたのに、正体が知られてい ると判ったら、居られないじゃないですか」 お伽噺では、鶴は、人間に化けて、自分を助けてくれた人に恩返しをしに 来るが、正体が見破られると、去ってしまう。 「ええ!なんだよ。しまったなあ。いやいや、僕は気にしないから、どう ぞ、たんと恩返ししていってください」 誠一はついみっともないことを言った。鶴の女は別に軽蔑もせず、 「駄目です。ルールはルールですから」 「なんだい。そりゃあ」 「でも、まあ、何もしないというのでは、私も参った意味がございませんの で、一回だけ」 「一回かあ。まあいいや。何をしてくれるの?機織り?」 鶴の女は溜め息をついた。 「今時、そんなことをして喜んでくれる人がいますか?よしんば、いたとし ても、あなたはそういう人なんですか?」 「じゃあ、どうするの?」 鶴の女は、言葉遣いは丁寧なれど、喋り方にやけに威厳があるので、誠一 は先ほどから何となく下手である。 「ちゃんと考えてきてます。男との人を喜ばせる最上の方法は、体で恩返 し。わかりやすいでしょう?さ、服をお脱ぎになって」 「え?」 「だから、今夜は、私が相手をしてあげます。私から脱ぎましょうか?」 鶴の女はさっさと服を脱ぎ始めた。誠一は狼狽した。 「ちょっと待て!自分の体は大切にしなくちゃ」 「なに言ってるの?ここは『官能小説の館』なのよ。読者が求めているの は、エッチシーン。男女のまぐわい。乱れる女性の姿。貞操観念なんて、意 味ないわ」 「なに?早口でよく聞こえなかった」 「なんでもないですわ。さ、こうしてあなた好みの女性の姿になって参った のですから、存分に私を抱いてください」 「そう。一目見たときから思っていたんだが、君は、僕が理想とする女性の 容姿に、ぴたりと一致しているんだ」 「長生きすれば、そういうこともできるようになるのです」 「長生き?見たところ若いようだけど」 と言って、気づいた。化けているのだから、外見から年齢を推測すること は無意味だ。 「鶴は千年、と言うでしょう?」 誠一は仰天した。 「じゃあ、千歳?」 「それほどではないですけれど、その半分くらいかしら」 「五百歳。ひい」 五百年前って何時代?誠一は考えたが、あわれ、無学であったのでわから なかった。 「いい加減にして、はじめましょうよ。前置きが長くなるのは、あなたの悪 い癖だわ」 またよく聞き取れなかったが、聞き返すのはやめておいた。 鶴の女は、ぐずぐずしている誠一の服を自分で脱がせて、まずその一物を 口に含んだ。 「昔っから、これだけは変わらないわ」 そう言いながら頭を動かし、舌を這わせる。これがまた、絶妙にうまい。 ねっとりとまとわりついてくる舌は、すぐに誠一の興奮を頂点に届かせる。 「もう出そう」 泣きそうな声で訴えた。 「速いのね」 穴があったら入りたい気持ちになった。 「一回だけってことは、出したら、終わり?」 「ちゃんと一通りしてあげますから、安心してください」 その言葉に安心して、まず一発。口の中に出してしまった。鶴の女はため らいなく飲み込んで、なおも手で刺激を続ける。そのしなやかな指遣いも、 格別の快感である。 「積極的かつ大胆なんだね。ちょっと幻滅だな」 先からリードされっ放しなのが悔しくて、ちょっと反撃してやろうと思っ た。 「あら、どうして?」 「お話の鶴は、もっと奥ゆかしい人だと思ってた」 「そんなら、やめます?」 何も言えなくなった。 「私も濡らしてください」 鶴の女はそう言って、自分から足を開くので、誠一は気違いみたいに興奮 して、懸命にあそこを舐めた。素晴らしく綺麗である。処女ではないらし い。もっとも、処女にも化けられるのかもしれないが。 頃合を見て、誠一は一物を鶴の女のそこに埋没させた。女を抱いたのは初 めてでなかったが、それまでの女がことごとく下らなく感じられてきた。あ まりの気持ち良さに、すぐ果ててしまいそうになるので、そうなる度にペー スを落として、終わるまでにとことん楽しもうと、色々と体位を変えて、ず んずん、ずんずん、心ゆくまで楽しみ、いよいよ堪えきれなくなってきた。 「いいわよ。このまま」 「いいの?」 「だって私は、鶴よ」 安心していいのだかどうかよくわからない答えであったが、誠一はありっ たけ中にぶちまけて、そうして脱力した。異様に疲れて眠かった。 「なんだかすごく眠たいな」 「私がそうなるようにしたのです。満足しましたか?」 「そりゃあ、もう。一回だけなのが残念だな」 「お生憎様」 猛烈な眠気に抗う術なく、眠りに落ちかかっているところで 「どうもありがとうございました」 と綺麗な声が聞こえて、そうして完全に眠りに落ちた。 それからも、川沿いの道を通る度に、川を眺めてみるのだが、二度と鶴は 見つからなかった。
レスを見る(2)
2005/10/14 17:40:11(XYL9XTnA)
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