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1:交換少女
投稿者:
トール
◆Snn1vnkV5g
中沢裕司という男と出会ったのはとある居酒屋だった。お互いに父子家庭ということで意気投合し、何度か顔を合わせる仲にまでなった。
ただ、今思うと、始めからこうなることを互いに分かっていたのかもしれない。こうなることを期待して、近付いたのかもしれない。そう考えるようになっていた。 「佳奈美? 寝たのか?」 隣の布団ですぅすぅと寝息をたてる小学生の娘に小さく声を掛ける。どうやら眠ったらしい。昼間、散々遊び回ったのだから、無理もないことだろう。 「父さん、ちょっとビール買ってくるからな? 部屋を出たらいかんぞ」 眠っていると分かりながらも、私は一応声を掛けた。立ち上がり、時計を見る。短針はすでに二時を過ぎていた。 中沢との約束の時間は二時半だ。私は浴衣を着直すと、少し時間を潰す。そして五分前になった頃、カードキーを持って部屋を出た。 扉を開けると、廊下に付いた明かりが部屋に侵入し、眩しさに思わず目を細める。廊下には、いくつもの扉が並でいるのが見えたが、他の客は一人もいなかった。 そう、ここは我が家ではない。とある高級ホテルだ。 私は時計をもう一度確認すると、早鐘を打つ心臓に合わせるように、足早に一つ上の階へと急いだ。そこに、中沢が泊まる部屋がある。 エレベーターの扉が開いた時、私は思わず叫びそうになった。いや、実際には少し声を上げていた。中沢裕司が立っていたのだ。 向こうは、私に気が付くと、口元に笑みを作ってみせた。別に何かしらの打ち合わせをしていた訳でも無かったが、互いに言葉を交わすことはしなかった。 私はエレベーターを降り、彼は乗る。その間に、互いのカードキーを交換する。後ろでエレベーターが閉まる音を聞き届けてから、私は歩き出した。 事前に聞いていた部屋番号を見つけると、私は周りをさっと確認し、素早く部屋に入った。 暗かったが、部屋の内装は一緒だと聞いていたので、どこに何があるかは大体見当が付いた。寝室は一番奥の部屋だ。 足音を立てない様に、私はゆっくりと部屋に入る。寝室では、小さな寝息が響いていた。 目が暗やみに慣れだし、ようやくその姿が確認出来た。
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2010/04/16 19:05:50(VWSmABZX)
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