「ほら、もうこんなに濡れてる…」
彼の嬉しそうな声に、私は恥ずかしくて恥ずかしくて泣きそうになってしま
う。なのに、それが彼をさらに煽るのか、私の秘所を指先で殊更にゆっくり
ゆっくりと撫で擦ってくる。
唇を噛み締めながら、彼の肩に置いた手に力を込めても赦してくれない。
「…見てごらん……」
そっと俯いた私に彼は、今まで擦っていた指先を見せてくれた。
蜜液で濡れそぼった人差し指と中指は、部屋の明りに照らされて淡く光って
いる。

ああ…、もう……

堪らなくなって彼にしがみついた。
片腕で私を抱きとめながら彼は、あいた手で今度はパンティの上から薄い布
越しに秘所をなぞる様に擦っている。そこから…。
伝わってくる。緩やかな刺激に促されるように、密やかに、けれど、確実に
その波は大きくなって伝わってくる。自分の手ではない、他人の手から伝え
られるそれを快感と認めるには、私の“女”はまだ幼すぎて素直になれな
い。

「待って…、大胆だね…」
しがみついていた身体をそっと離されて、彼が「見て」と言うように視線を
下に向けた。指し示す方を見て、私は目を瞠った。どうにも堪らなくなって
しがみついた時、彼をソファーに押し倒して馬乗りになっていたから。
「ちがっ……あっ…あの…」
何も判らなくて、ほんとうに無我夢中だった。何か言い訳をと思ってもそれ
以上は何も言えず、唇を噛み締めることしかできなかった。そんな私に彼は
優しい声で、
「気にしないで。お風呂入ろうか？」
「…はい」
背を向けてブラジャーを外し、びしょびしょに濡れてしまったパンティを脱
いで、彼に向き直った時、思わず「きゃっ」と声を上げて顔を覆ってしまっ
た。
着ていた物をすでに脱ぎ終わった後で、一糸纏わぬ姿の中に見つけたのだ。
そそり立つ彼自身の物を。
恥ずかしくて、もう…。鼓動が、やけに早鐘のように鳴り響いているみたい
で、苦しくなってくる。
私の動揺を知った彼は、本当に優しい声で、
「おいで」
手を差し伸べてくれた。嬉しかった。
勇気を出して。せめて今は素直になろう。
彼の手をとると、バスルームに連れて行ってくれた。私は、こんな自分が情
けなくなるのだけれど、未だドキドキが収まらないのだから。

「じゃあ、身体洗おうか」
ボディシャンプーを付けた手で私の首周りから肩を擦って、両の乳房を円を
描くように擦って、乳首をちゅっと摘まれる。瞬間身体がきゅっとなる。彼
はそんな事は気にもせずに臍の周りを撫でた後、下生えの茂みを丁寧に洗
い、最後にわたしのそこをすうっとなぞる様に洗ってくれた。
「…私も…」
少し震える手にボディシャンプーを少量とり、同じように彼の肩から鎖骨の
あたりを擦りながら、胸からさらに下へと洗っていき、彼の前に膝まづいて
大切な彼自身を両手で包み込むようにそっと洗った。
手をとられ、
「気をつけて」
そのまま二人で湯船につかると、バスタブから湯が溢れ出る。その音に紛れ
て息を吐いた。向かい合ったまま、口は開くが何もいえない私に、彼はずっ
と微笑んでくれている。胸がちくちく痛むような切ない気持ちが込み上げて
くる。
私の動悸にも似た鼓動よ、どうか静まって…。
「上がろうか…」
「…うん…」
手を握ってくれる彼に促されるまま湯からあがると、彼がバスタオルで拭い
てくれる。お返しに、私も彼の身体を拭いた。
「向こう、行こうか」
「まだ…濡れてる…」
「いいの」
まだ少し雫が流れる身体のまま彼に手を引かれ、ベッドへ歩き出した。
大きくて広い背中を見ながら、これから始まることを考えた。

彼に抱かれる

なんて甘美な響きだろう。
今この胸に込み上げてくる気持ちを、私は忘れることは決してない。
彼と私の関係が不倫や浮気と呼ばれるものだとしても、私の中では、それら
とはかけ離れたものとして存在している。
彼にすべてを委ねて私は女になる。
女の悦びを教えてもらう。
彼に。

握ってくれている彼の手を、力を込めてそっと握り返した。

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