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1:陵辱
投稿者:
ナツコ
脅迫
私鉄沿線の駅を降りると、真正面に古びた感じの商店街のアーケードが見え た。 八月下旬のまだ暑い陽射しが照りつける午前である。 夏子はこの一ヶ月足らずの間で、それまでには一度も訪れたことのない郊外 の住宅地のここを歩くのは三度目だった。 夏子は立ち止まることなくその商店街のアーケードの中に潜った。 白いノースリーブのワンピースに、鍔広の帽子をやや深めに被って、細面で 端正な顔を少し俯き加減にしながら、ある目的地へ足早に歩いた。 薄く栗毛色に染めた髪が肩の下あたりで軽くウェーブがかかっていて、百六 十三センチの体型は細身で、腰に結んだ布ベルトも細く見える。 少し細めに尖った顎と通った鼻筋に切れ長の目が、やや小さめの輪郭の顔に かたちよく整えられていて、四十六才という実際の年齢より、外見的には夏子 はかなり若く見えた。 これで夏子には十九才の予備校生の息子が一人いる。 商店街の真ん中あたりで夏子は狭い路地道へ曲がった。 しばらく歩くと、古いコンクリート造りのアパートかマンションのような建 物が数戸立ち並んでいて、その内の四階建ての横文字の名前の看板のあるマン ションの前で足を止め、そのまま玄関の入り口に顔を俯けたまま入った。 エレベーターで四階のボタンを押す。 ここへ来るのは三度目だったが、慣れるということのないいつも苦渋の末の 訪問だった。 エレベーターが止まり通路に出た夏子は歩幅の狭い歩みで、406号室のドア の前に着いた。 しばらく逡巡と躊躇の表情と仕草を見せていた夏子だったが、違う室の誰か が出て来て会うのもまずいという思いで、チャイムボタンを押した。 中から足音が聞こえたかと思うとドアが外向けに開いて、派手な色の下着姿 の男が白い歯を見せて立っていた。 「十時より五分遅れだな。まぁ入れよ」 三十代半ばくらいの年代で、長身で体格のがっしりとした男の名前は宮本と いった。 夏子は細面の顔面をやや蒼白にして、緊張しているようなぎこちない動きで 中に入った。 煙草と酒の入り混じったような異臭が夏子の鼻腔をつく。 これも慣れることのない異臭だった。 通路の突き当りがリビングになっていて、長いソファとガラステーブルがあ りゴミのようなものがあちこちに散乱している。 Tシャツとトランクス姿の宮本が夏子にソファへ座れと手招きしたが、 「…今日が約束の最後の日です。デジカメとネガを先に返してください。お 金も三十万用意してきました」 夏子は毅然とした厳しい顔で、相手に向かって声を発した。 「慌てなくてもいいじゃないか。お互いに楽しめる時間はたっぷりある。今 日のお楽しみが全部すんだら返してやるよ」 宮本はソファの端にだらしない姿勢で座り込みながら、立ったままの夏子を にやけ顔で見上げながらいった。 「嫌です!ここに早く出してください」 夏子はさらに強い拒絶の意思表示を見せていった。 押し問答が数回続いたが、 「じゃいいからもう帰れよ。あんたとも縁を切ってやる。…その代わり後で どうなっても知らねぇぞ」 と宮本の最後通告のような言葉に、夏子はただ黙するしかなかった。 これまでの二度の訪問時と同じだった。 宮本から夏子はずっと脅迫を受けているのだった。 一人息子の孝之が予備校で、一人の同級生から虐めと金品脅迫のようなこと を長く受けていた。 五年前に夫と死別してから、地方公務員として市役所の職員として勤め、子 供の成長だけを頼りに生きてきた夏子は、その事実を息子から確認するとすぐ に行動に出て、予備校に相談をかけたのだ。 そのことがきっかけで息子を虐めていた学生が退校処分となった。 以前から札付きの不良学生ということだった。 数日後、家に訪問客があった。 予備校を退校処分となったその学生と、もう一人随行してきたのが、いま夏 子の眼前にいる宮本だった。 その不良学生の従兄弟ということだった。 休日で息子の孝之は図書館に出かけていて留守だった。 宮本はその時の崩れた身なりからして、明らかに普通の職業の人間ではなか った。 玄関先で長く押し問答が続き、宮本の声が一際荒々しくなつてきたので、夏 子は止む無く家の中に入れた。 それが間違いの発端だった。 夏子は居間へ相手を招き入れるなりすぐに襲われた。 不良学生も宮本の手助けに回り、必死の抵抗も空しくあっという間に夏子は 衣服の全てを剥ぎ取られ全裸にされた。 そして長い時間をかけて夏子は犯された。 宮本ともう一人の不良学生の二人に蹂躙の限りを夏子は受け続け、そしてそ こで恥ずかしい写真を何枚も、デジカメと普通のカメラで撮られてしまったの だった…。 「帰れ帰れ!あんたにもう用はない」 宮本の突き放すような怒気を帯びた声に、夏子は返す言葉もなく細い肩を震 わせ続けた。 「…わかりました。必ずこれを最後にしてくれますね」 夏子はこれまでの二度の訪問と同じように、自ら従順の言葉を発した。 「言葉だけじゃ信用できねぇな。態度で、行動で示してもらわねぇとよ」 宮本の頭に乗ったようなふてくされた声がリビングに大きく響いた。 これまでと全く同じ図式だった。 夏子はガラステーブルにバッグを置くと、帽子を脱ぎワンピースの首の後ろ のホックに手をかけた。 床の足元にはらりと白い布が落ちた。 白のブラジャーとショーツだけの裸身を夏子は晒した。 ソファにだらしなく座り込んでいる宮本に自らすり寄って、その前で恥ずか しげに跪いた。 細くて白い両手の指を宮本のトランクスにかけた。 夏子の動作に合わせて宮本が小さく腰を動かすと、トランクスは足の膝あた りまで滑り落ちた。 宮本の下腹部の漆黒と同時に、半ば勃起状態のものが夏子の目に突き刺さる ように入った。 グロテスクな色黒の長くて太いものに、夏子のかたちのいい細い指が絡む。 「あっ…」 と夏子は小さく声を上げた。 宮本にいきなり髪の毛をわし掴まれ、口の中に一気にそのものを含み入れら れたのだ。 「ううっ…うう」 夏子は呻くな声を発したが、そのものを口から出すことはなかった。 宮本の漆黒の股間の中へ顔を埋め込むようにして、ゆっくりと上下動を繰り 返すのだ。 やがて夏子の口の中で宮本の色黒のものは硬度と怒張を増し、長い棒のよう に屹立した。 その屹立の上部の皮膚に二つの突起がある。 皮膚の中に丸い玉のような人為的に入れられているのだ。 夏子の喉の奥を屹立の先端が容赦なく叩くように当たってきて、幾度となく 夏子は苦しげにむせ返りの表情を見せた。 唇の下に唾液が滴り落ちていた。 いつの間にかブラジャーのホックが外されていて、宮本の指先が両方の弄ん でいた。 いきなり宮本が両手で夏子の両脇を挟み込むようにして、上体を持ち上げて きた。 宮本の厚い胸に夏子は全身を抱きすくめられた。 顎を手で持ち上げられると宮本の唇がすぐ近くにあった。 「ううっ…」 唇をすぐに重ねられ、夏子はくぐもった声を上げた。 舌を吸われ絡められる。 夏子に抗いの姿勢は一切なかった。 されるがままの夏子だった。 長い時間、思うさま唇を重ねられ舌を吸われた。 唇を重ねながら、夏子は宮本に器用にショーツまで脱がされていた。 宮本の片方の手の指が、夏子の剥き出しにされた股間の中に蹲っていた。 夏子の股間の茂みの中で、宮本の太くて長い指が妖しく蠢いている。 「偉そうなこといって…お前もうぐっしょりだぜ」 唇を離した宮本が忘我状態の夏子に向かって冷ややかにいった。 火の出るくらいの羞恥の言葉をかけられ、夏子は悔しさと無念さを入り混じ らせた苦汁一杯の表情で宮本から顔を背けた。 それから宮本は一旦夏子を横に置くようにして、自分からソファに仰向けの 姿勢になった。 宮本の次の要求は夏子に察知できた。 仰向けになった宮本を、夏子は正面を向いて跨ぎ込むような体勢をとった。 膝を立てたまま、ゆっくりと臀部を宮本の下腹部に密着させていく。 宮本の太くて固い屹立がその下で待機していた。 屹立の先端が夏子の濡れそぼった襞に接触した。 夏子の腰がそのままさらに深く沈んだ。 「ああっ…あっ…あっ」 宮本の屹立の全てを柔肉の中に沈めこんだ夏子の口から、一際高い咆哮の声 が上がった。 赤く上気しきった顔を天井に向けて、汗の滲んだ細い首が大きく仰け反って いた。 夏子の体の中の一番柔らかい部分で、宮本の肉棒は怒張し充満しきってい た。 夏子はしばらく串刺しの状態で体を動けなくしていた。 悔しくもめくるめく快感が下から脳天の先まで突き抜けていく感じだった。 少しでも体を動かせたら意識が失くなりそうだった。 「ああっ…だ、だめっ」 宮本が下から小さく腰を突き上げてきた。 全身に電気が走るような快感に、夏子は身をうち震わせた。 柔らかい肉襞の中で、夏子はもう充分過ぎるくらいの官能の炎に全身を熱く 燃え上がらせていた。 「動け」 宮本が下から短く夏子にいった。 「は、はい…」 夏子は従った。 ゆっくりと自ら腰を上下させに入った。 「ああっ…ああ」 小さく上下運動するだけで、夏子の口から間断なくはしたない喘ぎの声が洩 れ続ける。 宮本の肉棒の圧迫感と、もう一つ肉襞の中のその肉棒に附属している二つの 玉のようなものの動きが、夏子の精神を大きく錯乱させているのだった。 その二つの玉が上下動を繰り返す度に、夏子の熱く煮えたぎっている肉襞を 擦りつけてくるのだ。 「もっと激しく動かんかい」 下からさらに宮本の叱咤が飛んでくる。 宮本の腹に両手を突くようにして、夏子は自ら腰の律動を早くし強めていっ た。 「ああっ…も、もうだめっ…ね、ねぇ…い、いって」 「もっと動けっ」 「お、お願い…い、一緒に…いって…ああっ」 がくんと夏子の細い腰が折れ、宮本の胸の上に上体が倒れこむようにして落 ちた。 夏子が意識を喪失した瞬間だった。 どれくらいの時間がたったのかわからなかった。 茫然とした表情で夏子が意識を覚ますと、両手に窮屈感があった。 ソファに全身を横たえさせられていた。 そして麻縄で上半身を括られていた。 両手が後ろに回されて手首にしっかりと縄が密着している。 夏子の頭の上で宮本が煙草の煙りを吐きながら、誰かと携帯で喋っていた。 「…かまわねぇから来いってんだよ。いまさら四の五のいったってもうお前 も共犯なんだぜ。早く来い…バカ」 その電話が終わると、 「気がついたか。…いま宏を呼んだとこだ。お前との約束の最後の日だ。ゆ っくりと三人で仲良く楽しもうや」 と夏子に向かって快活な声でいった。 宏というのは例の不良学生だった。 「お、お願いです。あの子を呼ぶのだけは止めてください」 自分の息子と同じ年の男に陵辱を受けるのは耐え難かった。 「なぁにいってんだよ。最初の時によ、宏の背中にしがみついてよがりまく ってたのは誰なんだよ」 宮本は一笑に伏してその場を立って便所に行った。 最初の陵辱を受けた日、いまと同じように自分の家の居間のソファで最初に 宮本のつらぬきを受けた。 間髪をおかずに宏ががむしゃらにのしかかってきた。 居間で交互に二度くらいずつ犯され、次には夏子の寝室に運ばれた。 ベッドの上で再び野獣たちの性暴力を抗う力もなく受け続けたのだ。 そして何度目かの行為の時だった。 相手は宮本で、ベッドの上で四つん這いにされ背後からつらぬかれている 時、 「ああっ…い、いい…いいわ」 と夏子は不覚にも、行為を受諾した女としての喘ぎの声を洩らしてしまった のだつた。 それまでは犯されながらも、木偶人形のように何の感情もなくされるがまま の状態で、自分自身も嵐が過ぎ去るのを待つという思いだけだった。 それが宮本に背後からのつらぬきを受けたあの瞬間に、五年前に他界した夫 しか知らない夏子の体と精神の糸がぶつぶつと音を立て、突然切れ飛んでしま ったのだ。 「いいか?いいのか?」 という背後からの宮本の声に、夏子は首を何度となく頷かせてしまっていた のだ。 「宏、前に回れ」 宮本が即座に横にいた宏に指示を出し、夏子の顔の前に膝を立たせて座らせ た。 夏子が自然なかたちで、宏の半勃起状態のものを口に咥えていったのだっ た。 あの時の精神状態がどうだったのか、それは夏子自身にもよくわかってはい なかった。 ただ、それからの夏子の体の反応は、訪問当時と全く異質なものになってい て、宮本と宏の責め立てにも意外なほど従順になっていた。 ベッドの上で胡坐座りした若い宏に跨るようにして、下のほうで腰を深く密 着させていた夏子が、宏の背中にしがみついていたのは間違いのない事実だっ た。 そうした中で、夏子の知らない間に恥ずかしい写真の何枚かが撮られていた のである。 それが宮本の脅迫のネタだった。 つづく
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2010/09/02 16:10:22(x8GtK0TR)
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