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1:輪廻
投稿者:
ThirdMan
日頃はたんなる疎林としか思われていない護国山も、山肌が桜色に染まり出すこの時期になると、にわかに脚光を浴びて、もの珍しそうに上を見上げながら歩く人々で街道もにぎわう。
舗装もされていない赤土の残った道路の両側には、かなりの年月を生きてきたと思われるソメイヨシノの巨木が道路を覆うように立ち並んでおり、春先の土日ともなれば出店なども現れるほどの盛況ぶりを見せる観光の名所へと変わる。 平日の今日は、出店もまばらに点在するだけで、さすがに人の出もそれほど激しくはなかったが、それでもダッシュボード越しに眺める景色から人の姿が消えることはなく、今も、すでに人生をリタイアして、あとの余生は気ままに暮らすだけといった老年のカップルが、京介の乗った車のほうに向かってゆっくりと近づいていた。 夫人のほうは終始にこやかに笑みを絶やさず、隣にいる夫と一緒に歩くことが嬉しくてならないといった顔をしながら、何度も教えるように可憐に咲き誇り始めた桜の枝を指差している。 二人はちょうど京介の車の前で止まり、しばらく上を見上げていた。 今年は例年になく長い冬が続き、遅咲きの桜はまだ五分咲き程度であったが、京介の車の近くに立っているソメイヨシノだけは、日当たりのおかげか、それとも他になにか理由があるのか、立ち並ぶ桜並木の中でも、他の枝に比べて花びらの数が格段に多かった。 ここ一時間ほど、ずっとここに車を停めたままにしているが、京介の車の前で立ち止まったのは、なにもこの老夫婦ばかりではなく、その間も何組ものカップルや家族連れが同じように足を止めては上を見上げていった。 中には、目立つ車両を乗り入れて趣のある風景を壊すなと言いたげに、運転席に座る京介をじろじろと眺める者もいたが、元々は山間部を抜ける道路として利用される場所であるから、車両の通行なども一切規制はされておらず、どこに車を停めたところで他人から文句を言われる筋合いはない。街道とは言っても舗装もされていない山道は、当然駐車禁止の道路標識などもなく、広い路肩を利用して京介と同じように桜の下に停めている車は他にもあった。 ただし、前を見ても後ろを振り返っても、京介のような派手な車両は見あたらない。 「すごいですねえ・・・」 「どうしてここだけ、違うんだろうね」 老夫婦の二人は、車の前に佇んで空を眺めるように上を見上げながら、それまで何人もの人たちが同じように感じていた疑問を口にした。 二人はゆっくりと助手席側に移動してまた立ち止まると、目を細めながら上を眺めていく。 ふと、そのとき何かの物音に気付いたらしい夫人のほうが振り返って、京介のほうに目を向けた。 怪訝そうな顔でしばらく目を凝らしていた彼女は、あっ、という表情を浮かべると、すぐに居心地が悪くなったように夫の袖を引いた。 「行きましょう・・・。」 それだけを言って、夫人は夫の腕を引きながら逃げるように京介の車から離れていく。 突然腕を引かれて、夫のほうは困惑した表情を浮かべ、何事かと夫人に尋ねていたようだが、夫人は後ろを振り返りもせずに急ぎ足で立ち去ってしまった。もしかしたら夫のほうは耳が悪いのかもしれない。 慌てて去っていく二人の様子をバックミラーで確かめながら、さっきまでまさしくこの世の春を満喫していた夫人の顔が、ものの見事に引きつっていたのを思い出して、京介は薄く笑いを浮かべた。 「行っちゃったよ・・・」 頭を撫でながら囁いてみたが、八重は綺麗に整った眉毛を山なりに寄せているだけで、応える元気もないらしい。 赤い唇を開きながら、辛そうな表情を見せるだけだった。 耳を澄まさずともはっきりとわかるほどに、車体の中には春のパノラマには似つかわしくない、いささか不快で不釣り合い音がうるさいほどに鳴り響いていて、耳障りな機械音を消すために、京介は手のひらに握る小さな箱のスイッチを切った。 車内に響き渡っていた激しいバイブレーション音が消えると、八重の身体からふっ、と力が抜けて、京介の股間を心地よく濡らす軟体動物にも少しずつ落ち着きが戻ってくる。 つい先日購入したばかりのバイブは、威力は強烈だが、うるさいほどにモーター音を響かせるのが難点といえば難点である。しかし、それも使い方次第では面白い。 趣味でリフトアップしたサーフはそれなりに地上高があり、隣りに立ったくらいでは中の様子が簡単にわからないようになっている。 だから、あの夫人には八重の姿が見えるはずもないのだが、彼女はダッシュボードの上に置かれたビデオカメラの存在に気付いたのかもしれない。 観光地へやって来きたのだから、その記念を残したいと思うのは当然のことで、京介も多分に漏れず小型で最新のビデオカメラを持ってきていた。 しかし、それは美しい桜並木の景色を録るためではなく、運転席に座る京介たちを記録するためにレンズは車内へと向けられていた。 やや斜め下の方向を捉えるようにカメラの下に台座を置いていたので、角度によっては外からでもディスプレイに映る映像がはっきりと視認できたのかもしれない。 構図を確認するために開いた小さな窓には、膝までズボンを下ろして剥き出しになった京介の股間に顔を埋める八重の姿が映っていた。 長い髪をまとめ上げて細いうなじを見せる八重は、京介の股間で頬を膨らませながら何度も頭を上下させていたので、老婦人には彼女が何をしているのかすぐにわかったのだろう。 人の近づく足音に怯え、話し声に怯え、じっと息を潜めて存在を消し去りたくとも、股間のバイブがそれを許さない。 京介は、振動が止まってからも上下することをやめようとしない頭を撫でつづけた。 「また来たよ・・・。」 向ける視線の先から、今度は肩を組んだ若いカップルが近づいてきて、やはり二人は同じように京介の車の上を指差している。きっとこの二人も車の傍で立ち止まってくれるに違いない。 「ちゃんと、我慢するんだよ。」 股間の疼きを愛しむように頭を撫でながら言って聞かせると、八重は身構えるようにぎゅっと目を閉じて、身体を強張らせていく。 若々しい顔立ちをしているが、それなりに熟成された女である。 子を一人産んで立派に育てた。 分別も良識もある熟母だが、今の彼女は品の良いスカートを腰まで捲り上げて、白桃を二つ並べたような大きな尻をあからさまにさらけ出している。 その尻が、かすかに震えているのがわかる。 「行くよ。」 真っ白な尻から生えたように突き出た黒いバイブは、見るからに凶々しい。そのバイブの底部から伸びた細いコードは京介の手のひらへと繋がっている。 すぐ横まで近づいてきたカップルは、やはり足を止めて上を見上げた。 京介は八重の頭を撫でながら、リモコンのスイッチを入れると、ボリュームを少しずつ上げていった。 胎内深くまで浸食したシリコン樹脂の悪魔が容赦なく暴れ始めると、八重は、ううっ!とひときわ大きな呻き声を上げて、その声を必死に殺そうとするかのように深くくわえ込んできた。 叫んだりはしない。 彼女は、ひたすら堪えることしか知らない。 中間までボリュームを上げると、はっきりと耳に聞こえるほどにモーター音が車内に響き出し、八重の表情から快楽が消える。 並のサイズなどよりはるかに大きな特大バイブは、バイブレーションの音を高めることで自分の威力を他者と八重の肉体に教えていく。きっと男などには想像もつかない殺人的な破壊力があるに違いない。 憐れな八重は、もう舌を使うこともできないと言わんばかりに、痛いほど握りしめていた。 苦しみに顔を歪めきり、息も絶え絶えになって窒息寸前の状態にある。 絶対に許してやらないことを教えるように、頭を撫でていた手のひらで、ぐい、後頭部を押していくと、健気に舌を伸ばして舐めようとする。 すっかり従順になっている態度に満足して、京介はさらにバイブのボリュームを上げていった。 何をしたところで、この人は逆らえない。 「いい子だね・・・。母さん・・・。」 愛しさを教えるように頭を撫でながら、京介の指は、限界までボリュームを上げていた。
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2012/05/04 22:53:13(0qvip5ny)
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