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1:私を守る・・・ (第16話)
投稿者:
ユキダルマ
「メール来てますよ」と由奈に言われ、現実に戻った大樹はゆっくりと抱擁を解き、近いうちに二人で会うことを約束した
互いの番号とアドレスを交換し、由奈は満足してその日は帰っていったが、携帯を部屋に取りに行ったときにメールがすみれからのものであることを知ったため、本当にこんなことをしていていいのかを悩み、顔を引きつらせながら見送っていた ≪タイトル≫ 会いたい ≪本文≫ 今日、ダイちゃんに会いたい 何時になってもいいから来て すみれからのメールはいつになく切迫した雰囲気であったため、「今日は休みだから、いつでも行けるよ。何時頃に行けばいい?」とすぐに返すと、1分後に電話がかかってきた 「はいはい、どうしたの?」 「・・今、会いたい・・すぐに来れる?」 「どうしたの? すみれ泣いてる?」 「・・会いたい・・ダイちゃんに会いたい・・」 「分かった、今すぐに行くよ」 「・・うん」 すみれが仕事を休んで兄のところに行っていたことを知らない大樹は、まだ仕事が終わっていない時間に何故会いに来いと言うのか分からず、職場で嫌なことでもあったのではないかと考えながら、すぐに服を着替えて、家を出た 「ダイちゃんっ!」 玄関ドアが開き、中から勢い良くすみれが飛び出てきて、大樹に抱きついた 「どうしたんだよ、すみれ・・何かイヤなことでもあったの?」 「・・ダイちゃん・・ダイちゃん・・」 「・・何かあったのか?」 胸に顔を押しつけ大樹のシャツを涙で濡らしているすみれに、ただならぬ空気を感じ、抱きしめたまますり足で玄関の中に入り、ドアを閉めた 部屋に入ると嗚咽しながら強く泣き始め、身体を小刻みに震えさせていた 何かに怯えているような姿に、少なくとも会社でのミスや嫌がらせなどによるものではないと感じていた 「すみれっ! すみれっ! 何があったっ!? 教えてっ! 大丈夫なのっ!?」 「ダイちゃん・・わたし・・わたしっ・・うわぁぁぁぁーーーっんっ!」 「・・・大丈夫っ! 大丈夫だよっ! 僕はここにいるよっ!」 何分もの間、すみれは泣き続けた 大声で泣き続けるすみれの姿に大樹も冷静さを失い、頭にポッと浮かんだ古びたドラマの台詞のような言葉を発しながら、大きな腕ですみれの身体の全てを包み込むように、悲しみを共有するかのように抱きしめていた 「・・・」 「・・・大丈夫だよ、すみれ・・僕はどこに行かないから・・」 暖かい腕の中で癒され、兄への怒りや悔しさを、大樹への柔らかな暖かい気持ちに変えることが出来たすみれは、胸の中で顔を上げ、そっと目を閉じた すみれの意図を理解した大樹は、ゆっくりと唇を重ねた 情熱的でも官能的でもない只のキスだが、その時間は長く、すみれはじっと固まったまま瞳を閉じ、大樹はじっとそれを見ていた 乾いた涙が頬に白く長い跡をつけていた ・・由奈ちゃん・・ 愛するすみれと口づけを交わしながら、大樹はその姿になぜか由奈を重ねていた 「・・ねぇ」 「ん?」 「・・あっちに行こう・・」 唇を離し、大きな瞳を開いたすみれは、大樹の手を握り、ピンクのソファのあるリビングの向こうの部屋に向かうことを促した 大樹の喉にはゴクリと生唾を飲む音が響く そこは、すみれが毎日睡眠をとる場所であり、いつも扉を閉じていたため、大樹が興味本位で数度見せてもらった以外は入ったことがない すみれの好きなピンク色で染められたその部屋は、すみれの体には少し大きいセミダブルのベッドと様々な化粧品が所狭しと並べられているドレッサーが置いてあるだけのシンプルな部屋と記憶していた その部屋で朝を迎えることができたら、どんなに幸せだろうと大樹はいつも夢見ていたが、すみれは宿泊することを許さず、また、行為さえも拒んでいたため、自ずとその部屋のことに触れることをやめていた そのため、すみれからその部屋に行こうと言われたのはこれが初めてであった 大樹は戸惑いながらも期待せざるを得なかった 「・・いいの?」 「・・・」 すみれは何も言わず、手を引き、その部屋を開け、大樹をベッドに座らせた そして、大樹に背を向け、壁に埋め込まれたクローゼットの扉の前で、肩が上下するくらい大きく息づきながら俯いていた 「・・・すみれ?」 「座っててっ!」 立ち上がろうとする大樹をベッドの軋む音で感じたすみれは大声を出して制した 驚いて中腰になった体をストンとベッドに落とした大樹は、更に戸惑いながらも、すみれが覚悟を決めようとしているのだと思い、黙ったまま時が過ぎるのを待った 同時に、そこまで覚悟しなければならないことであれば、今でなくてもいい、もっと自然にその時が訪れるのを待ってもいい、待つことはできる、とすみれへの気遣いも考えていた 「ダイちゃん・・」 「・・・」 「・・あの・・」 「無理しなくていいんだよ、すみれ・・」 「・・ううん・・言わなくちゃいけないことがあるの・・」 「えっ?」 すみれはクローゼットを開き、奥から小さな白い木箱を出して振り向いた そしてドレッサーの引き出しから小さな鍵を出し、二つをを持って大樹の前に座った 「・・なに、その箱?」 訳が分からず問いかけると、すみれは鍵穴に小さな鍵を入れ反時計回りに回し、静かに箱を開けた 箱の中には何通もの全て同じ形の封筒が重ねられて入っていた 一番上に置かれた封筒には、左下に「aki」と流れるような文字でサインがしてあった 「・・これを見て」 瞬きもせずじっと見つめながら木箱を目の前に差し出されたので、その勢いに身じろぎながら、大樹は一番上の封筒をとった 「・・開けてないけど・・いいの開けて?」 無言で一度だけ頷くすみれを見て、出来るだけ汚くならないように、綴じ代を静かに裂いた 封筒から中身をとり出す前にもう一度すみれを見ると、再び頷いてじっと大樹の目を見つめた 中からは数枚の写真が出てきた 「なっ!? 何だよこれっ!?」 そこには胸も膨らんでいない幼い女の子が裸で男のものを銜えている姿が写っていた 5枚入っていた写真は全て、口を陵辱されている写真であり、頭を押さえつけられ無理やり捩じ込まれていた 大樹は木箱の封筒を全て掴み、引きちぎるように封筒を開けたが、どの封筒からも裸の少女が写された写真が5枚ずつ出てきた 脚を開き陰部を広げさせられていたり、四つん這いで陰部と肛門にペンを差し入れられていたり、陰茎を埋め込まれ苦痛に顔を歪ませたり、どれもが辱しめを受けている写真であった 封筒の中に一通だけ開けられているものがあった 一番下に置かれていたその封筒の左下には「aki」ではなく、「愛するすみれへ」と書かれていた 大樹は顔を上げ、すみれを見つめた すみれは何も言わず、じっと見つめ返していた 大樹は封筒の中から写真を出した その写真には、風呂場のような場所で裸になっている少女が小さな口を大きく開け、男の小便を注ぎ込まれている姿が写っていた その少女の口元には、すみれにもある小さな黒子が、同じ場所についていた 「嘘だろっ・・」 「・・・」 「こっ、これって・・すみれっ!?」 「・・そう・・私・・」 「どういうことっ? ねぇっ!」 「私は小さい頃・・兄にレイプされたの・・」 「えっ?」 「兄の奴隷だったの・・毎日毎日・・親の目を盗んでは、兄は私を犯してた・・」 すみれは目に涙を貯めながらも、しっかりと強い意思を持つように大樹を見据え、絞り出すように言葉を発した 「すみれ・・」 「私の身体をじっくり見て・・私の身体を舐めまわして・・何度も何度も私の中に入ってきて・・」 「すみれっ! もういいっ! もういいよっ!」 「ううんっ! 聞いてっ!」 「すみっ・・」 強く噛み締めたその唇はうっすらと血で滲み、決意の強さを大樹に示した 「兄は・・兄は、私を犯すのに飽きると、紐で縛ったり、叩いたりして・・痛がる私を笑いながら見てた・・お尻にも色んなものを入れられたし・・おしっこも飲まされた・・写真には無いけど・・体中に汚いものを塗られたこともあった・・そして、こんなふうに写真をいっぱい撮って私を脅した・・逃げられると思うな、お前は俺のものだ、誰かに言ったらこれをバラまくぞって言って脅した・・」 「そんな・・」 「・・私は兄の奴隷・・ううん・・おもちゃだったの・・」 「・・・」 「・・・」 「・・・今でも・・そんなことさせられてるの?・・だから僕とは・・」 「ううん・・・今は違う・・ある時を境に、兄は私に見向きもしなくなった・・」 「ある時?」 すみれは俯むき、シャツの胸元に指をかけて、広げて見せた 「これ・・中学1年生の終わり頃から、私の胸が大きくなり始めたの・・どんどん大きくなって、学年でも一番大きくなった・・兄は私の下着を脱がしては、大きくなった胸をあからさまに嫌悪の目で見るようになった・・それに伴って私を犯す回数が減っていって・・高校生になる頃には全く興味を示さなくなったの・・」 「・・・」 「でもっ・・私は兄にお願いして抱いてもらった」 「えっ!? 何でっ? そんな酷いことされてたのに・・」 「・・・妹を守ったの・・」 「えっ?」 「私に興味がなくなった兄は、次の標的を妹にしようとたの・・だから、妹にだけは手を出さないでってお願いして・・その代わり私が何でもするから・・何してもいいからってお願いした・・そしたら・・兄は全てを受け入れる私に、また興味を持ったの・・」 「・・・」 「兄が思いつく限りのことは全てされた・・・私は妹の胸が大きくなるのを待った・・妹の胸さえ大きくなれば兄から逃げ出すことができるって思った・・でも、妹は私と違って胸が大きくなっていかなかったの・・高校生になっても子供のような身体だった・・たぶん、私たちは本当はそういう体質だったのかもしれない・・私だけこんなに大きくなったのは、小さな頃から兄に女として扱われていたからなのかもしれない・・」 「・・・」 大きな胸の前で両腕を抱え込み、自らを抱きしめるすみれの姿は、最愛の子供を守っているようにも見えた 他方、最後の武器であったその胸が、ともすれば兄によって成長したものであるかもしれないと自ら言うすみれの心は、薄氷のような脆さを感じ取れるものだった 「・・でも、私にとっての転機がやってきたの・・家族がバラバラに過ごすことになって、妹が兄の手の届かないところに行ったの・・」 「お父さんの転勤・・お母さんと妹さんが引っ越したんだよね・・前に言ってたの覚えてる」 「・・うん・・兄も私も別の部屋を借りることになったの・・」 「それで、お兄さんから逃げられた・・・」 「うん・・兄ももう終わりだと思ったみたいだった・・もともと私の身体にはもう興味がなかったし・・でも・・引越してからずいぶん経った頃に、この手紙が送られてきたの・・」 「・・また始まった・・の?」 すみれは大きく首を横に振った 「これは、私へのただの警告・・誰にも言うなっていう・・」 「・・意味が分からないんだけど・・」 「その頃、隣町の公園で小学生の女の子が暴行された事件があったの・・詳しい内容は報道されてないから分からないけど、犯人は大きなカメラを持って、優しい顔で近づいてきたらしいの・・そして言葉巧みに物置に使われていた小屋に連れ込んで暴行した・・その時に写真を何枚も撮って、そのコをそれから何ヶ月も脅し続けてたらしいの・・」 「その犯人が・・・すみれのっ?」 「・・犯人は捕まってないから分からない・・でも、多分そうだと思う・・だから、私に何も言わないようにこれを送ってきたんだと思う・・」 「・・・」 あまりの告白に瞬きをすることも息をすることも忘れ、口を開けたまま唖然としながらすみれを見ていた すみれもじっと大樹の目を見据えている その目は泣きじゃくっていたさっきまでの弱々しいものではなく、大樹に大事な何かを伝えようと確固たる強い意思を持った目だった 大樹はその目に射抜かれながら、母のことを思い出した 「そんな人に母さんがっ・・・」 と母を案じる言葉を発しようとして、違和感を感じた 「・・あれっ・・えっ?・・なんで、母さんなんだ・・・?」 すみれから目線をはずし、部屋の隅に目を向け、すみれの兄が何故、母を求めたのか分からなくなっていた ・・・胸が大きくなるまですみれをおもちゃにしていた ・・・すみれの妹も狙っていた ・・・すみれは妹の胸が大きなるのを待っていた ・・・つまり、大人になるのを待っていた ・・・公園で女の子に暴行したのも、多分すみれの兄 ・・・すみれの兄は間違いなく、少女愛好者 ・・・母は背がかなり低く、胸も膨らみすら見えないほど小さい ・・・肌は透き通るほど白く、四肢は全てか細くできている ・・・体の大きさや形だけを見れば、少女と言ってもいい ・・・でも、顔は童顔ではない ・・・どちらかと言えば妖艶な顔立ち ・・・腰もくびれ、女の身体をしている ・・・どこから見ても、大人の女 ・・・じゃあ、なぜ、すみれの兄さんは母を・・・ 「・・ダイちゃん・・・」 「えっ?」 考えている中、いつもと違う低い声で声を掛けられ驚き、再度、すみれを見た すみれは大樹の手を力強く握り、更に低い声で、静かに一言一言を噛み締めるように言葉を漏らした 「兄の本当の狙いは・・・」 「狙い?」 「・・・恵里菜ちゃんよ」
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2012/02/09 21:23:00(c.nl7lq0)
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