次の段階に移動する、とは言ったがこのまま愛に痴漢するのではなく別の
奴もついでにやっておこうというだけだ。

とは行っても愛の方から志穂……だっけ？まぁ、何でも良いや。ソイツの
元へと進んでいくだけなので時間は小指の甘皮程もかからない。

彼女を見た瞬間………俺は笑うしかなかった。

全身を撫で回され、快感に溺れそうになるのを気丈に耐えるその姿は先程
の愛ちゃんと瓜二つなのだ。どうやら能力の対象が愛ちゃんだけじゃなく
彼女にまで掛かってしまったようだ。しかし

「ピンクの水玉模様のブラってどうよ？」

ぽつりと呟いた俺の言葉は彼女の耳には届かなかったようだ。まぁ、おっ
さん連中の必要過ぎる愛撫を受けてればそうなっても仕方ないだろう。何
せ全身の感度は衣服が擦れただけでも感じるレベルまで引き上げてある。

全身を撫で回されるのは既に愛撫では無い。相手に恐怖を与えうる事ので
きる圧倒的な暴力に等しい快感を与える。

さっきの愛ちゃんと同じなら───だが。

どうも、まだコントロールが不安定のようだ。

最近は練習もしたし、大分慣れたと思っていたのだが、そうでもなかった
ようで少しだけがっかりしている。ソレはこの女のブラの子供っぽさも関
係しているのだろう。

別に嫌いではない。

………だが、何と言ったらいいのか。股間を抓る様な女が付けるブラって
言ったら黒とかさぁ、エロい奴を想像するだろう？それがピンクの水玉っ
てどうなんだよ。

こっちは別の趣向で楽しむとするか。

さっきの愛のエロさに中てられていたのか、エロ方面にしか行かなくなっ
ていた考えに冷静さが戻ってきた。ピンクの水玉模様のブラのおかげとは
思いたくはないが………まぁ、おかげで面白い事も思い付いたし良いとし
ようじゃないか。

指を三度鳴らす。

そして心底驚いた様に俺はこう言うんだ。

「な、何してるんですか！？」

まるで、今、この瞬間、この痴態に気付いた様に。

俺の顔に歪な笑みが浮かびかけるがまだ我慢しなければならないんだ。今
回は設定に凝ってるのだからこんなとこで破綻するわけにはいかない。

こっそりと指を鳴らす。

「けて！助けて！コイツら変態よ！！」

急に声が出る様になった事には一切疑問を抱かず俺にそう懇願してくる。
俺はソレを見てもまだ笑わない。むしろ顔に怒りを滲ませてこう叫ぶ。

「何だって！お前達何をしてるんだ！痴漢だぞ、痴漢！許されることだと
でも思ってるのか！！」

あぁ………ヤバい。

ふつふつと笑いがこみあげてくる。

まだだ、まだ耐えろよ、俺。仕上げの時までまだ時間が必要なんだ。

「あー、すいません」

ほぉら、語れよ俺の傀儡、今回のシナリオを。

「これ嫌がる女子高生を痴漢するタイプのAVなんですよ」

俺の思うままに男は語りだす。俺が即興で思い付いたシナリオをまるで自
分がそういう仕事をしてるかの様に悠然と語りだす。

「すいませんね、この子ってば貴方の事も男優の方だと思っちゃったみた
いで。証拠でもみせましょうか、おい渡辺、原西カメラ持ってこい」

男の言葉に目を見開いて叫ぶ。

「カメラ！ふけんじゃ───ん、いやぁ、待ってって、ばぁあ」

うるさいので黙らせてシナリオを続ける。渡辺も原西も今付けた名前なの
でどっちがどっちという区別はつけてない。必要なのはコイツらではなく
コイツらの持ってるケータイのカメラだ。

さぁ、絶望しろよ。

俺にも志穂にも見える角度で上映が開始される。

愛撫に身をよじるその姿はまさしく

「いや、わ、たし」

彼女の痴態が二台のカメラに克明に映し出されていた。

そしてここにきて俺はやっと歪な笑みを浮かべる事が出来るのだった。

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