彼女は左足に火傷を負っていた。それを白い肌が強調し、よけいに痛々しく見える。
しかし、他にはほとんど怪我がなく、火傷もそれほど酷いものではなかった。
とりあえず、彼女を焼け残ったデパートの地下まで連れていき、今聞けることは全て聞いた。
年は21だという事。
今日は地下鉄で友達と街に遊びに来ていた事。
友達は落ちてきた天井に潰され、自分は爆発の衝撃でホーム下の隙間に入ってしまい、助かった事。
彼女は全てを話し終えると、今まで忘れていた涙を思い出したかのように泣いた。
俺は側で抱いてやることしかできなかった。
彼女が泣いている間、何も話しかけられなかった。
彼女は泣き疲れ眠ったが、俺は眠れない。
今、俺の周りにあるものは、絶望という闇、そして闇を打ち砕く力を持った光。
互いをこれほどまでに愛し合った二人は今までに居たのだろうか?
俺は今まで考えたことも無かった絶望から、生まれて初めての恋を体験したこの日に、興奮で熱くなるこの体で、混乱するこの頭を眠らせることができないのだ。