私は、客が帰って、仕事場に行こうとした時に、彼女に会い、彼女が私の裏の仕事を知った事に気がついた。
「風邪も直ったみたいだね。いつでも、出て行っていいから…。」と、言って、仕事場に向かった。
だが、彼女は出て行かなかった。
私の服作りを、じっと見つめていた。
人づてに聞いた話しなのだが、彼女は、デザイナーに憧れて、田舎から出てきたが、声をかけてきた男の誘いを断れきれずに、高価な物を無理矢理買わされ、闇金融を紹介され、そこから、風俗店を紹介された。
身も心も荒んで、雨の中を歩き、そして、私の古着屋で、倒れたらしい。
私は、彼女に何も聞かなかった。代わりに、仮の名前をつけた。
雨の日だったので、『時雨』にした。
今では、女性のサイズを計る等、やりづらい仕事を担当してもらっている。