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日が落ち、幾分涼しくなった公園で、絵里は娘を遊ばせている。
まだ5歳の娘は、広い広い芝生の広場でしゃがみ、 花を摘むんでいるように見える。 その広場の一角にトイレがある。 男女に分かれた、ありきたりな公衆トイレ。 公園が広く、トイレが公園内に複数あるせいか、 そのトイレはあまり使用されず、ひっそりとしていた。 絵里は木陰の木製ベンチに座り、スマートフォンで娘を撮影しながら、 娘が遊ぶ姿をみていた。 子どもを遊ばせるために公園に来ただけだが、 絵里はスカートを履き、化粧をしている。 それは彼女がどんな時でも女を忘れない為と、 自分で自分に決めたルールだった。 娘に目を向けている。が、気になる事がある。 目の先、公園、広い広い芝生広場の一角にある公衆トイレ、 そこに意識と目を向けてしまう。 絵里が14歳、中学2年の塾帰り、 塾に通う友達との会話で時間を潰してしまい、 22時をこえた時間、彼女は自転車で帰宅していたが どうしてもトイレに行きたくなり、自宅近くの公園、 公衆トイレにかけこんだ。 大きな公園、この時間に誰かが使用しているなんて考えなかった。 男女に別れたトイレの女子トイレ。 彼女はドアに鍵をかける。 便座に座り、携帯をいじっていた。 音がする。声が聞こえた。女性の声。男性の低い声も聞こえる。 良くは聞こえなかった。耳をすませる。 女性が高い声で「ハァハァ」と言っているよう聞こえた。 男性は何か言っているようだが、聞き取れなかった。 ドアをゆっくり開ける。 女子トイレには誰もいない。 あの声が少しだけ聞き取れるようになった。 女性は「ハァハァ」としか言わない。 男性は「静かに、静かに」と言っているように聞こえた。 まだ14歳だったが、それが何をしているのか音と声でわかった。 ゆっくりと女子トイレをでる。 男女隣同士の入口で男性トイレの入口から、そっと中を覗く。 見えなかった。入口からは見えない。 絵美は見たかった。足音を出さぬようにゆっくり歩き、 公衆トイレ裏手に回る。夏の終わりの夜、虫の声が響く公園。 裏手に回ると簡易的な窓から男性用トイレを覗いた。 絵美はまだその小さいな背丈を窓枠に届かせる為、 かかとをあげる。ゆっくりとゆっくりと窓から覗く。 男性トイレ内で女性がくの字になりお尻を男性に向けている。 男性は女性の背後で女性の腰を抱えながら自身の腰を女性に押し付けている。 女性の服は淫らにはだけ、男性はズボンを足首までおろしている。 「ハァハァ」という声と、男性がその女性の声をふさぐためか 手のひらで女性の口元をふさごうとしている様子がみえた。 絵美は興奮していた。 性的ではなく、非日常的なその光景に、驚きと恐さが混じった興奮を感じた。 パンパンと音が響く。 男性と女性の身体が、男性の動き、そのリズムに合わせ響かせる音。 絵美の身体は熱くなった。 夏の暑さではなく、目に写るその光景が彼女の身体を熱くさせた。 と、携帯音が鳴った。 絵美がさきほど塾友達に送ったメールの返信。 絵美は慌てて窓枠の下に隠れ携帯電話を開き着信音を止めた。 緊張が増した。増したというより溢れかえりそうだった。 それでも、声と音は止まなかった。 少し落ち着き、もう一度窓から中を覗く。 声と音はそのままだったが、男性がこちらを見ていた。 目があった。 30代男性。彼は絵美を見ている。 絵美は驚いた。 でも隠れなかった。目が男性とあったまま、そのまま、 それまでと同じように、その光景をみいた。 それまでと同じように、女性は身体をくの字にさせ「ハァハァ」と鳴いている。 男性は絵美をみたまま女性を突いていた。 ふと我に返る絵美。 その場を立ち去り、公園入口に停めた自転車に戻る。 でもどうしても、あの光景が気になった。 絵美は出来るだけ明るい場所、公園脇の自販機前で立ち止まる。 公園、そのトイレがかろうじて見える場所。 絵美は様子を伺った。 時間はさほどたっていなかったが、男性がトイレ入口から出てきた。 女性は出て来ない。 男性はトイレ入口付近で周りを見渡すと、 手をポケットにいれ、タバコだしながら、その場を立ち去った。 絵美はじっとそれを見ている。 女性が出てこない。 5分たっても10分たってもでて来なかった。 何度か絵美のそばを人が通りすがった。 地元の住民。こんな時間に制服姿の少女が公園前で立ち止まっているから目を向ける。 でも誰も公園内は気にしなかった。 皆、公園と少女の横を通りすがった。 絵美はただ一人、そのトイレの状況を光景をみていたから 彼女が確かめるしかなかった。 真っ暗で誰もいない公園。 虫の声がする。男性の気配はなかった。 駅のほうに向かう姿をみていたから、あまり怖くなかった。 男性より、女性の状況が怖かった。 オレンジ色の外灯に照らされた公衆トイレ。 男性用トイレを覗く。 さきほどより大胆に中を覗いてみた。 男性用トイレ、その中で女性が腰を地面、 タイル張りの汚らしい不衛生な地面に腰を下ろし、 乱れたスカートから脚を無造作にさらけ出し、 壁に寄りかかっている。 「あの、大丈夫ですか?」 夏の虫の鳴く声よりも小さな声で絵美がそう聞いた。 返事がない。 「大丈夫?」もう一度聞いたが返事がない。 絵美は女性に近づいた。 頭を下ろし、不衛生な地面にお尻をつけ、くだったりとした女性。 お酒の臭いがした。 絵美の父はお酒が好きだったから、お酒の臭いというものがわかる。 明らかに女性は酔っていた。 酔って、自分がどこに腰を下ろしているかも、 淫らな姿をしているかもわかっていないのだろう。 絵美は女性に触れるくらい近くと、また 「大丈夫ですか?」と聞いた。 小さな蛾がトイレ内を舞っている。 オレンジ色のトイレ内で絵美は女性に触れ、身体をゆすりながらもう一度声をかけた。 女性が顔を少しあげた。 「大丈夫です。」 少女に対して、大丈夫です。と敬語を言ったから 絵美は女性が大丈夫ではないことに気づいた。 綺麗な顔立ちだった。 40代前半。母に年齢が近いと思った。 服装から仕事をしている女性にみえた。 綺麗なアクセサリーも目に入る。 「あの、ここ男性用トイレです。」 そう絵美が言うと女性は アハハと少し笑い、また頭を下げる。 「大丈夫、大丈夫」とつぶやきながら頭を下げた女性。 スカートから淫らに広げた脚、その脚元に、下着が絡まっている。 黒いレースのような下着。かろうじて足首に絡まっていた。 絵美は女性を抱え何度も声をかけながらトイレから出した。 女性を公園ベンチに座らせる。 ぐったりと腰を下ろした女性は絵美の支えがなくなると 頭をベンチに下ろし、無造作に横になった。 絵美は走ってトイレに戻る。トイレ内にあった、女性のものと思う鞄を取りにいった。 その鞄を抱える。トイレ内は蛾が舞っている。 オレンジ色に灯されたトイレ内、地面を良く見ると 白い体液、ツバのような体液がみえたのを覚えている。 大人になり、それが何かわかった。 トイレからベンチに戻ると、女性をベンチで男性がだき抱えている 。 さきほど、トイレ内でみた男性ではない。 スーツ姿のサラリーマン。 男性は絵美に驚いたが、「知り合い?」と聞いた。 絵美は「知らない」と言いながら鞄を男性に渡す。 「あぁこの人酔っているみたい。おじさんが介抱してみるよ」 そう、スーツ姿の男性が笑顔で言った。 絵美は、絶対に知り合いではないと思った。 スーツ姿の男性が、女性を抱え、抱き寄せるいやらしい手つき、その仕草が頭に残る。 絵美はその場から立ち去る。 自動販売機前、そこに停めた自転車にまたがりながら もう一度公園内ベンチをみた。 男性が嬉しそうに女性の脚を触っている。 子供がオモチャを手に入れた、そんな様子にみえた。 絵美は自宅に帰る。23時を過ぎていた。 両親に咎められながらも、公園内の事は話せなかった。 部屋で布団にもぐると恐くなった。 事件になるのでは?女性は無事なのか? と同時に、初めて男性の性欲、そのチカラを感じた。 布団の中でゆっくりと自分の手を股間に近づける。 下着の上からそれをなじり、触れる。 脚をくの字に曲げ、指で下着の上から性器まさぐった。 あの腰を振った男性を思いだしながら。 大人になり、性を知り、あの日の公園が何であったか理解した。 きっと仕事帰り飲み過ぎ、泥酔した女性が 男性に介抱されるように公園内男性用トイレで犯されていたのだろう。 女性自身も気づいていない。 ハイエナのように新たな男が現れ、また女性を味わう。 そんな事だったと思った。 それ以来、絵美は大学のコンパでも入社後の歓迎会、 懇親会でもお酒を飲まなかった。 父は飲める人だったからもちろん彼女も飲めたし、お酒が好きだった。 ただ人前では飲まなかった。あの日が怖かった。 ハイエナ達が怖かった。 だけれど絵美は自宅で一人お酒を飲み意識が遠のくくらい酔うと 自然とあの日を思い出しオナニーをしている。 目の前、芝生の上で小さな花を摘もうとしている娘。 その姿を広い広い公園内片隅の木製ベンチでみている絵美。 目の先の公衆トイレが気になる。 彼女は妄想していた。あのトイレでハイエナに犯される自分を。 その日の深夜、娘が寝静まると、彼女はスーツを着た。 シングルマザー。生保営業をしながら娘を育てている。 土曜日だし、もちろんこの時間から仕事はなかった。 タイトなスカート、ジャケットを羽織ると キッチンでビールを開ける。 夫は浮気をし、新たな女に走った。 絵美はビールを飲みほすと、冷蔵庫からワインを取り出す。 何度もグラスにつぎ、飲み干した。 フラフラになりながら彼女はハイエナを探して公園に向かった。
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2013/09/27 02:52:56(YwwGEUky)
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