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廃校
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:廃校
投稿者: 愛加 ◆A2Ptjw1A5M
私は大学を出て、今はOL1年生。
 ある出版社に勤務しています。
 大学時代から住み続けているアパートに中学の同窓会を通知するハガキが届いたのは、7月初旬でした。
 8月のお盆休みに、中学3年時のクラスメイトが先生を中心にして集まろうということでした。
 懐かしさがフワーッと心の中にひろがって、私はさっそく印刷された『出席』の文字をボールペンで大きく丸で囲んで、返信しました。
 人口1万にも満たない小さな町に生まれ育った私たちにとって、中学は小学校の延長のようなものでした。
 一緒に遊んだ友達が、みんなそのまま中学に進学しました。別の小学校から進学してきた子供たちもおおぜいいたけれど、同じ小さな町で育った子供たちであることに違いありませんでした。
 都会から見れば、みんな身内のような存在でした。
 その小さな町から電車で三十分ほどのところにある市の高校に通うようになって1年日に、町村合併によって私たちが通った中学校が廃校にされてしまいました。
 その当時は、私たちの町が大きくなることの方が嬉しく、別に気にもかけなかったのですが、今になると卒業した学校がないということは,故郷の一部を失ったようでなにか寂しく、もの悲しいような気がしてきました。
 そんな気持ちが、懐かしさをいっそう募らせて、早くみんなに会いたくなってしまいました。まだ1ヵ月以上も先の、お盆休みが待ち速しくてならなかったのです。

 長かった梅雨もあけて、じっとりした不快な汗をぬぐう行き帰りの通勤地獄が続いて、ようやくお盆休みがやってきました。
 手回しよく買っておいた指定席券を握って、お土産と着替えの詰まった重いバッグをさげて、私は新幹線に乗り込みました。
 荷物棚にバッグを上げて、座席に腰を落ち着けると、日頃の生活で味わったことのない安心感が湧いてきたのです。
 私は、発車前の、重い大きな荷物をさげて、自分の席を求めて狭い通路を窮屈げに行き交う人達を眺めていました。
「よお、村上じゃないか」
 名前を呼ばれて、私は通路に立つ男の人の顔を見ました。
「安藤だよ、安藤。忘れたのか」
 私は笑顔でこたえました。
 高校時代はクラスが別だったので話す機会もなかったし、野球部に属していたため坊主刈りだったので、ぼさぼさと髪の伸びた今の顔と、かっての日焼けした顔がすぐには結びつかなかったのです。
「席はどこなの?」
「自由席。××駅までは立ちっ放しだな。じゃ、乗換えの時にな」
 私は、別の車両に移っていくがっしりした安藤君の後ろ姿を懐かしく見送りました。
 確か、私と同じように大学を卒業して就職し、社会人1年目だったと思います。
 間もなく、たくさんの帰省客と観光客を載せて新幹線が発車しました。
 自由席の車両に入りきれないお客が、指定席の車両にもあふれていました。
 私は、3月の卒業休み以来の、4か月ぶりの帰省です。
 駅弁をゆっくり食べて、窓外の田畑のひろがりや、次第に追ってくる山並みを眺めるうち、3時間がたち、乗換え駅に到着しました。
 30分待ちで、私の町を通る単線の電車が出発します。3両編成の短い電車です。
 私は安藤君と並んで、座席に座りました。
 示し合わせて帰省したみたいで、恥ずかしいような気がしないでもありませんでしたが、他に見知っている乗客はいませんでした。
「同窓会に出席するんでしょ?」
「村上さんが出るなら、俺も出ようかな。返事してなかったんだ。今、何しているの?」
 私は安藤君に働いている職場を教えました。仕事の内容を話し、冗談を交わし、安藤君の社会人生活を聞いているうち、もう故郷の駅に着いてしまいました。
 高校の3年間、大学の4年間と、もう7年以上も話をしたこともなかったのに、私は中学生の気分に戻って打ち解けていました。
 同窓会での再会を約束して、私と安藤君は別れました。
 翌々日の夜に同窓会が行われました。40人いたクラスメイトの30人以上が参加し、先生も変わりなく元気で、とても盛り上がった同窓会となり、みな別れたくなくて、2次会、3次会と夜中過ぎまで延々と飲んだり、歌ったりと大騒ざでした。
 席が乱れるうち、私と安藤君はいつの間にか、どこの店でも隣合って座っていました。
 そんな私たちをからかう人もいました。
「中学の時から好きだったんじゃないのか」と言われましたが、そんなことはありませんでした。
 好きというはっきりした感情を持ったことは、今まで一度もありませんでした。
 男性経験は大学時代に何度かありましたが、その時も、恋愛感情より、性に対する好奇心からセックスしたようなものでした。
 午前1時を過ぎて、残っている女性の数も少なくなって、そろそろ私も引き上げようかと思っている時、安藤君が、明日、廃校に行ってみないか、と誘ってきました。私は即座にOKしていました。
 もう、取り壊されて学校はなくなっているものとばかり思っていたのですが、まだ残っているということでした。
 うっそうと木の生い茂った小高い丘の中腹を切り開いて、私たちの中学校は建てられていました。
 丘の上に校庭と体育館があり、1段下がったところに校舎が川原を見下ろす形で建っていたのです。
 私と安藤君は校庭の入口で午後1時に待ち合わせることにしました。

 翌日、昼食をすませて、早めに家を出た私は、自転車でゆるやかに続く坂道を昇っていきました。
 長い坂道を最後までのぼりきることができずに、自転車を押して、頂上に達しました。
 石の門柱が二木、打ち捨てられたままにまだ突き立っていました。
 私はそこに自転車を置いて、校庭を斜めに横切って、校舎への道を歩いていきました。
 生い茂るままの雑草がふさぎ、白かった鉄筋校舎は風雨にさらされて、ねずみ色にうす汚れてみすばらしいばかりでした。
 私は入口から中へ入っていきました。
 窓ガラスは1枚残らず壊されていました。
 ドアも全部取り外されて、投げ捨てられていました。
 壁は、青や赤や黒のスプレーでいたずら書きされていました。
 私たちの通った中学校は、無残に打ち砕かれていたのです。
 黒板だけが、黒板の緑色だけが、少し色あせていたものの、懐かしい思い出をわずかに語ってくれていました。
 教室の真ん中にたたずんだまま、私は黒板に向かって泣いていました。
 涙がとめどもなくあふれてきて、とまりませんでした。
 いつの間にか、安藤君が私の後ろに立っていました。
 優しく肩を抱かれると、私は安藤君の厚い胸に顔を埋めて、「ひどい、ひどい」と何度もつぶやきながら、激しく泣きじゃくっていました。
 安藤君は私を抱いたまま、優しく肩をなでてくれていました。

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2013/03/31 21:13:41(dQFpiojj)
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