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春
◆NqRlWkOMMM
寒い寒い冬。
僕は来年13歳。 榊春って名前。 さかきしゅんって読む。 なかなか読みにくい名前だ・・・。 漢字二文字だけど気に入っている。 冬休み前に学校に行かなきゃいけない。 朝起きたら歯を磨いて朝ごはんを作る。 僕は料理が大好き。 トントンと料理を作る。 「あら、春ちゃんおはよ」 「お母さん、おはよ」 お母さんは27歳。 榊悠美、15歳で僕を産んだ。 そしてお姉ちゃんもいる。僕の一つ上。 お母さんがコーヒーを一口飲んでため息をついた。 「悪いね、春ちゃん・・」 「ううん、いいよ。お母さん疲れてるもんね」 お母さんは夜のお仕事をしている。 お酒のお酌をしたり楽しく話をしたり。 綺麗だから一番人気らしい「春ちゃん来年中学生だね」「あ、うん・・」 「彼女作りなよっ!」 「えっ・・・ん・・うん」 お母さんが頭を撫でてくれた。 料理が得意だから女の子には人気だけど。 彼女なんて・・・。 お母さんはまた寝室に戻った。 コーヒー飲んでまた寝るなんて凄いなって思う。 足音がして振り返る。 お姉ちゃんが起きてきた。ムスッとしている。 「おはよ、凛姉ちゃん」 「はぁ・・ったく・・」 お姉ちゃんは榊凛。 僕と同じで漢字二文字。 黒くて長い髪をブラシでといでいる。 「春、はやくご飯」 「あ、うん・・・」 僕はお姉ちゃんが怖い。 叩かれたり殴られたりするし酷い事も言われる。 お母さんには言えない。 凛姉ちゃんもお母さんの前では仲良くしているように見せる。 怒らせないようにオムレツとトーストをテーブルにのせる。 「まずそ」 「ごめんなさい・・」 そう言いながらパンにかぶりついている。 僕は自分の部屋に行こうとした。 「どこ行くの?座ってなよ」「学校の準備しなきゃ・・」「あんたが遅刻しようがしらない・・座ってろ」 「うん・・・」 怖い・・・。 お姉ちゃんは学校ではとっても人気だ。 可愛くて頭も良くて。 でも・・家では違う。 僕をいじめる・・。 学校の用意をしてランドセルに必要な物を入れる。 鏡を見て髪型を整える。 睫毛が長い・・・。 また切らなきゃな。 学校まで走って行く。 「遅刻しちゃう・・・」 僕は男の子の友達がいない・・。 あんまりゲームとかの話題についていけない。 いつも休み時間は料理の本を見ている。 学校についてから下駄箱に靴を入れる。 一番上だからなかなか届かない。 僕はまだまだ小さい。 牛乳が苦手だからかな・・身長が低い。 しかも女の子みたいな外見だから・・・。 男なのに女の子に間違われる。 クラスについて自分の机に座る。 ギリギリセーフ。 ランドセルから料理の本を取り出す。 今日は終業式。 教科書もいらない。 美味しそうな料理がたくさん。 将来の夢は料理職人。 どこかで弟子入りしたいなと思ってる。 話かけてくれるのは女の子ばかり。 だいたい料理の事。 僕に彼女なんてできるのかな。 朝礼が終わった後体育館に向かう。 校長先生が冬休みの注意を言ってからすぐに終わった 寒い廊下を歩く。 もうこの学校ともお別れか・・・。 教室に戻って宿題を貰う。僕はまぁまぁ頭がいい方だ・・・。 ランドセルに宿題をしまう「冬休みは寒くなりますし風邪に注意しましょう」 先生が体調管理の事を言っている。 卵酒かエッグノッグが好きだ。 ・・・未成年だからアルコールはかなり弱めの物を使うけど。 砂糖とお酒とホットミルクを混ぜて生姜の絞り汁をいれる。 火を止めて卵の黄身をいれてゆっくりかき混ぜる。 甘くて美味しいし体も暖まる。 僕の作り方はそんな感じ。 帰宅時間になる。 まだ午前中。 家に帰る前に寄り道をする 山道を登っていけばお墓がある。 お父さんのお墓。 お父さんは30歳の時亡くなった。 お母さんとは歳の差の結婚で大分苦労したみたい。 僕は顔を良く覚えている。優しくてかっこよかった。お父さんのお墓は豪華だ。お金持ちだったからかな。今も生活に不自由はない。「お父さん・・来年は中学生になるよ」 途中で買ったお花を供えるコーヒーも一緒に。 「僕・・友達たくさん作るよ・・見ててね!」 手を合わせて目をつむる。きっと見ててくれる。 ゆっくりと立ち上がって階段を降りる。 マフラーと手袋をしてるけど寒い。 お墓のから家に向かう。 もうお昼だ。 お姉ちゃんが待ってる・・ 「ただいま」 「遅い・・はやくご飯作ってよ」 「うん・・分かった」 今日はうどんにしよう。 生椎茸で出汁を取る。 料理酒を少々入れる。 少し味を見て塩と味醂を少々。 油揚げと牛蒡を入れる。 油揚げはそのまま入れる。味がコッテリ目になる。 牛蒡はささがきにする。 しばらく染みるまで待ってからうどんを入れる。 グツグツ煮込んでからどんぶりに盛り付ける。 テーブルに持っていく。 「お姉ちゃん、お待たせ」 「うどんか・・まずそ」 お姉ちゃんは一口食べてからどんぶりを流し台の所に捨てた。 「糞まずい・・」 「あ・・ごめん」 「もういい・・」 お姉ちゃんは部屋に戻っていった。 僕はいつかお姉ちゃんを笑わせるくらい美味しい料理を作りたい。 流し台に捨てられたうどんを片付ける。 目が霞む。 涙が流れる。 美味しいって言ってほしいのに・・・。 余ったうどんはお母さんにあげよう・・。 お母さんはまだ寝てる。 宿題をして時間を潰す。 もう終わっちゃいそう。 「春ちゃん、おかえり」 「もう仕事?」 「うん、いい子にしててね」「あ、お母さん・・うどん作ったんだ」 「おおっ、どれどれ」 うどんを暖めてどんぶりに盛り付ける。 お母さんは一口食べて微笑んだ。 「春ちゃんは料理上手いね!本当に美味しいよ」 「うん、良かった」 お母さんは全部食べてくれた。 「さて、行ってくるわ。戸締まりちゃんとしてね」 「うん、いってらっしゃい」お母さんは元気良く仕事に向かった。 僕はお母さんもお姉ちゃんも好きだ。 だから・・笑ってて欲しい
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2011/02/12 00:12:11(BhPlqiGf)
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