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青い、あいつ 4
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:青い、あいつ 4
投稿者: 菊乃 ◆NAWph9Zy3c
絵本作家になる、というのがあたしの夢だった。







天が裂ける、地が裂ける。

空が割れる、地面が溶ける。

赤い色。

強い光が瞳を射して、皮膚を焼く。



わずかな土地を巡って戦う。わずかな食糧を巡って戦う。わずかな水を巡って戦う。わずかな薬を巡って戦う。

空に伸びるはキノコ雲。



もうすぐみんな終わりなのに、それでも戦う。最後の最後まで、まだまだ戦う。

木を切って、他の生き物を殺して。空を、空気を、土を、海を汚して、繁栄。数の増えすぎた人類。



もうすぐみんな終わり。なのになぜ殺し合う?


死ぬのは怖いから、滅びるのは怖いから、心が壊れていく。高層ビルと一緒に人が壊れていく。


怖いから、自分じゃない誰かを殺して、怖いから、自分を殺す。

人類絶滅に拍車がかかる。


人を、子供らを殺してまで守りたかった手作りの神様たちは、結局助けてはくれなかった。 厳格な信者も、異教徒も、平等に助けなかった。

では一体、何の為に戦った?爆ぜた頭では、もう分からない。



天が裂けた、地が裂けた。

空が割れた、地面が溶けた。


赤い色。

地上に蔓延る害獣が全ていなくなること。


完璧な、地球再生。







初めてかいた、「地球再生」という絵本。絵本なのに、絵がない。いろんな種類の赤をベタ塗りしただけ。…だって絵は描けないもん、という始末。

こういう、黒くてちょっと“妙”なものをかけば、かっこいいと思っていた。

そもそも、こんなものを読みたいガキはいないし、読ませたいという親もいない。
かといって、大人向けというには、あまりにもお粗末な代物だった。



それでもあの頃のあたしは自分に泥酔していて、何も見えなくなっていた。


このしょーもない絵本を800冊も作った。しかも増刷する気満々で。勿論、あたしにはそんな金はなかったので、諸費用は全てあいつが支払った。


でも現実は現実で、現実を教えてくれたのだった。


売れる売れない以前に、こんな絵本を置いてくれる書店など、どこにもなかった。


つまるところ、失敗だった。売れ残りの799冊は、多分今でも物置にあるはずだ。



あいつが一冊、買っただけ。




「ここに、サインください」
すっかり耳に馴染んだダミ声でそう言って、あいつは油性ペンと絵本を差し出してきた。



笑っていた。


あいつが笑うから、あたしも笑った。


「サインなんて考えてなかったよ」

そう言うと、


「じゃー今からつくろう!サイン」



あいつが笑うから、あたしも笑った。


部屋中に、サインの試し書きをした紙が散らばっていた。



窓を開けたら、それらがフワリと風に舞った。




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2009/01/21 12:00:20(kE/xtjRC)
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