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堕天の星
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:堕天の星
『さぁ、今日のゲストはこの方達です』
 
 液晶モニターの向こうで微笑む少女達。少し可愛い身近な少女達がアイドルとして持て囃される芸能界。その光り輝くスポットライトに夢を求める者達が集まってゆく。
 
 
「ヨロシクお願いします!」
 デビューしたての【水無月彩乃】ウチの事務所に所属するイチ押し新人アイドル。人懐っこい笑顔の可愛い今時スレた感じのしない正統派な清純さが売りだ。
 そして僕は桂木祐也、彩乃のマネージャー兼、幼馴染み兼、彼氏をしている。僕は彼女より3歳年上、きっかけはホンの些細な事だった。
 
「わたし、"あいどる"になる」
 テレビを観ていた彩乃が突然そんな事を言い出した。まだ小学校に上がる前の話だ。
「彩乃みたいなチンチクリンがなれる訳無いだろ」
「なれるモン!」
「ムリだって…」
「なるモン、だから祐くんが"まねーじゃ"してね」
「…わ…わかったよ」
 そんな馬鹿な約束を信じ、全うする為、彩乃は音楽、ダンスとおよそアイドルになる必須レッスンを希望、驚く事に彩乃の両親はそれを快諾した。
 かくいう僕はマネージャーになるべく、有名校の芸能マネジメント学科を目指した。彩乃が信じて疑わないならそれを助けたかったし、何より僕にはその道しか選択肢は無かった…。
 
 時は過ぎ、彩乃はみるみる才能を伸ばしてゆき、僕も独学で知識を増やしていった。が…全てが順調…そんなに人生が甘い筈は無い。暗い影は受話器の向こうからやって来た。
 
「ハイ、僕が桂木祐也で……」
 
ガッシャーーン!!
「モシモシ…モシモシ?」
 
・・・・
 
「ゆ…祐…く……」
 案内されたのは病室でもICU(集中治療室)でも無かった。地下にある薄暗く寒い部屋。独特の匂いと揺れる炎…。いくつも列んだ白い布の前に彩乃が座っていた。
 
 
 あっという間だった…一瞬の判断を誤った運転手僕達の両親を載せた観光バスはそのまま谷底へ…。
 残酷なようだが…と捲くられた骸布…。
「間違い…ありま…せ…」
 それが限界だった。
 彩乃はずっと僕の腕にしがみ付いて泣き続けた。
 
・・・・
 
「…泣き疲れたか」
 いつの間にか彩乃は僕に身体を預けたまま眠りに落ちていた。
 
 
 後日、改めて彩乃をアイドルにする事こそが一番の供養にもなると決めた僕の前に父の知り合いという弁護士が現れた。
「本当ですか!?」
 まだ未成年だった僕のサポートを申し出てくれた。お陰で問題事もスムーズに解決に向かっていった。
 彩乃は学校の寮に住む事になり、僕はバイトを続けながら家に住み続けた。後で知った事だけど、第三者を介して祖父が援助していてくれたらしい。何故そんな回りくどい真似をせねばならなかったかというと、僕の両親は親の反対を押し切り、半ば駆け落ち同然で結婚した為、互いに蟠りが残っていたからだった。
 
 
「オイ、桂木ぃコッチやっとけ!」
「桂木君、アレは何処~?」
 バイト先に選んだのはそんなに大きくない芸能事務所。ここなら収入を得ながら色々学ぶ事が出来る。まさに一石二鳥の環境だった。とはいっても最初は雑用ばかりだったが努力を認められ、やっと契約社員になれたある日…。
「桂木、社長がお呼びだぞ」
 その日はやって来た。
 
 
「今日からこの新人のマネージャーをしてもらう。出来るな?」
「ヨロシクお願いします」
 そこに居たのは誰あろう水無月彩乃だった。
「これでやっと二人の夢が叶うね」
 帰り道の途中にある小さな公園、あまり照明も無い少し薄暗いベンチに座り、二人は自動販売機の缶ジュースで祝杯を交わした。
「…祐くん」
「彩乃…」
 どちらからとも無く、瞼を閉じて唇を重ねた。
「……アハハ、コーヒーとオレンジが混ざって変な味…」
 空はもう暗くなり始め、一番星が瞬いていた。
「祐くん、私絶対アイドルになるよ。あの星みたいにキラキラと輝く…」
 そう笑う彩乃だったが、現実はそう甘くは無かった。いくら頭を下げて売り込みを続けても業界のコネを持たない祐也と無名の新人では殆ど門前払い。たまに群衆の一人や背景の一部として笑っているだけのひな壇、良くて地方番組のレポーターだった。規模の大きさがそのまま力関係となり、逆に事務所の小ささが仇となってしまった。
 移動もタクシーなど使えない、電車で渡り歩くしかなかった。傍から見ればただのカップルだろう。
 
 
 そんなある日、二人の運命を劇的に変える男と出逢う事となる…。
「本当ですかっ!?」
 それは今企画が上がっている映画に彩乃の主演と主題歌のチャンスが巡って来たのだった。話を聞けば本来予定されていた槙備芹亜が急に降板してしまい、その代役としての抜擢だった。
 たまに詐欺紛いの胡散臭いものも多い。話を持ってきたのは業界でも1・2を争う敏腕プロデューサー。話の信憑性は充分だった。「どうだ?新人には荷が重いか?」
「と…とんでもないっ!ウチの彩乃ならやれます。きっとご希望に沿えます」
 理由は何だっていい、このチャンスを逃がす手はない。僕はその申し出を受け、テレビそしてステージの上でスポットライトを浴びて光り輝く彩乃を思い描き悦びに震えた。
 
 ……だからその時の僕には気付く事が出来なかった。光り輝くにはそれだけの理由があるのだと。そう丁度あの日の夜空の様に……。
 
 
 翌日から彩乃の生活は一変した。もとより経緯が経緯だけに時間が無く、真っ白に近いスケジュールは分単位で埋まっていた。打合せは基より映画の撮影と主題歌のレッスン、そして収録と多忙を極めた。だからだろうか、たまに彩乃の表情に影が差して見えた。
「キツイのか?調子が悪いなら…」
「ウウン、大丈夫。少し疲れただけ。新人だもん我が儘は言えないよ」
 確かにその通りだ。だからこそ僕も彩乃のマネージャーとしてバックアップに努めた。ただそんな時、1本の電話が入った。
「ハイ、私が桂木祐也で…エッ!?…何ですって…?」
 それは祖父の死去を告げる電話だった。業界の通例であれば自己都合で休むなど有り得ない、例えスタッフであろうと…。だが相手が相手で、避ける事は出来なかった。
「ウ…ン、分かった。今日は打合せだけだから祐くんが居なくても大丈夫だよ…」
 そう笑う彩乃だったが、何か違和感があり、別れ際後ろ髪を引かれながらも僕はタクシーに飛び乗った。
 今、考えれば行くべきでは無かった、いや行かせるべきては無かった。打合せ内容を知る為に彩乃の服に忍ばせたICレコーダー、そこには愕然とする内容が残されていた。
 
『い…イヤ…ヤメテください』
『大人しくしろよ!俺に逆らったらどうなるかは想像がつくだろう?』
 
 言い争う男女、ガタガタと物が転げ壊れる音。何があったかは容易に想像がついた。
ギリッ…
 僕はこれまでに感じた事の無い憤りと怒りを覚えた。それは彩乃の犯した泉堂というプロデューサーにでは無く、守れなかった自分自身に…。
「……クッ」
「何処へ行くつもり?」
 ダンッ!!と机を叩き、立ち上がった瞬間、後ろから声がした。
「槙…備…さん」
「何処へ行くのかと聞いたのだけど…聴こえなかったかしら」
 答えるまでも無い、僕が行くべき場所は決まっている。
「行ってどうするつもり?まさか私が何故降板したか考え無かったの?」
レスを見る(12)
2011/08/28 20:55:16(bJ08OrI5)
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