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『無題』伍
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:『無題』伍
投稿者: 菊乃 ◆NAWph9Zy3c

その日は、大きく息を吸い込んだら、肺まで凍えそうな、白くて、寒い日だった。


あたしはその時、用事もお金も無かったけど、フラフラと出掛けて、電車に乗っていた。


平日の昼間、改札から遠い車両、ということもあってか、車内には、あたし一人だった。

そのガラガラの空間は、世界中にたった一人だけ、あたしだけが、取り残されたような…そんな気分にさせた。
電車も車も信号も、みんな動いてるけど、あたし以外のヒトだけが、ごっそり居なくなった感じ。


そんな根拠のない、個人的な恐怖と戦っていると、次の駅で、オトコが一人、乗ってきた。



何とも、冴えないオヤジだった。


禿げかけの頭、ややメタボなボディ。そこに、くたびれたコートをひっかけている。
…絵に描いたようなオヤジだ。ここまでオヤジらしいオヤジがいるものか。素晴らしい。奇跡のオヤジ…これは言い過ぎか。

普通なら絶対注目しない人種の人間。


だけど、意味不明の孤独感から、あたしを現実へ戻したしたのは、残念ながら、間違いなく、コイツだった。



そのうちに、あたしは目的の駅に降りた。


電車は、オヤジを乗せて、走り去った。


もう、会うことはないだろう、と思った。


あのオヤジが首の骨を折ったって、あたしは、それを知ることはないし、知ったとしても、何も思わない。

あたしが明日、のたれ死んだって、彼がそれを知ることはないだろうし、知ったとしても、嘆き悲しむことはない。




…だからどうした。当たり前の事だ。あんなオヤジを土台に、この世の無常を噛み締めてしまう、ティーンエイジャー。…ありえねぇ。





店には、早くも春物が並んでいた。


あたしは、有り金はたいて、春まで使えそうな、カットソーを一枚お買い上げ。した。


その後、フラフラと歩いていると、ウィンドーの中に、とても素敵なワンピを身に纏ったマネキンさんを発見。心まで明るくなりそうな、春色のワンピだ。今のあたしに、足りない色だった。


あたしは、壁を這うクモのように、ウィンドーに張り付いた。…でも、如何せん、金が足りねぇ。カットソー買わなかったとしても、足りなかった。



久しぶりに、バイトを入れようと思った。バイトして、あのワンピを買うのだ。


まずは、バイト先に、連絡だ。





そうこうしている間に、あのオヤジは、電車に乗って、忘却の彼方へと消えていっていた。



やがて、あのオヤジが、忘却の彼方からコチラへ向かって、逆走してくるとは、思ってもみなかった。


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2007/04/02 00:29:12(0OrP8e6o)
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