五年前の夏、七歳になる明彦と五歳になる博子の兄妹が村から姿を消した。
　明彦と博子は山に迷い込んだ。
　朱野家に救けを求めてきた。
　朱野は明彦と博子の世話をした。
　朱野はふいに少年少女を飼ってみたいという欲望に取り憑かれた。
　それも総ガラス張りの檻でだ。
　強化ガラスを発注する。
　男女を閉じこめる換気口つきの強化ガラスの檻。
　明彦と博子を全裸にしてそこに飼いはじめた。
　勉強はいっさい教えない。
　入れてやるのは少年少女向きの絵本のみだ。
　二年たって九歳と七歳になったが言語思考は当時のままであった。
　体のみは成長する。
　そうなると兄妹で性行為をはじめる。
　明彦と博子兄妹がはじめて性行為らしきものにおよんだのは明彦十一歳、博子が九歳になった夏であった。
　明彦が博子を這わせて馬乗りになっていた。
　ジャンケンで勝ったほうが上に乗る。
　博子は明彦を乗せて檻の中を這い回っていた。
　明彦は博子の尻から滑り下りていた。
　その際に、小さな声を洩らした。
　明彦の男根は勃起していた。
　するどい快感が走ったようだった。
　明彦はふたたび這い上がって、滑り降りた。
　自然に明彦の男根が博子の肛門に入っていた。
　明彦が射精した。
　明彦は博子を転がした。
　明彦が博子の股を押し拡げて調べている。
　長い間、明彦は性器と肛門を調べていた。
　博子は足を大の字に拡げて明彦のなすがままにしている。
　明彦が男根に手をやった。
　握っている。
　勃起している。
　博子が手を伸ばして明彦の手を払いのけて自分が握った。
　そのうちに、自然に擦っているような恰好になった。
　明彦の貌がゆがみきっている。
　明彦は叫んでいた。
　薄い精液が博子の貌に飛び散った。
　そっと、博子は精液を舐めてみた。
　明彦がふたたび博子の尻に乗りかかり、滑り下りる行為を繰り返していた。
　きもちいい、きもちいい、と明彦が口走っている。
　あんちゃん、と博子が身をよじって叫んだ。
　明彦の勃起したものが、偶然の角度で、博子の性器に挿入されていた。
　明彦は抱えた尻を離さない。博子の悲鳴が湧いた。
　明彦、博子の兄妹は性交にのめり込んでいた。
　日に三、四回は交わる。
　博子が痛がったのは最初の四、五回だけであった。
　求めればすぐに尻を差し出す。
　かすかな快感が交じりはじめたのは一ヵ月ほどたってからであった。
　明彦が博子の性器を拡げて眺める割合が多くなった。
　指を差し入れたりする。
　あんちゃん、と博子が甘え声を立てる。
　交わるのは後背位と決まっていた。
　秋が終わって、雪が舞いはじめる頃には、博子は女に変貌していた。
　後背位から正常位、女騎乗位、横臥位まで技術が取り入れられていた。
　博子は自身のどこがもっともするどい快感を生み出すのかを、いまでは心得ていた。
　明彦がそこを指で擦ると博子は高い声を放った。
　傍若無人なうめき声であり、泣き声であった。
　博子は兄のものを口に含み、明彦は妹のものを口にするようになった。
　朱野はその光景を見守った。
　
　寺丘が真砂恵と一緒に強化ガラスの檻に閉じ込められた。
　同じ朝にさらに二組の男女が投げ込まれた。
　若生は全裸にされて檻の中に転がされていた。
　妻の路子が全裸にされて檻に入れられた。
　明彦と博子は性交に耽っていた。
　博子が射精した明彦の男根を口にしている。
　路子が泣きはじめた。
　泣くのは事態と認識したことになる。
　若生は路子の頭髪を撫でていた。
　路子は二十七歳になったばかりだ。
　真砂恵はタレントの十八歳の女だった。
　寺丘は五十を過ぎた作家だ。
　寺丘の原作の映画に出演した縁での旅行であった。
　まだ、真砂恵との関係は結んでいない。
　寺丘の体は醜い。
　小さな男根が萎縮している。
　一緒に放り込まれた二人の男性はともに若い。
　真砂恵は上体を起こしてみた。
　隣の男女がたがいのものを愛撫しはじめていた。
　若生と路子だった。
　路子を押し倒して、性器の愛撫をはじめた。
　肚を決めた路子の手が若生の男根を擦りはじめた。
　若生は、立った。
　勃起したものを路子に口にするようにいった。
　路子は膝を突いてそれを口に含んだ。
　衆人環視の中での全裸の性交だった。
　じきに、路子は、環視のことは気にならなくなった。
　這った。
　尻を掲げた。
　夫が後背位で責めはじめた。
　若生とは数十回の経験がある。
　逞しいと思う。
　膣いっぱいになって責め立てている。
　ひとびとが凝視している。
　ああと、路子は高いうめき声を放った。
　上田と典子がそれをみていた。
　上田は無言で典子を押し倒した。
　待っていたように典子は上田のものを擦りはじめた。
　上田は不動産会社を経営している。
　典子は銀座のホステスだった。
　典子は二十七歳だ。
　上田の好きな容貌肢体の持ち主であった。
　少年と少女がふたたびはじめている。
　他の二組が前からうしろから絡み合っている。
　真砂恵は寺丘をみた。
　寺丘も三組の性交を見ている。
　だが、勃起はしていない。
　寺丘は勃起能力を喪っていた。
　真砂恵は諦めて自慰をはじめた。
　あお向けにねて、懸命に両手の指を使っている。
　寺丘がそれを見守っていた。
　痙攣させる太ももが目に痛いほど白くて、うつくしい。性器もきれいだった。
　
　夜とも昼ともわからない無限の時間が、ゆっくりと過ぎる。
　路子は壁に向かっている。
　壁の向こうには、少年少女の檻がある。
　路子は少年に向かって性器を自分で大きく押し拡げてみせていた。
　少年が路子の性器をみながら自慰をしている。
　路子もゆっくり自分のものを愛撫している。
　路子は少年に思いをそそぎ込んでしまっていた。
　少年さま、少年さま――そう喘ぎながら押し拡げて少年にみせながら自身を擦る。
　頂点に届くとさらに声を大にする。
　少年さまの尊い男根さま――と絶叫する。
　少年にしか興味を示さなくなっていた。
　若生には見向きもしない。
　若生は、諦めていた。
　ときに、その路子の尻を抱える。
　射精はする。
　無為の射精だ。
　路子は少年の男根にのみ瞳をそそいでいる。
　少年が少女を這わせてはじめる。
　路子はそれをみると怒りをあらわす。
　隣の真砂恵が自身の性器を舐めている。
　軟体動物のように体を折り曲げて器用に性器を舐め回していた。
　真砂恵の舌は肛門にも届く。
　真砂恵はそこも舐める。
　ときに、真砂恵は若生を誘う。
　若生は真砂恵と性器をみせ合いながら、ともに自慰をする。
　上田は少女に熱心だった。
　隆々としたものを少女に誇示する。
　少女もまた強化ガラス越しに口に含もうと懸命になる。
「二、三日間だけ、全員を一つ檻に閉じ込めてみよう」
　 朱野には一つの目算があった。
　一房に押し込みたら、乱交がはじまる。
　いきなりの乱交であった。
　路子は這って少年に尻から責めを受けていた。
　路子は叫びつづけている。
　少年さま、少年さまの男根さまと、叫んでいる。
　若生も真砂恵を後背位で責めていた。
　真砂恵も堰を切った勢いであった。
　自分の性器の俗称を口にしつづけている。
　上田も少女の尻を抱えている。
　ほっそりした白い少女の尻だ。
　出入りしている上田のが巨根にみえる。
　乱交は二時間ほど繰り広げられた。
　若生がはてると真砂恵は上田に遅いかかった。
　上田を絞り尽くしてふたたび若生を求めた。
　真砂恵は男に飢え切っていた。
　騎乗位になって声を振り絞った。
　真砂恵は自分の性器の呼び名を叫びつづけた。
　
　若生と上田は、貌を並べて寝転がっていた。
　女たちに視線を向けた。
　路子と典子が並んで這って、背後から少年に性器を嬲らせていた。
　真砂恵が少女を股間に引きずり込んで自分の性器を舐めさせている。
「あんたの奥さんを、やってもいいか」
　上田が訊いた。
「いいとも」
　ここでは妻も恋人もなかった。
　上田が少年を押しのけて路子の白い尻を抱えるのを、若生はみていた。
　挿入されると路子は相手がだれかもわからないままに高い声を放ちはじめた。
　真砂恵はオマンコ！　オマンコ！　と口走るが、路子は男根さま！　男根さまと叫ぶ。
　路子の白い豊かな尻に出入りする上田の黒い肉塊をみていると、若生もじっとしてはいられなくなった。
　少年を押しのけて、上田の女である典子の尻を抱えた。
　若生と一緒になった真砂恵はつねに若生に寄り添っている。
　性交を要求する。
　して、して、と纏い着く。
　逆に、若生は追い詰められた。
　容姿端麗な真砂恵に性欲を感じなくなりつつあった。
　どれほどの日数がたったのかわからない。
　少年と少女は相変わらず、性交にはげんでいた。
　真砂恵は少年に性器を開いてみせていた。
　最初は、自慰をしていた。
　オマンコ、オマンコといいながら自慰をした。
　滅びが迫っている――その思いは若生にはかすかにある。
　あるが、恐怖心はなかった。

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