志保が連れ込まれたのは、地下室だった。
　裸電灯が点いていた。
　志保はベッドに突き倒され、縛を解かれた。
　連れ込んだのは若い男だった。
　男の手が志保のスーツにかかった。
「おまえは、おれたちの奴隷だ」
　全裸にされた。
　男は荒い息づかいで、志保の乳房を弄びはじめた。
　両手で揉んだ。
「きれいな体だぜ」
　男はうめいた。
　うめきながら、掌を下半身に這わせた。
　男の掌は陰部に下りていた。
　男の指が動いていた。
　男が覆いかぶさってきた。
　はげしく動いている。
　動きながら、男は唇を重ねてきた。
　男は自由自在に体位を変えて、志保を責めた。
　男の意のままになり、尻をかかえられながら、志保ははじめて、泪をこぼした。
　女の弱さが哀しかった。
　男は、はげしく責めたてていた。
　
　家に侵入した。
　寝室らしきドアがあった。
　ベッドに上半身裸の男女が抱き合うようにして眠っていた。
　鉄棒で、男の胸を突いた。
　男が、はね起きた。
「これで、亭主を後ろ手に縛れ」
　針金を、女に渡した。
　はたち前後にみえる女だった。
　男も、女も、素裸だった。
　女は、夫の両手を針金で縛った。
「おまえもだ。向こうを向け」
　女を後ろ手に縛り、男の縛り具合をたしかめた。
「女房に、乱暴は、しないでくれ」
　男の声がふるえている。
　村雨は、女をあお向けに突き転がして、鉄棒で乳房を押えた。
　色の白い女だった。
　乳房が高く盛り上がっている。
　男は、鉄棒に押さえられた乳房をみて、表情をゆがめた。
　ベッドの上に、妻が全裸で転がされている。
　村雨は、憤りの湧きあがるのをおぼえた。
　ベッドに腰を下ろし、無言で、女の乳房に手を伸ばした。
　女は観念したようだった。
　瞳を閉じた。
　しばらく、乳房を弄んだ。
「女、足を、開け」
　低い声で命じた。
　固く合わしていた太ももを、女は徐々に開いた。
　女のももから、下腹部に手を伸ばした。
　白くて太いももが開いている。
　女の生命がそのあたりに凝縮していた。
　村雨は、その太ももを押し拡げた。
　村雨は、性器に掌を当てた。
　女の柔らかい腹が波打っていた。
　夫の前で凌辱されることへのおびえであろう。　
　女の股間が濡れていた。
　女の白い均整のとれた体が無残だった。
　意思とは別に、女の体は凌めに応える準備ができていた。
　人妻の白い体が目の前に凌辱を待っておののいている。
　傍で、後ろ手に縛られた夫がみている。
　夫も妻も全裸だ。
　女は太ももを拡げ切っていた。
　女の体は、男には抵抗しがたいものがある。
　そのように造られている。
　凌辱を待つ女の体から甘美のものがただよっていた。
　女の股間に手を伸ばした。
　人妻の白くて豊かな体に惹かれるものはある。
　村雨に弄ばれている女に罪があるわけではない。
　責任は、男たちにある。
　この女は、理不尽な運命を甘受しなければならない立場に置かれている。
　――犯せ。
　村雨は、自身に命じた。
　村雨は、女の縛めを解いて、腹に跨った。
　女は諦めて、自分から動いて村雨を受け容れた。
　村雨は、女に覆いかぶさった。
　
　大々的な奇祭の準備がはじまった。
　奇祭は、処女を白熊に生け贄として捧げることにあった。
　場所は村から二キロほど上流にある草原だった。
　ゴザが敷きつめられてあった。
　その中央に、二本の杭が打ち込まれてある。
　杭には二人の若い女が縛られていた。
　杭に縛られた二人の女が村人でないのは、菊子はその貌をみてわかった。
　生け贄を、三十人近い男女が取り巻いていた。
　そこへ、白熊が二頭、やってきた。
　白布で作った衣装を来ていた。
　やがて、白熊は女の前に立った。
　前肢を女の胸にかけた。
　二人の女のシャツが真一文字に切り裂かれた。
　そのつぎには、ジーパンが切り下げられた。
　ブラジャーもパンティも切り取られた。
　二頭の白熊から人間の手が出ていた。
　その手は女の体に伸びている。
　生け贄の女は身もだえしていた。
　乳房にも、腹にも、その手は伸びた。
　ゆっくり、時間をかけて、弄びはじめた。
　二人の女の裸身を青白い月の光が染めていた。
　それは、妖しい光景だった。
　していに、男女の間に昂ぶりが出ていた。
　二頭の白熊の衣装がかなぐり捨てられた。
　二人の男があらわれた。
　二人とも素裸だった。
　仮面だけはつけている。
　二人の男は猛々しいものを突きつけた。
　やがて、生け贄の女は、杭から離された。
　両手は後ろに縛られたままだ。
　二人の女はうつぶせにねじ伏せられている。
　白熊の男たちが女の尻に乗った。
　強引な性交だった。
　夢中でみていた菊子は、背後からだれかに抱えられた。
　気づいたときには、周囲で同じ動きが起こっていた。
　女が男に抱えられていた。
　中には、すでに裸にされている女もある。
「いやよ。こんなところで」
　男に脱がされそうになって、菊子はあらがった。
　このときまで、菊子は自分を抱いたのが夫だと思い込んでいた。
　仮面をかぶっているからわからないが、そうだと思っていた。
「これが儀式なんだ。声を出すな」
　男にささやかれて、夫ではないことを知った。
「いや！」
　悲鳴をあげた。
　しかし、男の力にはかなわなかった。
　ねじ伏せられた。
　裸にされた。
「町田も、よその奥さんとやっているんだ」
　男は乳房を掴んで、そう、ささやいた。
　その声をきいて、菊子は体の力を抜いた。
　すでに、周囲では、乱交がはじまっていた。
　どの女もねじ伏せられ、素裸にされて、男の愛撫を受けていた。
　うめき声が周辺に充ちていた。
　菊子は、儀式を知らなかったのは自分だけだったことを悟った。
　男が乗ってきた。
　体を開かざるを得なかった。
　夫もどこかで、だれかと、同じことをしているのだ。
　男に、うつぶせにされた。
　男は、菊子の尻を抱えた。
　どこでも、同じような光景が繰り拡げられていた。
　菊子は、歯を喰い縛った。
　どうにも抑えがたいものが体に取り憑いていた。
　体の芯を炎が灼いている。
　その炎が消えたのは、二時間近くたってからだった。
　おびただしい男が、菊子を抱いた。
　何人に抱かれたか、菊子にはわからなかった。
　狂宴が終わったときには、体が動かなくなっていた。
　生け贄の女二人が始末されたのは、数日後だった。
　男も女も狂気に支配されていた。
　性欲は狂気の生むものであることを、菊子は、はじめて知った。
　男はつぎつぎと女を求め、女もそれらの男につぎつぎと自身を託すことができた。
　狂気は欲望の炎をぎりぎりまで燃やしつづけた。
　
　志保は、跪いていた。
　傍らの椅子に井上が腰をかけている。
　志保は素裸だった。
　志保に完全隷従を強いた。
　めったに志保を犯さなかった。
　ときに、志保を抱くことはあるが、それには前戯が必要だった。
　井上はだれかを連れてきて、その男に志保を犯させた。
　堪能するまで、男に、さまざまな姿態で志保を責めさせた。
　男がはてて出て行くと、そのあとで、志保を抱くのだった。
　志保は、井上の奴隷になりきっている。
　跪くと、快感すらおぼえた。
　おまえに厭きたら、処刑する。
　反抗の姿勢をみせたら、処刑する。
　そう、いわれつづけてきた。
　処刑されたくはなかった。
　そのためには、村の権力者である井上に必死に仕えることだった。
　男たちにも、仕えた。
　男たちは間断なくやってきた。
　志保は、男たちの快楽に全身を使って奉仕した。
　命ぜられると、どんな姿態をもとった。
　若い男が入ってきた。
　男は、黙って服を脱いだ。
　素裸になって、志保の前に立った。
　志保は男のものを口に含んだ。
　じきに、男根は怒張した。
　井上がそれを見守っている。
　今日は、井上が自分を抱くのだと思った。
　そう思うと、燃えるものがあった。
　井上が欲情しているとわかると、それだけで、どこからか、黒い炎が滲み出て燃えた。
「這え」
　男が命じた。
　志乃の貌の前に井上が椅子にかけている。
　男が、ゆっくり、責めはじめた。
「ああ」
　志保は、かすかな声をたてた。
　井上に犯されている感覚になっていた。
　
　性欲とはなんであろうかという気がする。
　人間のすべての行為は性欲の疼きに源があるとの思いが、村雨にはあった。
　裕福で働く必要がなくなると、ひとびとの心は異性のみに向けられる。
　男は女を、女は男を思い描く。
　数多くの、新しい異性との性交渉を思い描く。
　その思いを遂げるために妖しい祭りを復活させた。
　祭りの根源は性交渉にある。
　男女が相集ってだれかれなしに相手を取り替えて性行為にふけるのが、祭りの真の姿だった。
　性欲のおぞましさが思われる。
　人間はのべつ幕なしの性欲で栄えてきた。
　滅びるのも、性欲で滅びそうな気がする。
　ひとはだれでも、おぞましいとしか思えないほどの性欲の業を秘めている。

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