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〜まえがき〜
⚠書いた人はオタクです⚠某刀ゲームの二次創作夢小説です⚠暴力などこじらせ性癖の描写多々⚠自分オナニ用自己満作品です⚠ゲームやキャラご存知のかたは解釈違いご容赦ください⚠誤字脱字ご容赦ください⚠たぶんめちゃくちゃ長くなります⚠未完ですが応援もらえたらがんばります優しいレス歓迎⚠エロじゃないストーリー部分もがっつりあります⚠似た癖かかえてるかた絡みにきてください⚠ —---------------------- 若菜が女を引っ張って帰ってくれたし、兄は堀江と店にこもっている。 征羽矢はゆっくりと湯船に浸かって、湯をすくって顔を洗った。 「たまんねぇな…」 無意識にこぼし、股間をまさぐる。 見も知らぬ女を抱いたが、おもしろくもなんともなかった。 よほど、兄の恋人を思い出しながら自慰にふけるほうが… 脳裏によぎる、日に焼けた首筋、逆に生白い鎖骨辺りの肌、柔らかな腹の触り心地、気怠げな目、艶めかしい細い指先… ぐん、と、身体の中心に血が巡る。 光世がかの女の顔を風呂の湯に沈めて犯していたのを思い出していた。 征羽矢はそれを見ていた。 頭を押さえつけられて反り返った背中、湯気にけむる帆船、反響する荒い吐息は兄のもの、そして女の吐く息の玉が水中で破裂する音、石けんの匂い、の奥に重なる女の体臭… 「やばいやばいやばい、」 ザバ、と立ち上がり、慌てて洗い場へ上がって、小さく呻いて吐精する。 「あー…情けねぇ…」 どろりとした体液を、シャワーで排水口へ向かって流しながら、がっくりとうなだれた。 髪を乾かし、缶ビールを1本飲んで、ベッドへ潜り込む。 昼まで寝たら引っ越しの荷造りを終わらせよう。 家具は全て置いていく。 当面予定がないとはいえ、いずれ女と住むようになる可能性が高い。 自分は、ひとり、なにかがないならないように暮らせばいい。 なにもいらない、ただ、本当は、兄とも女とも離れたくない。 眠気とともに、黒い感情が思考を蝕む。 縛って繋いで殴ったら、女は喜ぶだろうか。 削ってリムーバーを浸透させてちまちま剥がして整えて、ようやく自爪に戻るのだ。 「こんなめんどくさいこと、よくやりますね…」 ケアオイルを塗ってもらいながら感心する。 「どんなのにしたいか決まった?」 参考に、とラックから数冊のファッション誌を引き抜いてテーブルの上に積んでくれていたけれど、あまりに華やかな知らない世界に怖気づいてしまって、まともに見ることができずにいた。 「おまかせで。」 逃げるようにごまかす返事をして、若菜の指先に視線を落とす。 濃いパープルから淡いピンクへのグラデーションに、シルバーの曲線が走っているグラマラスなデザインだ。 よく似合っている。 女の答えに不満があるらしく、若菜は唇を尖らせた。 「なにそれ。つまんない。ねぇ、何色の車に乗るの?レース。」 きゅるん、とうるんだ無垢な瞳で女を見上げる。 こんな愛らしい顔で迫られて、よく光世は冷静でいられたものだ。 「白ベースで黒と赤が多いですかね、競技車両って派手だから、何色って言うのも難しいんですけど。」 「じゃあそんな感じにしよっ。あんまり細かいのはできないけど、」 慣れた手つきで真っ白のジェルを塗る。 「幾何学っぽいのがかっこいいかな、描きやすいし。」 ライトで硬化させ、今度は黒のジェルを取り出し、細い筆の先に含ませた。 器用に四角形や円を組み合わせた記号的な模様を描き込んでいく。 「ね、できたら、どっかに『86』って、入れてくださいよ、」 思いつきで、ふと強請ってみる。 「なにそれ?なんの数字?」 「マシンの…車の、名前です。わたしの、相棒。」 「そーなんだ!ちょっとがんばって描く!」 thunder boxで働くDJたちの音楽的な才能にほれぼれするのと同じくらい、若菜の美術的なセンスに感嘆している。 筆の毛の先端を正確に滑らせて、丸っこい袋文字を描き入れた。 その内側に細かな斜線とドットで、カジュアルな雰囲気に強調させると、まるでお洒落なストリートグラフィティのようである。 さらに全体に、赤色と金色で、アクセントになるように直線を数カ所描き入れた。 「どう?」 「すごい!スタイリッシュで、キラキラ過ぎなくて気後れもないし、かっこいい!ほんとすごいです!」 若菜は呆れたようにまつ毛を震わせた。 「気後れって…ユキさん、オンナノコは好きなファッション楽しんでいいんだよ?」 「女の子って歳じゃないんですってば。」 「関係ないっしょ、女性は何歳になってもオンナノコなのよ。」 とりあえずは満足してもらえたので、トップを塗って仕上げていく。 最後に小さなストーンを数カ所、控えめにあしらって完成だ。 「うん、いーんじゃない?ランチは奢りなさいよ?」 「最初からそのつもりですよ。少し眠ってから出かけましょうね。」 女が、ソファ借りますね、と身体を横たえる。 先日もそうした。 のだが。 「…ユキさん、こっち、きてよ、」 若菜が、鼻にかかった柔らかい声を出して、ベッドをポンポンと叩く動作をする。 「いっしょに寝よ?」 その予想外の申し出に、女は驚いて目を見開いた。 「ええ?わたし、でかいから、狭くなりますよ?」 のそり、と上半身を起こして、目をこすりながら振り返る。 若菜はベッドに腰掛けて、寝間着の裾をぎゅうっと握り締め、頬をほんのりと染めていた。 「い、いーの!」 語気は強いが、照れ隠しのようだ。 「…じゃ、お言葉に甘えて…どうしたんですか?」 立ち上がり移動して、若菜の隣に座った。 スプリングが、ふあん、と揺れて沈む。 ボディミルクのとてつもなく良い香りがして、頭がくらくらする。 「んーん、なんでもない!くっついて寝たかっただけ!」 「かわいいですね、」 ふ、と小さく笑みをこぼし、丸い後頭部を優しく撫でてやると、幼さの残る面持ちで見つめられて、腹の下あたりがぐるぐると疼き出す。 「…ね、キス、しても、いーよ?」 唇から、蜜の匂いがした気がして、女はかぶりを振った。 「…エッチなことはしないって、ソハヤさんに言ったじゃないですか。」 「きょうは、言ってない!」 きっ、と目を三角にして、口をきつく結ぶ。 「…かわいすぎます、ね。」 抗えない。 何度でも思う、こんな仕草、表情、これで籠絡されない光世は、もしかしたら本当はゲイなのか? 疑念が浮かぶくらいだ。 ふにゃ、と、軽く、触れるだけの口づけを交わす。 「ちなみに、この唇は、ミツヨさんとキスした唇でもあります。」 「あっ、そうじゃん!激アツじゃん!」 からかうつもりで言ったのに、本気でくったくなく嬉しそうに打ち返されて、思わず気が抜けてしまう。 「ユキさんのこと、むかつくけど、好き。ミツヨの次に。」 「ふふ、光栄です。」 今度は、ゆっくりと押し付けるようなキスを数度繰り返した。 「ユキさんて、よく分かんない、なんでソハくんフェラしたの?」 「あー、ありましたね、そんなこと…まあ、なんていうか、うーん…」 単に獣の発情期のようなものだったのかもしれない。 自分につっかかってくる若菜があまりに愛しく感じて、まさに、食べてしまいたい、という心持ちだったから、ペッティングを誘った。 それを生真面目な征羽矢に目撃されて、なにか小言を言われる前に黙らせたい意図があったように思う。 征羽矢だって、ふたりのレズセックスを見てしまい、図らずも興奮していた。 『自分だってそんななってんじゃん、わたしのこととやかく言えると思ってんの?』という叱咤を込めたアクションだったわけだ。 「あのときはすっごいショックだったんだよ?あんな…あんなこと、ひどいこと…」 そうだ、悪ふざけが過ぎたのだ、口内に吐かれた征羽矢の体液を、若菜に口移しで飲ませるなんて。 「狂気的で猟奇的なプレイがしたいんですよ、変態ですからね。気持ち悪いでしょう?」 徹夜のおかしなテンションもあいまって、ぽろりと本音が口をついて出た。 「初めて会ったときもさぁ、こっちバチギレしてるのに、なんか急にディープキスしてくるし、頭湧いてるとは思ってた…」 「その通りですよ。」 クーラーがガンガンに効いている。 若菜は、羽毛らしき軽く肌触りの良い布団をめくって潜り込み、女の手首を、つい、と引っ張った。 「…ミツヨは、ヘンタイが好きなのかな…?」 「そうでしょうよ。かわいそうですね。」 女は、まさしく他人事のテンションで、くくっ、と喉を鳴らした。 かわいそうなのは、自身の関知しないところで変態好きのレッテルを貼られた今の瞬間である。 くしゃみのひとつでもしているかもしれない。 もう一度、ゆっくりのキスをして、ふたり、ぴったりと触れ合って、眠る。 これはまた浮気だとか不貞だとか、光世が機嫌を損ねるだろうか、と、過ぎりはする、が、まあ、女同士だしノーカンだろう… 基本的に、自分に甘い。 「ステキなお店じゃなぁい!」 森下は入ってくるなり歓声を上げた。 「どーも、いらっしゃいませ!テーブルへどーぞ?」 幾分か通常よりキメ気味のヘアスタイルと顔で、征羽矢が恭しくお辞儀をして見せた。 「あら、やだ、それじゃソハヤきゅんのきゃわいいお顔見ていられないじゃない?カウンターがいいわよぉ!」 細見の身体をくねらせて、不満げに口を尖らせる森下は、大柄のペイズリーが派手なモノクロの開襟シャツにノーカラーのジャケットを引っかけている。 ぱっと見は古臭いが、お決まりのレトロ調のサングラスもあいまって、懐古趣味として完成している。 普段のいかにもなサラリーマン然とした量産型スーツの姿からは想像もつかない。 「ご安心を!今夜はうちの優秀なスタッフがあっち回しますんで、俺はこっち、存分にご覧あれってな。」 征羽矢がパチンとウインクを飛ばす。 その後ろから、図体の大きな経営者が緊張した面持ちでのそりとやって来た。 「…こ、こんばん、は、」 光世がたどたどしく挨拶をしながら深々と頭を下げる。 「あーん!今日も絶賛イイオトコね!ここはホストクラブかしら?」 「森下さん、はしゃぎ過ぎですよ。」 伊藤が楽しげに笑った。 高級そうなダブルテーラードの半袖のセットアップの中に、こちらもいつものカッチリしたイメージとはかけ離れた、海外バンドのライブTシャツを着こなしている。 たしなめられた森下は、懲りずに、先に席に座っていた女の肩をガバリと抱いた。 「あなた!毎晩こんなイケメンに囲まれてるわけ?ずるいわ!」 「ぜひ通ってください、ワンコ系イケメンと爽やか系イケメンもいてますよ。あと今日はお休みだけどインテリ系も。」 せっかく立ち上がりかけていたのに、がっつり体重をかけられてしまって、気まずく伊藤を見上げて会釈をする。 「こんばんは、お世話になってます。」 森下を振りほどこうとする女にパタパタと手で、そのままでいいよ、と示し、それからぐるりと店内を見回した。 「俺も久しぶりに顔出したな、どうだ?繁盛はしてるみたいだよな。」 あつあつのおしぼりをトレイに載せて戻ってきた征羽矢が、それを丁寧に手渡しながら近況を報告する。 「おかげさまで、なんとかやってます。あ、エントランス前の床板が摩耗気味なので、近いうちにちょい直すかもです。」 伊藤は、ちら、と、今しがた入ってきたばかりのスペースに目をやる。 「DIYで?」 「や、床なんで、業者に頼もーかと。素人仕事じゃ危ないかなって。」 「あてはあるか?」 会話に入れずに突っ立っている光世の背中をポンと軽く叩き座るよう促し、森下用に椅子を引いてやってから、その隣に自身も腰掛けた。 スマートな所作に、女は思わず見とれた。 「学生時代の友人が建築屋やってるんで、頼めそうっす。」 「分かった。いちおう見積もり出たら回してくれ。」 「ねぇ!そーゆー話はあとでそれぞれでしてくれる?女性が退屈してるわよ?」 ようやく大人しく席に着いた森下が、頬杖をついて言うので、女は迷惑そうに眉間にしわを寄せる。 「してないですよ、巻き込まないでください。あのですね、ホストクラブじゃないんですってば。」 開店したばかりで、まだ他の客は入っていない。 日曜の夜はスタートが遅めの傾向がある。 「んじゃ、とりあえずカンパイしましょっか!伊藤サン、生でい?」 征羽矢がナチュラルに仕切ってくれる。 これも才能だ。 「ああ、ありがとう。」 「森下サンはぁ?」 「ワタシも生!」 「りょ。兄弟も1杯付き合えよ、酔うなよ?」 落ち着かない様子で身を縮めていた光世が、急に話を振られて少し驚いたふうな顔をした。 「…分かってるよ…」 その言葉にかぶせて女が手を上げる。 「わたしも生、」 「知ってる、言わなくても。」 女のオーダーは冗談めかした冷ややかさであしらわれてしまう。 手早くファーストドリンクを準備して戻り、それを配りつつ、わざとらしく斜め上へと視線を投げた。 「えーと、なんだろ?ノースガレージとオースクルターレリアの発展を、キガン?いたしまして?」 はは、と伊藤が声を出して笑った。 とても機嫌が良さそうだ。 「車業界と音楽業界のさらなる進化と興隆を祈念いたしまして!」 ぐん、と、ジョッキを握る右手を高く掲げる。 「かんぱーい!」 「乾杯!」 それぞれのテンションで唱和すると、自然と拍手の波が起こった。 「楽しいな、こういうのも。」 鼻の下についたキメの細かな泡をおしぼりで几帳面に拭き、店のスポンサーの長は満足気に頷いた。 ふと思い出したように征羽矢へと向き直る。 「そうだ、この前、ソハヤくんが紹介してくれた、星野さん、話してみたよ。作品も拝見したよ、なにより自分がやりたいっていうガッツがすごくて。話進めてるからね。」 そして女の方を振り向き、いたずらっぽい表情を作った。 「空知さん、よろしくな。」 女はなんと答えたらいいのか分からずに黙ってビールをひとくち飲んだ。 気が進まないのは当然だが、断る術は持ち合わせていない。 「おっ、よかったっす。星野サン、なんかすげーヤル気んなってたからなぁ。」 女の気も知らずに、征羽矢はのほほんと相づちを打った。 「それできみたちは、森下さんとこに協力してやってくれよな、これジョークじゃないぞ?」 「thunder boxの広告スペースも確保してるわ!」 森下が隣の光世の腕にしがみつくように自身の腕を絡めたので、光世は目をきょろきょろさせて慌てている。 「ええ?マジのやつ?…兄弟、腹括るしかねぇなぁ?」 「…そ、そんな期待に、添えるような、働きは…」 もごもごと言い淀む。 「なに言ってんのよ!全畑が済んだらスケ調整するから、頼むわよ!」 光世の肩の下あたりにぐりぐりと頬ずりをし、有無を言わさぬ勢いである。 「しかし、空知さんのおかげで急展開なんだ。ここはもちろん売り上げ上がってるし、カー用品メーカーさんから問い合わせもいくつももらってる。ほんとうにいい出会いをさせてもらったよ。」 対して、伊藤の話し口は穏やかで知的で、仕事上の付き合いがメインであるとはいえ、この2人が仲が良いというのも不思議に思えた。 「わたしは、べつに…」 しかし、女としては騙しているようで居心地が良くない。 スポンサー各位と関わった当初から、女と光世が偽りなく恋人同士であったならば、こんな後ろめたさはないのだろうが。 いかんせん始まりは互いに援助目当てのビジネスカップルだったのだから、この感情もしようがない。 「伊藤サン、もいっぱい飲みます?ボトル出します?」 伊藤は澄ました顔で案外とイケる口である。 すでに空になったジョッキを軽やかに奪い取り、征羽矢が問うた。 「ああ、そうだな、そうしようか。森下さんはウイスキーは?」 「あらぁ、じゃあいただこうかしら!」 森下は光世と腕を濃密に組んだまま、その手の甲の血管を人さし指でつうっとなぞっていて、光世をすっかり怯えさせている。 誰も助け舟を出さないのがおもしろい。 「わたしは…」 「生おかわりな。」 「まだなにも言ってないんですけど。」 征羽矢は、女とまるで昔馴染みのようなテンポで会話しつつ、カウンターの濱崎へとジェスチャーで合図をした。 「あとなんか食べます?」 「うん、シェアできるパスタとサラダを。すまんな、立たせて。」 「いーえー、自慢の腕を振るいまっす!」 にっこりと歯を見せて微笑んで、空いたジョッキを器用にすべて持つ。 そうして颯爽と立ち去った征羽矢と入れ替わりで、濱崎がボトルのセットを持ってやって来た。 「はいはーい、らっしゃーせ!これ空いたら、前に気になるって言ってたスコッチ仕入れてありますから、入れてってくださいねっ!」 明るく元気に営業もぬかりない。 征羽矢が頼りにしているというのも納得である。 森下が、ぱっと光世を解放して頬に手のひらを当てて声を上げた。 「あらぁ、ワンコ系の子ね!」 「はじめまして!濱崎でっす!うちのしゃちょーとふくしゃちょーがお世話になってまっす!」 グラスに氷を入れて手渡し、それから名刺を取り出す。 間違いなく森下は常連になるだろうなと、女は苦笑いを浮かべた。 「森下よ。こちらこそ、いつもうちのじゃじゃ馬娘の面倒みてくれてありがとうねぇ。」 光世はほっとした顔で、やっと小グラスのビールを半分にした。 光世だって酒が嫌いなわけじゃない、普段はもっと適当に飲んでいるが、さすがに、万が一にでも酔ってはならないと気を張っているようだ。 徐々に客が入ってきていた。 ざわめき、衣擦れ、心躍らせるBGM。 ステージ脇では城本がスタンバイしている。 レイジーでクレイジーな夜が始まる音がする。 アサリがたっぷりのボンゴレをつつきながら、伊藤と森下は光世と静かに盛り上がっている。 城本のパフォーマンスについてあれこれ話が尽きないようだ。 女はぼんやりと、うれしそうに音楽に関する持論を語る光世の横顔を見つめていた。 「昼間は若菜ちゃんと一緒だったんだろ?」 おかわりのビールを注いできてくれた征羽矢が、女の隣に座った。 「ええ、オープンしたばっかのハワイアン系のカフェでランチして、ぶらぶらウィンドウショッピングして、ゲーセン行ってました。」 「焼肉っつってたじゃん。」 「それは次回ということに。」 またデートしてよね、ユキさんの奢りで、と、レースの賞金で高いお肉を食べさせてよ、と強請った、照れた顔が愛らしかった。 次の約束など微塵もしたくない女なのだが、ダメだなどとは言えなかった。 男はいくらでもぞんざいに扱うのに、若い女性が相手だとめっぽう弱い。 「プリクラは?見せてよ。」 「撮らないですよ、さすがに。」 女は、ふは、と思わず吹き出した。 撮るわけがない。 「えー、撮ればよかったのに、ゲーセン行ったなら。」 「クレーンゲームくらいですよ、オタクがギャルとゲーセン行ってやることなんて。」 スマホのカメラロールをスクロールし、1枚の写真を見せる。 1メートルほどもある巨大なジンベイザメのぬいぐるみを抱えてうれしそうに目を細めている若菜が写っている。 オタクがギャルにぬいぐるみを取ってあげるやつだ、マンガやドラマだと恋に発展するやつだな、と征羽矢は思った。 「ほんで帰っちゃったの?」 「今夜は用事あるんですって。残念でした。」 シーザーサラダのパリパリのレタスを突き刺すフォークを握る、女の手元に視線を落とす。 「それ、爪、若菜ちゃんが?」 「そうなんです、めっちゃかわいくないです?」 いったんフォークを置き、両手をパーにして見せた。 「へぇー、すごいな、細けぇなぁ。」 「ネイリストの資格?勉強しながら内輪で自宅ネイルサロンみたいなこともやってるらしくて。」 「なんか意外かも、もっとチャラチャラした子だと思ってたぜ。」 ホールの方で、わぁっと喝采と歓呼が沸き起こった。 城本のステージが区切りがついたのだ。 拍手と指笛の音と、shiroー、しろくーん、と、ファンが叫ぶ声が飛び交う。 「いい子が入ってくれて良かったな。」 伊藤が光世にそう言うのが聞こえた。 「…さいきんは、それでも少し…間に合わない、ことがある、ので…スタッフを募るかも、しれません…」 そういえばそんな話もあった。 確かに、現従業員のオーバーワークは否定できない。 「そうだ、ユキちゃんバイトに誘ってるんすけど、森下サン的に、てか、ノース的に副業NGすか?」 征羽矢が会話に割って入った。 「いいえ、どうせ毎晩飲みに来てるんでしょうから、貢献したらいいんじゃないかしら?むしろ酒量は減るんじゃない?」 その通りである、もし客に勧められて飲ませてもらうにしても、業務の範疇であればハメを外すこともあるまい。 「こっちに影響するほどこき使われたら困るけど、本人さえ良ければ好きにしてちょうだい。」 「レーサーが飲み屋で働いてるっていうのは問題ないもんなんですかね…?」 車業界と酒業界はいまいち相性がよくなさそうだが。 森下はさほど気にとめていないふうである。 「またそれでバズればいいんじゃなーい?」 いい加減な返答に、女は肩をすくめた。 それにしてもまずは当人の意見を聞いて欲しいところである。 額を汗で光らせ、城本が氷のピッチャーの替えを持ってきてくれた。 「ども、こんばんは、城本です。ご挨拶が遅れて申し訳ないです。」 「あらまあ!あなたが爽やか系ね!森下よ、素晴らしかったわ。」 夜の店にはあまり似つかわしくないスポーツマンタイプの青年の精悍な容姿をねっとりと見つめ、森下は熱っぽいため息をついた。 城本はそれをさらりと受け流す。 「うわぁ、ありがとうございます。まだまだ修行中なんですよ、がんばります。」 征羽矢が腰を浮かせた。 「城本サン、お疲れっす、なに飲む?」 「コーラ…いいよ、自分でやる。俺カウンター入るから、ソハヤくんはこっちいろよ。」 気遣いの鬼過ぎる征羽矢の両肩をぐいと押し戻して座らせる。 「あー、そっすか?すんません、フードは呼んでください。」 片手を上げて返事をしてその場を離れ、すぐにコーラのタンブラーを持って戻ってきた。 いつもは瓶のままだが、今夜はくし切りのレモンまであしらわれている。 そのあたりは征羽矢の意志を受け継いだ濱崎の手心だろう。 森下と伊藤の間に膝をついて、3人がグラスを合わせた。 「じゃ、乾杯。由希ちゃんが来るようになってから、光世くん明るくなりましたよ。店の雰囲気、すごく丸くなりました。感謝してますよ。…では、すみません、失礼しますね。」 パフォーマンスの合間なので、カウンターもバタついていて、濱崎がくるくると動き回っている。 「…なにこの店、ホストというより乙女ゲー?」 森下はぽかんと口を開けて城本の背中を見送った。 完全同意、女はしみじみと頷く。 「わたしも常日頃そう思ってます。だれルート攻略します?」 光世の演奏が始まる。 大振りなアクションでホールを煽り倒し、悲鳴にも似た歓声が折り重なって反響した。 室温はさらにぐんぐんと上昇していくようだった。 「また、貫禄が、すごいわね…普段の、あの、おどおどした感じはなんなのかしら。」 森下は興味深げに呟いた。 伊藤が、その手の中の空のグラスに氷を落としてやる。 「なにかスイッチ入るんでしょうね、空知さんも落ち着いててクールですけど、レースでは熱くなるんでしょう?」 今度は傾けられたグラスに、ウイスキーを注ぐ。 まさにイケオジと評価するにふさわしい壮年男性の理想像に、相当に近い。 「落ち着いててクール?節穴ね、伊藤チャン…」 森下は呆れたようにぼやいた。 失礼な、と女は、口を挟んでやろうかと思ったが、非建設的な言い合いになるのが目に見えたので黙った。 「自分勝手だし頑固だし素直じゃないし理屈屋だし口は悪いし友だちいないし、走ってなかったらただの喪女よ、喪女。」 あながち間違いではないのだ、認めたくはないが、小競り合いになったとして勝ち目はない。 「それがまぁ、どうして、こんなに、はぁ…」 森下のとろけた瞳には光世が映っている。 「はぁ、ほんとにかっこいいわね…下手な芸能人なんかよりよっぽど…なんであなたたち付き合ってるのよ、喪女のくせして…」 しっかりと酔っているようなので、想定して練習したやりとりの成果を発揮する必要もない。 いろいろあるんですよ、と雑に躱し、テーブルのボトルを手にとって中身の減った伊藤のグラスへ向かって差し出した。 「ありがとう、おっと、少なめにしといてくれ。なんだかさっきより異様に沸いてるね、なにかあるのかな?」 そう言われてみれば、縦に横に揺れる人の波がざわざわと乱れて、怡怡たる歓声の中に隠しきれない驚きとどよめきが混じり合っている。 征羽矢が横目でステージの兄を見やる。 「ああ、いつもと音の系統ガラっと変えてきてるんすよ、兄弟がポップス回すなんて珍しーから、」 そう解説しながら、女がさらのウイスキーグラスへ手を伸ばしたのを見逃さず、その手の甲をピシャリと叩いた。 「なにするんですか、」 「こないだ懲りただろ?」 先日バーボンで酔いつぶれて醜態をさらし、あまつさえ征羽矢に悪質な絡み方をしたことを根に持っているのだ。 「濱崎ー、生もーいっぱい頼む!」 カウンターに向かって叫ぶ。 「すごいな、まだ新境地に足を踏み入れる勇気と体力があるんだな。」 「いっしょー、研究、らしいすよ、俺にはムリ。」 にゃはは、とふざけた笑い声を立て、ボトルを傾けて、底に少し残っていた飴色の液体を天井の明かりに透かした。 「飲んじまいますよ?」 「空けちゃってくれ、例のスコッチを下ろそう。」 舞台上の光世を見つめたまま、伊藤は背もたれに寄りかかって腕を組んだ。 「…ソハヤくんは、よくがんばってるよ、無茶なくらい、な。きみがいなかったら光世くんはあんなに輝けてない…どころか、引きこもりルート一択だろ。」 「んーにゃ、兄弟の才能も魅力も、もちろん努力もだけど、隠れてはいられねーよ、必ずぜんいんが、見つける…」 長い脚を組み、薄い唇へとグラスを寄せる、その口元は幸せそうに綻んでいる。 高い酒が美味いからじゃない。 この兄弟愛は、自身への執着ともまた少し似て、血の結びつきだけのなす技にも思えず、女は征羽矢をじっと注視していた。 女の視線に気が付き、一瞬目が合ったことで、征羽矢は、はた、と思い出したようにグラスを置いた。 「そーだ、伊藤サン、さいきん酒飲まないお客様が多くて。たぶんユキちゃん効果だけど、駐車場問題が、」 SNSで良くも悪くもずいぶん話題になったから、女のファンならずとも、カーレース趣味の人々のスマホの通知を鳴らし、心に留まることもあったのだろう。 女としては、気に入っている店が大勢に認知され毎晩大混雑ともなれば複雑でもある、が、商売だ、遊びじゃない、繁盛するのはめでたいことだ。 伊藤は、ふむ、と形のきれいな指を顎に当てた。 「なるほど…考えてみよう、なるはやで対策する。少し待ってくれ。」 「あざます、コインパ誘導とかはやってるんすけど、」 光世に熱い眼差しを向けていた森下が会話に混ざってくる。 「ふーん、車乗りのお客が増えてるのね…ちょっとそこらへんにウチのカタログとかフリペとか置いてもらえないかしら?」 「いーっすよ、近くの飲み屋とか、みんな勝手にチラシ置いていったりするし。その棚のところ。」 レコードやCDを乱雑に詰め込んだ本棚が、テーブル席の区画の中央の柱に沿ってぐるりと並べられていた。 天面には近隣の店のチラシや観光パンフレットがごちゃごちゃと重なりあっている。 今も、2人の女性がクーポンの付いた市の観光協会の冊子を手にとってパラパラとめくりながら、次の休みはどこへ行くかを相談していた。 「ちょ、コンビニ行ってきます。」 おもむろに女が立ち上がった。 「ん?なんかいるものある?」 「めっちゃトイレいきたいんですけど混んでるみたいなので、」 つい、とトイレの扉の方を見やる。 扉の前で若い女性がスマホをいじりつつ壁に寄りかかって立っていた。 「あの子たちも待ってるぽいから。」 クーポン誌を見ている2人組のことだ、たしかにチラチラとトイレの方を確認しているようだった。 「あー、ゆくゆくはトイレも増やさなきゃかな?そんなん簡単にはできねーよなぁ…なあ、とりあえずスタッフ用のあるから、そっち使えよ、和式だけどよければ。」 征羽矢がバックヤードの方を指さした。 思わず女はほっとする。 調子に乗っていてビールを飲むペースがだいぶ速かった。 「あ、そうなんですね、借りたいかもです。ちな、きったなくないですよね?」 なにせ男所帯の店だ、田舎のドライブインのトイレなんかをなんとなく想像してしまう。 が。 「うちのメンツ思い出しち?きったねー便所で耐えれそ?」 「…なるほど、安心感ありますね…」 納得して深く頷いた。 潔癖の印象はないが、きれい好きそうな従業員たちばかりだ。 「こっち、バックヤードの奥なんだけど、」 征羽矢も立ち上がるので、女は手を振って言った。 「勝手に行きますよ。」 「物が多くてゴチャついてっから、」 まあ、本来関係者以外立ち入りしないバックヤードを借りるのだ、以前に若菜を寝かせるのに付いて入ったことはあるが、奥の方には機材や重そうな段ボール箱が置いてあったのを思い出す。 許可なく触れたりするつもりはないけれど、そうはいっても、なにかトラブルがあってはならない。 大人しく案内に付いていく。 「ここ電気。」 古めかしい和式便所だが、しっかりと清掃が行き届いている。 表のモダンな作りの建屋と雰囲気が違うのは、増改築でも経たためだろうか。 「ありがとうございます。お借りします。」 涼しい顔をしているが、わりと激しい尿意を我慢していた。 心もち慌ててドアを開けたところを、唐突に、室内へと押し込まれてつんのめった。 「…っ!」 征羽矢が女の左手首を強く掴む。 背中を冷や汗が流れていった。 自分のバカさ加減に幻滅はするが、想定できっこない、いくら2人きりにならぬよう、恋人に、ましてや本人に、念を押されていたとはいえ、こんな状況… 「なんですか?出てってくださいよ。」 なるべく冷ややかな声を出し、なるべく鋭い目線で睨みつける。 が、征羽矢は空いた左手で、後ろ手で鍵を締め、ぐい、と顔を近付けてきた。 「…むり…漏らしちゃったら汚れるかな、スカート捲っといたげたほうがい?」 その頬を平手で殴りつけようと、女は右腕を振り上げたが、あっさりととらえられてしまう。 狭い個室の中、便器を逆向きに跨いで立った格好で、首筋に顔を埋められ、それから逃れようと身体を捻った。 腹に力を入れると、膀胱が疼き、鳥肌が立つ。 やばい… 征羽矢は、掴んだ両の手首を女の頭頂部へ下向きに押し付けた。 さほど力を入れている風でもないのだが、人間のものとはにわかに信じられないほどの圧で、抗えず、女は便器の奥の、わずかなスペースにへたり込むしかなかった。 振りほどけない、それどころか、大きな手のひらは、右手ひとつで女のふたつの腕をひとまとめにしてしまう。 これからなにがなされるかだいたいは分かるし、それについては一種の諦めもある。 ただ、生理的欲求の限界がちらつく。 「っ!待っ…ほんとに!こっちがムリ!」 女は唾を飛ばしてがなった。 「シっ、静かにしろよ!」 文句を言おうと開きかけた口に、征羽矢の男性器が突っ込まれた。 「んなッ…んっ…くぁ…」 口蓋垂が押されて、嘔吐反射で唾液が溢れ出た。 胃の内容物を吐き戻すまいとして下腹部が力むと、尿道口が痙攣する。 もうやばい… 「これ済んだら、出さしたげる、急いだほーがいーね?」 あらがったとてどうにかなるとは思えないので従う。 世の中のレイプなんてみんなこうだ、無理やり暴かれるのは嫌だが、もっと酷い目に遭うかもしれない、命には代えられない… 弱みに付け込んで踏み荒らされる。 ほんとうにやめてほしかったらもっと抵抗したはず、なんて、反吐が出る。 「ぐ…」 喉奥を強引に突かれ、息も絶え絶えに、涙を流しながら、されど休まずに舌を動かし吸い付く。 早く…! 早くイけよ…! 献身的なフェラチオからはほど遠い、ただテクニカルなだけの作業感。 だが征羽矢の全身はぶるぶると震え出した。 「…あー、やっべ、え?今までのやつ本気出してなかったの?ってくらい、気持ちい…えぐい…は、ぁ…コレ、俺が…んっ…ま、待て!おい、ちょ、んあ…っ、クッソっ…!」 征羽矢は唸った。 時間をかけるつもりはもともとなかったが、それにしてもうますぎる…! 足の爪先からとんでもない質量の悦が上ってくるのが分かった。 過去に交際していた恋人に奉仕してもらったことはもちろんある。 それに、いちおう数度は風俗店に行ったこともある。 だが、なんだ、経験したことのない、脳が焼き付くような快美感、あるいは内臓が溶かされるようだった。 あ、と、思う間もなかった、自身の意図とは関わりなく、勢いよく射精してしまう。 女は、ベッ、と音を立ててそれを便器に吐き出し咳き込んだ。 「…けほっ…はぁ、ねぇ、出てって、早く!」 女は、征羽矢の力の緩んだ手を振り払い、気丈に立ち上がった。 やや前かがみで呆然とフリーズしていた征羽矢の胸を、めいっぱい押し返す、が、分厚い身体はびくともしない。 我に返って、女の腰を乱暴に抱き寄せた。 「…ざっけんなよ!」 スカートの中、そして下着の奥へと指をねじ込む。 「ひあっ!?やだっ…やめろッ!離せ…ッ!」 骨ばった長い指で胎をぐるりと弄られて、女は下半身をこわばらせた。 濡れているのは愛液か、辛抱たまらず滲んできた小水か。 「やめねーよ、おら、どーだ?ん?ちびっちゃいそー?」 征羽矢の口の端がピクピクと引きつっている。 興奮が邪悪な欲と混じり合い、らしくない残忍な表情を作ったのだ。 逆に、女は顔を真っ赤にして迫りくる尿意に耐えている。 噛み締めた歯の向こう側から、場違いな艶っぽいよがり声がこぼれ落ちた。 「んあ…ッ、やめ、やめて…で、出ちゃう…あぅ…ひ、ぃ…やめてぇ…手ぇ、取ってぇ…」 いつも勝ち気なお転婆女が、震えながら縋り付いて懇願してくる、それが征羽矢の精神をバグらせた。 潤んだ瞳が怯えと焦りに揺れているのを目の当たりにして、征羽矢の心臓がぎゅうっと軋んだ。 鼻にかかる甘ったるい響きが鼓膜に何重にもリフレインし、理性を頭からかじっていってしまう。 アドレナリンの放出量はもう征羽矢の手に負えない。 「中、ヒクヒクしてきた?もーきつい系?漏らしちゃう?俺の前でおしっこ漏らしちゃう?」 歪んだ笑みが顔面に張り付いて剥がれない。 女は瞼をかたく瞑り身を屈めて振戦している。 「だ…だめぇッ!やだ!やだ!やだぁッ!」 いやいやと幼子のように頭を振り、膝はガクガクとしてまともに立っていられない様子だ。 それでも懸命に括約筋を奮い立たせ、粗相をすまいとこらえる。 「…頑固っつーか、我慢強ぇっつーか、」 呆れ半分に征羽矢が膝で蹴り上げた。 「ッが…」 ピンポイントに膀胱を超物理的に押され、とうとう、栓が、抜けた、ぬるく生臭い体液が大量に溢れた。 女は絶望に息を止め、羞恥に打ち震えている。 「…あ、あ…あああ…やだぁ…」 征羽矢の胸を押し戻そうと突っ張っていた両手で、慌ててスカートをたくし上げた。 潮などというエロティックなものじゃない、それは明らかに、尿であった。 下着を濡らすだけでは当然こと足りず、だらだらと太ももを伝って流れ出て止まらない。 和式便器の周囲のタイルに溢れ流れて、生暖かい水たまりが広がっていく。 クロッチの脇から腟内を弄っていた征羽矢の右手を肘まで濡らし、尺骨の肘頭から雨垂れのように滴った。 「『オシガマ』ってやつ?俺もさぁ、てんちゃんが喜んでくれるよーにさ、日々勉強してんの、いろいろ。」 「…クソ変態野郎…ッ!」 「えー?てんちゃんにだけは言われたくねー。…だってじっさい気持ちーだろ?」 汚れた腕のまま、ピストンさせる指の速度を速める。 MP関節まで押し込まれる度に、ボダボダと残尿が垂れ出した。 女は恥辱に狂いつつも、下唇をかたく噛み、声を殺していた。 両手はスカートの裾を腰の上でぎゅっと握りしめてこわばっている。 「これ、クセになったらさぁ、我慢すればするほど快感強くなるらしーぜ?ど?興味ありそ?」 征羽矢の妙に快活な言い方が女の神経を逆撫でする。 「…死ねッ…!」 最大級の罵声をあびせられ、思わず、ふはっ、と吹き出した。 「殴るとか首絞めるとかは怖くてできねーよ、でも…尊厳ぶっ壊す系は、悪くねーなとか、思って、みたり。」 ずる、と音を立てて、指を引き抜く。 2人の体温で個室内は蒸し暑く、排泄物のむせかえるような臭いが充満している。 「…掃除しとくから、戻っとけよ…て、スカートだいじょぶ?」 女は疲労した据えた目をして、びしょびしょの下着を脱いだ。 トイレットペーパーで下半身と、濡れて汚れてしまったパンプスをざっと拭く。 「…ここ水道あります?」 「出てすぐ右側、荷物詰め込まれてるけど、給湯場があるぜ。」 「…」 ノーパンではあるのだが、スカートをパンパンとたたいてしわを伸ばし、無言で鍵を開けた。 うつむいた顔は薄暗く、怒っているようにも見える、当然だ。 小さな流し場で下着を水洗いして、あたりを見渡す。 積まれた段ボール箱の空いたすき間から覗く、よれよれのビニール袋を引っ張り出した。 それに丸めた下着を入れて、スカートのポケットにねじ込んだ。 ノーパンではあるのだが? シンクに置きっぱなしの洗い桶に水を溜め、振り向き、自身の粗相の跡で濡れたタイルの地面へとぶち撒ける。 「どわっ!濡れるだろ!なんか言えよ!」 征羽矢が慌てて飛び退いたが、女は黙ったまま踵を返した。 どうやら、いよいよ本当に怒っている様子である。 毎度のことだが、征羽矢としては、反省も後悔も、している。 部屋に連れ込むなと言われるから職場で行為に及ぶなんて、そんな屁理屈をこねたいわけじゃない。 ただ自分は兄とは違って、望まれるような暴力的なプレイはできないと思っていて、それでも、女を悦ばせたい、とろけた顔をさせたい、女の記憶に深く残るようなインパクトのあるセックスをしてやりたい、欲は、あった。 また、女もそれを受け入れてくれるという根拠のない自信も、あった。 兄に知られれば面倒なことになる、とは分かってはいたが、それでも。 「…本気の、拒絶とか、絶望って、エロいな…」 興奮は冷めない。 特殊な性癖など持ち合わせていなかったはずなのに、すっかり塗り替えられてしまった。 危機感も、ある、このままでは、いずれ、純度100パーセントの「やめて、やめろ、離して、離せ」を都合よく解釈して、愛と銘打って罪を犯すことになる、かもしれない、などと。 しかしそれにしても、スカートの中、下着をつけずに、今から上司やスポンサーやさらには恋人と、あんなすんとした顔をして話したりするのかと想像すると、不謹慎ながら、また身体は正直に反応を示すものだから、ため息しか出ない。 席に戻ると、森下が、別に心配そうに、というわけでもない言い方で女の顔を覗き込んだ。 「大丈夫?飲み過ぎたかしら?」 「…ええ、少し、気分が…すみません、楽しくてはしゃいじゃって…」 女のほうも、別に気まずくうわずったりなどしない声で答える。 息をするように嘘をつける。 「ソハヤくんは?」 「…さぁ?さっきトイレまで付いてきてくれてましたけど…」 イスを引き腰掛ける。 化繊まじりのスカートが素肌にひんやりと密着してくるのがやや不快ではあるが、膝下丈でよかったと、ぜんぜんよくないのに若干の安堵を感じた。 パタパタと足音を響かせ、征羽矢が小走りでやってきた。 「すんません!ちょっと外で電話してて。ユキちゃん、どう?だいじょぶ?」 よくもまあいけしゃあしゃあと…! 女は征羽矢をねめつけた。 はからずも息が合って、2人揃って席を外していた言い訳を、吐き気をもよおした女を便所で介抱していたという設定になすりつけたのだ。 とてもそんなふうには見えないが、嘘をつく才能に関しては兄よりよほど長けているようだ、光世なら絶対に目が泳ぐ、間違いない。 テーブルの上のグラスも皿もボトルもすっかり中身はなくなり、ステージの演奏も終盤にさしかかっていた。 さきの音楽と印象を合わせてか、80年代ポップスの、ひと夏の恋を歌った曲でゆるりと締めくくる。 若い客たちにとっては耳馴染みのない作品だろうが、本日の特別ゲスト、森下や伊藤にとっては、風で巻き上がる長い髪、ギラつく陽射し、ビーチサンダル、灼けた砂浜、波の向こう側の白い船影、それらが、目を瞑るとまぶたの裏にありありと描かれるのだ。 その小節の隙間に、南国風レゲエ調の別の曲を挟み、ナチュラルに順番につないでいく。 ほう、と、征羽矢が息をこぼした。 「…すげぇ、いい…」 カウンターの方へ視線を飛ばすと、城本もカトラリーを磨く手を止めて、まん丸く目を見開いて光世を見つめたまま固まっている。 フロアは十二分に沸いている。 今夜の最高潮がここである。 あとはゆっくりとゆっくりと、ボルテージは落ちていく、心地の良いビートとともに、穏やかな眠りに就くように。 飲み過ぎた設定なのでしかたなく水を飲んでいる。 「…おい、聴いていたのか…?」 汗だくで戻ってきた光世が、訝しげに顔をしかめた。 この女がこんな冷めた表情でチェイサーを求めているはずがない。 「聴いてました聴いてました!ほら、あのCDの曲かけてくれてたじゃないですか、楽しみにしてたんですよ、これでも。」 むすっとして隣のイスを引いた恋人を見上げた。 「サビのとこ、ぎゅいーんってやるやつ、」 「イコライザ、」 「それ!ちょうど加速するイメージの歌詞のところで、チェンジしてエンジン音高くなる感じとリンクしてて、すごいなって、」 「…そう、か…」 満更でもない様子で腰掛け、女の目の前のぬるくなったビールのジョッキを奪い取る。 「2Aメロの、たぶん高速道路巡行してるふいんきの、あそこも!なんかずっとふしぎにいい感じ!って思ってたら気付かないうちに繰り返してて、」 「…そう、だな…」 温度の上がったビールは苦味が濃く感じた。 「街灯が等間隔で並んでる奥行きある情景、見えた気がして、音楽聴いて、景色浮かぶって、すごいですね、聴かせる技術って、特殊能力!」 おべっかかもしれない、が、割合に意図に近いところを汲んでいて、少し心躍る。 堀江の解釈も大いに役立った、ポップスの音をほどくことに関しては、やはり光世よりも上手いようだ。 「…聴いていたなら、いい…」 どうせ飲んだくれて聴いていなかったに違いないと決めつけていたから、きちんとフィードバックされて正直驚いてもいる。 「今日のは、柔らかい音がたくさんで、とってもすてきです。わたしやっぱりミツヨさんの繋ぐ?音?音楽?すごく、好きです。」 畳みかけるように褒めちぎられて、慣れない感情に頬が熱くなった。 「…いい…!もう、それ以上…!」 額を押さえて顔を隠しそっぽを向いたが、征羽矢がデリカシーなくからかってくる。 「なーに照れてんだよ、あーあ、赤くなっちまって。」 「なって!ない…!」 炭酸と旨味の抜けたビールを飲み干して、ジョッキの分厚い底をテーブルにドンと打ち付けた。 「でもユキちゃんのおかげで新しい扉開いたみたいなとこあるだろ?あ、今夜かけてた曲ね、ユキちゃんが選んだヤツなんすよ、ぶっちゃけ兄弟の趣味じゃねーからさぁ、」 ことの経緯を、伊藤と森下にざっくりと説明してやる。 「成長のためにもさ、今後もアドバイスとアイディアちょうだいしてまいるショゾン!」 「へぇ、ちゃんとミツヨきゅんのお役に立ってるのねぇ、ならよかったわぁ!」 森下が感嘆の息をついた。 「てっきりタダ酒かっくらってヒモ女かましてるのかと思ってたんだけど、」 「失礼ですね、ちゃんと飲み代は払ってますよ…チケットは、さいきんは、買ってない、ですけど…」 そういえば当たり前に顔パスを乱用してしまっている事実に気が付き、語尾がだんだんと小声になっていく。 「いーんだよ、ユキちゃんのおかげ?でお客サマ増えてるんだし。」 そのとき、早足で城本が駆け寄ってきた。 「ミツヨさん、すみません、お話中に。ちょっとだけこっち顔出せません?」 カウンターへ目をやると、常連の壮年男性がニコニコしてなにかの洋酒を楽しんでいた。 上品な飲み方でけっして騒いだりせず、ただ音楽が好きで数日おきに店に足を運んでくれる、たいへんにありがたい上客である。 すでに女とも顔見知りで話したこともあるし、数度はビールをごちそうしてもらったこともある。 光世に彼女ができたと純粋に喜んでくれていた、まるで父親のような佇まいで。 「…少し、外し、ます…」 ジャケットの襟を正し、席を立つ光世へ、ひらひらと手を振る。 見ていると、きりりと15度の角度でお辞儀をしてひとことふたこと言葉を交わし、なにかかぶりを振って困ったような素振りをしている。 ふとこちらを向き、ぱち、と、目が合った。 遠目でも分かる、やれやれ、という動作で肩を落とし、女を手招きした。 「?」 人さし指で自身を指し、首を傾げてみると、こくこく、と頷いた。 「なんか呼ばれました、失礼しますね、」 立ち上がると臀部がスースーする。 こんな格好で恋人の経営する店のお得意様にご挨拶などまことにどうかしている。 「こんばんは、」 若干の作り笑顔で会釈をした。 「いやぁ、今夜の演奏すごく良かったから一言だけって思ったんだけど、聞いたら、あなたのおかげだと、ミツヨくんが言うから、あなたにもお礼をと、ね、」 柔らかく、ほどよくフレンドリーな話し方で嫌味がない。 きっとどこか順調な会社の社長とか会長とかに違いないと、なんとなく予想する。 「と、とんでもございません、音楽のことはサッパリですので、素人の横やりをミツヨさんが真に受けただけで…」 さきに光世がしていたように、女もまた首と手をぶんぶんと振って恐縮する。 なるほと、こういういきさつだったか。 「とても気分がいいんだ、懐かしい曲を美しく表現してもらってね、青春を回顧したというか、とにかく、うれしかったんだ。」 年代的に、おそらく最後の曲だろう、あの夏の終わりの海岸の景色に、自身の思い出を重ねて想いが昂っているのだ。 「あなたになにかボトルを入れよう、なにがいいかな?」 「そっ、そういう、わけには、いきません、わたしここの従業員でもなんでもないですし、」 慌てて断るための文句を探すが、男性は押し付けがましくもなく優しく続けた。 「たのむよ、これからもミツヨくんとここにいて欲しいんだ、あなたが来てくれるようになってから、ミツヨくんの音はいっそう素晴らしいんだ。」 買いかぶり過ぎだ、それはすべて光世本人の才能と努力の賜物だ、とは思うが、口には出せない。 「あなたは飲むべき酒があるうちは、きっとここへ来るだろうからね。」 冗談めかして追い打ちをかける。 こういうコミュニケーションの達者な人物をあしらうのは非常に難しいし、苦手でもあった。 「…本当によろしいのでしたら、お言葉に甘えちゃいます、よ?」 森下の言うタダ酒である。 一度は断る、それでも勧められるならば受けるのも礼儀である。 お気に入りの芋焼酎の、新品のボトルにネームをかけてくれた。 「いろいろ大変そうだなとは思うけど、ぼくはあなたで良かったと心から信じてるよ。では、また。」 スマートにクレジットカードで支払いを済ませて、光世の肩をポンと叩いた。 「大切にするんだぞ?」 その台詞さえ高圧的でなく、じわりとあたたかく胸の奥に染みる。 2人揃って、ありがとうございます、と頭を垂れた。 ------------------------- 〜21に続く〜
2025/10/15 19:37:21(K6YC/qCx)
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