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〜まえがき〜
⚠書いた人はオタクです⚠某刀ゲームの二次創作夢小説です⚠暴力などこじらせ性癖の描写多々⚠自分オナニ用自己満作品です⚠ゲームやキャラご存知のかたは解釈違いご容赦ください⚠誤字脱字ご容赦ください⚠たぶんめちゃくちゃ長くなります⚠未完ですが応援もらえたらがんばります優しいレス歓迎⚠エロじゃないストーリー部分もがっつりあります⚠似た癖かかえてるかた絡みにきてください⚠ —---------------------- 高速から降りると、すぐに山道に差し掛かる。 ぐねぐねときついカーブが続き、やがて開けた砂利敷きの駐車場へと着いた。 車を停めて歩いて行くとコンクリートの壁と階段があり、中から様々な音が聞こえてくる。 騒がしいエンジン音、タイヤのスキール音、鋭いブレーキ音。 階段を上がると、むあっと排気ガスの匂いとゴムの焼ける匂いがした。 「ユキちゃん、こっちよ!」 ひょろりとした体格の、サングラスをかけた男が、こちらに向かって片手を振っている。 「おはようございます、お世話になります。」 女がまるで常識人のような挨拶をしたので、光世と征羽矢は奇しくも少し気味が悪いと思ってしまった。 「まぁ!お顔どうしたの!?」 男がわざとらしく手のひらを口に当てて尋ねた。 「…あー、ちょっと…」 女は、しどろもどろに嘘を言う準備をする。 「もう!アマチュアとはいえ私たちの看板背負ってるんだから、わんぱくは控えなさい?マドカ峠の事故で懲りてるでしょ?」 人さし指で女の額をぐいと押した。 「…あれは、まぁ、はい…そう、ですね…」 女としてはなんの申し開きもない。 アスリートなのだ、浅い理由の怪我は商売人としてはあるまじき恥であるから。 「命があったから良かったものの…それに次に公道でやらかしても庇わないわよ?」 「…その節は、申し訳なかった、ですよ…反省してます…」 ちょい、と前髪をつまむようにいじる。 本当に反省しているのならばそんな動作はしない。 「ほんとにすみません…で、こちら、電話でお伝えしてました、友人?の三池さんご兄弟です。」 いい加減な謝罪の後の、友人、と2人を紹介するイントネーションが、若干疑問系になる。 その関係はセフレと言う以外になんと表現する方法があるだろうか。 「あら!べらぼうにいい男じゃなぁーい!?」 男は少し機嫌を直し、くねくねと身をよじって、サングラスをずらして2人を見つめた。 「お兄さんがミツヨさん、弟さんがソハヤさんです。」 「あら、あらあらまぁまぁまぁ…モデルとか興味なぁい?うちのレーススーツとか…すぐ採用させるわぁ!」 順番に握手をするが、兄弟には返事のしようがない。 征羽矢はかろうじて得意の笑顔で会釈したが、光世に至ってはカチコチに固まっている。 「こちら、ノースガレージさんのGMのモリシタさんです。今日は社長は?」 「来てないわ。本番以外どうでもいいんじゃないかしら?ねぇ、ほんと、社長に直でハナシ通すわよ?ガタイもいいし…」 森下と呼ばれたその男は、人さし指を下唇に当てて、うっとりと2人を見比べる。 「経営者さんですし、いわゆるミュージシャン?でしょうから、モデル業は難しいかと。」 ため息混じりに、女がフォローした。 「あら、そうだったわね、あなた、ユキちゃんのカレシなのよね、ごめんなさいねぇ。」 当然SNSの記事を読んでいるだろうから、否定してもこじれるだけだろうと、女は薄く愛想笑いを浮かべた。 征羽矢が女の横腹を肘でつつく。 「ノースガレージて、トナカイのマークの?」 審神者証の発見や、本丸が実在した可能性というショックから立ち直ったわけではなかったが、それはいったん置いておくしかない。 「そうですそうです。カー用品メーカー分からないって言ってたのに、知ってるじゃないですか。」 「ぜんぜん大手じゃん、兄弟と同じくらいの知名度?とか思ってたけどレベチじゃん!」 それを聞いて光世は肩をすくめた。 女はキョロキョロと辺りを見渡す。 「わたし、とりま何周かしてきます。」 光世と征羽矢に、てきとーにそのへんのスタンド席座っててください、と言って、パドックの出口に停車している1台積みのキャリアカーの方へと小走りで階段を駆け下りて行ってしまった。 キャリアカーの側に、あの動画で見た、角ばったスポーツカーが停まっている。 車両のチェックをしていた男と、なにやら親しげに話しているのが遠目にも分かった。 バインダーを手渡され、用紙になにか書き込んだり、車の下を覗き込んだりしている。 「わたし、ピットのあのへんにいるから、なにかあったら言ってね。」 森下も、ひらひらと手を振ってその場を立ち去る。 アスファルトが日差しに照らされて熱く煮えたぎって、陽炎が立つ。 ぼんやりと眺めている、女を含んだ景色がゆらゆらと滲んで揺れる。 「…けっきょく、本丸は破棄?されたんだっけ?」 征羽矢が、ポツリと問う。 光世は眩しそうに目をほそめている。 こんな昼間にさんさんと太陽を浴びるのは、いったい何年ぶりだろうか。 「…破棄、というか…外界と完全に遮断されて…」 蝉の声と、サーキットを走っている誰かの車のエンジン音とが混じる。 光世の、ぼそぼそと話す声がかすんでしまう。 「だが、侵入してきた輩は、たしかに殲滅したんだ…乱と物吉がいたしな…」 征羽矢の頭の中に、同郷の同僚の柔らかな笑顔が思い出される。 練度は近侍固定の乱藤四郎に次いで本丸のナンバー2であった。 「…こんな、夏、だったな…立葵の、夏至の景趣の…」 女は車に乗り込んで、運転席でごそごそと身動きしている。 ヘルメットをかぶったり仰々しいシートベルトを装着しているのだ。 そうして準備が整ったのか、やがてゆるゆると発進していく。 監視塔では黄色の旗が振られていたが、それに代わって、ぱっと緑の旗がひらめいた。 滑らかに加速していく。 1周目は無理のない速度の巡行だ。 それぞれのコーナーのRを確認しているのだろう、カーブの手前でブレーキランプが律儀に灯る。 2周目、少しスピードが上がった。 ストレートではエンジンが唸り、コーナーでは車体がうっすらと斜めにきしんだ。 3周目、さらにアクセルが踏まれる。 1つ目のカーブではギュギュッとタイヤが鳴き、ぎりぎりのところでグリップを保っていたが、2つめのヘアピン状のカーブでタイヤは煙を吐いて、車両はゆっくりとスピンした。 すぐさま黄色の旗が振られる。 兄弟ともに、そしてとくに征羽矢は、スポーツ全般をそつなくこなすが、いまだにサッカーを観戦していてオフサイドがピンとこない。 レスリングや柔道などの格闘技も、野球のストライクゾーン判定も、裁定がいまいち審判の独断の感があって納得できない場面がある。 ドリフトレースの勝利基準が全くといっていいほどに分からない。 一斉にスタートして先にゴールした方が勝ち、が正義である。 振り返し、角度、コース、チャレンジング。 先日のレースの動画を何度も見て耳にしたポイントではあるが、そういう感覚的な採点は理解できない。 スピンはしたものの接触はゼロだ。 いったん完全停止して、また動き出した。 スタンド席から、上からの目線で見ていると、小学生のときに流行ったミニ四駆を彷彿とさせられた。 また緑色の旗が翻る。 「…乱も、物吉も、折れただろ…歌仙も…俺はあいつらに、比べたら…生存値だけは、高いから…」 光世の顔がぐにゃりと歪んだ。 辛い、記憶が、呼び起こされてしまう。 「…俺の、景色の最後…まだ審神者は、意識があった…」 ぎり、と握った拳が震えている。 爪が食い込んで血が滲む。 「…身体が、千切れて…だから、名を、寄越せと…いっとき匿うだけだと…必ず、帰すから…」 コース上で揺らめく陽炎によく似た、光のひずみが光世の両眼に宿っている。 一筋の涙が、頬を伝って流れ落ちた。 「…だが…審神者は、首を振った…俺にできることは、なかった…」 兄が語るその光景を、征羽矢は知らなかった。 ソハヤノツルキは現場に居合わせなかったのだから仕方のないことだ。 主人の霊力が突如として急激に弱まり、慌てて緊急帰還したところで目にした最悪の状況が、それである。 「…その後…どうなったのか…分からない…」 女の車がピットに戻って来た。 窓から顔を出して、メカニック担当なのだろう、トナカイの絵のワッペンが縫い付けられたツナギ姿の男と言葉を交わしている。 男が、斜め上、光世と征羽矢の方を振り向いた。 にっこりと笑って、2人を手招きする。 兄弟は一瞬顔を見合わせたが、立ち上がって階段を下りていく。 「こんちわ!整備の木庭です、よろしくね。ペーパードライバーなんだって?これ、書いて、免許証コピー取らせてね。」 てきぱきと書類とペンを渡される。 なんとなく勢いに飲まれて、それぞれ財布の中で眠っている免許証を差し出した。 「緊急連絡先…?どーしよ?オースの伊藤サンにしとくか…」 征羽矢が、いちばん懇意にしているスポンサーの代表の名前を出した。 両親とは連絡がつかないし、親戚もない。 経営者の返事を待たずに書き込んだ。 それを横で見ていた森下が、すっとんきょうな声を上げた。 「オースクルターレリア!?」 「あ、店のスポンサーなんすよ。音響機器とかの。」 「うちのPBのオーディオ任せてるのよ!ご縁があるじゃなーい!」 森下はぴょんと跳ねて、ウキウキとした足取りで事務棟の方へ歩いて行ってしまった。 これはもしかしなくともモデル契約を取り付けられそうな気配を察して、征羽矢が引きつった笑みを浮かべた。 「はい、じゃあ、どっちが先?」 木庭がヘルメットを持ってきた。 「?」 「ユキちゃんの横なんてレアだよぉ?」 おずおずとヘルメットを受け取った征羽矢が先に乗る流れになってしまう。 助手席に乗り込む。 こちらも相当に車高が低いし、乗り心地はさらに悪い。 「あてっ!」 車内に張り巡らされている金属製のパイプにしたたか頭をぶつけてしまった。 「ははっ、」 滅多にないことだ、テンションが上がっているのか、女が声を出して笑った。 ヘルメットの中でくぐもった、これまでにない温かい声で言う。 「これ、やったげます、メットかぶってください。」 見たこともない形状のシートベルトだ。 股の間を通して、両脇、両肩を縛り付けられるような形になる。 女の身体が寄せられて、ふわりと汗の匂いがした。 煩悩を振り払うようにヘルメットに頭をねじ込んだ。 「この子はハチロク。カリーナの、あの乗ってきた子ですね、あの子の弟みたいな感じですかね。」 弟、のワードに、征羽矢はどことなく親近感をおぼえてにやついた。 おまえも苦労してんのか?なんて心の中で語りかけてみる。 「じゃ、いっきますよー。」 普段よりワントーン高い声色で女が息巻いた。 くん、と、背中が座席に張り付く。 駆動音が鼓膜に突き刺さる。 わくわくの胸の高鳴りは、すっかり陰鬱な思い出にすり減らされてしまったけれど、それでもなぜか湧き立つ、無機物への期待と憧れ。 長らく忘れてしまっていた少年の頃からの、気持ち。 フロントガラスから眺める景色が横に流れていくというのは、初めての経験だ。 全身が遠心力で外側に搖さぶられ、咄嗟にアシストグリップを探すが、内装はごっそり剥ぎ取られている。 代わりに、ジャングルジムのように組まれたロールバーのパイプを握る。 カーブのたびに、ミシミシミシっ、と車体が軋むが、その檻のごとき構造物のおかげでぺしゃんこにならずに済んでいるようだ。 女はせわしなくステアリングを左右に切り、左手はギアを上げては落とし、左足は細かにクラッチを踏み、右足はアクセルとブレーキを順番に、あるいは同時に微調整している。 視線は忙しく左右に動き、監視塔のフラッグのことも気にしている。 速度が上がってコーナーに突っ込むと、タイヤガードが目前に迫り、ぶつかる、と身構えてしまうが、次の瞬間、ブレーキングでつんのめって、気がつくと、けたたましいスキール音とともに向きが変わっている。 身体はずっと力んでこわばって、激しく慌ただしく横移動するパノラマビューから目をそらせない。 言葉は出てこないし、なにかしゃべろうと思ったところで、舌をかんでしまうかもしれないと行動には移せない。 ほんの2周、わずか数分のできごとだ。 心臓が早鐘を打つ。 汗が噴き出すのは暑いからだけではない。 ピットに戻り、征羽矢は、ぷはっ、と息を吐き出してヘルメットを脱いだ。 「ジェットコースターじゃん!」 「怖くないです?」 「ぜんぜん!緊張は…したけど、てんちゃんが運転してるんだしだいじょぶかなって!」 歯を見せて、にかっと笑った。 いつもはつんと逆だっている金髪がクシャクシャに潰れてしまっているが、それが幼く見えさせて、ますます愛らしさが際立っている。 「兄弟と代わるぜ!」 5点式のシートベルトを四苦八苦して外して、降車した征羽矢に代わり光世がシートに身をうずめた。 低い天井に、ヘルメットのてっぺんがくっつきそうになっている。 征羽矢のときのようにシートベルトを装着してやり、フルフェイスのヘルメットの、シールドから覗く灰鼠色の瞳をじっと見つめた。 「ビビってます?」 「…別に…」 光世はぶっきらぼうに答えた。 「ファンイベで抽選か、それかまあまあの額で販売する席ですよ、楽しんで。」 光世の右手を取り、自身の、ドライビンググローブをはめた左手の甲に重ねさせ、それからシフトレバーを包み込むように握る。 アクセルを踏み込んでいくと、エンジンが雷鳴のように鳴いた。 「また、あの子ってば…不必要な角度だして…ほぼハーフスピンじゃないのよ…」 森下が苦々しく吐き出す。 「カレシ乗せてるからってはしゃぎ過ぎね…」 埃っぽいパイプ椅子に前のめりに座って、征羽矢は走行するハチロクを目で追う。 「カウンター不安定だし、アンダー出過ぎっすね、ここ久しぶりでしたっけ…」 木庭が手の中でラチェットをもてあそびながら、征羽矢にとっては呪文のような単語を並べて相槌を打った。 「派手さはあって、らしいっちゃらしいっすけどね、減点は多いっすね。」 コースの形が印刷されている紙に、赤いボールペンでなにやら細かに書き込んでいる。 「…まぁ、ユキちゃんの走りは、観客を魅了する、みたいな無責任な触れ込みで伸びるやつっすからね。」 森下が征羽矢の隣の椅子に腰掛けた。 「ソハヤくん、うふふ、オースの社長さんにお許しもらったわ、連絡先交換しましょうよ。」 「え?マジすか?…マジかぁ…」 スマホを取り出してロック画面を解除してみると、ショートメッセージが来ている。 『ノースガレージを離すなよ!車業界と音楽業界は存外近いぞ!』 やっかいなことになったかもしれないなぁ、と困惑しつつ、主たるスポンサーの意向である、致し方ない。 そうこうしているうちに、ハチロクが戻ってきた。 助手席から降りてきた光世は少しふらふらしている。 女も運転席から出てくる。 ばさり、とヘルメットを外して、汗だくの髪を掻き上げた。 「コンタクトにしないとやりにくいです。そもそも片目だと距離感掴めないです。」 「当たり前でしょ?さっさと直してちょうだい。」 征羽矢の電話番号をゲットしてご満悦の森下が、冗談めかして叱り飛ばした。 「あ、ソハヤさん、モリシタさんゲイだから気を付けてくださいね?」 女が、真実かどうか分からない茶々を入れた。 どきりと振り返った征羽矢の視線が森下のものと絡み合う。 けたけたと女が笑い、その場にいた4人の男は、全員が驚いて顔を見合わせた。 「…ほんと、浮かれちゃって、ユキちゃんもいっぱしのオンナだったのね…」 森下がしみじみと呟いた。 征羽矢が、レンタルのヘルメットを両手でくるくるともてあそびながら切り出した。 「さっきのハナシだけどさぁ、ひでー事故ってんじゃん!いつごろ?」 女は一瞬、遠い目をした。 なにかを思い出そうとしているようだった。 「1年ちょっと前ですね、夏でした、山道、ガードレール乗り越えて崖下に落ちて、車ぐっしゃぐしゃ、脳挫傷と内臓破裂で。」 こともなげに言い放つ。 その内容は常軌を逸しているが。 「ま!?1年!?たったの!?なんで今こんな元気なん?」 「奇跡的にほぼ後遺症もなく回復、と、医者も驚いていましたよ、我ながらがめつい生命力です。」 ヘルメットの圧で顔にくっついてしまうために、皮脂汚れで視界をぼやけさせる眼鏡のレンズを、光世のTシャツの裾を引っ張ってそれで拭いている。 光世はそれを咎めもせず、むすっとした顔のまま黙って会話を聞いていた。 「でもおかげでいくつかの臓器はまともに機能してないはずよ?お酒は控えてと何度も言っているわ。」 森下が改めて女の私生活のだらしなさに釘を刺す。 けれども、これこそのれんに腕押しというやつだ。 「幸い肝臓は問題ないんですよね、アルコールに対する執念の賜物ですかね。」 征羽矢は天を仰いだ。 「情報量多すぎるぜ…!」 クーラーボックスからスポーツドリンクのペットボトルを手に取りながら、女が森下にねだる。 「ジムカーナ場借りてもいいですか?」 「いいわよ、空いてるわ、今日は遊びに来たのかしら?」 それは嫌味ではあったのだが、女は気にもとめていない風で、また光世を助手席に押し込んだ。 「あっちの広場です。ソハヤさんは走ってきてください。」 「ずりー。なにこの格差。」 征羽矢がブーイングを飛ばすが、先に行きますね、と、さっそうと走り去ってしまう。 木庭が目をパチクリとさせている。 「ユキちゃん、なんか変わりましたねぇ。」 森下は拳を握りしめ、ハチロクの後を追って駆け出した征羽矢を見つめながら、熱く唾を飛ばした。 「恋よ!」 木庭は肩をすくめる。 「ま、走りが堅実にならなければいいんですけど。」 暑い、と唸って、女はツナギの上半身を脱ぎ、袖をウエストでぎゅっと結んだ。 成人向けロボットマンガのロゴをモダンな総柄に落とし込んだデザインの半袖Tシャツを、更に肩までたくし上げる。 光世は、こわごわとクラッチとブレーキを踏み込んだ。 「ペーパードライバーどころじゃないじゃないですか。ぜったいいちばん奥まで踏んでくださいよ?はい、1速入れて。」 およそ10年前に自動車学校で学んだ内容は、もううろ覚え以下の彩度だ。 「ブレーキ離していいですよ、クラッチゆっくり繋いで。」 かくん、とエンストする。 「エンストしたらすぐさまブレーキクラッチニュートラルセル回すです。」 セルの前に光世の目がぐるぐる回っている。 「もっかい、ゆーっ、くり、繋いでください。」 今度は、のろのろと前進する。 「アクセル入れなくていいです、はい、クラッチ、2速。ぜっ、ったい、いっちばん奥まで、踏んで。」 慎重にクラッチペダルを上げていくと、すいっ、と加速した。 「まだアクセルいらないです、クラッチ、3速。奥まで、踏んで。」 3速のギアが繋がると、不思議な浮遊感があった。 車を走らせるためのアクセルだとイメージしていたのに、1ミリも踏んでいなくてもかなりの速度が出るのだな、と驚いている。 「次、4速繋がったらじわっとアクセル入れましょう。」 どきまぎと、右足に力を込めていく。 「…考えることが、たくさんあって…とても大変だ…」 いつになく饒舌な女を隣に、いつも通り終始無言なのも気まずく、下手な感想文が口をついて出た。 「慣れれば、呼吸といっしょですよ。あそこのパイロン回って戻りましょう。回るとき減速、ギアもきちんと下げます。車速に合ったギアで走るのが最低限の基本です。」 光世でさえ音楽の話になれば多少は口うるさくなるのだから、仕様のないことではある。 「高ギアのまま車速落としてクラッチがつーんて切る人けっこういるので…あれ嫌なんですよね。」 後から走ってきてようやく追いついた征羽矢が、両膝に手をついて、ぜーはーと呼吸を荒げている。 「よっしゃ、8の字やってみましょう。」 停車すると、ぴょんとドアを飛び出して三角コーンの方へと駆けていく。 その後ろ姿をぼんやりと眺めている。 あのときちぎれかけて肉の間から骨が見えていた二の腕はふっくらとしている。 赤い三角コーンを持ち上げて振り向いた身体も、はらわたがはみ出したりしていない。 ハイカットスニーカーを履いた足首もきちんと繋がっていて地に着いている。 生きているということは、眩しい。 光世も征羽矢も久しぶりに運転して、何度かエンストして悔しがったけれど、やはり反射神経、動体視力ともに抜群によく、バック8の字までスムーズに会得していった。 「わりとコツがいるのに、すごいです、センスありありですよ。」 自分のことのように女は喜んだ。 「すごく楽しいんですけど…営業に間に合うように撤収しましょうね。わたしコースもうちょっと走ってきますね。」 事務棟の2階を指さす。 「あそこ、適当なごはん食べれますから、食事済ませといてください。」 そう言われて、向かった食堂の自動ドアをくぐると、そこはエアコンがしっかり効いていて生き返るような思いがした。 光世はカレー、征羽矢はカツ丼の食券を買い、窓際の席に座った。 一面のガラス張りで、サーキット全体をぐるりと見渡すことができる。 女のハチロクは、他のスポーツカーとコースを周回している。 直線ではあっという間に距離を広げられるが、コーナーのたびにその背後に迫る。 数周の後に同時にピットへ帰ってきて、すれ違うような並びで停車し、互いに運転席の窓から顔を出してなにか話しているようだ。 腕がニョキっと出てきて、軽くハイタッチする、ドライビンググローブ。 そしてまた2台揃ってコースへと復帰していく。 「なんか不思議な世界だぜ、」 番号で呼ばれて立ち上がった征羽矢が、1つのトレイにカレーとカツ丼の両方と水の入ったプラスチックのコップを2つのせて戻ってきた。 「すまんな、」 楕円形のカレー皿とスプーンを受け取り、代わりに卓上の自分の席側に据えてあった一味唐辛子を征羽矢に手渡す。 「さんきゅ。」 それをパラパラと丼にふりかけてから、両手を合わせた。 「スキー場のレストランみたいだな。」 ぱくりととんかつにかぶりつく。 征羽矢が学生の頃に何度か、高速バスで、兄弟2人で隣県のスキー場へ行ったことがある。 「…この記憶は、ある、記憶、だよな…?」 急に不安になり、兄の顔を見上げた。 小学生の頃の夏休み、中学生のときに打ち込んでいた水泳部、高校でできた友人たち、経営を学ぶために努力した専門学校での講義、店を立ち上げてうまくいくことばかりじゃなく苦労していた生活。 25年もの間に蓄積された経験と人間関係が作り物とは考えられない。 ただ、それと同じか、あるいはそれ以上の質量を持った本丸での思い出が並行的に存在している。 もし刀を握らされれば、一塵の迷いもなく振るえる、一度覚えた自転車の乗り方を忘れないように、体が、本能が、覚えている、感覚。 光世が、征羽矢を安心させるためか柔らかな声色で答える。 「…分からないことに憔悴してもどうにもならんだろう…?」 スプーンに映った歪んだ自身をじっと見つめた。 「…毎日を、過ごすだけだよ…」 食事を終えて、女の様子をうかがいにピットへ行くと、森下が2人にチケットを渡した。 「これ、あげとくわね、来月の。」 チケットには朱印で『関係者用』のハンコが押してある。 「来れるか分かんないっすよ?車持ってないし…」 征羽矢は眉を下げたが、森下は人さし指をちっちっ、と左右に振った。 「伊藤チャンが連れてきてくれるわよ、ナシはついてるわ。」 「…なるほど?」 少し困った風ににっこりとする。 ノースガレージとオースクルターレリアがちゃっかり手を組んで、光世と女のツーショットをうまく売り込んでいく図が浮かぶ。 面倒だなと思う反面、あわよくばノースガレージが店に出資してくれる可能性が出てくる訳で、無碍にもできない。 征羽矢が光世にヒソヒソと耳打ちした。 「ほんとに付き合っちまえよ?ややこしーことになるぜ?」 光世は別に意識せずとももともと小声だ。 「…前から言っている、けっこんしてもいい…」 むすっとして答える。 それを盗み聞いて、きゃ、と森下が目を見開いた。 「ミツヨくん、気骨折れるわね…」 ハチロクがコースから戻り、女が降りてきた。 「最後よかったね、ここイン側が舗装ダルいから、攻めすぎない方がラインはキレイにキマるよ。」 木庭が手元のバインダーに挟んだ紙を外して女に渡した。 「わたしにラインのキレイさ求めるの誰です?」 女はヘルメットを外しながらそれを受け取り、髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。 「ま、それもそうなんだけど、マニュアル通りの進言も必要でしょ?駆動系で気になるところは?」 「すこぶる良きです。いつもありがとうございます。」 森下がその会話に加わる。 「あと塗装とステッカー変えるわよ。」 「ガワはなんでもいいです。推しのラッピングでもいいくらいですよ。」 女が心底どうでもよさそうに返事をした。 「…次からオースクルターレリアがかんでくれるのよ。ミツヨくんに感謝ね!」 征羽矢が驚いて、慌ててスマホを確認する。 『トントン拍子に話が進みました。よろしく!(笑)』 よろしく!笑じゃねーよ、征羽矢こそ笑うしかない。 「じゃー森下サンも近いうち飲みに来て下さいね?」 今さらではあるが名刺を渡す。 「木庭サンも。」 もう1枚を取り出した。 「こーなったらみんな仲良くしよーぜ!」 夏の太陽に負けない、征羽矢のまばゆい笑顔が炸裂する。 「すみません、お先に失礼します。」 女がきちんと頭を下げた。 光世と征羽矢もそれに続く。 「今日はお邪魔しちゃってすんませんっした。ありがとうございました。」 本来だったら、夕方まで練習走行するのだろうし、しかも滞在時間の半分近くを征羽矢と光世に構うのに使わせてしまった。 現役のアスリートの貴重な時間を奪ってしまったことに対して罪悪感が押し寄せる。 「いーのよぉ。お会いできてご縁が深まって結果サイコーの展開じゃない?ひとりで走るなんていつでもできるもの!」 森下がパタパタと手を振った。 「コース見たかっただけなんで。練習ったって、天気とか湿度とか、気分とか…けっきょく本番は本番でしかないので。」 女が口を挟んだけれど、それがフォローなのか本心なのか理解しづらい。 「R、シオハマの第2と同じくらいだし、幅も。次はもうシオハマでいいです。」 「分かったわ。それなら朝そんなに早くなくてもいいわね、日程決めたら知らせなさい?」 森下が頷いた。 女はまだ走っているもう1台の車両に向かって片手を上げた。 「では、また連絡します。」 再度軽く頭を下げ、踵を返す。 ピットから少し離れてから、女が兄弟に話しかけた。 「なんか、新たな契約、取れたみたいで、ありがとうございます?」 征羽矢がぶんぶんと首を振った。 「いやいやいやいや、俺らも知らないところでサクサク話が進んじゃっててさ、」 汗で潰れた前髪を掻き上げる。 「これ、ただのセフレですってなったらやべーなって思ってる!」 「…やべー、ですかね…?」 女は口もとに手を当てて考えた。 「ビジネスカップルってことですね?」 「…そーゆー、こと、なのかぁ?」 征羽矢にはもうよく分からない。 「はい、帰り運転。」 女が光世に向かって車の鍵を放り投げた。 それは陽の光を反射してきらりと輝いて、光世は目を白黒とさせた。 「…む、むりだ、そんな、急に…」 「山道だけど一般車ほとんどすれ違わないし、ゆっくり走って大丈夫ですよ。」 トランクを開けてヘルメットとバッグを片付け、さっさと助手席に乗り込んでしまう。 「人だけ轢かないようにしていただいたら。」 「き、兄弟…?」 征羽矢に助けを求めるように視線がすがる。 「ご指名だぜ?がんばれー!」 弟は面白がって後部座席へ。 「ハチよりは運転しやすいですよ。ミラーの位置見て、シートも調整してください。」 光世は観念しておそるおそる運転席に座る。 たしかにハチロクのシートよりはゆったりと座れ、窮屈感は少ない。 「…い、いく、ぞ…?」 えいや、とセルを回すと、エンジンがうなった。 「動き出したらすぐ2、3、4速とチェンジしてってください、低速トルクつよつよなので。きつい下りカーブは2速か3速でエンブレ使って、あとは、まぁ、お任せします。」 緊張しながら、ゆるりと動き出す。 忠告通りに、手早くチェンジアップする。 「うまいですよ。そんなシフトノブ握りしめなくてもいいですよ、軽く。」 女の右手が光世の左手に重ねられる。 「車速が合ってれば、人さし指の力だけでギア入りますから。」 アスファルトの道路に出た。 さっそく緩やかなカーブにさしかかる。 「減速してみましょうか、」 軽くブレーキング、そしてクラッチを切ると、女が本当に人さし指のみで光世の手の甲をぐいっと押し、そしてそれだけで、スコっと3速にギアが入る。 ガゴっと押し込むような感覚は皆無だった。 おお、と、らしくなく、光世が感嘆の声を漏らした。 「とりま、高速手前のドライブイン目標で。法定速度厳守、前後左右確認!」 窓を全開にして、CDプレーヤーの音量をぐっと上げる。 真剣な顔で冷や汗をかいている光世からすでに目を離して、窓から外を眺めている。 「兄弟、リラックスだぜ?」 征羽矢は他人事だと思って楽しんでいる、次は自分にお鉢が回ってくるとも知らず。 町中の交通量の多い道に入る前に運転を交代した。 「ひでー目にあったよ!スパルタ過ぎね?」 征羽矢が助手席に深く腰掛けた。 「非常にスムーズで上手でしたよ。」 女が前を向いたまま高評価してはくれるが、今になってかすかに手が震える。 「…兄弟は、ほとんど高速道路しか…運転してないじゃないか…あんな広くて、真っ直ぐの道路なんて…」 後部座席では光世もぐったりとしている。 「わたし今日、家帰りますから、近くで降ろしますね。」 それまでシートに斜めに溶けたようにもたれかかっていた光世が、がばりとヘッドレストにしがみついた。 「…だめだ…!」 「また行きますよ。荷物整理しなきゃですし。」 女が頬をふくらませる。 「…だが…だめ、だ…帰さないと、言っただろ…?」 光世の視線が、不安げにふらりと彷徨うのがルームミラーに映っている。 「なにが不満なんですか?」 たんたんとウインカーを出して、角を曲がる。 「…」 光世が黙り込み、代わりに征羽矢が質問で返した。 「DVヤローは?」 「いっしょに住んでるわけじゃないですから。」 「ぜってー鉢合わせしねー?」 女はわずかにまぶたを伏せて、人さし指と親指で前髪に触れた。 「大丈夫ですよ。」 あ、これ、嘘だな、征羽矢はなんとなくそう感じ取る。 「…もしさぁ、玄関前で待ち伏せとかされててさぁ、なんつーの?押し切られたら?流されるだろ?」 光世がこくこくと何度も頷く素振りをする。 「また、殴られたら、どーすんの?」 赤信号で停まる。 右折車線に並んで停まった車の運転手がこちらをじろじろと見ている。 「別に、わたしが殴られても、関係なくないです?」 「ねーけど!そーゆーこと言わねーで!」 征羽矢が頭を抱えた。 「…脅すのも違うともーけど…俺、さっき住所見ちゃったかんね?」 免許証に整然と並ぶ細かな印字を思い起こしている。 「…このまま、付いていく…」 光世が静かに言葉を絞り出した。 「…必要なものを、持って…来いよ、もう、2度と…戻らせん…」 女は大きなため息をついた。 「オープン間に合わなくなりますよ?」 征羽矢が素早くスマホを取り出して電話をかける。 「あ、ごめん開店準備しといて。うん、いや、行く行く、ちょい遅れるかもって。堀江いる?あ、そう、兄弟に代わるわ。」 スマホを兄へとパスする。 「…セット、交代で頼む…あと、念のため、城本に連絡を…ああ、そうか、それはじゃあ、俺から…いや…ホームページに、セトリの訂正を…あげてもらえるか…?」 着々と整えられていく本来の予定を、この上なく苦い表情で聞いていた女が、交差点の右矢印信号を見てアクセルを踏み込んだ。 フットブレーキを軽く入れ、荷重が前に移ったところでサイドブレーキを上げた。 ステアリングを切る。 ギュギュギュギュッ、とタイヤが鳴り、鮮やかにドリフトが決まってUターンする。 信号待ちの人々が立ちすくんで、カリーナを目で追っている。 「すごく!嫌なんですけど!そういう!でも!あなたたちの!邪魔!とゆーか!影響!したくないので!」 脇道へと左折する。 怒っている様子ではあるが、イライラしている気配はない。 滑らかに両手と両足が操られ、明らかに法定速度を超えたスピードで狭い通りを走り抜けていく。 「…ほんっ、っと!めんどくっ、っさい!ですね!」 さきに森下が光世に言った、気骨が折れる、の意図が、征羽矢は分かった気がした。 裏道を20分ほどぐねぐねと走り、港近くの空き地にやってきた。 他にも旧車が3台も停められている。 全て女のものなのか、と兄弟は驚いて目を丸くした。 敷地内に平屋の長屋が建っている。 築年数はかなり経っていそうな佇まいで、間口は2軒分。 「ぜったい降りないで待っててくださいよ、」 女は2人に釘を刺し、手前側の玄関の引き戸をガラガラとスライドさせ、中へと姿を消す。 光世は順番に車を観察する。 赤で黒い幌がかかっている軽のオープンカー。 鮮やかな青の、後ろ側がかくっと絶壁状に抉れている変わった形のツーシーター。 その2台に比べれば幾分か現代よりのデザインの、少し車内空間のありそうな白いスポーツカーはナンバープレートがついていない。 征羽矢は助手席で、店の従業員に頼みごとの電話をかけている。 突如、ガシャン、と大きな音がして、すりガラスの玄関扉が揺れた。 なにかが強い力でぶつかったのだ。 状況の予想がつき過ぎる、それも不穏な予想が。 光世が車を降りて、玄関へと近づく。 中年男性のしゃがれた怒声が響き渡る。 一寸の躊躇もなく、引き戸を開けた。 三和土に女が腹を押さえてうずくまっていて、脂汗がそのこめかみに光っている。 開け放たれた障子戸の向こうは6畳の和室で、恰幅だけやたらいい男が咥えタバコで立っていた。 「あん?なんだてめぇ!」 男ががなった。 光世はそれを無視して、女を抱き起こした。 「…障りないか…?」 しかし女は光世を怒鳴りつける。 「待ってろって言ったのに!」 口の端によだれが垂れているのを、手の甲でぐいと拭う。 光世の後ろから征羽矢もすっ飛んできた。 「…おまえ、あの写真のヤツだな?」 男が煙をふうっと吐き出した。 「ヒトのオンナに手ぇ出していい度胸だな?」 据わった目で睨みつける。 「ちょ、待ってよ、わたし誰の女でもないし。いつも言ってるでしょ?」 女が掠れた声で反論するが、誰も聞いてはいない。 「…全員出てってくれないかなぁ、わたしの家なんですよね…」 征羽矢が女の腕を引いて外へ出す。 「想定の範囲内だぜ!?大丈夫か?」 「平気です。お風呂入って着替えしたかったんですけど…」 オレンジに染まり始める空を見上げた。 「…どいつもこいつも…」 その呟きは生ぬるい風に流れて消えていく。 光世は男が喚き散らすのに一切の反応を示さず、振り返って女に問う。 「…なにが必要なんだ…?」 「…あー、じゃあ、押し入れの右側のタンス、引き出しごと全部抜いてきてください。4段あります。」 光世が丁寧に靴を脱いで畳に上がった。 「…邪魔する…」 男が下から光世の胸ぐらを掴んだ。 「なに勝手に入ってんだよ!?」 自分より遥かに長身の目付きの悪い光世にノータイムでつかみかかるなど、根性はすわっている。 「…兄弟…」 ぼそり、と弟を呼ぶ。 征羽矢がするり、と男の背後に回り、でっぷりとした巨躯を羽交い締めにした。 「…離せよ!分かってんのか!?おまえらの居場所は割れてんだぞ!?」 男はじたばたと足掻くが、普段から光世の相手をしている征羽矢の握力と腕力にかなうわけがない。 「…中身だけで、いいんだろ…?」 引き出しの中身を鷲掴みにして、そのへんに転がっているエコバッグに詰め込んでいく。 「えぇ…?パンツとかあるからやめて欲しいんですけど…」 女が完全にドン引きの顔をするが、もう女の細かな要求を聞き入れる裁量はない。 「こうなっちゃうとリベンジポルノとか困るので。」 女が肩をすくめると、征羽矢が体勢を変え、右腕で男の首を固めながら、左手で後ろポケットに入っていたスマホを取り上げた。 放り投げられたそれを、女はタイミングよくキャッチした。 眼帯にも随分と慣れてきたので、このくらいの距離感は分かるようになった。 「あとそこのPCを。」 パンパンに膨れ上がったバッグを3つ持って、光世は座卓に閉じられているノートPCをコンセントから引き抜いた。 征羽矢が腕の力を緩めて男を解放しがてら、部屋の奥の方へと投げ飛ばす。 男は襖まで吹っ飛んで、放置されていたコーヒーとビールの缶が散らばってやかましく音を立てた。 「…おまえら!…覚えとけよ!?」 なんのひねりもない常套句で脅しつけるが、効果は今ひとつのようだ。 「ごめん、ミノルせんぱい、この人たち、ちょっと頭おかしいから、気を付けて。」 それはこっちの台詞だよ、と征羽矢は言葉を飲み込んだ。 「じゃあ、さよなら?」 語尾を上げて、淡白に別れを告げる。 腐れ縁で付き合いが長いと、いつか言っていた、それは事実なのだろう、女は少しだけくだけた話し方をする。 「あ、あと、この子たちに何かしたら、わたしが殺すから。」 車に視線をやる。 「大事なことだから、もう一度、言うね、この子たちに何かしてみろよ、殺してやるよ。」 男の方を振り向いた女の目は、冷たく、研ぎ澄まされた刃物の鋭さでぎらついた。 女に執着して暴力を振るう男よりも、前世か来世かの記憶に呑まれて女から逃れられない兄弟よりも、狂気に満ちた光を放つ。 夜がまた、ずるりずるりと重いベールを引きずってやってくる。 「あ、おはようございまっす!」 濱崎が元気よく挨拶してくれる。 「サーキット楽しかったっすか?」 征羽矢が苦笑いを浮かべた。 「楽しかったけど、むちゃくちゃ疲れたよ。」 本当はすぐにカウンターの中に入るべきなのだが、あまりの倦怠感にとりあえず席に座る。 「ごめ、ちょっと休ませて。準備もありがとな、てんちゃんの伝票で1杯飲んでくれい。」 光世はそのままバックヤードへと入っていく。 バイトのDJの堀江がステージを十分に盛り上げてくれているが、自身もスタンバイが必要だ。 扉の奥から若い男性の声が聞こえた。 「間に合ったんすね、俺どーしましょ?あがったほーがいいっすか?」 光世が自宅突入前にいちおう自分の留守を頼んだもう1人の演者だろう、城本と呼んでいたか。 女が声をかけた。 「こっちで飲みましょう、せっかく来てくれたんです、出勤でいいですよ。」 濱崎からジョッキを受け取りながら言葉を続ける。 「オーナーがケチつけるならわたしが面倒見ますよ。」 征羽矢もそれに賛同する。 「そーだそーだ、ぜーんぶてんちゃんのせいだ!俺も飲む!」 濱崎がもう1杯、ジョッキに生ビールを注いでくれる。 バックヤードからは、ぼそぼそと光世の文句が聞こえてくる。 「…ケチなんか、つけない…俺を、なんだと思ってるんだ…」 城本が征羽矢の隣に腰掛けた。 「じゃ、ゴチになりますよ?ジンジャーエールくれよ。」 「りょー!」 濱崎がはつらつと答えた。 「シロモトさん?は飲まない系です?」 女が問うと、照れたように笑った。 「帰り原付なんすよ。」 征羽矢はビールをゴクゴクと飲み干して、なんとかエプロンをつけて仕事へと戻っていく。 濱崎も、反対側に座っていた常連客に名前を呼ばれてその場を離れた。 城本が、ひとつ席を詰めてきた。 「ちゃんと話すの初めてっすね、城本っす。ミツヨさんの弟子?的な?カンジっす。」 「DJは何人いてるんですか?」 「ミツヨさんと、今やってるホリくんと俺で3人で、あと、なんかイベントとか、ヤバいときは助っ人で他のクラブのヒトが来てくれたり…メンツ足りなければ1人で2部とも回します。俺はホールもやりますし、もぎりもやります。」 黒髪の角刈り気味の短髪で、清潔感のある好青年である。 「カノジョさん、てんちゃんさん?てんちゃん?」 はは、と女は目元をほころばせた。 「なんでもいいですよ。」 城本はポリポリと後頭部を掻いた。 「俺がいちばん歳、上なんす。たぶん、タメ。今年36で。」 女は危うくジョッキを取り落としそうになる。 「若っ!え?学生さんかと、てっきり…」 「よく言われるよ。いちお嫁とこどもいて。」 ナチュラルに敬語が外れていく、なかなかのコミュ力である。 そして女は開いた口が塞がらない。 「か、帰った方がいい系?引き止めちゃった、けど…?」 「や、それはいーよ、脱サラしてここ勤めるって言ったときも応援してくれて、」 「だ、脱サラ…」 乾いた喉にビールを流し込み、うなだれる。 「…わたし、この歳までなにやってんだろ…」 「いやいや、夢?追ってるんだったら俺といっしょじゃん?」 城本が立ち上がり、スイングドアからカウンターの中へ入る。 足元の冷蔵庫を勝手にごそごそと探り、パウチに個包装の駄菓子テイストのカルパスをバラバラとテーブルの上に置いた。 「少し仕事してる風にしよ。」 ダスターで自分が座っていた所をささっと拭き、女の正面に立った。 「…夢?追ってる?のか?わたしは…」 疲労もあり、珍しく酔いが回る。 城本が同い年だと判明して、喋り方もどんどんとフランクになる。 「免許とって運転好きだなってなって自動車競技部入って、もはや、惰性でやってる、だけでは…?」 「でも才能あるから生き残ってんじゃん?」 女は、ぽん、とテーブルを叩く。 「…競技人口少ないだけ説あるよ…?」 なんだか落ち込んでしまうのは、城本が絶妙に聞き上手過ぎるからだろうか。 ホールに拍手と口笛と指笛が鳴り響き、音楽が止んだ。 「ミツヨさん出るよ。かっけーなぁ、ほんと。」 羨望の眼差しをステージ上で準備を始めた光世へと投げかける。 「でもさぁ、しょーじきさ、なに考えてるかよく分かんないヒトじゃんね?ミツヨさんに惚れられるって、すげーよ。」 空になったジョッキをさりげなく奪い、冷凍庫の中でキンキンに冷えている新しいものにおかわりを注ぐ。 自分も、細めのガラスタンブラーの中身を飲み干して、甘えた声でねだった。 「もいっぱい、飲んでい?」 商売上手にも程がある。 本職の実力はもちろん確かなものであろうが、ドリンクサイドの仕事もそつがない、だめだなどとはねつけられるはずがない。 瓶のコーラの栓を開ける。 カウンターの外のテーブル席で愛想を振りまいていた征羽矢がこちらを見て眉をひそめた。 「城本サン、口説いてんなよ?」 女が頬杖をついて行儀悪く前かがみになる。 「ないない、既にひとのものです。」 冷たいジョッキの縁に唇を寄せた。 「あはは、違うよ、ソハヤくんは、俺に言ったんだよ。」 城本の目が、きゅうっと細まり、イタズラ好きな少年のような顔になる。 「それこそ、ないよ、まだ死にたくない。」 「?」 「あの兄弟、怖いよ、人間離れしてる気がする。てんちゃんと喋ってたら殺気がすごい。」 女が身体を起こして、復唱した。 「…殺気…?」 「そ、殺気。なんかね、首筋に刃物突きつけられてるカンジがする。ステージからも。」 女は遠くの光世を見る。 音楽が鳴り始め、ミラーボールの光が交錯する。 別にこちらを気にしているような素振りはないが。 「分かんない?」 「…どーだろ?」 「…煽ってみる?じっけん。」 スマホの液晶を女へと向けた。 「番号教えてよ、暇なとき連絡するから。」 そうか、これは実験なのか、と女は少し興味深く、城本の演技に乗ってみることにする。 頭上の荷物入れに押し込んだバッグから、自分もスマホを取り出した。 城本は、わざと、ステージから見ると女の横顔が隠れる位置と角度で屈んだ。 とたんに、ひゅん、と、この広いホールの温度が下がったような感覚がして、鳥肌が立った。 バチッ、カウンターの上のLEDが一瞬点滅した。 「…ほらね、こんな、あからさまに物理的な現象はちょっと知らないけど。」 城本が、やれやれと言いたげに背筋を伸ばした。 「…オカルト過ぎない?」 「オカルト過ぎるって話をしてるんだよ、俺は。」 その隣に、音もなく征羽矢が立っている。 いつの間に…? 「ソハヤくん、俺あがるね。ミツヨさんによろしくです。またきんきゅーのときはいつでも呼んでってゆっといて。」 「…おつかれでーす。きょーはありがとでした!」 征羽矢はにっこりと微笑んだ。 作り笑顔には見えない。 「てんちゃん、またね、ゴチでした!」 ひらり、と手を振り、バックヤードにいったん引っ込んで荷物をひっかけ、それから裏口から出ていく。 「なんの話してたん?盛り上がってたじゃん?」 「ミツヨさんの圧が強いって話ですよ。」 あながち嘘ではない答えではぐらかし、征羽矢を見上げた。 首筋に突きつけられた刀のイメージが脳裏に渦巻く。 非常に不機嫌である。 「…なぜ、すぐに、男と、親しくなるのか…?」 汗臭い格好のまま背後から抱きすくめられて身動きが取れない。 「…許せない…」 鼻息荒く、Tシャツをまくり上げる。 「シャワーくらい、浴びさせてくださいよ…?」 女の要求は光世の耳に届いてすらいない。 「…ガソリンと、オイルと…排気ガスの、匂いがするな…」 喉の横を長い舌でつぅっと舐め上げられ、じゅわりと身体が準備を始める。 征羽矢はベッドに座って、例の男から取り上げたスマホをいじっている。 「あいつ誕生日は?」 「あ、パスワードです?たぶん変わってなければ…」 女が数桁の数字を伝えた。 「おっ、きたきた。なんの番号?」 「前に乗ってた車の車体番号です。」 「…またなんかマニアックだな…」 画面をついついっとスワイプしていく。 「…おい、こっち集中しろよ…」 光世が、女のツナギのウエストで縛った袖をほどくと、ぱさり、と下半身がはだけた。 「ツナギじゃムードに欠けません?」 「…そんなもの…いつも、さして、ないだろ…」 自分のベッドに手をつかせ、床に膝立ちにさせてから、後ろから濡れた下着越しに膨らんだ蕾を愛撫する。 征羽矢が液晶から顔を上げて目をつぶった。 「あー…カメラロール、見ちゃいけないやつだったぜ…」 「…んっ、ふ…はぁ…だから、言ったじゃ、ないですか、リベンジ、ポルノが…」 光世の指の動きに悶えつつ、女がとぎれとぎれに言葉をつなぐ。 「…俺たち以外にも、こんなこと…」 見ちゃいけなかったと口では言っておきながら、画面に視線を戻した征羽矢が、まばたきも忘れてそれを凝視している。 「…ヤバい…」 身体をくの字以上に折り曲げ、眉間にしわを寄せて胸を押さえたが、写真をゆっくりとスクロールしていく親指を止められない。 「…エロすぎる…」 「あんま…見ないで…んんっ、ぅ、ぁ…」 最初は両手の平をシーツにつけて突っ張るようにしていたはずなのだが、光世の骨ばった指を花弁の奥へと差し入れられ、上半身がすっかり崩れ落ちて、這いつくばるようなみっともない格好になってしまっている。 征羽矢は、その写真と、隣のベッドで兄に責められて喘いでいる女を順に見比べる。 「…こんなん、撮らせて…脅されたりしたら、どーするつもりだったんだよ…?」 「…ぁ、ふぅ…ん、でも、してるとき…テンション…あがっ、ちゃっ、って…」 光世がスラックスの前をくつろげて、反り返って血管の浮き出たものを女の股の間に突き立てた。 「…集中、しろと、言っている…!」 「ゃ…!ぁ、ぁ…く…!」 女は奥歯を噛み締めた。 ピコン、場違いな電子音が鳴る。 征羽矢の、じわっと汗をかいた頬が、引きつってにやついている。 スマホのカメラを、女に向けている。 「…へへ、これはムービー。」 無意識に舌なめずりをした。 「ゃ、だ…!ぃゃ、と、とらないで…!」 女は必死にシーツに顔を埋めた。 征羽矢には、それが、いつもの、雰囲気作りの、エンターテイメントなのかどうか、区別が、つかない。 ただ、女の膣は急にぎゅうぎゅうと中のものを締め上げ、光世は舌打ちをした。 そして征羽矢の剛直もますます猛り立ち、びりびりと全身を震わせた。 「兄弟、ここ撮らせてくれよ?」 女の腰を鷲掴む光世の隣にぴったりと体を寄せて、2人の接合部分をアップで撮影する。 画面を横から覗いて、光世はわざとストロークを大きく緩やかにし、ぎりぎりのところまで引き抜いて、音を立てさせて押し込む動作を執拗に繰り返した。 「ぁ、ぐ、く…は、ゃ…ゃめ、やめ、て…」 身体を揺らされる律動に合わせて、女は嬌声を上げる。 「…撮られてると、感じる?」 征羽矢が、カメラを構えたまま、ぐるりと女の横へと回り込んだ。 片手で乱暴に女の髪を掴んで顔を上げさせる。 「やめ、て…!」 女が両腕でとろけたその顔を覆い隠そうとした。 すぐさま光世が手首を取り、後ろへと引く。 「あぁ…!んっ、やだぁっ、と、らな、いでぇ…!」 涙が、一粒、流れ落ちていった。 「え?でも、あいつには撮らせてたんだろ?」 征羽矢がスラックスのジッパーを下げ、黒ぐろとしてそそり立ったものを取り出し、女の頬に叩きつけた。 女はピンク色の舌を伸ばし、ちろちろとそれを舐める。 カメラの角度を何度も変え、その行為は寸分も逃さずに記録されていく。 「…こんな…」 征羽矢の唇の端から…唾液が一筋滴った。 「…こんな、こと…誰に…誰と…」 思索がまとまらず、言いたいことがあるはずなのに文章にならない。 「…もう、誰にも…見せないで、くれよ…?」 消え入りそうな弱々しい声と裏腹に、乱雑に掴んだ髪がみちみちと悲鳴を上げている。 汗で粘ついて、抜けたものが指に絡まっている。 頭を斜め上へと上げさせて、よだれまみれの口に痙攣する男根を突っ込んだ。 奥を無遠慮に蹂躙すると、喉のぬめった壁がそのものに吸い付いてくる。 「…!…ぁ!…が、か…がぁ…」 苦しむ表情に、自身の意志ではないのに、笑みがこぼれてしまう。 「…その顔…かわいい、よっ…」 うっとりとして、カメラのレンズを近付けた。 「ごめん、も、イくわ…」 ごぼっ、と水音を響かせて、大量の精液が噴出される。 が、それはほぼ胃に直接流し込まれるくらいに喉の奥深くで発せられていた。 吐き出すことも許されず、熱い粘度の高い液体が内臓を伝う感覚が女を襲う。 それにともない、胎の筋肉もじりじりと収縮する。 光世が一層、つながった部分を強く押し付け、長く息を吐いた。 こちらも、ずぶ、と淫猥な音を立て、白濁した光世の体液が秘所から溢れて、女の太ももを垂れていく。 カメラは回り続けている。 憔悴した女の顔から、汗で透けたTシャツを経由して、はだけた臀部の船のタトゥーを写し、そこから引き抜かれる光世のものをも捉える。 こぽりこぽりと空気の破裂する音を仔細に拾い、内股からフローリングへと流れていく白い滝をおさめていく。 「…は、はは、」 征羽矢の乾いた笑い声が、狭い部屋に滑稽に反響する。 ピロン、動画撮影の停止ボタンを押した。 「…これ、流出されたら困るだろ…?」 記録をはじめから再生する。 『…とらないで…!』 機器を通すと少しかん高くなる女の声が、スマホの中で繰り返された。 「や…め、て…!」 女が床に丸まって縮こまり、耳を塞ぐ。 「…ま、兄弟と仲良ししてんのは百歩譲ってアリとして、3Pで『じゃない誰か』にイラマ喰らってんのは、アウトだよな…?」 『は…や、めてぇ…!』 息も絶え絶えの、官能的で悲痛な叫び。 光世は、さほど関心なさそうに冷蔵庫の扉を開けている。 「困る…だろ?…じゃ、脚、開いて?」 「…!」 「…開けよ?じょーきょー分かってる?」 女は、ベッドにもたれかこり、そっぽを向いて、膝を曲げて、もじもじと両脚を広げた。 光世に突き刺され精を注がれた部分がきらきらと光っている。 「…ってなふーに!いわれちゃうでしょ!?こんなん撮らせちゃ、ぜっ、ったい、ダメだぜ!?」 征羽矢が、声のトーンを数段高くして、女の体にふわりとタオルケットをかけた。 「…あ、ちょっと、それは、それで、よかった、かも、です…」 女が、征羽矢を見上げて口角を上げた。 「…ヘンタイ…」 呆れて、そんな稚拙な悪口以外は出てこない。 光世が缶ビールをひとつずつ、渡してくれる。 征羽矢の唐突な蛮行に妙に冷静だったのは、それが弟の下手くそなパフォーマンスだと勘付いていたからなのだろうか。 「とはいえ。」 征羽矢がさっそくプルタブを上げて、飲み口を咥えながらスマホを操作している。 「これは永久保存版でいいかもしれない感。」 「だめですよ、全部消してください。」 女がタオルケットをずり上げて、冷えた缶を額に当てた。 「…これとか…撮ったのがあいつだって記憶さえ失えば、いっしょうこれでヌける…!」 画面を見せるけれど、光世は首を振った。 「…俺のが、いい顔させてる…」 それを聞いて、征羽矢は快活に笑った。 --------------------------- 〜⑦に続く〜
2025/09/14 20:35:25(Wt.wxOJu)
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