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片想い
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:空想・幻想小説
ルール: あなたの中で描いた空想、幻想小説を投稿してください
  
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1:片想い
投稿者: 唯衣 ◆UsF/eVSscw
聡志は思い切って手紙を認めた。

 放課後、4組17番の下足箱へ手紙を入れた。
 瀬川紀子の下足箱だった。

 クラスも部活も異なる紀子とは、面識はなかった。

 唯一の接点は、選択科目「音楽史」の授業だけだ。
 3組と4組の「音楽史」選択者による合同授業――。

 音楽室での座席は聡志が前の方で紀子は一番後ろだった。

 時折、聡志はさりげなく後ろを振り向き、紀子を見るともなく見た。
 
 彼女と聡志の二人の目線が合うことは稀だった。
 
 が、目線が合うと心なしか彼女は聡志に向かって微笑むように見えた。
 聡志はそれだけで嬉しかった。
 
 彼女も聡志の存在を気にしているように見えた。
 が、直接、言葉を交わすことはなかった。
 
 そんな状態が半年近く続いていた。
 
 それで聡志は手紙を認めることにしたのだった。
 
 匿名で「あなたが好きです。3組の或る男子より」とだけ書き、紙を折りたたんで彼女の下足箱に入れた。
 
 数日おきに、放課後、何回か同様の手紙を入れた。
 手紙を入れるところを他の人に見られないよう、放課後はしばらく図書室で時間をつぶし、他の生徒がいなくなった頃を見計らって下足室へと向かった。
 
 何度目かに同様の手紙を入れようとして彼女の下足箱を開けると、そこには見覚えのない紙があった。
 
 可愛らしいピンクの便せんに一言、「いつも手紙をくれるのはどなたですか?」とだけ書いてあった。
 紀子が書いたものらしかった。
 
 翌日、聡志は「3組12番 堀内聡志です。面と向かって告白するのは恥ずかしいので手紙を書きました。大好きです。」と書いた紙を彼女の下足室へ入れておいた。
 
 到頭、紀子に自分の存在を明かしてしてしまった。
 彼女はどんな反応をするだろうか。

 翌日は瀬川紀子の下足箱には何も入っていなかった。
 
 が、翌々日には彼女の手紙が入っていた。
 「嬉しいです。聡志さんとは話したことはないですが、隣のクラスだからお顔は知っています。私も聡志さんのことは気になっていました。」
 
 聡志は有頂天になった。
 ようやく紀子と心が通じ合ったのだった。
 
 紀子はポニーテールの似合う小柄な女の子だった。
 よく笑う明るい性格だった。
 
 彼女と直接話せたらどんなに幸せだろう。
 聡志はそれから毎日手紙を書いて彼女の下足箱へ入れた。
 
 彼女の手紙も毎日下足箱に入っていた。
 
 ある日、3組の廊下で彼女とすれ違った。
 
 一瞬、目が合ったが、聡志は極度の緊張から目をそらしてしまった。
 彼女も同様にやや緊張しているように見えた。
 
 「音楽史」の授業前後の休み時間も、同じ音楽室にいながら、二人は直接話すことはなかった。
 聡志が話しかけられずにいる以上、彼女の方から近づいてくることもないように思われた。
 
 聡志はもどかしかった。
 手紙の中では互いに好意を寄せていることは分かっているのに、実際に顔を合わせて話すことができないのだ。
 
 ある日、聡志は思い切って「明日の放課後、17時に体育館の裏で会いませんか」と書いて彼女の下足箱へ入れておいた。
 
 翌日、廊下の掲示板に校内模試の成績優秀者が張り出された。
 英語Ⅱの欄に紀子の名前があった。
 4組16番、瀬川紀子、98点、420人中、3位――。
 
 聡志は心臓が止まるかと思った。
 
 瀬川紀子が4組16番だとすると、聡志がいつも手紙を入れていた下足箱の持ち主「4組17番」はいったい誰なのか。
 
 聡志は頭がパニックになった。
 
 その日の放課後、聡志は逃げるように学校を後にした。

 
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2021/02/15 23:16:41(UnYjiSZk)
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