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ラブドール『敬子』
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:空想・幻想小説
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1:ラブドール『敬子』
投稿者: タカミチ
郵便受けの中に、差出人不明の封筒が入っていた。しかし、不明なだけに、それがどこから送られてきたのかは僕にはよく分かった。

部屋に入り、その封筒を開いてみる。中には10数枚はあろうかという書類が入っていた。もちろん、文字ばかりで、仕事帰りの僕はとても読む気にはなれない。
それでも、その中の一枚には目を引いた。写真かと思うほどのCGで描かれた、熟女の裸体だったからだ。
全裸だが色気もなく、ただ直立不動に描かれてる。
女性の上には『敬子ver』と書かれていた。これから大金をはたいて買おうとしている、僕だけのラブドールなのだ。

ラブドールの歴史は長い。所謂『ダッチワイフ』と呼ばれていた風船のような女性型人形から始まったが、今は昔である。
美少女型は精巧に作られ、一見、人と間違うほど。更に言葉を発し、次に開発されたAI学習が大ヒットをし、この分野の進歩を更に加速させることになった。
ドールは自分で可動をし始め、所謂一般的な『セックス』と呼ばれる行為をおこなえるまでになってしまったのだ。

『オリエンタルコーポレーション』、この分野では老舗とも呼ばれるこの会社は、プロ野球球団を持つ程にまで成長を見せている。
その会社と接触を取ったのは、1ヶ月前のことでした。
『伊東敬子』、名前と住所だけ聞くと、打合せ的なものは終わってしまった。最後は、『あとはこちらで調査を致します。』、担当者のあっけない言葉だった。

そして送られてきたのが、この書類となる。顔のアップがあるが、そっくりとは言わないが、ちゃんと彼女の特徴を捉えている。
60歳を越えて、老いた彼女の特徴をちゃんと表現をされている。しかし、乳房は垂れてなく、下は肌も若い。これは、これからの話し合いで解決出来そうだ。

『オリエンタルコーポレーション』、その会社に向かったのは、日曜の午後のことでした。会社に入っても受付嬢はおらず、プライハシー優先ってところか。
タッチパネルで操作をし、僕はそのままエレベーターに乗り込み、4階フロアーへと向かうのでした。

4階に着きました。エレベーターの扉が開くと、誰もいない廊下に、『2』と書かれた部屋表示が点滅をしていて、僕を導いてくれています。
扉は開き、そこには高級そうな複数のソファーが並んでいました。すぐに『係りのものがまいります。』とアナウンスが流れ、僕はソファーに腰かけるのです。

数分後、一人の男性が現れます。僕の担当者のようです。彼はパンフレットを取り出すと、いろいろと説明を始めました。
僕は、『買うドールは決めてるのに…。』、そう思いながらも彼の話を聞きます。彼の話はほとんどか会社の宣伝。とても事務的なものでした。
しかし、それはいわば時間稼ぎ。その裏で、別の社員がドールを運んでくる準備をしていたのです。

彼の話が終わると同時に扉が開き、もう一人の男性が女性を運んで来ました。車イスのような台車に乗せられ、上からは透明のビニールで包まれています。
それを物ではなく、僕の脳は『女性』と認識をしてしまったのです。そして、その養生用のビニールが取り外されます。
現れたのは、まさに『人』でした。まだ下を向いたままで、顔こそ分かりませんが、その風貌は間違いなく『女性』、人間だったのです。

運んで来た男性は消え、また担当者の男性と二人になります。彼は立ち上り、『早速、設定を始めます。』と言って、入口付近のスイッチに手を掛けます。
スイッチを押すと、ほとんどの照明は消え、窓のブラインドが締まり始めました。部屋は一気に薄暗くなり、小さな照明がポツンと点いているだけです。
担当者の男性はドールの隣に移動し、ドールの顔を両手で持ちます。初めてドールの顔が上げらましたが、目を閉じているため、敬子さんの確認が出来ません。

『伊東敬子』、実家の近所に住む60歳過ぎたおばさんである。背は高く、とても細い女性です。うちの母と仲がよく、僕も子供の頃から知っている女性です。
とてもしとやかな方で、僕も憧れたこともありました。しかし、僕は成長とともにアイドルに走り、更にはAV女優に心を奪われます。
そうなると、『近所のただのおばさん』など興味はありません。毎日のオナニーは、お気に入りの女優で行うのです。
ところが、一通り終えると『熟女』に走り、さらには『普通のおばさん』へと戻って来てしまいました。『近所のおばさん』、それは敬子さんしかいません。
大人になり、敬子で初めてオナニーをします。それは、AV女優では味わえない面白さがありました。現実、その目で見ている方だったからです。
ドールの話を聞いたのが、ちょうどそんな時でした。アイドルにハマっていたら、きっとドールはアイドル似になっていたことでしょう。
ちょうど、タイミングだったのです。

担当者がドールの耳元で、『チェック!』と叫びました。ドールに話し掛けると言うより、叫んだと言った方が正しいと思います。
すると、ドールが起動を始めます。全身が一気に震え、瞬時に動作確認を行っているようです。やはり、これは機械なのです。
そして、15秒ほどすると、ドールの目が開きます。それでも、敬子さんの確認は取れませんでした。
ドールの目からは光が放たれ、スクリーン代わりの壁に映像として写し出されたからです。壁には、所謂OSの画面が写し出れています。
ああ
担当者はドールの顔を離しました。もう、動かないように固定をされているようです。
僕は『すごいですねぇ~。』と言うと、『すごいでしょ?皆さん、そうおっしゃられます。』と笑って説明をしてくれます。
『では、設定をしていきます。』、担当者が言うと、彼は画面の端に表示されているキーホードに指を乗せました。
『ドールのお名前は何にしますか?』と聞かれ、『伊東敬子です。』と答えると、名字は関係なかったのか、『KEIKO』と打ち込まれました。
続けて、『お客様の呼び名はどうしましょ?』と聞かれ、『タカくんでお願いします。』と言いました。

次に現れたのが、女性の顔のアップ。もちろん、CGです。そこには『敬子ver』と書かれていて、『これでよろしいですか?』と確認をされます。
『髪の長さ以外は、後で変更出来ますから。』と聞かされ、確かに画面横にはいろいろな色が表示をされているのが分かります。
彼は画面の『OK』を押すと、すぐに部屋の照明をつけまました。明るくなり、『ドールのお顔を見ててください。』と言われて、その顔に注目をします。

眩しく光っていた光が消え、初めて目を開いたドールの顔を見ることが出来ました。しかし、それはCGの顔とは少し違った顔。腫れ上がったような顔です。
ところが、その顔が徐々に変化をしていくのが分かります。なかったところに窪みが出来、目の下も膨らんでいくのです。顔が形成をされて行き、それは正に『人』となっていくのです。
わざわざこれを購入者に見せて、そして楽しませる、一種のイベントのようなものでした。

『どうですか?』、担当者がそう言ったことで、イベントが終わったことを知らされました。『もう少し、頬骨が出た方が…。』とも思いました。
しかし、きっと敬子さんの顔を正確にスキャンして、コンビュータが作ったのがこの顔なのです。たぶんこれが正解なのでしょう。
『まあ、後で変更出来るからいいかぁ~。』と言いませんでした。『正解なのが、一番似ている。』とはならないようです。

担当者によって、再び照明が消されました。ドールの目からも再び光が放たれ、壁にOS画面が写されます。
『最後、声の設定です。』、担当者が言うと、彼は先に設定しておいた声をタッチします。すると、『タカくん?』と女性の声がします。
その声に、僕は無意識に画面を見てしまいました。しかし、担当者の『あちらです。』と指摘を受け、僕はドールの方を見ます。
『タカくん?』、その声はやはりドールから発せられているのですが、驚いたのはその口。起動をしているので、ちゃんと口が動いて声を発っしているのです。
その声は、まさに敬子さんの声でした。一億種類の声のサンプルがあるそうですが、その中からちゃんと彼女の声を選んでいたのです。
少しイントネーションを変えてやれば、完全に敬子さんになりそうです。
 
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2018/09/25 01:08:53(XRJdoFh2)
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