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悪魔と契約
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:空想・幻想小説
ルール: あなたの中で描いた空想、幻想小説を投稿してください
  
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1:悪魔と契約
投稿者: 優菜
ID:mio0909
僕が彼女に出会ったのは、もうずっと前。

いつものように、美味しそうな魂がいないか人間達を物色してた夜だった。

彼女、寧々はとっても面白いことを考えてたんだ。

『街を歩けば、素敵な男性がいっぱいいる。もしかしたら、私を抱きたいと思ってくれるかもしれないけど、そんなこと聞いてみるわけにはいかないし。
私に「男の人を見ると、自分がその人の好みのタイプかわかる能力」があればいいのに。
そうしたら、喜んで受け入れてくれる人に、どんどんアプローチして、たくさんエッチできて楽しいのに』

ってさ。

面白いよね。

僕は寧々の前に姿を現して、
「魂と引き換えに願いを3個叶えてあげる。願いを2個でやめれば、魂は取らないから大丈夫だよ」
と、誘惑したんだ。

彼女は驚いていたけど、契約してくれた。

ひとつめの願い。

相手にとっての体型・年齢・容姿が魅力的なら、男の頭上に○が見える。
まったく脈がなければ×が見える。
どちらでもなければ△が見える。

寧々は嬉しそうに街に出て行った。

だけど、すれ違う男の頭上を見て、彼女はがっかりしたんだ。

自分好みの男性に○が見えることが、とっても少なかったんだって。

×が見える人も少なかったんだけど、そんなことは関係ないんだろうね。

むしろ、△が多すぎることにショックを受けてたよ。

しばらくは自分を好きだと思ってくれる男とのセックスを楽しんでたけど。
すぐに寧々は心がすり減ってしまったんだ。


だから、ふたつめの願い。

「もう男なんか必要ない体にして」

僕は、彼女の身体に魔法をかけた。

彼女が望めば、クリトリスが男性器のように大きくたくましく、そして触手のように自在に伸びて。
自分で自分のことを犯せるようにしてあげたんだ。

もちろん、どっちの性器も快感を味わえる。

寧々はヨダレを垂らして、セックスに溺れた。
どっちから溢れた体液かわからないもので汚れながら、ひたすら快楽を求めた。
それは滑稽で醜くて、とてもエロティックな光景だったよ。

だけど、疲れ果てるまで遊んでから、やっぱり彼女は気がついたんだ。

1人で得られる単純な快感には、興奮や悦びという要素がない。
だから、気持ちよさに限界があるってこと。

それから。
こんな風になってしまった自分を後悔した。

絵の具を塗り重ねる時と一緒で。
白が黒になるのは容易いけど。
黒を白に戻すことはできないんだよね。

こんなグロテスクな淫乱、誰が可愛がってくれる?

…さあ。

そろそろ僕の出番だよね。

みなさんここで「元に戻して」と、みっつめの願いしてくれる。

そして僕は契約通りに魂をいただいて、めでたしめでたし。

…と思ったのに。

彼女の3つめの願いは、僕にとって奇妙なものだったんだ。






「私を普通の女にして。穴だらけの心じゃなくて、男の人を愛せて、淫乱でもない、普通の女にして」

それが最後の願いらしい。

仕方ないから、僕は寧々の大切なものを2つとも奪ってみた。

これまで生きてきた悪いこと良いこと全ての記憶と、それから彼女のたった一人の大切な家族。

悪魔の僕には、彼女が望んだ通り「黒を白に」戻す方法が、他に思いつかなかったから。

そして、寧々はつまらない女になった。

なんにも執着してなくて、なんにも求めてなくて、何のためにどう生きていいのかもわからない。
明日も今日も同じ。
今日の連続が未来になるだけ。
そんな女になってしまったんだ。

そして寧々は、何が悲しいのかわからないのに、大事な何かをなくした気がして苦しいんだと言ってた。

僕は知ってる。

寧々が無くしたものは、寧々が寧々であるためのものすべてだったんだ。

みっつの願いを叶えたことだし、僕は約束通り、寧々の魂をいただくことにしたんだけど。

寧々から奪った魂は、困ったことに全然美味しくなさそうだった。
なんの色も輝きもなくて、僕は何故か喪失感を感じたんだ。

せっかく美味しそうな魂だったから、余計にね。

なんだろう。

これは本当に「普通の女」なのかなって、思ってしまったんだ。
穴だらけの心じゃなくなったけど。
空っぽになってしまった。

僕はみっつめの願いを叶え損なったんじゃないかなって。

まいったな。それじゃあ契約は無効だ。

だから、僕はその魂を食べずに天に放すことにした。

まったく嫌な女だと思ったよ。

あれからどれだけの時間が流れただろう。

思い通りにならなかった寧々のことを、僕は今も待っているんだ。

いつか、寧々の魂が新しい命として産まれて来たら。
今度は普通の女の子に育つように、近くて遠い所から見守っていようと思う。

その時こそ、みっつめの願いを叶えたことになる。

だから。

僕のために、早く巡っておいで。


《おわり》
続編「悪魔と解放」に続く

 
2016/04/08 12:33:07(/JrK9hMe)
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