僕―鈴木高雄はFランとはいえ大学生で、彼女持ちだ。ここだけ書けば「リア充」「幸せな奴」と思うかもしれない。だが、それは真逆だ。
高校時代、僕は酷いいじめを受けた。主犯の女―彼女である三浦詩音は僕に歪んだ愛情をひたすらに向けていた。僕は鋭利過ぎたそれにグサグサと痛めつけられた。
やがていじめは明るみになり、彼女は社会から断絶された。居場所を失い、最終的には自主退学した。
詩音に残ったものは僕への歪みきった愛だけ。
そして僕に残ったものはそんな彼女の存在とそれを永遠にしたいという醜い想い。
ひとりになった彼女と同棲することにした僕は復讐とばかりにいろんな女に手を出して、彼女にそれをほのめかし続けた。アイツは黙って、何も言わなかった。
でも、なんだかんだ言っても詩音は誰もが認めるであろう美少女。詩音が眠っている間、俺は隣で「詩音と過ごした青春の楽しい思い出」という、存在しない記憶を妄想している。
教科書をビリビリに引き裂かれセロハンテープで修繕したことも、学校中の女子たちに俺の悪評を捏造したことも、ガラの悪い連中にリンチさせたことだってある…でも、今の俺にそのような記憶はない。あるのは「詩音と一緒に過ごした、青春の思い出」だ。現実逃避という奴だな。
詩音はたぶん壊れてしまった。そして、俺も。もう二人は一生離れられないだろう。詩音は俺に、俺は詩音に依存していく。これからも、ずっと…

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