竹野という男がどういう人物なのか、僕はまだ会ってもいないのでよく
わからないのだが、自分が妄想的に作成して書いたものを祖母に渡して、
それを祖母にメールとして書き写させるというような、変に込み入った手
法は、最初は僕にもよく理解できないでいた。
　歪な性格の偏執狂的な人間なのかも知れないというのが、祖母が書き送
らされたメール文を見て思ったことだった。
　竹野という男が一年ほど前に、祖母を最初に犯した時の状況や極めて自
己中心的な心情を、くどくどと書き連ねているのだが、高校二年の僕から
見ても、文章的にも拙劣な気がしたし、男性や女性の性器等の表現も下品
さしか感じない通俗的なもので、祖母がそれの読み書きを強く拒んだのも
頷ける、長いメール文だった。
　僕もれを読み出して暫くして、完読と自分のスマホへの転送を諦めたの
だった。
　その時の祖母のスマホのメールの盗み見で、他にも幾つかわかったこと
があった。
　竹野の年齢が祖母よりも二十二も年下の四十二歳ということのようだった。
　離婚経験者で、それまでの経歴は不明で、高明寺のお守り役としてこの村
に名が得てきたのは、四年前のことのようだった。
　でも今日の一日だけで、祖母の秘密に関する周辺の情報がこれだけで集ま
ったのは上出来の収穫とポジティブに考えて、僕は祖母のスマホから手を放
し、またあまり面白くもないテレビの画面に目を移し、おやすみの言葉をい
うために祖母が風呂から出てくるのを待った…。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く


　　　　　　　　　　　　　

Tweet