スパ7

筆の穂先に墨汁を含ませた老婦人は、少女の肌に筆を走らせ始めた。
ある時は大胆に力強く、ある時は繊細に黒と朱の二色を使い分けながら、素朴だが活き活きとした文様を描く。
たちまち少女の身体が漆黒の、または朱の直線、渦巻き、曲線に彩られていく。

「陶芸家らしいですね。土偶とか・・」

知る人ぞ知る陶芸家が余技で作る土偶の表面に描く文様に彩られた少女、まるで野生動物のような生命力に満ちた人間ではない生き物に見える。
歌舞伎役者のように眼の下を隈取られると少女の化粧は終わったらしい。
彩られ、牝を強調された少女の身体は今まで以上に俺を猛らせる。
少女の薄い身体を力の限り抱き締め、全身を舐め、かつ吸う。
か細い身体をくねらせる少女の局部から、既に準備が整っていることを示すように愛液が溢れ出す。
俺は彼女が愛おしくてならなかった。
堪らず俺は少女の全てを犯す。
性器はもちろん、口、肛門、ついには尿道にすら挿入を試みたが、さすがに尿道への挿入はかなわなかった。
貫いては掻き回し、精を放つ。
放つたびに尿道に痛みが走り、亀頭はヒリヒリしたが、俺達は交わり続けた。
唾液と違いの汗、そして股間から流れ出す経血と愛液で少女を彩る文様が滲み、グラデーションがかかった彼女の肌にも俺は精を放つ。
俺は少女を、少女は俺を、互いに互いを貪ぼり続けたが、ついに互いの限界が奇しくも同時に訪れた。
対面座位で交わったまま、互いを抱き締めた俺達が初めて口付けを交わし、鉄臭い血の味と精液の匂いのする舌を絡めた時だった。
ふと少女の身体から力が抜けた、そう思った瞬間、視界が真っ白になり俺は意識を失った。

「寒っ・・。」

肌を刺す冷気に呟いた少女の声を耳にした俺は、朦朧としながらも意識を取り戻す。
地面に胡座をかいて座った俺は、少女を向かい合わせに抱き抱えたままだ。
最初に感じたのは宵闇の冷たさだったが、次に俺を襲ったのは痛み、さすがに萎えたイチモツがヒリヒリと痛む。
周囲を見回すが、ギャラリー達はおろか男の姿すら消えている。
見上げれば満天の星空と満月であること以外、今の時刻を知る術はない。
寒さに身体を縮めながら、ゆっくり立ち上がろうとする少女が一瞬、身体を強張らせた。
同様に酷使した性器が痛むのだろう。
明らかに外股、いや、ガニ股になりながら川に向かう少女の後ろ姿が微笑ましい。
川の中に座り込み、身を清め始めた少女に続いて俺も川に浸かる。
温いはずの水温が心地良いが、性器には凍みた。
しばらく身体を温めると立ち上がった少女に習って川から出た身体に夜風が凍みる。
いつの間にか全裸になっていた俺は川原を見渡すが、脱いだ服は見当たらない。
既にボロ切れ同然であろう少女のワンピースも見当たらない。
諦めたのか、少女はログハウスに戻ろうと来た時と逆向きに歩き始めた。
所々、見覚えのある風景の中を全裸のまま歩き、ログハウスに辿り着くが、やはり男の姿は無い。
無意識のうちに消えかけた焚き火に近寄った俺は、敢えて目につくように置かれた封筒に気付いた。
焚き火に薪を足し、暖と灯りを確保した俺達は焚き火の前に座り込む。
封筒を開けると中にはワンタイム式の磁気カード、おそらくはログハウスの鍵と思われる、があっただけ。
ログハウスの鍵を開け、入ったところにあるテーブルの上には折り畳まれた俺の服と小物、少女のものと思われる大きなバッグ、そしてバスタオルと入浴用のアメニティグッズが置かれていた。
ユニットバスに湯を張り、先に少女が、次に俺が湯を使う。
入浴を終え、ユニットバスから出ると全裸のままバッグから下着を取り出していた少女は、さっとバスタオルで身体を隠した。
身を縮め、安っぽい蛍光灯の下でも分かるほど顔を赤らめ、羞らいの表情を浮かべている。
時に性欲に爛れた娼婦でありながら、その内実は潔癖な乙女でもある矛盾した存在。
俺は彼女から視線を逸らし、黙って自分の服を身に着ける。
慌てながら下着を着け終えた少女は長袖のブラウス、ニットのベスト、膝丈のプリーツスカートの順に身繕いを済ませ、夏の制服に身を包んだ女子中学生に戻っていた。
俺が服を着終わった頃、不意に窓に近寄った少女が外の様子を伺う。
彼女の背後に立った俺が窓の外に眼を向けると、自動車のエンジン音とハザードの点滅、だが来る時に乗った自動車とは明らかに違う。
ハイヤーだ。