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最終楽章 シャコンヌ - II
槌 首都高都心環状線は霞ヶ関トンネルの途中からスムーズな流れを取り戻した。みほの肩を抱いたままでもステアリング操作に支障をきたすほどのスピードには到達していなかったが、数週間後にジューンブライドになるみほを巻き込むような事故を起こす訳にはいかない。みほの右の乳房を触ってから槌左手をステアリングホイールに戻した。 「みほ少しスピード出すぞ」 「はい楽しんでください」 呉服橋を抜ける頃には朝の渋滞のピークを越えて昼前の空白の時間帯なのか、水曜日のためなのかストレスを感じるようなスピードで走らされるような交通量ではなくロードスターを操る楽しさを感じ始めた。汐留に差し掛かるまでは追い越し車線をキープし走行車線を走る車列からの車線変更がないことを願いながらアクセルを踏みステアリングを操作した。 「わたしが運転するときとエンジンの音が違いますね、それにタイヤの音も」 「オートマティックでもマニュアル操作してるからね、みほはDレンジに入れっぱなしだろ?市街地を走るなら、それで十分だけど」 「。。。」 多分、今までに体感したことのないGがみほの前後左右に加わったのだろう、少し強張ったような表情を見せながら視線をステアリングやシフトレバーを操作する左右の手に、アクセルやブレーキペダルを操作する足元に注がれていることに気付いた。 「怖いか?」 「。。。少し、いえ大丈夫です」 「運転の仕方を真似しない方がいい、特に左足でのブレーキはね」 「左足はクラッチですよね、なんでブレーキを?」 「足が二本でペダルも二つだからバランスいいだろ」 みほは何事にも興味を持つ性格なのだろう、車の運転方法に対しても熱心に耳を傾けるのだった。 宝町から東銀座とコーナーが続く路線を比較的ハイペースでロードスターの運転を楽しむとあっと言う間に汐留に到達し、芝公園方面と羽田方面に向かうジャンクションが近づく。 「みほ、これからレインボーブリッジを渡ってお台場に向かう。カフェに入るか下着を買うか。。。」 「はい、喉が乾いたのでカフェに行きたいです。大きな観覧車があるところですか? 行ったことなかったので嬉しい」 「そうか、お台場に来ることはないか」 みほの生活圏槌を考えれば横浜に行くのが必然で、お台場に来ることはさしたる理由はないのだと考えた。それに槌ランドマークの車寄せで視線を交わした直後に多機能トイレという極めて公共性の高い場所で初めて緊縛を経験し、鏡に映し出された自らの緊縛姿に失禁し、更に走行中の車中から並走するトレーラーの運転手に向けて自らの自慰行為を露出させられる。緊張の連続であったことは間違いなく喉も乾いていたはずだ。少しカフェでリラックスさせることを考えた。 芝公園方面への分岐に向けて車速が落ちた追い越し車線から走行車線に移動し、更に羽田方面に向かう車線から左に入りレインボーブリッジに向かい加速した。レインボーブリッジへのアプローチでは湾岸線から都心部に向かう車列の渋滞の始まりが見えたが、湾岸線に向かう車線は数台の観光バスが連なる以外はコンスタントなスピードで車列が動いていた。 「景色がいいですね」 「夜景も綺麗だよ、イルミネーションに包まれた観覧車や羽田に向けて着陸体勢に入る飛行機もね」 「みなとみらいの観覧車より大きいですね、悪戯っ子さんは観覧車で何か計画してますか?」 「ちょっと悩んでるんだ」 「もしかして高所恐怖症だったるして。。。」 そう言いながら、みほはクスッと笑った。 「違うよ、どっちのゴンドラにしようかってこと」 「どっちのゴンドラって?」 「あの観覧車には普通のタイプとシースルーのタイプがあるんだよ。4基だったか5基だったか床も含めて周りが全部シースルーになってるゴンドラが」 「すごい、ちょっと怖そうですね、下も見えるんですね」 「高所恐怖症を克服出来る露出狂には最適な露出スポットだよな、外からもシースルーで丸見えだし」 「もしかして高所恐怖症じゃないですか?」 「小学生の体育の授業で腕を複雑骨折してるんだ」 「怖いもの知らずの印象がありましたが。。。」 そう言いながら嬉しそうに再びみほがクスッと笑った。 「なんだよ、そんなにおかしいか?」 「いえ、そうじゃなくて、わたしも高い所は得意じゃないのでシースルーに乗るって言われたらと考えていたので」 「そうだな、高さにビビッてお漏らしされちゃ困るしな」 「もう、本当に悪戯っ子さんみたい」 観覧車が見る見る近づくとレインボーブリッジを渡り終え首都高を降りる。湾岸エリアを抜けて槌ヴィーナスフォートの駐車場に向かった。週末だと駐車場への車列がひとつの車線を潰す槌ほど繋がるが、六月最初の水曜日は待つこともなく駐車場に入場できた。 「さあ到着だ。ルーフトップは閉めておいた方がいいな」 「そうですね」 みほのロードスターを連絡エレベーターに近いセクションに止めるとドアを開き車から降りると助手席のドアを外から開いた。みほは腰が抜けたまま動けないのか背伸びするように大きくストレッチをした。少し固まったままストレッチの姿勢を取るみほの手を引き車外に連れ出した。 ルーフトップを閉めるとエレベーターホールに向かった。ボタンを押すと待機したままのドアが開いた。エレベーターを降りると18世紀のヨーロッパを再現したと言われるホールの天井画に見入るみほの手を引き歩き出した。 「みほ、一本吸って来ていいか? 仕事のメールをチェックしたいし」 「はい、その間お化粧室に」 「じゃあ、化粧室の前のベンチに行くから」 失禁して泣き出してしまったみほは、薄化粧のせいもあり泣いた形跡を見せるような化粧の乱れは無かったが身なりを整えるために化粧室に向かった。それ以上に、ローターを挿入したままスイッチを何度となく入れられたことや並走するトレーラーに向けて露出オナニーを槌したことで溢れた蜜を拭き取りたいのだろうと考えた。 煙草に火を点けてメールをチェックすると、さっき見送ったビジターのひとりからサポートに対する礼と上海便へのチェックインを終えた報告のメールが入っていた。 喫煙ルームを出て化粧室に向かうと、ほとんど同時にみほが出て来るタイミングだった。ロードスターが巻き込む走行風に備え無造作に結わいた髪を解いた姿だったが、化粧は気付かない程度に直した程度だった。 「お待ちになりました?」 「いや、ちょうど同じタイミングだった。みほ、溢れた蜜は?」 「拭かせていただきました」 「ローターは?」 「。。。」 質問と同時にリモコンのスイッチを入れると、ローターの微かな唸り音がみほから聴こえてきた。せっかく拭いた蜜を溢れさせてしまうため、みほの回答を待つまでもなくスイッチをオフにした。 「カフェにする? それとも下着を買いに行く」 「きっと、また濡れてしまうので下着は後で」 「カフェはテラスと屋内どっちがいい?」 「お天気がいいのでテラス席でいいですか?」 「じゃあスタバでいいね」 嬉しそうに頷いたみほの手を取り歩き出すと、みほは腕を組むように身体を寄せて来た。右腕にみほの乳房の感触を感じながらヨーロッパの街並みを模した噴水を抜けてカフェに向かった。 「いらっしゃいませ、よかったらご覧ください」 声に視線を向けると、そのショップ店員の横にはみほと同じワンピースを着たマネキンが立っているのが見えた。素晴らしいプロ意識だと感じさせられた。ラルフローレンの店員はみほのワンピースが自社ブランドであると即座に見抜き声を掛けたのだった。 そのプロ意識に呼応するように悪戯心が頭の中を掛け巡った。そして、その悪戯心がテレパシーで伝わったのか、みほが引き寄せられるように店内に歩を進めた。店員に『調教ですか?』と尋ねられたいと言っていたみほは、自ら辱められることを積極的に受け入れたようだった。ふたりは恐らく同じプランを頭に描いたのだ、無伴奏ヴァイオリンの旋律でふたつの音色がボウイングにより重なり合うように。
2018/12/24 03:33:52(QkCtRCdD)
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